イスラム教批判はイスラモフォビアなのか?

私が二年近く書いてきた過激派イスラム教批判について、ある場所で批判をなさっている方がらしたので、こちらへ来て話されてはどうかとお誘いしたのだが、カカシのブログは読んでいるということなので、彼の私及びアメリカのネオコンに対する批判をちょっと載せてみよう。
まずは一宿一飯さんのあるブログへのコメント。

所詮憶測ながら苺畑カカシさんのイスラモフォビアに関して感じることは、「恐らくこの人は実際にモスリムに合って対話した経験も無ければする気も無く、単に自分の世界観を維持するための仮想的を必要としているに過ぎない」と言うものです。実際に接触してみれば、例えば敬虔なクリスチャン・モスリム・ジューイッシュは「共通する価値観を持っている」訳で、現実にハマス創設者ヤシン師にはユダヤ宗教界における高位の和平支持派ラビとの親交があったと言うような話など実例は幾らでもある訳なのですが。
別に、「真に共存の可能性を持っているのは西欧化した世俗主義者のみ」では無いのですけれどね。苺畑さんの決め付けは多分に「自分の壊れやすく、多分に現実と齟齬を来たしてしまいがちな価値観を守るために、少しでもそれに沿わないものは攻撃せずにはおられない」と言うような衝動的な物に見えてしまう。

一宿一飯さんは私の書いたことを読む前に某ブロガーによる「カカシはイスラム教恐怖症だ」という偏向な意見を読んでしまったため、私の書いていることもそういう色眼鏡をかけてよんだのだろうと思う。もう少し気をつけて読んでくれれば、私が攻撃しているのはイスラム教徒全般ではなく、過激派イスラム教徒およびイスラム教テロリストなのだということがわかるはずである。
常連の読者のかたがたならご存じだが、私はこのブログにおいて我々文明社会はイスラム教全体を敵に回してはならないと何度も強調してきた。イスラムの危機:テロリズムはイスラムの教えに反するにおいて歴史家のバーナード・ルイス博士の言葉を借りてこのように書いた。

現代のテロはイスラム教とほぼ同義語になってしまっているので、テロリズムがイスラムの教えに反するなどといっても、そんなことは頭の弱いリベラル連中のプロパガンダとしか受け止められない読者も多いだろう。私がここで何度も紹介してきたロバート・スペンサーなどもその口で、テロリズムこそがイスラムの真髄だなどと平気で言う。だがここでルイス教授はあえて、イスラムは平和な宗教だと主張する。…

…イスラム教徒はイスラム教を守るために戦うことは義務付けられているが、非戦闘員を殺したり虐待することは禁じられている。死を覚悟で戦うことは期待されるが、自ら命を絶つことは許されない。だとしたら、テロリストのやっていることは完全にこのイスラムの教えに反することになるではないか?何故このようなことをしている人間がイスラム教原理主義者だなどと大きな顔をしていられるのだろう?
…イスラム教過激派はイスラム教の名のものとに西洋に宣戦布告をした。彼らの解釈はコーランの正しい解釈のひとつである。だが、テロリストを正当なイスラム教徒として扱ってはならない。テロリストを原理主義者などと呼んではいけない。コーランの解釈はひとつではない。長くつづられたコーランのなかには戦争を唱える箇所もあれば平和を唱える箇所もある。他宗教に寛容となり、弱いものを守り無実の人間を傷つけてはならないという教えもイスラム教の原理なのである。イスラム教徒の中には、西洋文化の落ち度も理解しながら、また自分らの社会の弱点を捉えながら近代化を進めようとしている人々がいる。前者とは戦い以外に道はない。だが、後者とは歩み寄れる。我々現代人はこの二つのグループを十分に見極める目を養ない、穏健派を出来る限り応援しなければならない。

私は穏健派イスラム教徒となら歩み寄れるという言い方はしたが、歩み寄れるイスラム教徒は「西欧化した世俗主義者のみ」などといった覚えは一度もない。いや、それどころか私はヨーロッパの世俗主義をずっと批判してきている。私の「滅び行く欧州、栄えるイスラムの脅威シリーズ」を読んでいただければ分かるが、私はここでヨーロッパの行き過ぎた世俗主義こそがヨーロッパの崩壊につながると書いている。そのまとめとして目覚めるヨーロッパでこのように書いた。

(マーク)スタインはヨーロッパの世俗主義が現在の欧州の堕落を招いたのだと書いている。私はこれには全く同意見。イスラム教という宗教に対抗できるのはヨーロッパの基盤となっているジュデオ・クリスチャンの価値観しかない。

またカカシはイスラム教こそ悪の根源といいはるロバート・スペンサーの映画を紹介した時もこのように述べた。

私はこのブログでも何度か文明社会がイスラム教徒全体を敵に回すことの危険性を主張してきた。 だから私は悪の根源はイスラムの教えにあるというこのドキュメンタリーの製作者たちの意見には全面的に賛成できないでいる。 特にシューバット氏はイギリスのブレア首相がイスラム教を「平和を愛する宗教」だと何度も繰り返すことに関して、愚かなのか嘘つきなのかどちらかだろう、と言い切ることには全く同意できない。
ブレア首相ほど対テロ戦争に関して自分の政治生命を犠牲にしてまでブッシュ大統領と一緒になって努力してきた政治家はいない。 ブレア首相ほどイスラムテロリストの脅威を正しく理解して戦い続けなければならないと主張した人はいない。 私は911事件以後のこの世の中にブレア首相という立派な政治家がイギリスにいてくれたことを何度神に感謝したか知れない。
「イスラムについて、、」の製作者たちがわかっていないのは、政治家達がイスラムを「平和な宗教」だと主張し、テロリストは過激派であり、本来のイスラム教の教えを歪曲しているのだと語るには理由があるということだ。 イスラム教の人口は12億といわれている。 この中で過激派は約一割というではないか。 彼らはその一割の過激派と戦うために我々文明諸国に対して12億の人々全体を敵に回せというのか? 
無論、数や欧米の戦争技術をすれば、12億の敵をもってしても西洋社会がいずれは勝つだろう。 だが、もしそのような戦争がおきれば、第2次世界大戦どころの騒ぎではなくなるということがこのドキュメンタリーの製作者たちにはわかっているのだろうか?

一宿一飯さんの誤解は過激派イスラム教及びイスラム教テロリストへの批判を、イスラム教全体への批判イスラム教徒への人種差別およびイスラム教恐怖症、と混同してしまっていることにある。イスラム教過激派による犯罪やテロ行為を指摘して批判することは決して個々のイスラム教徒への人種差別でもなければ人権迫害でもない。それを混同してしまうと今ヨーロッパやカナダで起きているような人権擁護法の乱用のようなことが起きてしまうのである。
さて、一宿一飯さんは、私がイギリスのブロガーがイスラム批評をして逮捕状が出たという話を紹介した時、ラディカルフェミニストのフィリス・チェスラー女史のブログからインタビューを引用したことに関して、ラディカル・フェミニストたちのイスラム教蔑視はごう慢であり、イスラム教を批判しているというだけで、カカシが嫌いなはずのラディカルフェミニストを好意的に扱うのは私のアメリカ的なごう慢の現れであるという意見を述べられている。
まず第一に、私はチェスラーなる人がラディカルフェミニストであるという事実は知らなかった。しかし彼女がもしラディカルフェミニストだとしたら、彼女のイスラム教批判は全く理にかなっている。なぜならば、本当に女性優先の思想を持つ人であるならば、男尊女卑の最たるものであるイスラム教を批判するのはごく自然だからである。ラディカルフェミニストと自称する人ならばイスラム教の厳しい掟を恐れるのは当たり前だ。なにしろ強姦された被害者がむち打ちの刑にあうようなイスラム圏国が存在するのである。このような宗教を恐れることはフォビア(恐怖症)などではなく当然な自己防衛的な警戒心である。
私は自分はフェミニストだとか女性救済を目的としているといいながら、敵の敵は味方というせこい考えで非常な女性迫害をしている過激派イスラム教を全く批判しないリベラルフェミニストのほうがよっぽども偽善的だと思う。カカシは自分とは全く意見の合わない人でも信念をもって自分の考えを貫き通すひとのことは尊敬する。それがラディカルフェミニストであれ、共産主義者であれ同じである。反対に言うこととやることが正反対の偽善者は軽蔑する。
一宿一飯さんは、私のパレスチナ人への批判的な考えを『「遅れた、未開な非西欧」に対する敵意』だと考えているようだが、私がパレスチナ人に批判的なのはイスラエルがガザを撤退して自治をする絶好の機会を与えられた時に、ハマスというテロ軍団を政権に選び、自治にはまったく無関心で、ただただユダヤ人殺しだけを念頭において、平和交渉に何度も応じているイスラエルに執拗にミサイルをうち続けているからである。パレスチナ人はアラブ諸国でも民度が低いという悪評の高い民族だ。これはカカシの人種的偏見でもなんでもない。パレスチナ人の子供たちが飢えで死ぬようなことがあったら、これは一重に戦争に明け暮れて自分らの子供たちの将来にむとんちゃくなパレスチナのテロリストどもの責任である。
さて、ここで一宿一飯さんの白人コンプレックスについて反論したい。

..経営者さんは苺畑さんを「アメリカ保守の真似をしている」と評されましたが、私は「大変日本人的な反応」だと感じているのです。

「遅れた、未開な非西欧」に対する敵意と「自分の愛するアメリカ・西欧・白人社会」に固執するが故の「国粋主義」、そしてそれは「自身が日本人であるから」ではないかと。苺畑さんにとって依然憧れの「他者」であるアメリカと言う国の言説は、相互に如何に食い違い、相反していてもそれが「西欧・白人社会・アメリカ」を肯定し補強する範囲においては「矛盾せず」、逆にそれらの価値を批判し、見直そうとする言説には無条件に「敵」のレッテルが貼られるのではないかと。
差別は廃さなければいけないが、それは別に「白人・男性・プロテスタント」の価値観を否定するものでは無い筈なのにこの扱いは何だ、と言うのと同じ感覚を日本人も、そして世界各地のモスリムも持っていると言う事です。
少なくとも私の眼にはネオコンサバティズムとラディカルフェミニズムの「傲慢さ」「愚かしさ」は同じものに映ります。それは一部にドメスティックバイオレンス常習者や過激主義者が居るからと言って「すべての白人男性」「すべてのイスラム教徒」そして「全ての日本人の男」は野蛮で旧弊で遅れていると決め付ける類の愚かさです。
私にとって新保守主義は「保守」でもなんでもない。西洋かぶれの妄言に過ぎません。自分達の文化を否定し、西欧に媚び諂い、彼等にほめて貰う為に他のアジア人を殊更に野蛮と蔑む態度の恥知らずさに「お前達はそれでも日本人か」と怒りたくなることは枚挙に暇がありません。

私はネオコンではない。宗教右翼とか孤立主義の旧保守派とも違うが、どちらかといえば旧保守派に近いと思う。私としてはネオコンはリベラルすぎると思うので。ま、それはいいのだが、この白人に対する羨望という意識は、はっきり言って一宿一飯さん自信の反影だという気がする。アメリカは移民の国であり、その市民の種族も多種多様である。確かに過去には有色人種が差別されるという風潮がなかったわけではないが、カリフォルニアのように出会う人の半分以上が外国出身といういうような社会に住んでいると、白人だから何か特別に偉いなどと感じることはまずなくなる。少なくとも私は白人がうらやましいとか白人になりたいとか思ったことは一度もない。
アメリカにはいい面もあれば悪い面もある。特に日本はアメリカのよくない面を輸入し過ぎると思う。日本の教育界やフェミニストなどが「欧米では〜がとても進んでいる。日本も見習うべき」などといって取り入れる概念が日本社会の役に立ったことなどほとんどないと断言できる。
アメリカに長年住んで、アメリカの保守派思想を取り入れたカカシがアメリカ人なら、アメリカでフェミニスト活動を長年つづけて左翼フェミニストとなった例の小山のエミちゃんも立派なアメリカ人だろう。一宿一飯さんが、欧米を一緒くたにして白人社会と呼んでいるのも、彼が白人はすべて同じだという人種差別意識を持っている証拠だ。
私が生きているのはアメリカであり欧州ではない。欧州とアメリカではその文化に雲泥の差がある。私が価値あるものとしているのは人種や性別や年齢にこだわらずに個人の才能で判断してくれるアメリカの自由主義だ。これは白人であるとかプロテスタントであるとかなどということとは完全に無関係だ。もっとも一宿一飯さんが自由平等は白人プロテスタント男性の専売特許だと言い張るなら、また話は別だが。


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ハマス、エジプト国境を襲撃、イスラエルの責任問われる!

The English version of this entry can be read here.
ここ数日ハマス民兵たちがエジプトとガザを分ける国境の壁をブルドーザーなどを使ってエジプト国境警備隊の目の前で襲撃している

壁は未明に十数カ所で爆破された。ガザではエジプトから地下トンネルを使った密輸が盛んだが、密輸業者は朝日新聞の現地助手に「今日は商売あがったりだ」とため息をついた。

 ガザの人々はラジオなどで爆破の情報を聞いて車でラファに向かい、中心部のガザ市などでは人通りが途絶えた。
 武装勢力は壁の爆破後にブルドーザーで道をならし、車も通過できるようにした。住民らはエジプト側のラファのほか約40キロ離れたシナイ半島北部のアリーシュにも向かい、封鎖のために不足している乳製品や砂糖、炭酸ソーダ、たばこ、ガソリン、セメントなどを買い込んだ。

しかしいったい何故この時期にハマスはエジプト国境を襲撃などしているのだろうか?エジプトのホスニ・ムバラク大統領はガザの市民がイスラエルの輸出や交通規制によって人々が飢えているせいだとイスラエルを責めている。上記の朝日新聞の記事でも悪いのはイスラエルといわんばかりの報道である。

イスラエルによる制裁で物や人の出入りがほとんど止められているパレスチナ自治区ガザで23日、正体不明の武装勢力が南部のラファのエジプト境界にある壁の一部を爆破した。ガザの住民ら数万人がエジプト側に殺到し、食料や燃料などを買いだめして戻った。封鎖に風穴を開けようと、住民らが実力行使に出た模様だ。

にっくきユダヤ人め、なんでいつまでもパレスチナ人をいじめるんだ。たかが数千発のロケットを打ち込まれたくらいでガザへの食料や医療の無料供給を止めるなんて、なんて無慈悲なユダ公たちだ。か弱いパレスチナ人たちは切羽詰まってイスラエルの市街地を攻撃する以外に手立てがないというのに、イスラエルときたらそんなかわいそうなガザを秤量攻めにするなんて、鬼だ畜生だ!
飢えて貧乏で何の手立てももたないかわいそうなハマスは、燃料を大幅消費するブルドーザーや爆弾を使ってエジプト国境を襲撃。(爆弾の材料やブルドーザーを使う燃料はいったいどっから出てきたんだろうね?)
ハマスがエジプトを侵略し、腐敗したエジプト警備隊がこの攻撃を見て見ぬ振りをし、無力なムバラク大統領はすべてイスラエルのせいにする。今日の朝日新聞によればエジプト側はハマスの越境を一部許す方針を発表した。

 パレスチナ自治区ガザとエジプトの境界壁が破壊され、大量のガザ住民がエジプト側に不法越境している問題で、エジプト政府は26日、ガザ住民の流入を阻止しない方針を表明した。エジプト治安当局は「自由往来」は食料や燃料など品不足の解消に限り認めるとし、監視強化のため境界に治安部隊を展開。ガザ住民との衝突で部隊側に約40人の負傷者が出ている。

エジプトの警察はモスレムブラザーフッドというテロリストに牛耳られており、大統領といえどもそれほど影響力がないようだ。MBはハマスとは同じ穴のむじななので、ハマスの襲撃行為に積極的な抵抗などしないというのも納得がいく。しかしエジプトがパレスチナ人の越境を許可した場合、軒下貸して母屋とられるということになりかねない。パレスチナ人はアラブでいったら下の下の民族でその柄の悪さは定評がある。こんな奴らの越境を一時的とはいえ認めたらどういうことになるのか、ムバラクはちょっと考える必要がある。
イスラエルはいつまでもパレスチナ民族などというペストの面倒を見る義理はない。今の腰抜けオルメルト政権が倒れれば次のイスラエル政権は保守派強行形のビービーことベンジャミン・ネッテンヤフ首相が指揮をとるだろう。そうなればパレスチナの難民がエジプトにどっと流れ込むこと必至である。
もっとも度重なるハマスのエジプト国境襲撃はイスラエルにとっても心配である。なぜならハマスはエジプトを通じてテロに必要な物資や人員をおおっぴらに輸入するに違いないからだ。イスラエルはハマスのエジプト越境はイスラエル攻撃の準備であるという見方をしており、リゾート地域のサイナイへの旅行は控えるようにと警告している。一年前に自爆テロがサイナイを通ってイスラエル入りしているからである。
エジプトとイスラエルの国境ぞいに壁はない。二つの国は1978年以来ずっと平和的な関係にある。ハマスのテロリストが自由にエジプトに出入りできるとなれば、ハマスがイスラエル・エジプト国境からイスラエルへ攻撃を仕掛けることが容易になる。
オルメルトのパレスチナ対策は失態に次ぐ失態で、すでにカディマ党は崩壊寸前。今選挙が行われればリクード党が多数議席を獲得できるだろう。そうなればイスラエル政府始まって以来の純粋な多数党が誕生するかもしれない。そうなれば新政権は他党の許可なくパレスチナにたいして強行手段がとれるようになるのだ。そういう時にエクド・オルメルト首相はなんとパレスチナオーソリティー(PA)にイスラエル・ガザ通路の警備を受け渡そうと考えているというのだからその馬鹿さ加減はあきれかえってものがいえない。PAに警備を任せるということはハマスの自由通過を認めるというのと同じではないか。こんな味方なら敵はいらない。
ここでちょっとハマスの歴史を振り返ってみよう。ハマスは1987年にシーク・アクメッド・ヤシンというモスレムブラザーフッドのガザ分家リーダーによって創設された。モスレムブラザーフッドの本家は無論だれあろうエジプトイスラミックジハード(Egyptian Islamic Jihad)であり、アルカエダのナンバー2、アイマン・ザワヒリなど多くの過激派テロリストを生み出した凶暴なテロ集団である。
モスレムブラザーフッドの本拠地は間違いなくエジプトであり、最近のハマスとの親密な関係はイスラエルだけでなく対テロ戦争にたずさわる我々全体にとって非常に心配な状況である。


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選挙は関係なし! 遠慮せず強気の外交に専念できるブッシュ

よくアメリカではすでに任期終了を待つだけになって政策上の実権がなくなっている政治家のことをレイムダックと呼ぶ。二期目の任期もあと一年足らずとなり、従来この時期の政権からは特にこれといった新政策は期待できない。
この時期はある意味でアメリカにとって非常に危険な時期でもある。まずイラクだが、大統領選挙に影響を与えようと選挙をめざしてテロ行為が激化することは間違いない。また先日のイランのように任期を一年未満に控えた大統領が新しく戦争などはじめるはずがないと踏んで挑発をしてくる敵もあるだろう。
しかし今回は従来とはちょっと違う状況がある。従来なら現在の政権の方針を引き継いで大統領に立候補する副大統領が、健康上の理由から立候補していない。大統領の外交政策は議会の承認を必要としない。ということはブッシュ大統領は来期の選挙運動を控えた支持率の束縛や議会のうるさい小言など気にせずに強気な外交に専念できるというわけだ。ブッシュはレイムダックだからと甘く見てやたらにアメリカを攻撃してくると敵は思わぬ猛反撃を受ける可能性がある。
2008年のブッシュ外交政策はこれまでよりも強気なものになるのではないかという意見がStratforに載っている。(メンバー登録必要(Hat tip seaberry

イラク戦争はジハーディスト戦争の延長だ。2001年のアフガニスタン侵略の後、合衆国はアルカエダを可能にしたサウジアラビア、シリア、イランそしてパキスタンという四つの勢力と同時に戦うだけの軍事力に欠けていることに気が付いた。そこでブッシュ大統領の最初の手段はアフガニスタンに対抗する碇(いかり)を確保するためにパキスタンに無理矢理アメリカと同盟を結ばせた。第二段階は他の三つの国を威嚇しアルカエダとの戦いへの協力を強制するため、これらの国と国境を接するイラクを占領した。そして最終段階ではアルカエダが崩壊するまでこの戦争を押し進めるというものだった。

多くの思いがけない犠牲を払ったとはいえ、2008年の夜明けを迎えた今、この作戦がアルカエダが機能不能になるまで潰すことに成功したことが明らかになってきた。 はっきり言ってジハーディスト戦争はもうほぼ終わりを遂げているのである。合衆国は勝っているだけでなく、最初にアルカエダを可能にしたスンニ勢力全体を味方につけてしまった。
これでこの地域においてただ一つ非スンニ派勢力のイランは合衆国との同意を求めなければならないという非常に居心地の悪い立場にたたされることになった。

イラク情勢:
現在イラクではファンタム・フィニックスという大掃蕩作戦が行われており、すでに何十人というテロリストが殺されている。特にファンタム..の一部であるハーベストアイアンではアンバー地域から逃げたアルカエダの連中の温床となっていたディヤラ地区が焦点とされている。
現場の司令官によるとアメリカ・イラク同盟軍は期待したほどの抵抗にはあっていないということだ。これは我々の攻撃が事前に敵側に洩れたため、アルカエダの連中がかなり多く逃げてしまったのが原因らしい。
しかしこれまでの作戦と違ってペトラエウス将軍のCOIN作戦では、一旦制覇した土地は去らずにあくまで守り通すので、テロリストから戦って奪い取ろうが逃げ去ったテロリストの留守中に制覇しようが結果は同じだ。テロリストは奪われた土地を奪い返すことはできないからだ。
イラク戦争がうまくいくいつれて、アメリカ国内でも日本でもイラク戦争の話をあまりきかなくなったが、アメリカ市民が大統領選挙で気を奪われている間にもイラクではアメリカ軍がテロリスト退治を着々と進めているのである。大統領選挙に影響を与えようとテロリストが躍起になって自爆テロ作戦を練っていることは確かだが、味方軍の攻撃から逃れながら住処を次から次へと奪われている最中にメディアをあっといわせる大規模なテロ作戦を練るというのはそう簡単にできるものではない。
イラン:
この間のイランによる挑発行為で、アメリカ海軍は何もしないで見ていたという見解は間違っている。アメリカ側は確かに応戦はしなかったが、イランがこちらの反応を観察したのと同じようにこちらもイランのやり方を注意深く観察していたのである。それにアメリカ側がわざと反応を遅らせて意図的に誤った情報を与えた可能性も考える必要がある。
もしまたイランがあのような挑発行為をとることがあったら、アメリカ側からの反応はかなり恐いものがある。ブッシュ大統領はイランへの武力行使をオプションのひとつとして考えているのは確かだが、それをやる前にイランに対して強気の対処をすることは可能だ。例えばホルムス海峡を通るイランへ出入りする船をすべて差しとめてしまうということなら意外と簡単にできる。これに経済制裁を加えれば、イランの経済は突如として立ち止まってしまうのだ。
それではここで再びイランをどう攻めるか、軍事歴史学者のアーサー・ハーマン博士の提案を振り返ってみよう。

  1. まずホルムズ海峡を通る石油輸送を阻止する国はどこであろうと容赦しないと発表する。
  2. その脅しを証明するために対潜水艦船、戦闘機、じ来除去装置、イージスBMDシステムなどを含む空母艦バトルグループをペルシャ湾に派遣する。むろんこちらの潜水艦も含む。
  3. アメリカ一国によるイランの石油タンカー通行を封鎖。イランから出る石油、イランへ入るガソリンなどを完全阻止する。ほかの国の船は自由に通過させる。
  4. イランの空軍基地を徹底的に攻撃し、イランの空の防衛を完全に破壊する。
  5. イランの核兵器開発地及び関係基地、インフラなどを攻撃する。
  6. そしてこれが一番大切なことなのだが、イランのガソリン精製施設の徹底破壊である。
  7. アメリカの特別部隊がイラン国外にあるイランの油田を占拠する。

読者の皆様もお気付きと思うが、アメリカはすでに1と2を実行に移してしまっている。ブッシュ政権は今年中にイランになんらかの強攻策をとるはずである。
イスラエル・パレスチナ問題:
今ブッシュ大統領はイスラエルを初訪問中。ブッシュ政権はこれまでのどの政権よりも親イスラエルとはいうものの、イスラエルに妥協を迫ってパレスチナに歩み寄るように圧力をかけるという点では従来の政権とあまり変化はない。カカシは他の点ではブッシュ大統領の政策を支持しているが、ことイスラエル・パレスチナ問題に関してはあまり期待していない。オルメルト首相との会話も中東和平よりもイランの脅威に終始した模様で、パレスチナ和平についてはあたりさわりのない会話しかなったようだ。

 【エルサレム笠原敏彦】…パレスチナ和平をめぐってはオルメルト首相が7年ぶりに再開した和平交渉への「完全な関与」を改めて表明したものの、交渉進展へ向けた具体策は示せなかった。
 初のイスラエル訪問となるブッシュ大統領の首相との会談は、予定を約40分も超過。2国家共存に向けてパレスチナ国家の輪郭(国境画定、難民の帰還問題など)を決める交渉の年内妥結やイランへの対応で、突っ込んだ論議を行った模様だ。
 イスラエルは和平問題よりイランへの対応を重視。ブッシュ大統領は会見で「イランは03年秋に核兵器開発を停止した」とする米機密報告書の公表が波紋を広げている事態に言及、「イランは脅威であり続ける」との認識を改めて示し、イスラエルの米政策への懸念軽減に努めた。…
 一方、焦点のパレスチナ和平では、オルメルト首相が改めてパレスチナ側の暴力停止が和平推進の前提だとの立場を強調。ブッシュ大統領は強い圧力を行使する姿勢は見せず、「指導者らがロケット攻撃や入植地の問題に固執し、歴史的な合意の潜在性を見失うことが懸念の一つだ」と述べるにとどまった。
 両首脳とも和平問題では「決意表明」にとどまり、昨年11月の米アナポリス中東和平国際会議での「約束」を「履行」に移す突破口は開けていない。

ブッシュのイスラエル訪問は卒業写真程度の意味しかないという批判もあるが、アメリカ大統領がイスラエルを訪問するのは非常に危険を伴う行為であるから、少なくともその危険をおかしてまで訪問したということに多少の意義はあるかもしれない。私はアメリカのイスラエルへの方針は「放っておけ」というもの。どうしても口出ししたいなら、イスラエルからのイランなどへの諜報と交換に武器供給をするのが得策と思う。


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トルコ政府、イラクへの越境攻撃を承認

先日からアメリカの下院議会で話題になっているオトマン帝国時代のアルメニア人大量殺害について、現在のトルコ共和国に責任を負わせようという話が、だんだんとトルコ政府の姿勢を厳しいものにさせている。
まず、トルコ政府はアメリカ駐留のトルコ大使を一時帰国させた。

【ワシントン=山本秀也】アルメニア人虐殺(1915年)をめぐる米下院のトルコ非難決議案問題で、トルコ政府は11日、「対応協議」を理由に米国駐在のセンソイ大使を一時本国に召還した。決議案に対する実質的な不快感の表明とみられる。米国家安全保障会議(NSC)のジョンドロー報道官は、「強固な関係維持のため早期の任務復帰を望む」として、トルコ政府の反発に困惑の色をにじませた。

AP通信などによると、大使の召還期間は当面、1週間から10日程度と説明されている。トルコ非難決議案が下院外交委員会(ラントス委員長)を通過したことで、トルコ政府は11日、「長年築かれた戦略的友好関係を困難に陥れる無責任な対応」とする声明を発表していた。
決議案に対して、ジョンドロー報道官は「米国の安保権益を激しく損なう結果を招く」と批判。決議案をめぐるトルコの対米姿勢硬化が、隣接するイラクをにらむ米国の安保権益に打撃を与える懸念をもとに、下院本会議での決議案採択の回避を求めるブッシュ政権の姿勢を重ねて表明した。11日の米メディアは、トルコ国内での反米デモの模様を繰り返し報じるなど、安保権益を軸とした米国とトルコの関係後退に強い関心を示している。

昨日もお話したように、下院議員の間では、この決議案は思ったより弊害が大きいと考える議員が増えてきたようだ。それというのも、日本政府の愚痴っぽいいいわけじみた抗議とは違って、トルコ政府の抗議には断固たる中身があるからで、トルコ政府の行動次第ではアメリカはやっと希望が見えてきたイラク戦争に多いに悪影響を与えるからである。このトルコ軍によるイラク越境攻撃などがそのいい例だ。(下記2007年10月18日産経新聞より

【ワシントン=山本秀也】トルコ軍のイラク北部クルド人居住地域への越境攻撃が同国議会の承認を得たことについて、ブッシュ米大統領は17日、ホワイトハウスで記者会見し、「イラク領内への部隊派遣がトルコの権益だとは考えていない」と懸念を表明、イラク政府を加えてトルコ政府と対話を継続する方針を示した。また、イラク情勢の混乱に備え、大統領は同日、イラク駐留多国籍軍のペトレイアス司令官らと対応を協議した。

トルコ軍の動静について、大統領は「すでに部隊がイラク領内にいる」と述べ、偵察や先遣部隊に続く「大兵力の部隊越境」を支持しない立場を示した。イラク領内を拠点とする非合法武装組織、クルド労働者党(PKK)のテロ活動については「イラク政府もトルコ側の懸念をよく理解している」として、対話による事態打開に期待を示した。
 米側がトルコとの対話を求めるなかで、改めて大きな障害となるのが、米下院外交委員会を通過したアルメニア人虐殺をめぐるオスマン帝国非難決議案だ。決議案へのトルコ国内の反発が、同国議会の越境攻撃承認を後押ししたかたちだけに、ブッシュ大統領は、下院本会議での決議採択を「やってはならない」と強く牽制(けんせい)した。
 決議案には、与党共和党のほか、マーサ下院議員ら民主党の有力議員からも、本会議採決に反対する声が高まっていた。

アメリカもパキスタンへ逃げ込むアルカエダを追いかけてパキスタンへの越境攻撃を行っている以上、もしもイラクのテロリストがトルコへ越境攻撃しているのであれば、それをトルコが応戦するのを止める権利はない。自分はいいが他人はだめというのはあまりにもダブルスタンダードすぎる。だが、トルコがイラクを攻めてきたりすれば、またまたイラクの状態が複雑になってしまう。トルコにそれをさせないためにはアメリカ側がトルコの安全を保障しなければならない。イラク軍とアメリカ軍が協力してイラク在住のテロリストがトルコへ攻め入らないよう徹底的な取り締まりをする必要がある。
しかしそのためにトルコの理解を得るにしても、今回のような議案が採決されてしまえば、交渉は先ず無理だろう。今後トルコとは正常な国交を結ぶことは不可能となる。実はこの議案の発案者は民主党のアダム・シフといい、カカシも地元なのでよく知っている議員だ。なにせこのあたりはアルメニア人が多いため、トルコという言葉は禁句。なんとトルココーヒーですら「アルメニアンコーヒー」と言われているほど。中身は全然変わらないのだが、、、
とにかく、地元の投票者のご機嫌伺いをしたい気持ちはわかるが、ここはアメリカ、アルメニアではない。アルメニアの議会がトルコに責任追及をするというなら話はまだわかる。(それでも筋違いだとは思うが)だがアメリカのカリフォルニアとトルコとどういう関係があるというのだ?
地元主義で外交を全く考えない議員はこれだから困る。


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日本と対照的、トルコの米下院民族浄化責任追及決議案への強い態度

まったくアメリカの民主党はブッシュ大統領に恥をかかせること以外には考えが浮かばないのだろうか? もっともイラク戦争を止めさせるとがんばってみても、拘束力のない議決案でさえ通せないというだらしなさ。なにか議決を通したと思えば、アメリカ人には何の関係もない旧日本軍の慰安婦問題などという日本政府を侮辱するだけで害あって益なしという議決案くらいだ。今回も日本に関する議決と同じように90年以上もたっているオトマン帝国によるアルメニア人虐殺について、いまのトルコ政府に責任を取らせようというくだらない議決案を民主党は提案している

決議案は1915年から数年間に起きたアルメニア人大量虐殺を公式に「ジェノサイド」(事前に計画された集団的虐殺)と呼び、その悲劇への理解などを米国の外交政策に反映させるという内容だが、虐殺をオスマン・トルコ帝国の全責任とし、犠牲者150万として「ジェノサイド」と断じる点などに対しトルコ政府が激しく反対している。

しかしニューヨークタイムスによると:民主党はこんなどうでもいい議案さえ通せそうもない。

トルコ政府を怒らせることを恐れ、下院の両党のメンバーたちは民主党リーダーたちによって提案された一世紀前のアルメニア人民族浄化を糾弾する議案への援助から手をひこうという動きが出ている

この24時間のあいだにほぼ12人の議員たちがこの議決案に反対する意見に変わったことで、突然の脱退に拍車がかかったことで、すでに成功が疑問視されていた議案にさらに暗い影が落とされた。下院議員たちの間ではこのような議案は挑発的であるというホワイトハウス並びにトルコ政府からの警告に従っているとはっきりさせた人たちもいる。トルコ政府はこの議案が通ったならば即、合衆国との関係はイラク戦争への地理的な援助も含めて考え直す意図を明確にしている。
今日まで、議案は下院議長のナンシー・ペロシ氏の強い支持を受けて下院を通りそうな勢いだった。この議案は先週下院外交委員会で認可されたばかりである。しかし今夜、数人の民主党ベテラン下院議員の間からこの議案への投票を取りさえげることを要請する明らかにされた。

以前に旧日本軍の慰安婦問題についても語ったが、米議会がこのような議決案を提案するのは別に日本やトルコにアメリカが敵意を抱いているからではない。それどころかこれらの国々とアメリカは比較的良い関係にある。米民主党にとってはそれが気に入らないのである。
民主党は反戦決議案を拘束力のあるものからないものまで、あの手この手で通そうとしたが、どれもこれも大失敗に終わっている。そこで、民主党はイラク戦争に協力的な姿勢をみせている同盟国を攻撃し始めたのだ。彼らを侮辱することによってこれらの国々からの戦争援助を止めさせようというのが本当の目的なのである。
慰安婦問題では中共や韓国が関与したことと、日本にはアメリカとの関係を完全に断ち切るというような切り札は出せないということもあったし、安倍前首相の発言が言い訳がましく聞こえただけで、全く説得力がなかった。それでアメリカ市民の反感を買ってしまい決議案は通ってしまった。しかしトルコの態度はもっと強気だ。それというのもトルコはトルコからアメリカ軍がイラクへ出動したり武器導入したりするのを拒絶するだけでよいのである。(以下上記の産経新聞より)

トルコ政府は「いわゆるアルメニア虐殺の実態は不明確な部分も多く、ジェノサイドとは呼べず、決議採択はトルコ国民を激怒させて、トルコ・米国関係に重大な打撃を与える」として反対し、エルドアン首相が5日、ブッシュ大統領に電話して議会に抑制を求めることを要請した。同大統領も10日朝の会見で「決議案採択はNATO(北大西洋条約機構)、そして対テロ国際闘争での枢要同盟国との関係を傷つける」として改めて反対を述べたばかりだった。

 米国はイラクでの軍事活動に必要な機材や物資の7割以上をトルコ領内のインジルリク基地などを経由して運んでいる。トルコ側では同決議案への反発が激しく、外相や議員団をワシントンに送って、採択された場合は同基地を使用禁止にする意図までを示唆してきた。こうしたトルコの官民の激烈な反応は慰安婦決議案への日本側の対応とは対照を描いてきた。

無論民主党は最初からそれが狙いだったのだと私は考えるが、イラクの強気の姿勢とブッシュ政権からの圧力でこうも簡単に考えを変えるということは、民主党の投票者の間でもイラク反戦派はそれほど多くはないのかもしれない。少なくとも、一般の民主党市民はイラク戦争には反対でも、アメリカはやるだけのことはやるべきだと考えているのかもしれない。それをアメリカ軍の行動を明らかに妨害するような行為はいくらなんでもアメリカ人としてあるまじき態度と考えられているのだろう。
だいたい今のトルコに90年も前の事件の責任を取れというのは、日本の慰安婦問題以上に筋違いである。
トルコはかつてオトマン帝国と呼ばれており、1300年ごろ始まり17世紀にその全盛期を迎え、地中海はトルコの湖だといわれていたこともあるくらいだ。しかし1918年にオトマン帝国が第一次世界大戦に参加したことで、帝国はイギリスと他のアラブ人たちによって完全に破壊されてしまったのである。

Ottoman Empire to 1683

全盛期のオトマン帝国


トルコはその後も何年か生き延びはしたが、イギリス、フランス、イタリア、ギリシャ、アルメニアによって分割されてしまった。そして1922年、国粋主義者の、Mustafa Kemal Pasha、俗にアタトゥークと呼ばれるリーダーが外国勢力をトルコから追い出しまったく新しいトルコ共和国を設立した。つまり現在のトルコ共和国は第一次世界大戦でアルメニア人を大量虐殺したオトマン帝国とは何の関係もない全く別の国なのである。これは以前に旧日本軍の慰安婦問題のときにも話たように戦時中の日本政府と現在の日本政府はまったくべつの政権であることや、いまのドイツ政権がナチスドイツとは完全に無関係であるのと全く同じ理屈だ。
だから先の政権が崩れた後に設立された現在のトルコ共和国がアルメニア人虐殺事件の責任をとるいわれはまったくないのである。
民主党はこのようなくだらない決議案を後から後から提案あする下院議長のペロシ議長にいい加減、嫌気がさしているのではいだろうか?


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「中東有事はそっくりそのまま朝鮮半島有事じゃねぇかよ」

短いが気になったのでちょっと書き留めておく。
タイトルは陳さんのエントリーから拝借。これは陳さんが、シリアからイスラエルが北朝鮮が提供した核兵器の材料を押収していたという記事に対して書かれた反応だが、まさに的を射ていると思う。
でも解せないのは、アメリカが北朝鮮をテロ国家指定から削除するつもりらしいということだ。北朝鮮にはクリントン時代に一度騙されているし、第一シリアへの核兵器援助に関してはアメリカも知っていたという話でもある。とすればどうしてこの次期に北朝鮮を悪の枢軸からはずす必要があるのだろうか?


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シリアの大量破壊兵器開発に関わるイランと北朝鮮

9月12日(2007年)のことだが、イスラエルがシリアを空爆するという事件が発生した。下記は朝日新聞の記事より。

イスラエル軍がシリア空爆か 米で報道

イスラエル軍がシリアを空爆したとの見方が広まっている。米CNNテレビが11日、米国防総省筋の情報として、武器庫を空爆したと報道。12日には米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が空爆の理由をめぐり「シリアが北朝鮮から核関連物資を購入している可能性もあるため」と指摘した。今のところ両国政府とも認めていないが、事実であれば両国の紛争に発展する可能性もある。…
シリアは空爆についてコメントせず、地上部隊の侵入だけを否定した。イスラエル軍の一方的な攻撃の事実を認めれば、反撃を求める声が国内やイスラム圏の間で高まり、本格的な紛争に発展する事態を避けようとしているのではないか、との見方がある。

シリアはヒズボラを使いレバノンで政権争いに余念がない。またパレスチナのハマスなどもシリアとは深い関係にある。イスラエルにとってシリアの核開発を黙認するわけにはいかない。しかしここで心配なのは北朝鮮がシリアに核兵器開発援助を行っているかもしれないという事実である。これについて13日つけのワシントンポストが詳細を掲載している。

関係者によると合衆国が過去6か月に渡って徴収した情報によれば、北朝鮮がシリアと共謀してシリアにおいてなんらかの核兵器施設を建設しているらしいとのことである。その証拠は衛生写真などを含む劇的なイメージなどを含み主にイスラエルから来るもので、アメリカの高官は施設は核兵器の材料を生産するのに使われている可能性があると考えている。

この間から北朝鮮は神妙な態度をとっているように見えるが、影でこんなことをしていたとは。やはり油断のならぬ敵である。
それとは別に一か月ほど前、シリアではある爆発でシリアとイランのエンジニアが何人も死亡していたことが発覚したと、ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーにその詳細が載った。ワシントンポストによると、イラン人とシリア人の化学兵器を弾頭に設置する際に失敗して爆発が生じ、立ち会っていたエンジニアが十数人死亡したという。爆発当時に事件のことは噂にはなっていたが、シリアは詳細については何も明らかにしていない。
ここで明らかになったことは、シリアとイランが協力して大量破壊兵器の開発をしていたということだが、もうひとつ気になることがある。それはシリアに化学兵器が存在していたということだ。シリアが化学兵器を開発していたという話はこれまでにも聞いてはいたが、開発に成功したという話は聞いたことがなかった。
いったいこの化学兵器はどこからきたのだろうか?
2003年の3月、イラクから大量の物資がシリアへ移動されたことをアメリカの衛生写真が確認していた。フセイン政権崩壊直後に査察にあたったCIAのデイビッド・ケイ氏も実際にイラクにあったはずに大量破壊兵器がイラク国内で見つかっていないのは、シリアに移動されたからではないかと語っていた。もし、シリアの化学兵器がイラクから渡ったものであることが確認されたら、イラクに大量破壊兵器はなかったじゃないかと大喜びしていた反ブッシュ派はどうするのだろう?
さて、シリア関係の話で今日もうひとつ、レバノンで反シリア派のキリスト教政治家が暗殺されるという事件がおきた。どうやらシリアはヒズボラを手先につかってライバル党の政治家をすべて暗殺してしまおうという魂胆らしい。民主主義なら選挙でライバルを倒すものだが、シリアはライバルを殺すことで勢力を得ようという魂胆らしい。

ベイルート(CNN) レバノンの首都ベイルート東部のキリスト教地区で19日午後5時頃、爆弾による大規模な爆発があり、反シリア派政党「フェランヘ党」でキリスト教マロン派のアントワーヌ・ガネム国会議員と、少なくともその他4人が死亡した。レバノン政府高官が語った。

ガネム議員を標的とした攻撃とみられている。議会ではマロン派からの大統領選出が予定されているが、その前にこうした事件が起きたことについて、社会党のワリド・ジュンブラッド議員は「血塗られたメッセージ」とコメントした。議会で多数派のキリスト教勢力の議席数は69から68に減少し、「自由な大統領」を選出するうえで足かせとなる恐れが指摘されている。…
ハマデハ通信相は、レバノン介入を試みるシリアが「テロリストの手法で議員を暗殺している」と厳しく批判。しかし国営シリア通信社(SANA)は匿名の関係筋の発言として、事件が「レバノンの国民合意を目指すシリアなど各国の尽力を狙った犯罪行為」であると伝えた。
国連の潘基文事務総長は事件を非難する声明を発表したが、レバノン側に冷静な対応を呼びかけた。また、米ホワイトハウスは、政治的動機に基く暗殺だとの認識を示した。

シリアの後ろにはイランがいる。まったく中東は1930年代のヨーロッパのような気配がただよいはじめている。
あ、もうひとつ忘れるところだった!イランのアクマネナジャド大統領は国連の招待でニューヨークへくることになった。しかもずうずうしいことに、WTC痕のグランドゼロを見せろと要求してきた。無論アメリカは警備の関係で出来ないと拒絶したが、警備などときれいごとをいってないで、テロリストにグランドゼロなんぞをけがされてたまるか、このあほんだら!と断るべきだったな。


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アフガニスタン: タリバン、韓国人宣教師20数名を拉致

金曜日、アフガニスタンからこんなニュースが届いた。

アフガンで韓国人18人拉致 タリバーンが犯行認める

 アフガニスタン中部ガズニ州知事は20日、韓国人がアフガニスタン中部ガズニ州知事は20日、韓国人が乗ったバスが武装集団に襲われ、約20人が拉致されたと語った。反政府勢力タリバーンの報道官を名乗る人物はロイター通信に犯行を認め、「我々の要求は後に公表する」と述べ、拉致したのは18人としている。
 一行は19日、南部カンダハルから首都カブールに向かう途中で拉致された。地元警察幹部はAFP通信に空のバスを発見したと語った。
 韓国・聯合ニュースによると、一行はソウル近郊のキリスト教会に所属。13日に韓国を出国後、カンダハルの病院と幼稚園で奉仕活動を終えて23日に帰国する予定だったという。

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拉致された韓国人宣教師たち, 出発前の記念写真


The Marmot’s Holeというブログによると、拉致されたのは15人の女性を含む23人とのことだが、これは報道する新聞によって人質の数は18人から23人とあってはっきりしない。
しかし韓国軍の活躍には非常に感謝しているアフガニスタン政府だが、宣教師たちの活躍には眉をひそめているらしい。もともとイスラム教政府は異教徒の存在を面白く思っていないし、第一アフガニスタンでは以前よりましになったとはいえキリスト教宣教など違法だろう。以前にも韓国人宣教師150人がアフガニスタンから強制送還されたことがある。今回もこれだけ多数の宣教師が護衛もつけずに政府に届け出もせずに集団で移動していたことにカルザイ首相はかなり苛立っている様子だ。
タリバンは当初、韓国軍がアフガニスタンから数日中に撤退しなければ人質を殺すと言っていた。アフガニスタンの韓国大使によれば韓国のアフガニスタン撤退はすでに決まっており、予定を変更する意志はないとのことだが、これについては韓国の新聞もAPも韓国はいずれにせよ近々撤退する予定だと報道しており、見方にによっては韓国がテロリストの要求に応じたようにも取れる。
一方、同時に拉致されたドイツ人二人はドイツ政府がタリバンとの交渉を拒んだため殺されたそうだ。
タリバンの要求どおりの早急さではないとはいえ、韓国軍は撤退する意志をはっきりさせているのだからタリバンも納得して人質を返すかと思うとそうではない。イスラム教テロリストの二枚舌は悪名高い。今度は23人の人質と拘束されている23人のタリバン囚人を釈放せよと要求を変更してきた。
以前にもイタリアの人質とタリバンの囚人が交換されたが、この時アフガニスタン政府も英米政府もテロリストと交渉すれば誘拐の再発を招くと抗議した。しかしイタリア政府は人質交換をしないならばイタリア軍の2000兵を撤退させるとアフガニスタン政府をおどしたため交換は実現した。しかし案の定、その後フランス人労働者が拉致されるという事件が起きている。
ロバートの考えでは韓国政府はアフガニスタン政府にタリバン囚人を釈放させることができるかどうか疑問だという。先ずこのような行為は今後も拉致を増加させる可能性が高いこと、イタリアに比べ韓国の駐留軍はたったの210人で、すでに今年中に撤退が決まっている。しかもカルザイ首相は宣教師たちの無責任な態度にすでに腹をたてている。アフガニスタン政府にとって人質交換は害あって益なしの提案だ。
この宣教師たちの無責任な行動は批判されるべきだろうが、それとは別に私はアフガニスタンのようにキリスト教に敵意を持ち、過激派テロリストが同じイスラム教徒ですら腐敗しているとか規則が緩すぎるとかいって殺しにくるような国で、命がけでその国の人々の生活向上のために戦い宣教をする人たちの勇気には脱帽する。
著者のロバート(Robert Koehler)によると、アフガニスタンにはなんと韓国からのキリスト教宣教師が120人も在住して宣教やボランティア活動をしているんだそうだ。
ベルモントクラブの(The Belmont Club)レチャードによると今やキリスト教宣教師を世界で一番海外へ送り出す国はアメリカに次いで韓国が第二位なんだそうで、韓国がアメリカを追い越す日は近いという。
イスラム過激派が彼等の原理宗派を世界に広めて破壊しようとする今日、韓国の宣教師たちが本当のキリスト教価値観をイスラム教社会に広めて何が悪い? いや、悪いどころか歓迎されるべきことだ。人質になった宣教師たちは殉教の覚悟は出来ているはずだ。韓国政府はテロリストの要求など無視して、韓国の協会はどんどんともっと多くの宣教師をイスラム諸国へ送り込んでもらいたいと私は思う。
イスラム教過激派との戦いは戦場だけで行われるのではない、宗教は宗教でもって対抗されるべきだ。


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カカシのブッシュ批判にミスター苺異議あり!

先日カカシはブッシュ政権がイスラエル西岸のパレスチナ人ファタハを支援することは愚かであると批判したが、そのことについてミスター苺から異議申し立てがあった。
厳密に言うとミスター苺はカカシの書いたことに直接反論しているのではなく、カカシと同じような意見をもっている別のブロガージョシュア(Joshuapundit)に反論しているのだが。

何か月という時間と何百万ドルという大金をかけてハマスを追い出そうとマクムッド・アバス率いるお気に入りテロリストファタハを武装し訓練してきたブッシュ政権だが、結局株でいうところの「見返りのない投資」という結果になった。
普通こういうことが起きた場合、投資家は損を拡大しないよう手を引くものだ。しかしそれだとブッシュ政権のアラブ仲間が機嫌を損ねるってんで俺たちは手を引くなんてことはしない。
そのかわり、ブッシュ政権はアバスとファタハというお気に入りテロリストにもっとお金を注ぎ込む計画だ。
ブッシュ政権が進めてる馬糞政策は、アラブ・イスラエル紛争はパレスチナとイスラエルという独立国家がいずれ共存することで解決するというものだが、かつてアラファトが作り出した人種浄化主義テロ集団がスイスでいくつかの書類に署名して不動産の一部を動かしたくらいで奇跡的に心をいれかえイスラエルと隣り合わせで住めるようになるというのだ。そしてこの妄想はマクムッド・アバスのファタハは、彼等の長期的な目的であるイスラエル征服と破壊もしくは西側に味方するということに関しては、ハマスとは多少違うという考えからくるものだ。

これに対してミスター苺はファタハを援助することが時間の無駄であるというジョシュアのいい分には同意するとはいうものの、ファタハのほうがハマスよりも扱いやすいということは事実な訳で、それを利用してファタハとハマスが同士打ちして両方で滅んでくれればこれ幸いという考えからみれば、ブッシュ政権の政策はそれほど愚かだとは思えないという。
ミスター苺はジョシュアのようにガザを破壊しガザの住民をガザから追い出すべきだとか、西岸のパレスチナ人をヨルダンに引き取ってもらうとかいう考え方は過激すぎると批判する。むろんそうなれば理想だがそんなことはアラブ諸国が承知しないだろう。

ブッシュ大統領が出来ないことに時間を浪費しないというだけで、ジョシュアはブッシュをサウジの操り人形だと批難する。ところで私はジョシュアはブッシュがイラク戦争をはじめたのはサウジからの命令で、サウジがアメリカの外交をコントロールしてると信じてることをもう申し上げていただろうか?さらにジョシュアはブッシュがイランに迎合するためにイラクでわざと負けようとしていると言ってることも?

ちょちょっと待ったあ!カカシはブッシュ政権のファタハ援護は批判したがサウジ云々てな話は知らない。ジョシュアの発言はいくらなんでも行き過ぎだ。しかしミスター苺が心配しているのはミスター苺が審査員のひとりである右翼ブログランキングで、この過激なジョシュアの意見が今週の勝者に輝いたという点である。「私は今週の審査には同意できない」というのがミスター苺の意見。
アメリカ右翼の弱点は全く妥協しないという点かもしれない。彼等の過激な方針がブッシュ政策と沿っているうちはブッシュを支持するが、ちょっとでもブッシュが妥協して方針からはずれると、すぐに「裏切り者」「非国民」と左翼さながらの批判を振り回す。もっとも過激派は左翼も同じだ。左翼としては一番理想の大統領候補者ヒラリーでさえ、イラク戦争からアメリカ軍を即刻撤退させることは懸命でないと言っただけで、ムーブオンなどといった左翼市民団体から総すかんを食うくらいだから。
過激派というのは常にオールオアナッシングというゼロサムゲームを行う。自分らの要求が100%完璧に通らないなら何もない方がましという非現実的な考えなのだ。外交や国内政策はそんなやり方では通用しない。なにしろ相手があることなのだから。
私もブッシュ政権を批判する前に、どうすることが現実的により効果があるのか考えなおすべきなのかもしれない。とはいうもののブッシュのやり方は理解できるが、やはりファタハ援助には賛成しかねる。


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米・イスラエル、繰り返される愚かなパレスチナ対策

ガザにおけるハマスによるクーデターで、パレスチナ難民はガザのハマスと西岸のファタハ勢力と二分することとなった。米国およびイスラエルは、イスラエル撲滅を公言しているハマスに対して少なくとも表向きはイスラエルとの平和共存の交渉を唱えているファタハに肩入れして、ハマスを孤立させたい意向だ。(以下産經新聞の記事より

米、パレスチナ援助再開 ハマス封じ込め イスラエルと協議へ

 【ワシントン=山本秀也】ブッシュ米大統領は19日、ホワイトハウスでイスラエルのオルメルト首相と会談する。パレスチナ自治政府のアッバス議長が、イスラム原理主義組織ハマスを排除した非常事態内閣(ファイヤード首相)を発足させたことを受け、アッバス議長率いるファタハと新内閣への本格的な支援と、ガザ地区を事実上制圧したハマスをどう押さえ込んでいくのかが協議される。
 ブッシュ大統領は、会談に先立つ18日、アッバス議長との電話会談で、ハマス主導政権が発足した後、1年余り停止していたパレスチナ自治政府への直接援助を再開する方針を伝えた。記者会見したライス国務長官が明らかにした。
 米側の援助再開はルクセンブルクで行われた欧州連合(EU)外相理事会がアッバス議長への「全面支持」を表明し援助再開を固めたのに歩調を合わせた格好。ハマスを押さえ込みたい欧米諸国の決意を示したものだ。

しかし援助再開は西岸のファタハのみならず、ガザ地区でも再会されるという。ライス国務長官はハマスに対して「パレスチナの分断を狙っている」と強く非難する一方で、ガザに4000万ドルの援助金を拠出することを決めたという。パレスチナ人が貧困に陥ることでかえってハマスへの支持が高まるのではないかという懸念からくるものらしい。
はっきり言って私はこの援助再開は大間違いだと思う。ハマスが事実上パレスチナの統治権を獲得して以来、西側諸国はテロリスト政権は支持できないとして援助を中断していた。それがその当のハマスがファタハ勢力を武力で制してガザ完全制覇を達成したらそのご褒美に西側諸国は援助を再会? これでは話が逆ではないか!
また、ハマスに比べれば多少はましという理由だけでファタハに肩入れし過ぎるのもどうかと思う。ファタハはつまるところ故アラファト率いる悪名高いパレスチナ解放機構(PLO)の成れの果てだ。アラファト議長はパレスチナ独立にもイスラエルとの平和交渉にも口先だけ応じるような体を見せながら、実際には何の努力もせず、のらりくらりと西側の要求をかわして援助金だけはちゃっかりもらって私服を肥やし、ノーベル平和賞までもらっていた。(最近その勲章が盗まれたという話。罰があたったな。)
だが、アメリカもイスラエルもこのだらしないPLOに、その腐敗と不能によってハマスという過激派を生み出したこのどうしようもない機構に、再び期待して何億ドルという金を無駄に注ぎ込もうというのである。過去何十年にも渡る間違いから何も学んでいないのか? とデイリースタンダードで問いただすのはトム・ローズ。(A Bad Week for the Good Guys, Hamas, Fatah, and the new Palestinian reality. by Tom Rose, 06/22/2007)

PLOは1964年、イスラエルがガザと西岸を占領する三年前に設立された。この機構は22番目のアラブ国家を作るためではなく、イスラエル国家を破壊する目的で設立されたのである。ハマスがガザのPLOを覆したのはPLOの夢を変更させるためではなく、その夢を実現させるためだ。


(この援助は)外交上の不能ぶりを宣伝することになるのもさることながら、さらにより悪いことにこのぶざまな反応はそれが求めるのとは反対の結果を生むことになる。PLOへの強制援助はハマスを弱体化させるどころか、PLOの二重機構を再び明らかにしかえってハマスの勢力を助長することとなるだろう。PLOへの援助はパレスチナの穏健派勢力を強めるどころか、再び腐敗と不能に満ちた組織との関係が明らかとなり穏健派への不信につながるだけだ。
パレスチナ社会を生まれ変わらせるためにはその崩壊の責任者を救出するなどという方法では出来ない。テロリズムを作り出した組織に報酬をあたえることでどうやってテロリズムと戦うのだ?「ファタハ優先」派はすでに予算も武装も十分にあったファタハへさらに経済援助をすることで、ハマスの武装勢力を前にぶざまに尻尾をまいて逃げ出したファタハの「警備」戦闘員が、ワシントンから小切手を受け取ったからといって奪われた拠点をとりもどせると本気で考えているのか?彼等は20万人もの不能な役員(そのうちの6万はやくざやテロリストで、13にも渡る「警備隊」を含む)を再契約することがPLOの腐敗と戦うのに一番いい方法だとでも思うのか?

PLOへの援助がこれまでに試されたことがないというのであればまだ話もわかる、とローズは言う。しかし米国もイスラエルもこれまでにも一度ならず二度、三度とPLOを援助し、その度に散々な目にあってきているのである。

1970年に時の大統領ニクソンはヨルダンのフセイン王にヨルダン崩壊に失敗したPLOを非武装させるよう圧力をかけた。しかしPLOは反対にレバノンを崩壊した。1982年にアメリカは再びイスラエルによるレバノン侵略の折りPLOをレバノンから救い出した。三回目はもっとも打撃的な救援である1993年のオスロ平和合意。これはアメリカによるものではなくイスラエルによるものだった。

ローズはPLOはすでに終わっているという。パレスチナ人もアラブ人もPLOなど毛沢東にから中国を取りかえそうとしていた蒋介石くらい全く無能な勢力なのだということを知っている。なぜかアメリカとイスラエルだけが未だにそれに気が付いていないのだ。ファタハが勢力があるとされる西岸ですらPLOなどすでに幻想の存在だという。リーダーのアブ・マゼンなど西側の想像的存在にすぎない、とローズは断言する。西岸に存在する13の民兵隊もアブ・マゼンの統治下にはない。パレスチナにはマゼンに従うものなどいないのだ。そんな人間をファタハの代表者として持ち上げてみても成功などにはつながらない。
今、イスラエルにとって一番危険なのはガザだ、西岸ではない。ハマスはガザを拠点として今後イスラエルにたいしてさらに危険な攻撃をしかけてくるだろう。ハマスはイランから多額の資金援助を受けており、不能で腐敗しきったファタハと比べてやる気満々だしイスラエル妥当精神はもその組織力も抜群だ。またアルカエダのテロリストもガザにその魔の手をのばしている。アメリカやイスラエルが本気でテロと戦うつもりならば、ガザにこそ注意を払うべきなのである。
しかし、アメリカはなんとアメリカにもイスラエルにも危険なテロリスト政権の市民に資金援助をするという!そんなことでパレスチナ市民がアメリカに感謝などすると本気で思うのか?ハマスへの支持が減るとでも?
以前から私は何度となく繰り返してきたが、ガザ市民はハマスの統治によって苦しまねばならないのだ。そうなってこそ初めてパレスチナ人はハマスが市民の代表なのではなく、パレスチナの独立などにも興味がなく、自分達の勢力を強める以外なんの興味もない暴力団の集まりだということを悟るからだ。
ハマスへの支持を減らすためにガザ市民に資金援助など全く本末転倒である。
ことイスラエル・パレスチナ対策においては、アメリカの外交は常に間違いだらけである。


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