ガザにおけるハマスによるクーデターで、パレスチナ難民はガザのハマスと西岸のファタハ勢力と二分することとなった。米国およびイスラエルは、イスラエル撲滅を公言しているハマスに対して少なくとも表向きはイスラエルとの平和共存の交渉を唱えているファタハに肩入れして、ハマスを孤立させたい意向だ。(以下産經新聞の記事より

米、パレスチナ援助再開 ハマス封じ込め イスラエルと協議へ

 【ワシントン=山本秀也】ブッシュ米大統領は19日、ホワイトハウスでイスラエルのオルメルト首相と会談する。パレスチナ自治政府のアッバス議長が、イスラム原理主義組織ハマスを排除した非常事態内閣(ファイヤード首相)を発足させたことを受け、アッバス議長率いるファタハと新内閣への本格的な支援と、ガザ地区を事実上制圧したハマスをどう押さえ込んでいくのかが協議される。
 ブッシュ大統領は、会談に先立つ18日、アッバス議長との電話会談で、ハマス主導政権が発足した後、1年余り停止していたパレスチナ自治政府への直接援助を再開する方針を伝えた。記者会見したライス国務長官が明らかにした。
 米側の援助再開はルクセンブルクで行われた欧州連合(EU)外相理事会がアッバス議長への「全面支持」を表明し援助再開を固めたのに歩調を合わせた格好。ハマスを押さえ込みたい欧米諸国の決意を示したものだ。

しかし援助再開は西岸のファタハのみならず、ガザ地区でも再会されるという。ライス国務長官はハマスに対して「パレスチナの分断を狙っている」と強く非難する一方で、ガザに4000万ドルの援助金を拠出することを決めたという。パレスチナ人が貧困に陥ることでかえってハマスへの支持が高まるのではないかという懸念からくるものらしい。
はっきり言って私はこの援助再開は大間違いだと思う。ハマスが事実上パレスチナの統治権を獲得して以来、西側諸国はテロリスト政権は支持できないとして援助を中断していた。それがその当のハマスがファタハ勢力を武力で制してガザ完全制覇を達成したらそのご褒美に西側諸国は援助を再会? これでは話が逆ではないか!
また、ハマスに比べれば多少はましという理由だけでファタハに肩入れし過ぎるのもどうかと思う。ファタハはつまるところ故アラファト率いる悪名高いパレスチナ解放機構(PLO)の成れの果てだ。アラファト議長はパレスチナ独立にもイスラエルとの平和交渉にも口先だけ応じるような体を見せながら、実際には何の努力もせず、のらりくらりと西側の要求をかわして援助金だけはちゃっかりもらって私服を肥やし、ノーベル平和賞までもらっていた。(最近その勲章が盗まれたという話。罰があたったな。)
だが、アメリカもイスラエルもこのだらしないPLOに、その腐敗と不能によってハマスという過激派を生み出したこのどうしようもない機構に、再び期待して何億ドルという金を無駄に注ぎ込もうというのである。過去何十年にも渡る間違いから何も学んでいないのか? とデイリースタンダードで問いただすのはトム・ローズ。(A Bad Week for the Good Guys, Hamas, Fatah, and the new Palestinian reality. by Tom Rose, 06/22/2007)

PLOは1964年、イスラエルがガザと西岸を占領する三年前に設立された。この機構は22番目のアラブ国家を作るためではなく、イスラエル国家を破壊する目的で設立されたのである。ハマスがガザのPLOを覆したのはPLOの夢を変更させるためではなく、その夢を実現させるためだ。


(この援助は)外交上の不能ぶりを宣伝することになるのもさることながら、さらにより悪いことにこのぶざまな反応はそれが求めるのとは反対の結果を生むことになる。PLOへの強制援助はハマスを弱体化させるどころか、PLOの二重機構を再び明らかにしかえってハマスの勢力を助長することとなるだろう。PLOへの援助はパレスチナの穏健派勢力を強めるどころか、再び腐敗と不能に満ちた組織との関係が明らかとなり穏健派への不信につながるだけだ。
パレスチナ社会を生まれ変わらせるためにはその崩壊の責任者を救出するなどという方法では出来ない。テロリズムを作り出した組織に報酬をあたえることでどうやってテロリズムと戦うのだ?「ファタハ優先」派はすでに予算も武装も十分にあったファタハへさらに経済援助をすることで、ハマスの武装勢力を前にぶざまに尻尾をまいて逃げ出したファタハの「警備」戦闘員が、ワシントンから小切手を受け取ったからといって奪われた拠点をとりもどせると本気で考えているのか?彼等は20万人もの不能な役員(そのうちの6万はやくざやテロリストで、13にも渡る「警備隊」を含む)を再契約することがPLOの腐敗と戦うのに一番いい方法だとでも思うのか?

PLOへの援助がこれまでに試されたことがないというのであればまだ話もわかる、とローズは言う。しかし米国もイスラエルもこれまでにも一度ならず二度、三度とPLOを援助し、その度に散々な目にあってきているのである。

1970年に時の大統領ニクソンはヨルダンのフセイン王にヨルダン崩壊に失敗したPLOを非武装させるよう圧力をかけた。しかしPLOは反対にレバノンを崩壊した。1982年にアメリカは再びイスラエルによるレバノン侵略の折りPLOをレバノンから救い出した。三回目はもっとも打撃的な救援である1993年のオスロ平和合意。これはアメリカによるものではなくイスラエルによるものだった。

ローズはPLOはすでに終わっているという。パレスチナ人もアラブ人もPLOなど毛沢東にから中国を取りかえそうとしていた蒋介石くらい全く無能な勢力なのだということを知っている。なぜかアメリカとイスラエルだけが未だにそれに気が付いていないのだ。ファタハが勢力があるとされる西岸ですらPLOなどすでに幻想の存在だという。リーダーのアブ・マゼンなど西側の想像的存在にすぎない、とローズは断言する。西岸に存在する13の民兵隊もアブ・マゼンの統治下にはない。パレスチナにはマゼンに従うものなどいないのだ。そんな人間をファタハの代表者として持ち上げてみても成功などにはつながらない。
今、イスラエルにとって一番危険なのはガザだ、西岸ではない。ハマスはガザを拠点として今後イスラエルにたいしてさらに危険な攻撃をしかけてくるだろう。ハマスはイランから多額の資金援助を受けており、不能で腐敗しきったファタハと比べてやる気満々だしイスラエル妥当精神はもその組織力も抜群だ。またアルカエダのテロリストもガザにその魔の手をのばしている。アメリカやイスラエルが本気でテロと戦うつもりならば、ガザにこそ注意を払うべきなのである。
しかし、アメリカはなんとアメリカにもイスラエルにも危険なテロリスト政権の市民に資金援助をするという!そんなことでパレスチナ市民がアメリカに感謝などすると本気で思うのか?ハマスへの支持が減るとでも?
以前から私は何度となく繰り返してきたが、ガザ市民はハマスの統治によって苦しまねばならないのだ。そうなってこそ初めてパレスチナ人はハマスが市民の代表なのではなく、パレスチナの独立などにも興味がなく、自分達の勢力を強める以外なんの興味もない暴力団の集まりだということを悟るからだ。
ハマスへの支持を減らすためにガザ市民に資金援助など全く本末転倒である。
ことイスラエル・パレスチナ対策においては、アメリカの外交は常に間違いだらけである。


1 response to 米・イスラエル、繰り返される愚かなパレスチナ対策

In the Strawberry Field17 years ago

カカシのブッシュ批判にミスター苺異議あり!

先日カカシはブッシュ政権がイスラエル西岸のパレスチナ人ファタハを支援することは愚かであると批判したが、そのことについてミスター苺から異議申し立てがあった。 厳密に言うとミスター苺はカカシの書いたことに直接反論しているのではなく、カカシと同じような意見をもっている別のブロガージョシュア(Joshuapundit)に反論しているのだが。 何か月という時間と何百万ドルという大金をかけてハマスを追い出そうとマクムッド・アバス率いるお気に入りテロリストファタハを武装し訓練してきたブッシュ政権だが、結局株でいう…

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