イラクに伸びるイランの魔の手

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私がしょっちゅうサドルがイランの飼い豚だという話をしているので、ブログ仲間のアセアンさんからそんな証拠はあるのか、あるとしたら、サドルのマフディ軍はレバノンのヒズボラのような存在だとカカシが考えているのかどうか、というご質問を頂いた。私はサドルがヒズボラのような立場を望んでいるとは考えていない。奴はイランを利用できるだけ利用してイラクの混乱に乗じて自分の勢力を広げようという魂胆だろう。イランはイランで利用できる人間はシーアのサドルであろうと、スンニのアルカエダであろうと利用してやろうという魂胆だと思う。
イラクへの増派が始まるまでもなく、イラクではイラク・アメリカ連合軍による戦闘が勢いを増している。最近起きている激しい戦闘にはスンニ派にもシーア派にもイランの指紋がべったりとついているのだ。
イラクで起きる数々の暴力沙汰にイランの魔の手が関与していることは、もうかなり前から疑われていた。しかし、去年の秋頃までは無駄にイランを刺激しないことで、イランからの協力を得られるかもしれないというかすかな希望にでもすがっていたのか、アメリカ軍はイランの影響力を公の場では過小評価してきた。しかしこの方法は全くイランの強行な姿勢を変えていないどころか、イランの核開発はどんどん進んでいる。そこでどうやらやっとアメリカはイランの関与について暴露する方針に変えたようだ。
さて28日にナジャフで起きた戦闘についてちょっと考えてみよう。

ナジャフで戦闘、武装勢力の死者300人と イラク
イラク・ナジャフ(2007.01.29- CNN/AP/REUTERS)─イラク中部のイスラム教シーア派聖地ナジャフで28日、イラク治安部隊と同国駐留米軍が600人近い武装勢力と交戦し、武装勢力側の推定250─300人が死亡した。内務省関係者が明らかにした。地元警察幹部によると、戦闘は29日朝まで続いたが、その後ほぼ沈静化した。…
地元警察幹部が国営テレビ局アルイラキアに語ったところによると、イラク治安部隊は、ナジャフの北方約10キロのザルカ付近に武装勢力が集結しているとの情報を得て出動した。その後、兵士や地元警官ら6人の死者が出たためいったん撤退し、米軍の援護を求めたという。
ザルカでは戦闘中に米軍のヘリコプターが墜落し、米兵2人が死亡した。米軍は墜落原因を調査中としているが、イラク当局者は武装勢力のミサイルに撃墜されたとの見解を示した。
武装勢力は、イスラム暦新年に行われるシーア派の宗教行事「アシュラ」に合わせ、ナジャフへ向かう巡礼者らに紛れて南進したとみられる。

この記事には書かれていないが、英語版のAPの記事によれば、さらにスダン人を含む外国人戦闘員など100人が拘束されたとある。
また、28日の段階では反乱軍がスンニなのかシーアなのかはっきりしていなかった。それもそのなず、「天国の兵士」と名乗るこの軍団はこれまで全く知られていなかったカルト集団で、アルカエダが主体とはいえ、シーアの民兵もかなり含まれいたらしい。しかも彼等の武器整備はすごいもので、少なくとも二機の対航空機スティンガー形ミサイルを使用し、重量型マシンガンも使われたという。
本日の ニューヨークタイムス にもっと詳しい情報が載っている。NTTimesによれば、敵側の戦死者は470人は下らないという。しかも味方イラク軍の戦死者はたったの25人。これは圧倒的なイラク・アメリカ連合軍の勝利である。
しかし、そこは反米NYTimesの記事。味方の大勝利を素直には喜べない。なんとか悲観的な見方をしようと必死だ。そこでNYTimesはイラク軍の戦いかたに「困惑する疑問」が湧くとしている。

イラク軍は整地ナジャフ付近でこの週末に起きたよく知られていない与太者民兵軍と激しい戦いに驚かされもう少しで圧倒されそうになった。イラク軍は当初発表されたような単なる後方援護よりももっと大規模な援護を必要としたと米軍とイラク軍の要員は月曜日語った。

関係者の話によるとイラク軍は自らを「天国の戦士」と名乗る何百人もの戦闘員の強さを危険なほど過小評価しすぎ、アメリカ軍は空からだけでなく、地上隊も出動してイラク軍を援助するに至った。…
イラク軍とアメリカ軍は最後には戦闘になんとか勝った。しかしイラク軍の反乱軍の強さとその意図に関する誤算にはイラク軍の脅威を把握し処置する能力に関して 困惑する疑問が湧いた。

まったくこれだけの圧倒的な勝ち戦でここまでこき下ろされるんじゃ、負け戦だったら何と言われることだろう。現実にはイラク軍は反乱軍の規模の大きさに気が付かなかった。それというのも、反乱軍はアシュラの参詣者に紛れ込んでナジャフに数日前から潜入していたからだ。だが、ここで注目されるべきは圧倒的多数の敵に面してイラク軍は怯まず、2004年の最初のファルージャ戦闘の時のように制服を脱ぎ捨て退散するようなことはしなかった。それどころか、周りを敵に取り囲まれながら堤防を築き、空と陸からの援軍が来るまで味方を大量に失わずに勇敢に戦ったのである。本来ならばそのことが讃えられるべきなのだ。
ま、それはともかく、この綿密に計画を立てられた用意周到な戦闘は、最近カバーラで起きたもうひとつの事件 を思い出させる。
去る1月20日(2007)地元のイラク人と会議中のアメリカ兵が攻撃に合い、1名がその場で死亡、4名が手錠をかけられ拉致された上、数十キロ先で銃殺されるという事件があった。警備にあたっていたイラク軍の話では12人の何者かがアメリカ兵の制服を着用し、アメリカ軍が常用する乗り物に乗り、アメリカ軍の持つ兵器を所持して関門を通り抜けたという。しかも「兵士」の一人は英語を話し、一人は金髪だったという証言さえある。
この非常に巧妙な手段はアルカエダの乱暴な自動車テロなどとは全く異質のものであるし、シーア派の民兵などによる能のない撃ち合いなどよりずっと高度な作戦がとられていた。これはただのテロリストやギャングの仕業ではなく相当な訓練を受けたイランでも特に凶暴な特別部隊、クウォード隊(Qods)の仕業ではないかという見方が強まっている。
事実イランはイラク国内でずっと以前から秘密工作をおこなっていた。イランはなんとスンニとシーアの双方に武器調達、戦闘訓練などを提供してきていたのだ。最近アメリカ軍によるイラン勢力アジトへの攻撃の際、アメリカ軍は ある書類を発見した。 それはなんとイラン軍によるイラク紛争促進の青写真だったのである。

アメリカ諜報部員によると、新しく発見されたこの書類の信憑性は諜報専門家の間で調査済みだという。 これによって「イランはシーア民兵軍とスンニ聖戦軍の両方と密接に活動している」ことがはっきりした。…

同じ書類を調査した別のアメリカ要員は、この書類は「煙の出ている銃」だとし、「攻撃計画、スンニ関係者の電話番号などあらゆること記されており、今まで何をやっているのか、空白だった部分が相当埋められました。」と語った。

どうやらイランにも独自の「イラク調査委員会」があったようで、彼等の「推薦」はイラクに内戦をおこさせることだったようだ。皮肉なことに月曜日, イランはイラク「援助」の計画を発表した。 :

ハサン・カゼミ・クミ( Hassan Kazemi Qumi)大使は「治安維持の戦い」のため イランはイラク政府軍を訓練し、武器援助やアドバイザーを送る用意がある。と発表した。また経済面でもイランは4年前にフセインを倒してい後アメリカが失敗している部分において、イラク復興のため主な責務を果たす用意があると語った。

「我々は戦後の復興には経験があります。」とクミ大使。1980年代におきたイラン・イラク戦争をさして語った。「この経験を生かしてイラクの復興に役立てたいと思います。」
またクミ大使は、先月アメリカ軍が一時的に拘束し解放したイラン人が、アメリカが主張していたように軍事要員であったことを初めて認めた。しかし彼等はイラクでイラク政府と話あうために正当な活動をしていたのであり、拘束されるべきではなかったと語った。

イランは親切にもアメリカが足りないところを補ってイラクの復興に手を貸してくれるというのである。なんとありがたいことではないか? 無論、奴らの企みはかなり明白である。最近アメリカが公にイランのイラクへの関与を暴露し批判しはじめたため、イランも圧力を感じているのだ。イランはアメリカが一旦責めはじめたら、ヨーロッパやイスラエルのようには簡単に引かないことを承知している。だからアメリカからの攻撃から一時的に話をそらすために白々しい言い訳をしているのである。
しかしこのイランの態度を見る限り、イラクがアメリカと誠実な交渉などする気がないことは明白だ。ベーカー・ハミルトンが代表したイラク調査委員会の推薦がどれほど馬鹿げたものだったのかこれではっきりした。


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韓流から寒流へ?

さっき、坂さんのエントリー、韓流など初めからなかったを読んでいて、ふーむと考えさせられてしまった。
今年になって日本への韓国映画の輸入はなんと前年よりも82%も激減したという。この変化はいくら飽きやすい日本とは言えひどい減り方だ。しかし、ここで私には非常に不思議に思うことがある。
日本には昔から外国映画やテレビ番組がいくらも輸入されていた。映画ではアメリカが主流とはいえ、フランスやイタリアの映画も結構人気がある。テレビは圧倒的にアメリカ製品が主流だが、それでもその歴史はもう何十年にもさかのぼり、韓国の番組の人気があがってもアメリカ番組の人気はそれほど下がっていない。
どうしてアメリカのテレビ番組や映画は何十年も人気が継続しているのに、韓国ブームはほんの数年で終わってしまうのだろうか? これは坂さんのいうここにあるような気がする。

韓国には自国民を満足させるだけの文化がないということである。…実際、強く規制しているにもかかわらず、海賊版のCDやDVDで日本のポップスやシネマが出回っており、若者たちは原宿のファッションに敏感に反応する。

また、大衆文化とは言えないが、小説では村上春樹、江國香織、吉本ばなななどがベストセラーを連発し、韓国人作家を圧倒している。これは、韓国人が日本文化に強い憧憬を抱いているということであり、それだけ韓国の現代文化の底が浅いということの証明でもある。

実は日本で韓流などという言葉が流行る十何年も前のことになるが、私はテレビで韓国の娯楽番組を結構観ていた。そこで気が付いたことは、韓国の演歌が日本の演歌そっくりであるだけでなく、ポップス歌手の格好、歌い方、振り付けなどが日本のをそっくりそのまま真似したものだったことである。当時韓国では日本語では歌を歌ってはいけないことになっていたが、人気のある日本の歌が韓国語の歌詞で歌われるなどは普通だった。
韓国人の同僚から韓国では芸能人が日本へ行って成功したら、日本の野球選手が大リーグで成功するのと同じくらいハクがついたとはなしてくれたものだ。当時、私が韓国の人たちと話をしていて感じたのは、韓国人の持つ日本への限りない羨望と憧れである。当時は今のような反日感情を私は韓国人から感じたことがなかった。
個人的な経験だが、私は1980年代後半にアメリカのとある町の銀行で働いていた。そこは昔は白人ばかりの非常に保守的な町で、少数民族といえば戦前に移民してきたごく少数の日系人経営の苺畑がある程度だった。しかし私がつとめはじめてすぐ、ほん1〜2年の間に突然韓国からの移民がどっと増え、町はあっという間に韓国化してしまった。私が勤めていた店には東洋人は日本語のできない日系人のおばちゃんと私だけだった。そこへ英語のはなせない多くの韓国人のお客さんが来るようになると、同僚もお客さんたちも私をたよりにするようになった。私がいくら韓国語と日本語は違うのだといっても駄目。なにしろ話は通じないと私が主張しているそばから、年配の韓国人が日本語で話しかけてきたりしたので余計に話がこんがらがってしまった。
日本語のできる韓国人ということは旧日本帝国の統治下にいた人たちのはずだ。だが私はその人たちから敵意の目で見られたことはないし、かえって日本軍のおかげで教育が受けられたと感謝しているとさえ言われた。私が日本人と知っての議事麗句にしてもそこまで言う必要はないはず。ある中年の女性は協会のピクニックに招いてくれたし、あるおばあさんは私に手作りのお蕎麦をもってきてくれたりした。一度近所で韓国の秋祭りが催され、宣伝になるからとうちの銀行も屋台をだしたことがあった。その時韓国語放送のラジオのDJが私に話しかけてきて、私が韓国語が分からないという顔をすると、歌は歌えるかというきくのでアリランを日本語で歌ったら、周りにいた韓国人と大合唱になってしまったことがある。
あれだけの韓国人に囲まれていても明らかに日本人に見える私に敵意を見せた人は一人もいなかった。もし歴史的な問題が原因で韓国人の反日感情が生まれたというのであれば、20年前のほうがひどかったはずであるが、実際はその逆だ。
私は韓流ブームのきっかけになった「冬のソナタ」も見てないので、これは母や叔母から聞いた話からの判断なのだが、日本の中高年の女性に人気があったのは韓国の純愛ドラマのせいではないのだろうか。日本のドラマにしてもアメリカのものにしてもそうだが、最近の恋愛ドラマは視聴者の対象が若すぎる。主人公が若くて美しいのは当たり前だが、ロマンスよりもセックスが先行し、愛し合えども結ばれぬ定め、、なんていう演歌風ドラマからはほど遠い。韓国ドラマには日本のドラマが失ったロマンスが残っていた。だから韓国番組のファンには私の母親世代の中高齢女性が多かったのではないかと思う。
しかし、韓国映画やテレビドラマが人気が出るにつれ、韓国映画もハリウッド病にかかってきたように思える。セックスや暴力なら予算の多いアメリカ映画を見ればいいのであって、わざわざ韓国映画を見る必要はない。韓流ブームがただのブームではなく、欧米映画のような伝統となるためにはやはり韓国ならではの個性のある純愛ものを続けて作っていく必要があるのではないだろうか。
それに、あの気違い大統領の反日発言もどうにかしてほしい。韓国人の日本に対する反感は本物ではない。韓国がやたらに国粋主義に走るのも、独自の大衆文化がなく、アメリカや日本の真似しかできないことへの憤りではないだろうか。
しかし日本もアメリカに追い付け追い越せから卒業して、日本のゲームショーがアメリカで真似されるようになるくらいだから、韓国も自信をもって欲しい。お隣同士、また仲良くしたいものだ。


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サドルの計算違い

イランの飼い豚サドルがアメリカとの衝突は避けマリキ政府と協力すると発表した。LATimesはサドルの動きにアメリカは驚いたとしているが、私は予想どおりの結果だと思う。先日私がラストチャンスという神話で、モハメッド君の話を紹介したのを思い出してもらいたい。

バグダッドに話を戻そう。サドルのマフディ軍は正面きってのアメリカ軍との戦闘は避けるつもりのようだ。マフディの司令官らはマフディ戦闘員に黒い制服を脱いで一般市民の間に紛れ込み、しばらくほとぼりが冷めるまで大人しくしているようにと命令したらしい。そしてアメリカ軍の捜査活動には全面的に協力し逮捕されても一切反撃してはいけないと厳重に注意したという。すでに高位の司令官らはイランに逃れたり、近隣都市に分散したりしてしまったようで、サドル派の本拠地であるサドルシティに残っているのはただのちんぴらだけという可能性もある。

すでに、サドル派はアメリカ軍への表立った抵抗は止めている。これまでアメリカ軍を「占領軍」と呼んでいた彼等もアメリカ政府と協力する姿勢をみせている。では本日のLATimesでは何が新しいニュースだと報じているのか、本筋はこれだ。

木曜日、バグダッドの本拠地にあるサドル運動のひとつのリーダーが、公にブッシュの新しい警備作戦を承認すると発表した。すくなくとも数人のアメリカ要員は作戦をサドルと戦うのに使うと公言していた。

「我々はこの作戦がうまくいくように出来る限りの協力をします。」サドル市近隣のシーア派系地区のリーダー、アブドゥール・フセイン・カーバイ(Abdul-Hussein Kaabai)氏は「イラク政府によって行われる計画なら自分達は協力する。」と語った。

どうやらサドル派は必死でアメリカ軍に自分らに抵抗の意志はないと訴えているように見える。だが、サドルが本気で政府に協力して暴力をあきらめるなどと考える人はいないだろう。サドルはアメリカ国内で何が起きているか十分に知っているのだ。ブッシュ大統領が新作戦を実施できる時間はブッシュが議会に新しく戦争予算の提案をするまでの数カ月であることをサドルはわきまえている。彼の計算ではその間おとなしくしていれば、アメリカ議会が予算を切り、ブッシュはイラク撤退を余儀なくされると踏んでいるのである。そうなったらまた兵を挙げればいい。増強された軍隊と真正面に戦ってやたらに人数を失う必要はないという考えだろう。サドル派はアルカエダと違って自殺願望ではないらしい。だが、この作戦にはいくつかの大きな問題がある。
まず第一に、意図的にしろ無理矢理にしろ一旦敵に占拠された領土を取り戻すとなると、もともとの領土を守るようなわけにはいかない。特に今回はアメリカ軍は完全に治安維持が保てるまで占拠した領土を数カ月はアメリカ軍で押さえ、その後にイラク軍に治安維持を受け渡すという作戦をとっている。バグダッド付近の警備に増派されるのは2万人のアメリカ兵だけではない。数万というイラク兵のことも忘れてはならない。
反戦派が何と言おうとアメリカ軍は野蛮人ではないので、占拠した市街地の市民を厳しく取り締まりはしても、理不尽な扱いはしない。地元民から金品を巻き上げるようなこともしなければ、婦女子を冒涜するようなこともない。それどころかアメリカ軍は一旦占拠した土地に学校をたてたり病院をたてたりするだろうし、地元のリーダーたちと協力して自治が可能な体制をつくるだろう。LATimesによれば、サドル派が占拠していた界隈でも民兵らの横暴な態度に市民からの不満が高まっていたという。サドル派民兵が留守の間に地元民による平和な自治が設立しイラク軍による警備が行われるようになっていたら、ただの愚連隊の民兵どもがそう易々とは戻って来れまい。
また、いくらこれがサドル派の生き延びる作戦とはいえ、それを教養のないシーア派民兵連中に理解することができるだろうか?これまで「占領軍」と言っていたアメリカ軍に媚びを売り、警備に全面協力しろなどという呼びかけは、単にサドルが自分の皮だけを救おうとしている臆病な手段なのではないだろうか、逮捕されたシーア派民兵が後で釈放されるという保証はあるのだろうか、サドルはおれたちを犠牲にして自分だけ助かろうとしているのではないだろうか、などという疑いがサドル派の民兵連中の間で生まれる可能性は大きい。民兵たちは正規軍ではない、ただのギャングである。何か月もサドルのいうことをきいて大人しくしているとは思えない。
自分勝手に暴れた民兵たちが大量にアメリカ軍やイラク軍に殺されるのは目に見えている。
そして、一般のイラク人たちはどう思うだろう? サドルが後に勢力を復活させるための「負けるが勝ち」という賢い手段だと解釈して感心するだろうか? バグダッドの地区が次々にアメリカ軍によって占領され治安が何か月も保たれたならば、はたしてイラク人はサドルの作戦を巧妙だと考え続けるだろうか?
最後にここが一番の問題だが、アルカエダの勢力は昔に比べたら大幅に衰えている。シーア派民兵が抵抗しなければバグダッドの治安はあっという間に安定する。つまり、サドルの思惑はどうでも傍目にはブッシュの新作戦が大成功をしたように見えるのである。アメリカ議会が新作戦に反対しているのはこの作戦が失敗すると思っているからで、失敗した作戦に加担したと投票者に思われるのを恐れた臆病者議員たちが騒いでいるに過ぎない。だが、新作戦が大成功となったなら、奴らは手のひらを返したようにブッシュにこびへつらうだろう。そして勝ってる戦争なら予算を削ったりなど出来なくなる。そんなことをすればそれこそアメリカ市民の怒りを買うからだ。
結果アメリカ軍は早期撤退どころか、イラクが完全に自治ができるまで長々と居座ることになるだろう。その間にアメリカ軍はなんとかサドルを殺す口実を作る必要がある。だが、サドルは所詮犯罪者だ。いずれ間違いを犯す。その時こそサドルを退治するチャンスである。
サドルの作戦は裏目にでるかもしれない。


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私が決断者だ!議会ではない、ブッシュ大統領が断言

今朝のニュースでは二つほどブッシュ大統領の決断に関する記事があった。先ずはブッシュ大統領がイラクへの増派について、決断をする権限があるのは大統領である自分だと断言したという記事。
ブッシュ大統領は新作戦に反対する決議案が民主共和の両党から提案されていることに関して、「私は一番成功する可能性のある計画を選んだ」「作戦がうまくいく暇も与えずに批判しているひとがいる」などと強い口調で反撃。そこまでいうなら自分達で成功する方法を提案してみろ、とまで言っている。
リベラル連中はすでにこのブッシュのきっぱりとした口調をあざ笑っているが、普通のアメリカ人はこういう強気の大統領を頼もしいと思うのではないかという気がする。大統領は国のリーダーであり、軍隊の総指揮官である。そのリーダーが権限もない議会の決議案で右往左往しているようでは戦争に勝てるはずがない。こうしてきっぱりと議会に挑戦状を叩き付けるとは、さすがジョージ・W・ブッシュ。
ホワイトハウスの芝生で記者からイラクにいるイラン戦闘員に対する扱いが厳しくなっているが、それがかえって暴力を激化させているのではないかという質問に対してブッシュは自分の方針を弁護しながらも、イランに戦争が拡大するという可能性については「そのような考えは正しくない」と答えた。「我々の方針は我が軍を守ることにある。理屈にあっている。」と付け加えた。
さて、そのイラクのイラン戦闘員の話だが、それが二つ目の記事だ。

イラクのイラン人工作員の「殺害承認」

ワシントン(2007.01.26、 CNN/REUTERS)米紙ワシントン・ポストは26日、ブッシュ大統領がイラク駐留米軍に対し、同国内で活動するイラン人工作員を殺害もしくは捕そくする権限を昨年秋に与えていたと報じた。この権限付与を直接知り得る立場にある政府やテロ対策当局者の情報として伝えた。…
同紙は、イラン人工作員の殺害承認について、一般人や外交官が対象ではなく、イラクの武装組織と関係するイラン革命防衛隊や情報機関の要員が主な狙いとも報じた。米軍は殺害承認を受け、特殊部隊を投入してはいないが、米政権高官は同部隊を使うよう促しているという。
イラクでは先月、米軍の3度にわたる捜索で複数のイラン政府関係者が拘束されている。カリルザード駐イラク大使は24日、拘束の容疑については近く発表するとの方針を示していた。ただ、米軍の捜索は、イラクへのイランの関与を示す治安要員のネットワーク追及の目的があったとしている。

イラク国内で戦闘員の訓練や武器、資金の援助などの工作をしているイラン人やシリア人は容赦しないというのもブッシュの新作戦の一部である。だからアメリカメディアが今さら驚くほどのことはないはずだ。
ブッシュ大統領は国境を越えてイランまで戦闘を拡大するつもりはないと言っているが、私はそれはちょっと疑わしいと思う。ブッシュのイラン工作員に対する新しい方針はイランへの牽制であると考えることも出来るが、イランのイラクでの介入があまりにもあからさまになった場合、ブッシュはその行為をそのままイラク内での工作員退治だけに留めておくだろうか?
もっともイランにそのような猜疑心を持たせておくのも悪くない。イランがアメリカ攻撃を真剣に心配するようになれば、核兵器開発への野心も鈍る可能性があるからだ。


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レバノンでヒズボラが大暴れ

レバノンの話を前々から、しよう、しようと思ってるうちにレバノンの状況は突然悪化してしまった。まずはこのニュースから。

ベイルート(CNN, 2007.01.26 ) レバノンの首都ベイルートにあるベイルート・アラブ大学で25日、イスラム教シーア派組織ヒズボラなど親シリア勢力と、シニョーラ政権を支持する反シリア勢力が衝突し、同国治安筋によると少なくとも3人が死亡した。事態を受け、政府は同市内に夜間外出禁止令を出した。

大学構内では学生らが互いのグループに投石し、車に放火するなどの行為を繰り返した。国軍兵士らが出動し、現場周辺の道路を閉鎖して沈静化に当たったが、衝突は同日夜まで続いた。負傷者は150人以上に上っているという。…
レバノンでは、シニョーラ首相の退陣を求めるヒズボラと、これをはねつける首相支持派との対立が続いている。23日にはヒズボラ側が政権打倒を目指すゼネストを実施し、死傷者が出たばかり。

実はこの紛争が起きる数日前に私はレバノンで7月の戦争の傷跡を取材してかえってきたばかりのマイケル・トットンのブログ(Michael Totten,’s Middle East Journal)を紹介しようと思っていた。彼は12月にレバノンを訪れ、レバノン各地を回って取材をして帰ってきたばかりだった。
マイケルは帰国直後ロサンゼルスの人気DJ、ヒュー・ヒューイットとのインタビューでこんなやり取りをした。

HH: オーケー、君が見てきたことから…レバノンでは何がおきているの?
MT: もうなんていうか、、本当に、ヒュー、この時点では何が起きてもおかしくないっすよ。一月前よりは内乱の危険は低まったと思いますけどね。
HH: なぜ?
MT: なぜかというと、抗議とか座り込みがはじまって二日たって、この時点で内乱の可能性はどのくらいあるかと聞かれたら、僕は60%くらいだろうと答えたと思います。その理由はヒズボラが総理の事務所を占拠しようとしたからです。
HH: なるほど。
MT: デモ行進のあった日に実際に奪い取ろうとしたんです。でも結局彼等はあきらめました。首相が…もし自分の事務所を占拠したら市街地をコントロールできなくなる、ということはレバノンのスンニ派が町にくり出し首相の事務所を無理矢理奪い返そうとするだろう。そしてそうなれば戦争だ、と言ったからです。そうなれば大変です。ヒズボラの力には限界がありますから。前にも説明しましたけど、レバノンではどのグループも少数派なんです。そしてどのグループも他のグループを支配することなどできないのです。 首相の事務所はスンニのものです。それをもしシーアが暴力で占拠したならそれこそ大変です。レバノンでは確実に戦闘がひどくなります。だからナスララはあきらめたんです。そうなったら行き過ぎだって気が付いたからです。でもそういいながら彼はことをエスカレートさせると脅していました。首相の事務所は占拠できないかもしれないが、空港をとって国全体を閉鎖してやるとね。それを一週間は言ってましたね。それで僕は、もし奴らが空港をまた占拠したら市街に大量の血が流れることになるだろうと思いました。 …
MT: そしてついにナシュララはエスカレートさせたわけですが、やったのはゼネストだけでした。なぜなら彼は国をぎりぎりの線まで追いつめたと知ってるからです。それ以上やったら本当に戦争になってしまいますから。

しかし一日のはずのゼネストは三日間の暴動に激化してしまった。それでもナスララはまだことを激化してやると息巻いている。だがヒズボラはこの戦いを長引かせることはできない。スンニの反撃にたえられるほどヒズボラに勢力はないからだ。ヒズボラの武装解除をしようという政府の動きには抵抗できても面と向かった戦争ではヒズボラは負ける。ナスララがそれを理解していないはずはない。だから彼が口でなんといってもこれ以上のエスカレートを彼が望んでいるとは思えない。
しかし我々に分からないのは、ナスララにどれだけヒズボラをコントロールする力があるのかということだ。こういうゲームはひとつ間違うと手がつけられなくなる。そうなったらレバノンは本格的な内乱に突入するだろう。無論そうなって喜ぶのはシリアである。
現在のシリアのアサード国王は先代がやったようにレバノンで内乱をおこさせ、自分達が漁父の利を得ようという魂胆なのである。ハサン・ナスララはレバノンでの最大勢力を得たいという野心はあるが確実に負ける戦争をしたいとは望んでいない。だが、イスラエルへの攻撃のために悪魔のシリアと手を組んだ以上、そろそろシリアから魂の要求がくる頃かもしれない。彼の思いどおりに何もかもが進むかどうかかなり疑わしいというものだ。
と書いて終わりにしようかと思っていたら、レバノン人のブログLebanese Political Journalがナスララは手下のヒズボラのコントロールを完全に失ってしまったと書いている。しかも親分のシリアはシリアでも凶暴な攻撃犬、パレスチナギャングをレバノンに放そうとしているというのである。
さてさてこれでレバノンが内乱になりシリアからも攻撃されるはめになったら、これはすべてナスララの責任だ。悪魔に魂を売った以上この運命は仕方ないというべきだろう。それにしてもはた迷惑なのはレバノン人達である。もっともイスラエルに攻められた時、イスラエルに反撃しているというだけでナスララを支持した連中にも責任は多いにあるが。


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ブッシュ大統領一般教書演説は好評

先日火曜日のブッシュ大統領一般教書演説は、民主党が期待していたような「イラクは負けてる撤退しよう」といった弱気な演説ではなく、ここで負けてたまるか、がんばろうという感じの演説だった。

ブッシュ米大統領が23日行った一般教書演説は、対テロ戦争やイラク問題での成果を声高に叫んだ昨年までと打って変わり、順調な経済運営や福祉政策の充実を冒頭で訴える内政重視の内容となった。政権への逆風が続くなか、残り2年の任期で多くの成果は期待しにくい事情を映した格好だ。対テロ戦については「武力衝突を超えたイデオロギー闘争」であり長期戦であるとして、イラク増派など、これまでの指針をあくまで貫く考えを表明した。…

対テロ戦に関しては、(1)米中枢同時テロなど米側の被害を繰り返し指摘(2)テロ抑止の実績を強調(3)対テロ戦にここで失敗すれば、より大きな被害を受けると警告(4)戦いの本質はイスラム教原理主義の独裁思想とのイデオロギー闘争であり、世代を超えた長期戦を予告−という構成。イラク政府がその責務を果たすためにも2万人以上の兵力増派を含むイラク新政策の実行が必要だと訴えた。論法は変わっても任期中はあくまで、この政策を貫く考えが読み取れる

産経の記事はかなり悲観的ではあるが、生で見ていた私には決して大統領が悲観的であるようには見えなかった。かえって元気がでる内容だったと思う。国民の感想も結構好評なようだ。演説直後に行われたCNNの世論調査によると、

演説を見た370人の大人のうち41%が「とても好意的」な反応を得たと答えた。 また37%が「どちらかといえば好意的」と答えた。2006年の時は「とても好意的」が48%、2005年では60%だった…
昨晩演説をみた67%の人々がブッシュの政策が国を正しい方向に進ませていると答えた、ブッシュ政権中で最低の数値となった。2006年では68%、2005年では77%だった。
また53%がこの演説によってブッシュと議会をコントロールする民主党とがもっと協力するようになると答えた。43%が演説によって双方がよけいに反対しあうだろうと答えた。
演説を見た51%がとても、もしくはどちらかといえばイラクにおいてアメリカが目的を達成できる自信があると答えた。ブッシュ大統領の2004年の演説の後ではこの数字は71%だった。

まったくCNNはこれまでの年と比べて、イラク戦争への支持が減っていると強調したいようだ。しかし、反戦メディアが日がな夜がな「泥沼、ベトナム、撤退、内乱」と騒いで、これだけイラクは失敗だとあらゆる場所で繰り返されているにも関わらず、まだ過半数のアメリカ人がイラクでは勝てると自信をもっているというのはこれだけでもすごい思う。
しかし比べるべきなのはこれまでの演説の結果ではなく、ブッシュの演説前と演説後の人々の気持ちの差である。演説前の世論調査ではブッシュの新作戦が成功すると考えていた人の数は25〜29%だった。ところが演説の後になるとその数は51%にあがったのである。ということはブッシュの演説は多くのアメリカ人にあらたな自信を与えたことになるのだ。演説とはこうあるべきだ。
普通のアメリカ人はテレビの前に一時間も座って大統領の演説など聞かないと思う。だから多くの人たちはまだ大統領の新作戦が具体的にどういうものなのかわかっていないだろう。ブッシュの演説が演説をきいた人たちの間でこれだけ良い影響があったのであれば、ブッシュ大統領を初め報道官のトニー・スノーや、副大統領、国務長官、防衛長官などがテレビのトークショーなどに出演してどんどん説明にあたれば、もっと多くのアメリカ人が新しい作戦を支持するようになるはずだ。
アメリカは今よりもっとひどい状態になったことが何度もある。古くは南北戦争、第二次世界大戦、朝鮮戦争などでも、イラクなど比べものにならないほど大量に兵士を失い勝てる見込みが薄い時があった。しかしアメリカはそれらを乗り越えて勝利を得てきた。ブッシュ大統領はアメリカ市民に辛抱を求めた。この新しい作戦がうまくいく時間を求めた。過去にもっとひどい苦境を乗り越えてきたアメリカ人にならそれができる、この演説は改めアメリカ人にそう思わせる演説だったと思う。
イラク戦争は何もかも思いどおりにいっているかといえば、無論そうではない。だが戦争というものは得てしてそういうものだ。どんなに綿密に作戦をたてても、100%計画どおりにいく戦争など存在しない。しかし計画が多少失敗しても、うまくいかないから撤退を考えるのではなく、どうやってうまくいってない箇所を調節できるのか、どうやったら失敗を糧にして勝利に結び付けるのか、それを考えるべきである。
私はこの戦争には勝てると信じている。より多くのアメリカ人がそれを信じ大統領を支持すればその可能性はもっと高くなる。この大事な時に新作戦には反対だなどと下らない決議案をとおしている場合ではない!


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イラク、アメリカ軍訓練チームが面する難関

アメリカ人ブロガー(Bill Roggio, The Fourth Rail)でフリーランスジャーナリスト、元陸軍特別部隊のビル・ロジオがまたまたイラクで従軍報道をしている。ここ2年くらい彼はしょっちゅうイラクやアフガニスタンに行っているので、彼がアメリカにいることの方が珍しいくらいだ。
今回ロジオはアメリカ軍のイラク軍訓練チーム(Military Transision Team, MTT)に従軍している。それで今日はこのチームが直面している難かしさについて紹介したいと思う。ここでロジオが強調している点は、これはけっして失敗例をあげているのではなく、アメリカ軍はこうした問題を解決していなかければならないということを示しているに過ぎないということだ。どんな企画にも難関は存在する。戦争をしている以上それがどんなものなのか知っておく必要がある。
陸軍と海兵隊、見解の違い:訓練チーム、3/3-1 MTT 隊はいま5人の海兵隊員と9人の陸軍兵による合併チームになっている。同じ軍隊でも海兵隊と陸軍では文化が違う。それでどうやってイラク軍を訓練するかということで意見の違いが生まれるわけだ。
チームリーダーのオーウェン・ウエスト少佐によると、陸軍はスタッフを育て訓練プログラムを確率することに焦点を当てるが、海兵隊はイラク軍と共にパトロールしたり抵抗軍と戦うことに焦点をあてるという。

「実をいうとどちらも正しいのです。」とウエスト少佐は言う。しかし両方の方法を効果的に取り入れるための十分な資源はない。結果、海兵隊の見解がほぼ勝った形になっている。この難しさにも関わらず、 3/3-1 MTT 隊はイラク大隊の発育と住居環境を非常に向上させた。

MTTの任務は訓練と警備にある。以前には人が足りずどちらか一つを選ばなければならなかったが、今はそのどちらも出来るようになった。3/3-1 MTT チームは近いうちに海兵隊だけのチームになる。陸軍兵たちはスティーブ・シルベスター少佐に率いられバグダッドでイラク警察の訓練にあたることになっている。
司令部と現場の衝突:一般の会社でもそうだが、現場の人間が経営側が現場の状況を正しく把握しておらず、必要な支援をしてもらってないと感じることはよくあることだ。イラクでも危険な前線で訓練を行っているMTTやPTT(警察訓練隊)は比較的安全な場所にいる前衛司令部(Forward Operating Bases、FOBs)から十分な援護がないと苦情を漏らす。表面的には訓練チームの任務が最優先ということになっているのだが、現場のものからすると彼等はFOBから最低限の援護しかもらっていないと感じるようだ。
ウエスト少佐によると空からの援護にしても、アメリカ軍の海兵隊一隊のほうがイラク軍三隊よりも多く援護がもらえるという。また防御に必要なメッシュや食料などの生活必需品もしょっちゅう足りなくなるという。ロジオ自身もフォビットと呼ばれる訓練チームの待遇と前衛司令部施設とでは全く違うことを体験している。FOBにはネットカフェあり、食堂にはサラダバーあり、贅沢品がいくらでも存在する。FOBは大掛かりな防御フェンスに囲まれており、多額の資源が無駄遣いされているという。ロジオはFOBよりもずっと危険な最前線にいるMTTやPTTにこそこれらの資源が回されるべきなのではないかと語る。
バカサヨ戦闘規制: ロジオは「政治的に正しい(PC)」という言葉を使っているが、カカシに言わせればこれは「バカサヨ政策」である。つまり、アメリカ兵たちは後になって敵に対して非人道的な行為をしたといって責められるのを恐れて十分な戦いができなくなっているのだ。相手は女子供も容赦なくぶっとばすようなテロリストだというのに、こっちは相手の人権を尊重した戦いをしなければならないなんて、はっきりいって馬鹿げている。

「PCのおかげで我々は間違った恐怖心に満ちています。」ウエスト少佐は語る。「我々は囚人たちを私の大学で同室した同級生より大切に扱ってますよ。」
「我々があまりにも神経質に文化的な問題をあつかうのをイラク軍は笑ってます。」

特に女性を逮捕する時などの気の使い用は異常で、外国人テロリストを匿っているとはっきりしている場合でも、司令部からの許可がなければ現場の判断で女性を逮捕できないという規則は、イラク兵たちは信じられないという顔でみているそうだ。
敵の心ではなく頭を: 我々は反乱軍との戦いをするに当たって、非常な誤解をしているとウエスト少佐は語る。

「アンバーでは、平均的な男性が我々の敵なのです。彼等の心を勝ち取ることはできません。しかし彼等の頭脳を勝ち取り常識的な判断ができるようにすることならできます。」彼等がアメリカ軍やイラク軍、そしてイラク警察を攻撃しないようにするためには、「多くの(戦闘員年齢の)男性を捕らえて釈放しないことです。」捕らえては放つというやりかたは、既知の反乱軍が釈放後再び戦うという状態になっている。つまりかえってこれが敵による攻撃をより促進しているのである。

ウエスト少佐は「壊れた窓理論」式のやり方でどんな些細な犯罪も見逃さず厳しく取り締まる必要があるという。イラク兵たちの目から見るとアメリカ軍のこの異常なまでの反乱軍への「合法な扱い」が信じられないようだ。これは戦争である。にもかかわらず我が軍はテロリストを普通の刑事犯罪の容疑者のように「疑わしきは罰せず」などという態度で扱っているから、誰の目からも有罪なテロリストが完璧な証拠がないという理由で釈放され、再び同じ人と何度も何度も戦うはめになっている。こんなやり方をずっとやってきてアメリカ軍の犠牲がせいぜい3000人ということのほうが驚きだ。イラク兵があきれるのも無理はない。
今回のブッシュ大統領の新作戦はこのような馬鹿げた規制を改正することに焦点を当てている。二万程度の増派などよりこうしたバカサヨ規制を取り除くことが最優先だろう。ロジオの最前線からの報告のおかげでカカシは現在の戦闘規制(ROE)の改正がどれだけ大切かがよくわかった。
ところでオーウェン・ウエスト少佐は別のミルブロガー(米軍関係者の経営するブログ)Black Fiveの仲間で、確かブラックファイブにもエントリーを書いていたように記憶している。軍隊に入るのは他に何もできない無能な人間ばかりだというジョン・ケリー議員のような偏見とは裏腹に、ウエスト少佐はエリートで、スタンフォードとハーバードの両方を卒業。少佐は一旦は海兵隊将校の任務を終えて除隊した後、ゴールドマン・サックスという一流証券会社に勤めていた。またすごい運動家でエコチャレンジやエベレスト登山に挑戦したりしている。そのままエリートビジネスマンとして平和に暮らすこともできたのにわざわざ再入隊して危険な場所でイラク軍の訓練に当たっているというすごい人である。
ウエスト少佐からのメールをブラックファイブで読むことができるので、英語に自信のある人は読むことをおすすめする。


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ケリー議員大統領選出馬断念の持つ意味

前回の大統領選挙で民主党候補だったジョン・ケリー上院議員は昨日2008年の大統領選出馬はしない意志をあきらかにした。ケリー議員が出馬を断念した大きな理由が数カ月前の勉強しないとイラクへいくはめになるといったあの失言にある。

 ケリー氏は04年大統領選で現職のブッシュ大統領に敗れたが、08年大統領選に向けて出馬の機会をうかがっていた。ベトナム帰還兵で、イラクからの米軍撤退について具体的な日程を定めるよう要求するなど早期撤退の旗振り役だが、昨年11月の中間選挙直前には学生を前に「勉強しないとイラクに行って苦労するはめになる」と発言、批判を浴びた

ケリー氏の報道官もあの発言以来ケリーの支持率は下降の一途をたどったと認めている。しかし、みなさん、ここで考えていただきたい。もし主流メディアがいうようにアメリカ市民のイラク戦争支持がどんどん下がっているのだとしたら、どうして反軍隊のケリー氏の人気が落ちるのであろうか?
私は民主党もそして一部の共和党員もこの間の選挙結果を間違って解釈していると思う。確かにアメリカ人はイラク情勢に苛立ちを覚えている。だがそれはイラク戦争そのものへの不満ではなくアメリカが勝っていないことへの不満なのだ。アメリカ人は勝者が好きなのである。
民主党は何かとアメリカを膝まずかせようとする。あたかもアメリカが世界のスーパーパワーであることが恥かしくて仕方ないかのように。だが一般のアメリカ人は自分達が世界一であることを恥じるどころか誇りに思っている。アメリカが強いのだという意識を確認するニュースを歓迎するのだ。だからアメリカの力を象徴するアメリカ軍を侮辱するような言動を許さないのである。
ということは、もしブッシュがイラク戦争に勝つことができたならアメリカ国民のイラクに対する気持ちも変わるだろう。特に共和党支持者にはその傾向がある。アメリカ議員たちはケリーの出馬断念から学び、アメリカ市民がこの間の選挙で議会に何を求めたのか明確に判断する必要がある。
それができなければ2008年にひどいツケを払わされることになるだろう。


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米共和党の負け犬たち

昨日の演説でブッシュ大統領はイラク戦争への大事さを再び訴えた。しかし、民主党のみならず、共和党の議員のなかにも今回のブッシュ大統領の作戦変更に自信のない負け犬精神をもった臆病者が結構いる。まずはこの記事から。

イラク増派反対決議案、共和党主導で提出へ…米上院

【ワシントン=五十嵐文】米上院のジョン・ウォーナー前軍事委員長ら共和党議員3人と、民主党のベン・ネルソン議員は22日、記者会見し、ブッシュ大統領が提唱したイラクへの米軍2万1500人増派に反対する決議案を提出する方針を明らかにした。
 上院では、すでにジョゼフ・バイデン外交委員長、カール・レビン軍事委員長ら民主党議員を中心とする超党派の増派反対決議案が提出されているが、共和党主導の決議案は初めてとなる。増派反対論が、共和党内でも強まっていることを示している。
 ウォーナー議員によると、決議案は2万人規模の増派への反対を明確にした上で、大統領に対し、「2万1500人より少ない兵力で戦略的目標を達成するため、あらゆる選択肢を検討するよう促す」としている。
 先の民主党主導の決議案と同様、法的な拘束力は持たない上、小規模な増派の容認に含みを持たせているのが特徴だ。23日夜の大統領の一般教書演説や、民主党主導の決議案を巡る議論の行方などをみた上で、提出時期を検討するとしている。
(2007年1月23日10時25分 読売新聞)

ここではっきりと読者の皆様に言っておくが、こうした議決には全く施行能力はない。アメリカの憲法によって軍の動きや規模は大統領のみに決断の権限がまかされており、議会が口を挟む権利は全くないのである。だからこれらの決議は議会が大統領を支持していないという形だけの意思表示でしかない。ではどうして議会がそんな無駄なことをするのかといえば、個々の議員たちが自分の地区の投票者に向かって自分が戦争に反対であるという意思表示をすることで再選に備えようという動機からくるのである。
しかし、施行力がないとはいえ、この政治家たちの思惑による決議が戦況の及ぼす悪影響は計り知れない。議会の決議は大統領の政策変更には全く結びつかないとはいえ、最前線で戦う兵士らの士気には響くだろう。また我々の敵も我々が一致団結して戦争にとりくんでいないということを十分に理解し、アメリカ軍や民間人の犠牲を増やせば増やすほど我々が撤退する可能性が高まると奮起を起こすだろう。
民主党の決議案が即刻撤退決議案とするなら、こっちは「ゆっくり撤退組」とでもいうのだろう。 最初からイラク戦争に反対をしていた民主党議員やチャック・ヘーグルのような共和党議員がこのような決議案に署名するのはまあしょうがないとしても、このワーナー(読売の発音ではウォーナー)発案では数名の戦争支持派が含まれていることにがっかりさせられる。

  1. サム・ブラウンバック (カンザス州、100%)
  2. スーザン・コリンズ (メイン州、32%)
  3. オリンピア・スノー (メイン州、32%)
  4. ノーム・コールマン (ミネソタ州, 64%)
  5. チャック・ヘーグル (ネブラスカ州、 96%)
  6. ジョージ・ボイノビッチ (オハイオ州、 68%)
  7. ゴードン・スミス (オレゴン州、58%)
  8. ジョン・ワーナー (バージニア、88%)

括弧ないの何%という数字は、その議員がどれだけの割合で党の政策に同意してきたかという数値である。共和党のなかでもRINOと呼ばれる共和党はこの数値が低い。スーザン・コリンズやオリンピア・スノーなどがこの部類に入る。チャック・へーグルは保守派ではあるが、もともとイラク戦争は反対だった。だからこの人たちが作戦変更に反対でも別にいまさら驚くことではない。
問題なのは他の面では共和党政策一筋できていた共和党議員が自分の地区がリベラル化し反戦ムードが高まったことから自分の信念を捨てて反戦決議案に同意しようという動きである。共和率100%のサム・ブラウンバックは大統領選に出馬予定だ。どうやら彼はアメリカ市民がイラク戦争から尻尾を巻いて退散するのを望んでいるという主流メディアの主張を完全に信じ切っているようだ。彼には信念も根性もないらしい。
ジョン・ワーナーの場合は80という高齢なので年とって弱気になっているとしか思えない。全く年はとりたくないもんだ。しかし年とってきちんとした判断能力を失っているのなら早く引退するくらいの良識があってもよさそうなもんだ。
しかしこの中で一番残念なのはミネソタのノーム・コールマンだろう。ミネソタの保守派はずいぶん彼の後押しをしてきたので、これはひどい裏切りといえる。彼の代表地域はどんどんリベラル化しているので、再選のことも考えての行動なのかもしれないが、自分の政治生命が大事で信念を窓から放り投げようとは全く見損なったとしかいいようがない。
ほかにも数人、心が揺らいでいる共和党議員たちがいるが、残りの共和党員が結託すれば賛成派は58人であり、共和党リーダーのミッチ・マコーネルが根性をみせて議事妨害を行ったなら、それを押しのけて投票に持っていくには2票足りない。ということは共和党次第でこの二つの侮辱的で臆病な決議案を完全に潰してしまうことができるのである。
私はここで保守派共和党議員の人たちに訴えたい!この戦争は勝てる。だがそのためには我々が心を一つにして大統領の政策を支持しなければならない。我々は戦争中なのである。個人の政治生命よりも国がこの戦争に勝つことが最優先されるべきだ。すくなくとも共和党の議員たちにはそれを理解してもらいたい。
第一考えてもみよう。この決議案に賛成して、ブッシュ新作戦がうまくいった暁には同意した共和党議員らはばかをさらけだす。もし新作戦が失敗したら裏切り者と呼ばれるだろう。どっちにしても共和党議員がこれらの決議案に賛成して得することはありえない。
共和党の議員さんたちにどうかそのことを十分に考えてもらいたい。


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やらせ放送、納豆とイラクストリンガー

こういうのこそ本当に『どうでもいいニュース』ってカテゴリーにぴったりだなあ。(笑) ダイエットに効くなんて品物はもう何百何千の単位で出回っている。私の女友達は漢方薬が効くといってなんだか臭い煎じ薬を飲んでいたけど、単にカフェインが大量にはいっているだけの苦いお茶。納豆が体にいいって話は誰でも知ってるわけで、たかがテレビ番組で話題にされた程度で買いあさりに回る消費者というのも不思議だ。しかしこういうニュースを聞くと本当に日本て平和な国なんだなと改めて思ってしまう。この番組のプロデューサーが辞任したという話だが、はっきりいって紅白の裸踊りの方がよっぽどもひどいと思うけどね。
ま、それはともかく、やらせ記事というのなら先月からアメリカのブロガー達の間で話題になっていることがある。以前にも紹介したと思うが、イラクでバグダッドのどこかの警察署長という肩書きのジャミール・フセインなる人物が、AP記事の情報源として過去2年にわたり60回以上もイラク情勢の記事に貢献してきていた。
しかし、去年の12月にバグダッドのモスクが四つ焼け崩され、その時6人のスンニ派イラク人がモスクから引きずり出され、イラク兵が見ている前で焼き殺されたという事件が報道された時、アメリカ軍の中央司令部も、イラク内政省もそんな事件は起きてないし、そういう名前の警察署長はイラク警察のどの部署にも存在しないと発表したことから、いったいAPの情報源は存在するのだろうかという疑問が我々の間で生まれたのである。
以前からAPニュースのやらせ報道に批判的だったアメリカの人気ブロガー、ミッシェル・モルキンとフロッピングエース二人は元CNNのバグダッド局長イーソン・ジョーダンからそこまでいうなら自分でイラクへ来て調査してみてはどうかと挑戦を受けた。ジョーダンが経費は全部持つというのである。
読者のみなさんもご存じの通り、ミッシェルはこの挑戦に受けてたち一週間ほどイラクを訪れ、アメリカ軍に従軍してバグダッドを回った。(その間ミスター苺が彼女のサイトをほかの二人のブロガー達とお留守番していた。)
そして帰国した彼女の報告はこれ、Fact-checking the AP and Jamil Hussein。英語の読めないひとでもこのエントリーはほとんど写真ばっかりなので、バグダッドの様子が伺われる。特にドームのついた建物に注目。このモスクはAPの記事によれば焼け崩れたことになっている。
焼けたはずのモスクはちゃ〜んと建ってるし、ミッシェルはフセインなる警察署長との会見はできなかったというし、、やっぱり完全なねつ造記事だったわけだ。


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