じつはここ数日、ツイッターでどうでもいいと思われるくだらない話が出回り、それが意外にも多くの人の注意を引き話題になっている。先ずはこの絵から見てもらおう。
賞味期限が切れてない食材を探して深夜冷蔵庫を漁るアラサー女性教師の図@seitokainoana お借りします🖋 pic.twitter.com/OLf2lYdkhJ
— 稲森美優/他 競泳水着の人 (@inamorimiyuu) September 24, 2022
左側の絵は『生徒会にも穴はある!』公式【第①巻発売中】@seitokainoanaという漫画の一コマだそうだ。右側の写真はモデルさんが再現したものだが、その話はもう少し後でしよう。
このなんということない絵が何故か話題になった。それというのも多くの女性たちがこの絵は女性を描くうえで非常に不自然だと感じたのだ。
先ず、女性の冷蔵庫にしては小さすぎる。中もレトルトと飲み物と納豆しか入ってない。レトルトも納豆も賞味期限きれても食べられるので、ずぼらな人がそんなことを気にするとは思えない。といった冷蔵庫の中身の話。私が気付いたのは先ずそこだった。
次に、なんでブラジャーのフックを外したまま、ブラジャーを取らずに冷蔵庫を開けているのか。そんな恰好でしゃがみこめばブラが目の前に垂れ下がって邪魔になる。ずぼらな人ならシャツを着たままブラのフックだけを外すか、シャツを脱いだならブラも外して半裸になるだろう。
第三に、そしてこれが一番問題になったのだが、髪の毛を洗濯バサミで束ねる人など居ないというもの。なぜなら洗濯バサミでは小さすぎて髪を束ねるには不都合があるからだ。
こうした批判は女性ならごく自然に出てくるものなのだが、漫画を描いたのは明らかに男性で、漫画のファンも男性がほとんどのよう。それでなぜか漫画ファンらしき男性達から、いや、そんなことはない、自分の知り合いでこういう人がいる、洗濯バサミでも髪は束ねられる、などと頑張る人が殺到した。そして実際に可能であることを証明するために漫画の恰好を再現する人まで現れた。それが右の写真。
こうなってくると女性達もちょっと苛立ち、再現写真を見ても解る通り、洗濯バサミで髪を束ねるためには最初にヘアゴミで髪をまとめてからでなくては不可能で、ずぼらな人がそんな二度手間をするわけはないと反論。誰かが布団をはさむ布団バサミなら大丈夫と言うと、ずぼらな人は洗濯バサミも布団バサミも外の物干し竿にくっつけたままにしてあるはずなので、そんなものが洗面所にあること自体おかしい。ずぼらな人がわざわざ外の物干し台まで布団バサミを取りに行くのか、と言った意見が聞かれた。
さて、私も最初はこの話は面白おかしく傍観していただけだったのだが、だんだんと男性達の意固地さに腹が立ってきた。普通に女性はこんなことはしない、と当事者の女性達が言っているのに、何故「いや、こういう女性もいる」と頑張る必要があるのだろうか?何故彼らは当事者の女性達の意見を無視してファンタジーの世界の方を信じようとするのだろうか?そして女性達は、私を含め、こんなにも彼らの主張に苛立つのであろうか?
そんなことを考えていてふと気が付いた。我々女性達の苛立ちは、女性を全く理解していない男たちが作り上げた現実にそぐわない女性像にあるのだ。
我々は中高年になって女性に目覚めたとかいう男性が、まるで年相応でない非常識なケバケバしい恰好で歩き回るのを見て、あんなものは女性ではしない、女性はあんなことはしない、と忌々しく思ったことが何度となくある。そしてそんな恰好をした人たちが、自分は女だ、女として扱えとうるさく言ってくることに脅威さえ感じる。
それは何故か?
それは男たちが自分らの勝手に作り上げた女性像で実在する女たちを消そうとしているからだ。男たちが勝手に女はこういう物だと決めつけ、我々がどれだけ違うといっても、それを無視してその妄想に基づいた偶像で女性を扱おうとするからだ。
よくツイッターでも見かけるが、売春婦をセックスワークなどと呼んで普通の仕事であるかのように言い、女性たちが、あたかも自分らの自由意志で従事しているかのように言ったり、ポルノ映画で不自然かつ女性にとって大変危険なセックスを女性達が実際に喜んでいるかのように描くことは、決して女性にとって良いことではない。たとえ一部でも、このファンタジーが現実であるかのように思い込む男性がいることは女性にとって非常に脅威なことなのだ。
洗濯バサミの絵に女性達が腹を立てているのはそういう背景があるからなのである。
ところで上記の絵が不自然であるということを、全く別の角度から分析した人のツイートを今朝見つけた。このソース買う@renraku_onlyさんの分析によれば、男女は骨格が違うため、同じ姿勢をしていても同じように描くことは出来ないというもの。
このように、元の図を現実の女性が再現すると、 骨盤の広さ 大腿部のライン(「7」みたいな形) ブラのカップ ブラを落とさないためのポーズ 辺りが変わるのですよね この2枚を見比べると、下半身の違いは分かりやすいと思います(言うまでもないけど再現写真の方は女性的で自然なライン)
この(右側の)再現写真を見ると、 元の絵が「下半身が男」と評されていた理由が分かると思います。
よくペガサスハイド先生が「男絵師が女キャラを描くと、胸以外が男みたいな身体になりがち」と注意喚起しておられるけど、めちゃくちゃ上手い人でも注意する必要があると思った。 モデルを見て描いても、異性の身体だと構造がかなり違うので、資料にならない場合がある 身体の性差は全身に及ぶ マジ大切。
だからよくTRAが言ってる「性差は生殖器くらい」なんて大嘘なんですわ。 性差は全身に及ぶので 疾患などで生殖器の構造が典型的な形状とは違う人でも、全身見りゃ、性差なんてもんは極一部の例外を除いてほぼ分かるんだよ 身体の性は個人差より強いわ この絵と再現写真を見比べたら色々分かるだろ。
ポーズ人形で比較図を作成しました
左・男
右・女元絵のほうは男体型に近い
(言うまでもなく)再現写真は女性体型だと分かると思います pic.twitter.com/UKxys3LZxC— ソース買う (@Renraku_only_) September 27, 2022
ソース買うさんが言ってるとおり、女性はどれだけ女性っぽく着飾った人を見ても、一目で何かおかしいと察知することが出来る。その理由は男性と女性では全体的に多々の違いがあるからで、それは化粧や鬘程度で誤魔化すことはできないのである。
男がいくら自分は子供の頃から女だと感じて来たと言ってみたところで、女の体を持つということは、こういう細かいところで男とは全く違う体験をしているということを彼らは知らない。だからブラのフックを外したまま歩き回る女がいるとか、洗濯バサミで髪を束ねる女がいるとか、普通の女なら絶対にありえないとすぐ気づくことに気が付けないのだ。
にもかかわらず、女を知った気になって、女とはこういう物だなどといい張らないでほしい。女を消さないでほしい。そのことに気付けない男は最低だ。