リビアの独裁者カダフィ失脚直前、何故オバマ王は沈黙なのか?

オバマ王は中東の平和には非情に大事なエジプトの紛争を、モスミ・ムバラク大統領失脚がほぼ間違いないという土壇場まで沈黙を守っていた。そして今度はリビア。スコットランド上空で起きた航空機爆破テロの黒幕と20年以上噂されているカダフィ政権崩壊間近だというのに、オバマ王は再びだんまりを決め込んでいる。
どちらの場合も暴力はいけないとか、平和的な早期解決を求めるとかいう誰でも言えそうなおざなりの声明を発表した程度で、アメリカの立場としてこれらの国がどのように変化することを望むといった強い意思表示が全くされないうちに、現状は急速に変化してしまっている。
ムバラクはともかく、カダフィ政権は長年アメリカにとっては宿敵である。1988年にスコットランドはロッカービー上空で起きたパンナム航空機爆破テロ事件では、当時のレーガン大統領が報復のためリビアを空爆したりしたが、カダフィが黒幕だったという確たる証拠はつかめていなかった。それが、今回の紛争を機に、リビア司法省の長官の口から、あれはカダフィの直接命令によって起こされたテロだったという事実が明らかにされつつある。

(ロッカビーテロの真犯人は2年くらい前に難病をかかえ、あと数ヶ月の命という建前でスコットランドから釈放されてリビアに帰国した。あと数ヶ月にしては2年以上も生き延びてぴんぴんしてるというのも不思議だが。カダフィーが失脚すれば、この犯人はアメリカに送ってもらって、今度はアメリカの裁判にかけるべきだろう。前回はスコットランドの裁判にかけられてのであってアメリカの裁判ではないから二重裁判という違法にもならないし。)

いったいオバマ王は何を待っているのか? エジプトの時はムバラク政権はイスラエルには攻撃しないという姿勢を取り共通の敵であるイスラム過激派テロリストを徹底的に弾圧するなど表面的にはアメリカに協力してきた政権だった。だからきついことは言えないというオバマ政権の態度は理解できた。(それにしては、結構簡単にオバマ王はムバラクを見限り辞任を求めたが。)
だが、長年の宿敵のカダフィ政権には何の遠慮が要るというのだろうか? カダフィ政権を倒して自由な国を作りたい、とリビア市民が望んでいるのだとしたら、ずっとカダフィ政権を敵とみなしてきたアメリカにとって今こそリビア市民をアメリカの味方に付ける絶好の機会ではないか。何故オバマ王はこの機会を利用して徹底的にカダフィ政権を攻めないのだ?何故反カダフィ市民の運動を熱烈に支持し応援しないのだ?
エジプトのムバラク政権崩壊によって、アラブ諸国各地で、独裁政権から自由政権を奪い取るべく革命紛いの紛争が起きている。革命を望む市民は必ずしも親米ではない。いや、どちらかと言えばアメリカがこれらの独裁者を後押ししてきたという印象を持った反米市民が大半かもしれない。
しかしもしここで、アメリカがアメリカこそが自由市民の味方であるという姿勢をはっきりと示し、リビアにしろイランにしろそして中国にしろ、市民の自由を弾圧する独裁政権には断固反対だという態度を取ったなら、革命後の中東がこぞってアメリカびいきになる可能性が高まるというものだ。
反対に、中東やアラブの革命に対して、アメリカがだんまりを決め込むのであれば、彼らのなかでもともとあるアメリカへの猜疑心や嫌悪が確認され「アメリカは自由の敵だ、独裁者を守る悪の帝国だ」というイメージが固まってしまうのだ。
今こそアメリカは自由を愛する世界の市民に向って、我々が彼らの自由を支持し応援し熱烈な声援を送ると示す時なのである。オバマ王はブッシュ前大統領が中東に民主主義を広めようとしたことをあざ笑い、腰の低い姿勢を示すことで中東の好意を買おうとして完全に失敗した。
今からでも遅くはない。オバマ王は本当の意味での指導力を示し、アメリカこそが自由を愛するアラブ市民の味方なのだと態度で示すべきである。


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ララ・ローガン記者襲撃の詳細明らかになる

この間も書いたように、エジプトの革命を取材していた米CBSテレビ局のララ・ローガン記者は、当初200人にも及ぶ暴徒に性的暴行を受けたと発表されたが、性的暴行といっても強姦ではなかったことがはっきりしてきた。だから良いと言う訳ではないが、だったら最初からもっとちゃんとした説明をすればいいのに、CBSが意味深な報道をしたので色々な憶測がながれてしまった。だいたい200人からの人間に強姦されたら八つ裂きにされてしまうだろう。現実的にそんなことをされて生きて帰れるはずがない。
それで事実はどうだったのかというと、一緒にいたスタッフやボディガードと引き離されたローガン記者は、衣服をはぎ取られ旗の棒などでなぐられ、体中を強くつねられた。そのつねられかたがあまりにもひどかったので、体中青あざで腫れ上がり、最初は噛まれ傷ではないかと思われたほどだったという。
一緒に居たボディーガードも暴行を受け手を骨折するなどの怪我を負っている。ローガン記者を襲った群衆は記者を「ユダヤ人!」と呼んでいたというが、その理由は、エジプト内で報道陣に化けたイスラエルのスパイがエジプトに侵入しているとエジプトメディアが虚偽の報道をしたことが原因らしい。以前にも書いた通りローガン記者はユダヤ人ではない。私はイギリス人だと思っていたのだが、出身は南アフリカだそうだ。
ところで、アラブ系メディアのアルジェジーラではローガン記者への襲撃に関しては報道していないそうだ。


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中東の紛争はフェイスブック革命だ

チェニュジアのジャスミン革命がきっかけとなって、エジプトでは30年来の独裁者、ムバラク大統領が失脚。エジプトの隣国のヨルダンも騒がしいし、リビアでもカダフィー政権は内部からの寝返りなどを受け、大統領官邸が放火されるなどして失脚寸前の状態にある。また、イランでも学生らを中心にデモ行進が繰り広げられ、革命の火は中国へも飛び火しつつあるらしい。アラブ諸国の独裁政権が軟弱化しつつあるのは、ムバラク大統領の例をみてもよくわかる。いっちゃなんだが、アラブ諸国は血の気の多い人間が多い割にはそれほど度胸はないし非情でもない。もっと感情的な種族だと私は思う。だから革命は可能なのだと。
ところで、今回の一連の中東紛争はネットで情報が一遍に広がったことから、俗に「フェイスブック革命」「ツイッター革命」などと言われている。下記小林啓倫さんがシロクマ日報紹介している記事から。

現実はこうだ。Twitterは情報配信ネットワークであり、電話やメール、テキストメッセージなどと大差はない。しかしリアルタイムに無数の人々に情報が届けられるという点は別だ。チュニジア人ブロガーが投稿したメッセージは、何千回とリツイートされ、地球の反対側まで一瞬のうちに到達する。これは非常に強力な力となり得るだろう。なぜならば、ニュースが速く伝えられるようになればなるほど「勢い」が感じられるようになり、マーケティング系の人々が好きな言い回しで言えば、革命が「あっという間に広がる」ようになるからだ。Tufekci(Zeynep Tufekci、メリーランド大学の社会学者)は、Twitterは「検閲されにくい、新たな公共(的)空間をつくり出すことで、混乱に先立ってコミュニティをより強固なものにすることができる」とツイートしている。

この間中国では、「ジャスミン革命」関連の言葉をグーグルなどから検索不能にしたという話を読んだが、中国政府はすでにネットでの情報交換による革命拡大にかなり警戒していることが解る。
昔から情報を統括するものが権力を握るというが、ネット時代の今日、独裁者が情報を独占するということは先ず不可能。反政府のブログを閉鎖したり、検索エンジンにフィルターをかけたりしても、ネットは世界的に広がっているから拠点を他国に移してしまえば、完全なる言論弾圧は不可能だ。
今後ソーシャルネットワーキングが中東並びに東洋の紛争にどのような影響を及ぼすのか、非情に興味ぶかいところである。


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オバマ王政権のあからさまな反イスラエル政策に不安な米ユダヤ系リベラル

18日、国連の反イスラエル条例に対してアメリカは拒否権を用いたが、これまでのアメリカならこれはごく当たり前のことで、とりたてて騒ぐほどのことではない。だがオバマ政権のアメリカが本当に拒否権を用いるかどうか、実は議会では土壇場までもめていた。

 【ニューヨーク=柳沢亨之】国連安全保障理事会で18日、イスラエルのパレスチナ占領地へのユダヤ人入植を非難する決議案の採決が行われたが、米国が拒否権を行使して廃案となった。

オバマ政権発足以来、米国の安保理拒否権行使は初めて。他の14理事国はすべて賛成に回った。 アラブ諸国は反発しており、中東和平交渉の再開は一層困難となったほか、アラブ各国で拡大する民衆のデモにも影響が及ぶ可能性がある。
 決議案は、非常任理事国のレバノンが1月18日に提出し、入植を「違法」と非難する内容。国際法上、占領地への入植は「違法」とする判例があり、約120か国が共同提出国となった。
 米国は、入植には反対しているが、同盟国イスラエルの立場を考慮して決議案の撤回を求めていた。 (2011年2月19日11時05分 読売新聞)

ここで「入植」とされている地域はエルサレムのことであり、エルサレムはイスラエルの首都である。イスラエルが自国の首都に住宅建築が出来ないというのであれば、イスラエルが独立国であることを否定するのと同じだ。つまり、アラブ諸国はイスラエルのパレスチナ入植を非難しているのではなく、イスラエルが独立国として存在することを非難しているのである。
このような理不尽な条例にイスラエルと同盟を結ぶアメリカが同意できるはずはない、、というのが従来の常識だが、こと反ユダヤ主義(アンタイセマイト)のオバマ政権に限っては、そう簡単な決断ではなかった。
オバマ王の反イスラエル政策は民主党の間でも去年からかなりの批判が出ている。ユダヤ系アメリカ市民はリベラル派が多く、その大半が民主党支持だが、イスラエルには同情的である。それで、オバマ王政権のクリントン国務長官を始めとする反ユダヤ主義方針は、有力なユダヤ系の支持者が多い民主党議員たちを不安にさせるのである。

「イスラエルは当地において一番の同盟国である。にもかかわらず、必要な支持どころか非難ばかりを受けている。」ニューヨーク代表、アンソニー・ワイナー民主下院議員。

ワイナー議員は去年の四月、強まるイスラエルへの圧力に対してオバマ政権に抗議した十数名の民主党議員の一人である。この批判はニューヨークのチャールズ・シューマー民主上院議員のオバマがイスラエルを威圧しようとしているという批判に同調したものだった。

「公にイスラエルをこき下ろす前にシューマー議員の言う事に耳を傾けるべきだ。」「シューマー議員は正しい。ホワイトハウスはイスラエルにおいて間違っている。」とワイナー議員は続けた。

私はシューマー議員はあまりにもリベラルなので嫌いなのだが、911直後で見せたバリバリのニューヨーク精神(当時上院議員だったクリントンの無関心さとは比べ物にならない)や徹底したイスラエル支持など、一貫した信念を持った議員として尊敬に値する人だと思う。
オバマ政権の反ユダヤ主義は、ユダヤ系有権者の間でも強く感じられており、先の選挙ではユダヤ系市民からの政治献金が極端に減った。特にユダヤ系有権者が最も多いシカゴやニューヨークからの支持ががた落ちした。
こうしたオバマ政権の反イスラエル方針を是正すべく、今年の一月、下院議会は民主共和同意でオバマ王にイスラエル批判の国連条例を拒否するよう促した
この手紙はフロリダ州代表、外務委員会のイリアナ・リーティネン(Rep. Ileana Ros-Lehtinen)下院議員が執筆し、バージニア代表エリック・カンター共和議員、メリーランド代表ステニー・ホイヤー民主議員らが署名した。

「我々は尊敬を持って現政権に要請する。パレスチナの指導者に速やかに無条件でイスラエルとの直接交渉に戻るように圧力をかけよと。」

イスラエルとの平和交渉を拒否し、イスラエル攻撃を全く止める気がないパレスチナ。にもかかわらずアラブ諸国は一方的にイスラエル非難をし国連条例まで提案。米議会が腹を立てるのは当たり前だ。ところがオバマ王ときたら、この条例を非難するどころか、一部修正の条件付きで調印する意志を明らかにしていた。

米国は15カ国からなる国連安保委員会の『イスラエルによる継続的な入植はうけいれられない』という条例を支持する旨をアラブ諸国に通知した。これは入植を違法とするパレスチナによるより厳しい条例を拒否するという行為を回避することを狙ってのことだった。

もちろんイスラエルなどこの世から消え去るべしと考えているアラブ諸国の強硬派にとって、イスラエルに関して譲歩などあり得ないので、このオバマ政権の提案はあっさりと拒絶されてしまった。
それでオバマ王も余儀なく拒否権を用いることになるだろう、と普通なら思うが、それに先駆けて、こともあろうにクリントン国務長官がパレスチナと一緒になって、イスラエルの入植は違法だと公言したから大騒ぎ。(後になって「違法」ではなく「非合法」だと言ったのだと言い訳している。)
そんなこんなで間際までオバマが拒否権を使うかどうか怪しい状態だったのである。
民主党議員のなかには、先のシューマー議員やカンター議員も含め、カリフォルニアのダイアン・ファインスタンなどイスラエル支持のユダヤ系議員は結構いる。また、ユダヤ系市民の多いシカゴやニューヨークにも有力なユダヤ系有権者が多く居る。彼らは他のことではバリバリのリベラルであるが、ことイスラエルに関しては圧倒的にイスラエル支持だし、オバマ政権のあからさまな人種差別に不快感を覚える人々もすくなくないはずだ。
今回はなんとか拒否権を用いたものの、オバマ王政権の反ユダヤ及び反イスラエル主義は、アメリカユダヤ系リベラルをかなり不安にさせる要因となっている。


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エジプトで取材中に集団暴行を受けた米美人女子アナを巡る謎

先日エジプトのカイロでムバラク大統領の退陣を巡って大喜びの群衆の様子を取材していた米CBSテレビ局のララ・ローガン記者が、スタッフやガードマンから引き離されて200人に及ぶ暴徒から性的な暴行を受けたという記事を読んだ時、私は読者諸君と同様、集団強姦という最悪の自体を想像した。しかし一緒に居たスタッフのメンバーやローガン記者を暴徒から救ったエジプト女性たちやエジプト兵士らからの話から、ローガン記者が殴る蹴るの暴行を受けたことは確かだが、性的暴行といっても、胸や臀部をまさぐられた程度のことで強姦はされていないという事実が浮かび上がって来た。

 CBSニュースの声明によると、ムバラク前大統領が辞任した今月11日の夜、カイロのタハリール広場で取材中だったララ・ローガン記者(39)が、200人以上の暴徒に囲まれて殴打や性的な暴行を受けました。ローガン記者は、一緒にいた撮影クルーや警備スタッフからは引き離されていたということです。女性グループと兵士約20人がローガン記者を救出しました。ウォールストリート・ジャーナルなどは、関係者の話として「ローガン記者がほかのスタッフとはぐれていたのは20分から30分間で、レイプはされていない」と報じています。(2月17日付けANNニュース)

私や他の読者がローガン記者が集団強姦を受けたという印象を持ったのも、CBS局の公式声明の内容がかなりあやふやなものだったことにある。声明文をかいつまんで意訳すると、、

二月十一日金曜日、エジプトのモスミ・ムバラク大統領が辞任した日、歓喜するタフリア広場の様子を60ミニッツの番組取材をしていたCBSのララ・ローガン記者とそのスタッフは祝福する危険な分子の集団に囲まれました。200人を超す興奮した集団でした。

集団との衝突の際、ローガン記者はスタッフと引き離されました。記者は集団に囲まれエジプト人女性グループとエジプト兵士約20人から救出されるまで、残忍な乱暴行為を受け性的暴行を受けた上に殴られるなどしました。記者は後にCBSチームと合流しホテルに戻り翌朝アメリカ行きの便で去りました。現在記者は病院で回復中です。
この件に関しては、今後CBSニュース及びローガン記者からの声明はありません。記者とその家族のプライバシーを尊重してください。

ララ・ローガン記者と言えば、イギリス人の金髪美人女性。はっきり言ってイスラム国の危険な場所にこんなミス白人みたいな美女を送り込んで取材させるCBS局の無神経度を疑いたくなる、と普通は考える。しかしローガン記者は新米のペーペーではない。イラク戦争当時、アメリカ軍について密着取材をしたり、リベラルジャーナリストとしてはかなり公平でしっかりした取材をしてきた女性だ。特にイラクのタルアファー地区に関する取材は立派なものだったという印象が今でも残っている。
そのベテランジャーナリストである彼女が、エジプトの集団から暴行を受けたというなら、それだけでもかなりニュースの価値はあるはずだ。特にCBSを始めアメリカのリベラルメディアはエジプトの反ムバラクの群衆を自由平等を求める民主主義者だとして報道していたのだから、その群衆がアメリカ人記者に真っ昼間に集団暴行を加えたとしたら、それだけでもニュースのはずである。にもかかわらずCBSは当初この事件の報道を隠蔽しようとした。
事件が起きたのが11日なのに声明文が発表されたのが15日だったのも、他局が事件を報道する可能性が高くなってきたため、仕方なしに公式声明分を出したと言う話だ。なぜ、CBSはこの事件を隠そうとしたのだろうか?
目撃者の話によると、ローガン記者を襲ったのはそれまでデモ行進をしていたのとは違う集団だったそうで、記者への攻撃の際も「このユダヤ人!」というような反ユダヤ人的発言が多く聞かれたと言う。ローガン記者はユダヤ教徒ではないが、エジプトの過激派の間ではイスラエルと同盟関係にあるアメリカ人を一緒くたにユダヤ親派として嫌う傾向があるので、記者を襲った集団はモスリム同胞団関係の人間かもしれない。
ところで、エジプトの紛争を取材中に暴行を受けたのは何もローガン記者に限らない。2月初めの段階でこれまでにも取材中のCNNのアンダーソン・クーパーを始め、フォックスニュースやBBCの記者数十名が集団から殴る蹴るの暴行を受け、人によっては入院するほどの重傷を負ったりしている。
はっきり言ってこれらの攻撃は、単に危険な場所に居て巻き添えを食ったというよりも、西洋ジャーナリストへの故意的な攻撃であり、他国からエジプトの状況を報道させまいとするイスラム過激派の陰謀ではないかと思われる。だから、過激派にとってクーパーやローガンのように世界的に有名なジャーナリストを襲うことには大きな意味があるわけだ。
もちろんローガン記者の場合は女性として屈辱的な性的暴行という難しい問題が絡むため、報道が難しいというのは解る。だが、最悪の状態を想像するような声明文を発表した以上、CBSはもっと詳しくことの詳細を報道すべきではないのか、CBSにしろローガン記者にしろプロのジャーナリストなのだから。


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ウィスコンシンで何が起きているのか?

以前に財政難のカリフォルニア州公務員の法外な給料や年金がカリフォルニア経済破綻を悪化させている話を書いた事があるが、州公務員の優遇は他の州でも同じように問題になっている。現在ウィスコンシン州で起きている労働組合のデモも、優遇されすぎている州公務員の扶養手当を引き下げようというスコット・ウォーカー知事の提案に組合が激しく反発してのことだ。
労働組合のいい分を聞いていると、まるでウォーカー知事は独裁者で、聖職を持つ教員から何もかも奪おうとしているかのような印象を受けるが、知事が要求している公務員への犠牲はごくごく当たり前の常識的な要求でしかない。

  1. 健康保険の保険料従業員負担を現在の5%から12.4%に引き上げる。
  2. 年金積み立ての従業員負担を0%から50%に引き上げる。

はっきり言って連邦政府の公務員や民間企業の従業員からすれば、これでも普通以上に恵まれた待遇であるが、労働組合が絡んでくるとそういう道理が通らなくなる。それでウォカー州知事は労組による代表制交渉の権限を規制しようと考えた訳だ。
それに対する労働組合からの反撃はすさまじいものがある。オバマ王の支持を受けた全国民主党委員会が労働組合と結託してウィスコンシン州外からの組合員を導入してデモに参加さえ、州内の教員達は病欠した上に生徒を連れ出してデモに参加させるなどして人員を集めている。
州の民主党上院議員たちは議決をボイコットするため州外に集団脱出。民主議員たちを連れ戻すためにウォーカー知事が州警察隊を出動させるまでに至っている。
もし、労働組合がウィスコンシン州で暴力を使って民主主義行程を阻止することに成功すれば、アメリカはよもや民主主義国家とは言えなくなる。それこそ労働組合が牛じる独裁社会となり、ギリシャのようにアメリカ経済は崩壊するだろう。
ウォーカー知事の肝試しがされる正念場である。


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恥さらし、アメリカ諜報部部長の「ムスリム同胞団は世俗主義」発言に批難殺到!

エジプトのムバラク政権がついに崩壊したが、大手をあげて素直には喜べないのが現実。何故なら今後のエジプトを誰が統括するかによって、中東にイスラム過激勢力旋風が巻き起こる可能性が大だ。そんななかで、米国国家情報部(Director of National Intelligence)のジェームス・クラッパー部長による、「ムスリム同胞団は世俗主義団体である」という頓珍漢な発言が批判を浴びている。
英語ではMoslim Brotherhood(モスラムブラザーフッド)と呼ばれるこの団体は、その過激なイスラム教思想で悪名高い。911の首謀者であるオサマ・ビンラデンの相棒、アイマン・ザワヒリもモスリム同胞団出身だ。
今回のエジプトでの革命騒ぎもこのモスラムブラザーフッドが煽動したことはすでに周知の事実。実際にこの団体はエジプト市民の間で人気があるとはいえないのだが、敵の敵は味方という感覚で反ムバラクの市民らから多少の支持を受けていることは否めない。問題なのは、アメリカがこの団体をどう扱うかなのだが、もしアメリカの諜報部の部長が同胞団を世俗主義だなどと本気で考えているとしたらかなり問題だ。ムスリム同胞団は断固反アメリカであり交渉などの対象にはなり得ない団体なのだ。それを理解せずにアメリカが多少でも肩入れしたりすれば、放っておけば自然とエジプト市民から支持を失うかもしれない団体をかえって勇気づけ民主化する可能性のあるエジプトをイスラム過激化へと追いつめてしまうかもしれないからである。
はっきり言って、こんな世間知らずの人間に全国諜報部の部長などをやらせておくのはアメリカにとって非常に危険だ。即座に首にして、もっと国際諜報に通じている人間に部長をやってもらうべきだ。そうでないとアメリカは本当に大変なことになる。


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ウィスコンシン州知事の公務員労働組合打開に組合員の激しい反撃

米国ウィスコンシン州では、新知事が苦しい財政を立て直すべく、警察官及び消防官以外の州職員が所属する労働組合の団体交渉権を制限すべく法案を提案しているが、それに対して州労働組合員から予想以上に激しい抵抗が起きている。
昨日、組合は州の98000人に及ぶ教職組合員に違法ストライキを呼びかけ、法案議決審議がされている首都への集結を促した。これに応じて公立学校の40%にも及ぶ教職員は病気を言い訳に仕事を休んでデモ行進に参加した。おかげでマディスン学校区では学校閉鎖を余儀なくされることとなった。
どうやら労働組合は有権者が選んだ州知事や議員たちを差し置いて、違法なストライキやデモ行進を行って、自分らの主張を力づくで通そうという魂胆らしい。
国家経済の立て直しも全くめどが立たないオバマ王は、それでもウィスコンシン州の経済対策について注目していると言う。労働組合はオバマにとって大事な支持層だが、今回もオバマ王は州の経済を立て直そうとしているスコット・ウォーカー知事の側ではなく、州の経済状態などおかまい無しに州に無理難題をもちかけて交渉する労働組合の片を一方的に持ち、ウォーカー知事の法案は「組合への攻撃だ」と批判した。
オバマ王の組合支持は単なる言葉だけではない。全国民主党委員会の一部でオバマ選挙運動後援会でもあったオーガナイズフォーアメリカ(OfA)は、ウィスコンシンでのデモ行進参加者用のバス調達や電話バンクの設置などを請け負い、ここ数日続いているデモ大会の計画や段取りを仕切っている。
それに加えて、ウィスコンシン州の民主党州上院議員たちは数ではこの議決に勝てないので、そろって一斉にウィスコンシン州を脱出。決議投票が出来ないように議会そのものをボイコットすべく近隣のイリノイ州のリゾートに逃走し潜伏中。
はっきり言ってこのような行為は州憲法に触れるはずだが、違法行為だろうとなんだろうと、なんとしても民主党は労働組合の力を保ちたいらしい。そのためには民主主義や州民の意志など、どうなってもいいということだ。
ウォーカー知事は、州職員が健康保険や年金への払い込む料を増やしてほしいと言ってるにすぎない。このまま組合が要求するような州公務員への法外な優遇が続けば州は破産してしまう。州職員が犠牲を払わないというなら職員の数を減らすしかない。州職員たちがリストラの憂き目に合いたくないのであれば、組合による団体交渉権をなくすことが一番良案なのだと主張している。


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ホテルの風呂場で転倒、頭を打って過労死を考えたカカシ

「苺畑より」読者の皆様、ご無沙汰しております。一週間以上海の上におり、インターネットアクセスはゼロにちかく、イーメールアクセスですら一日に数行書ければいいほうだった。しかも団体口座でチームの連中には筒抜けなので、プライベートなメールなど全く書けない状態だった。(ミスター苺へのメッセージは送信が確認できたら即消していた。)
そんな生活が先日やっと終わって、一昨日はホテルの部屋で一晩だけだが一人でゆっくりする事が出来た。ひさしぶりに一人の部屋。ゆっくり髪の毛でも洗おうとバスタブ付きのシャワー室へ。シャワーの水の出を調節しようと手を延ばした瞬間、濡れたバスタブの底で素足がすべってすってんころりん。頭の横のほうを湯船の端のほうにあった大理石に強くぶつけてしまった。
転んだ時にシャワーカーテンをつかみ、湯船の淵をつかんだことで、多少転倒の速度を緩めたのか、頭をぶつけた割にはさほど痛くなかった。しかし、すぐ立ち上がるのも危険かもしれないとそのまま湯船にねそべり、顔にかかるシャワーのお湯を無視してじっとしていた。
その時ふと私は「こんなふうに死んじゃったら、かなり格好悪いよなあ〜」と思った。翌日に掃除のおばさんが湯船でひっくり返ってる素っ裸の中年女性の遺体を発見、なんて絵にもならない。同僚や親戚などから「カカシさんはホテルの風呂場ですべって転んで死んじゃったんだって」なんて言われるのも嫌だしな。
風呂場で転んだくらいで、なんで死ぬとか考えるんだ、と言われればそれもそうなのだが、(でも意外と風呂場での事故死ってのは多いらしい)私のように出張が多いと、出張先のホテルで一人寂しく死んでしまうという恐怖は常に脳裏にある。何故ならそうやって死んでしまった同僚や仕事関係の知り合いが結構いるからなのだ。
普通、過労死というと、法律上は脳や心臓の疾患のみが考慮されるが、過労によって誘発される他の病気、たとえば肺炎、胆石、胃潰瘍、なども立派な過労病だと思うし、睡眠不足で居眠り運転して事故死した同僚の死も、過労死だったと言えると思う。
私のやってる仕事は、肉体的にも精神的にも非常にキツい仕事だ。理想的には若い男の仕事だ。カカシみたいな中高年のおばさんがやるような仕事じゃない。それをいうなら50過ぎのおじさんがやるような仕事でもない。ただ、問題なのはそのくらいの年にならないと経験上このような立場には立てないから、必然的に中高年のおじんやおばんが老体にむち打って頑張ることになる。
一時、日本人ビジネスマンは世界でも働き者と評判だった。だが、アメリカ人がそれほど働き者だというイメージはないかもしれない。だが、どうしてどうして、私の回りには働き過ぎのモーレツ社員はざらで、過労死候補者がいくらでもいる。
一年半くらい前、担当の部長が突然辞めて、定年間近(62歳)の他の部長が代わりに企画担当にされたが、担当になって数週間もしないうちに、この部長は肺炎にかかってホテルの一室で死んでいるのを発見された。彼が亡くなる一週間くらい前に、私もその企画に参加するしないで、その部長と電話で話したばかりだったので、彼の死を知らされた時は非常なショックだった。
彼が亡くなる数日前から、咳き込んで息苦しそうにしている部長に回りの人が医者に診てもらうように薦めていたそうなのだが、忙しさにかまけて、後回しにしていたことが病気悪化の原因らしい。今時、肺炎で死んでしまうなんて、医学がいくら進んでいても、利用しなければ意味がない。
実はここ2〜3年の間に、同じような仕事をしている40代後半から50代の同僚や仕事関係の知り合いがばたばたと逝ってしまった。同年代のカカシとしては身につまされる思いである。
もっともこうした人々に共通する点としては、日頃から健康管理が良く出来ていなかったこと(飲み過ぎ、吸い過ぎ、食べ過ぎ)、多忙を理由に適度な休暇を取っていなかったことなどが上げられる。
私も出張中は生活が不規則になるので、仕事の合間に仮眠を取るようにしている。出張前にはちょっとした風邪でも病欠をとって自宅静養したり、毎年の健康診断は欠かさず受けている。
人から怠けているとか言われても気にしない。無理して死んだら誰が責任をとってくれるというのか? 一年のうち90%は出張していて、55歳で肺がんで死んでしまった先輩の女性の二の舞はしたくない。
なんだか本日はとりとめのない話になってしまったが、出張帰りで疲れているので、ブログ更新は明日から。
帰宅した南カリフォルニアは、朝から雨である。


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多文化主義は移民の同化を妨げる、多文化主義の失敗を認めた英首相

このブログでも、私は何度となく多文化もしくは多様文化主義(multi-culturism)を批判してきたが、本日(2・6・2011)「英首相 「英国での多文化主義は失敗」」という見出しを読んで、やっとイギリスでも多文化主義の弊害を理解できる政治家があらわれたのかとホットしたところだ。

 「多文化主義国家のドクトリンは、様々な文化がお互いに干渉せず、主流文化からも距離をおいて存在することを推奨してきました。そうした、いわば隔離されたコミュニティが我々の価値観と正反対の行動をとることすら許容してきました」(イギリス キャメロン首相)

 これはキャメロン首相が訪問先のドイツで行った講演の中で発言したものです。キャメロン首相は「イギリスでのこうした多文化主義は失敗した」とした上で、異なる価値観を無批判に受け入れる「受動的な寛容社会」ではなく、民主主義や平等、言論の自由、信教の自由といった自由主義的価値観を積極的に推進する「真のリベラル社会」を目指すべきだとの考え方を示しました。

そしてイギリスでイスラム教徒の若者が過激化しテロに至るのも、多文化主義がかれらの英国への同化を妨げてきたからだと語った。
多様な文化を無差別に受け入れるやり方というのは、一見違った文化を持った人を差別しない寛容な社会のような錯覚を持つが、実は多文化主義ほど不寛容で差別的な隔離社会をつくる主義もない。
アメリカは移民の国だが、アメリカは新しい移民にアメリカ文化を受け入れ、英語を学びアメリカのやり方を早く身につけてアメリカ精神を持つことを要求した。だからすぐには馴染めない新しい移民への差別は常に存在していたが、移民も二代目三代目になれば完全なアメリカ人として受け入れられてきた。
アメリカには、新しい移民が集まる少数民族の居住区があるにはあるが、そういう場所に住んでいるのはたいてい一世だけで、教育を得て経済的にも恵まれてくる二世や三世の時代になると、チャイナタウンだのリトル東京だのといった居住区からは遠ざかっていくのが普通である。
だが、最近になってアメリカで生まれ育っていながら英語が話せないラテン系の移民が増えてきた。多文化にも寛容であるべきという考え方が行き過ぎて、外国人が英語をはなせなくてもまったくこまらないような配慮があまりにもされているため、移民はアメリカに溶け込もうという努力を全くしなくなったからだ。少数民族が集まってくる居住区では、スペイン語の話せないほかのアメリカ人は住みたがらなくなる。それで必然的にラテン系の居住区とそうでない人々の居住区が分かれてしまう。
それが何年も続けば、言葉や文化の違いによって居住区がそれぞれ隔離されるという現象が起きるわけだ。
それでもラテン系はカトリック教徒がほとんどなので、アメリカの文化とそんなに違うわけではない。彼らが言葉さえ学べばアメリカ社会に溶け込むのはそれほど難しくないと思う。だが、イスラム教徒の場合はイギリスのような西洋社会とは全く相容れない価値観がある。イスラム教徒を統括するシャリア法はイギリスの法律とは矛盾し衝突することばかりだ。一夫多妻制や名誉殺人や幼女の性器切除など文明社会の価値観では受け入れられないような野蛮(そうだ、野蛮だ!)な文化を受け入れれば、そんな社会に住みたくない一般のイギリス人と、そういう社会を主張するイスラム教徒らが同じ地域に平和共存するなど不可能なのは当たり前だ。
それに、不寛容な文化を寛容に受け入れた場合、不寛容社会が寛容社会を制覇するのは時間の問題だ。相手はこちらの文化を尊重する義務はないが、多文化主義のこちらは相手の不寛容も受け入れなければならないという理不尽な現象がおきるからである。
イギリスが、国産のテロリストに国の安全を脅かされるようになるまで、そのことに気がつかなかったというのも呆れるが、それでも首相がそのことを認識し、そしてそれを口にすることをはばからなかったということはかなりの進歩だと思う。
イギリスを始めヨーロッパ諸国は過去30年にわたって多きな間違いを犯してきた。せっかく悪の帝国ソ連が、アメリカのレーガン大統領とローマのジョン・ポール2世法王の努力で滅びたというのに、その後のヨーロッパはなぜか社会主義社会にむけてまっしぐら。宗教を捨て世俗化した社会は堕落し、少子化を補うために中東から労働者を招いておきながら、彼らを自国民として受け入れるのではなく、多文化主義を口実に差別し隔離してきた。
そして今、そのセカンドクラス市民のイスラム教徒の過激派がヨーロッパの平和を脅かすようになったからといって、それほどの驚きだろうか?
だが、まだ遅くない。いまからなら引き返せる。今こそ我々は多文化主義などという隔離主義を捨て、融合主義をすすめるべきだ。諸外国の良い面はどんどん受け入れるべきだが、自国の価値観を捨ててまで他国の文化を受け入れる義理は誰にもない。イギリスがイスラム過激派に乗っ取られてしまう前に、イギリス首相がそれに気が着いてくれたということは歓迎すべき事実だろう。


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