お爺ちゃんの定期健診

先週お爺ちゃんの健康診断があり、血圧も血糖値もコレステロールも正常。身体はどこも悪くなく至って健康という診断だった。本日脳外科の検診も受けて来たが、認知症の病状は少しづつ悪化しているとはいうものの、身体は健康なのでこのままの状態がまだまだ何年も続くだろうと言われた。こういう病気では寿命はどのくらいなのかと尋ねると、「認知症は致命的ではありませんからね。アルツハイマーになると5~6年で亡くなりますが、お爺ちゃんの場合はアルツハイマーではないから他の病気にかからない限りこの病気で死ぬわけじゃありません。だから身体さえ元気ならまだまだ何年も大丈夫ですよ」と言われた。「ただ、、認知症が進んで本能的なことが出来なくなると、つまり食べ物を飲み込むという本能すら働かなくなったら終わりですね」と付け加えられた。

そういえば、認知症に関する動画で見たのだが、物が食べられない人のために、いろうと言って養分を直接胃に送り込む方法があるそうだ。しかし医療関係者の話ではこれはお薦めできないとのことだった。結局それはもう死にかけている人を無理やり生き延びさせているだけで、とても生きているとは言えない状態だからだそうだ。

お爺ちゃんが食べ物を飲み込めなくなったら、もうそれは死ぬ準備だと思ってあきらめるしかないだろう。ま、いまのところはそんな状態ではないが。

お爺ちゃんには長生きをしてほしいかといえば介護の身としては複雑な気分である。いまのところさほど手はかからないが、もっと手がかかるようになったら私ひとりではどうにもならない。やはり施設に入ってもらうしかないだろうが、お金もかかることだし。出来る限りうちに置いておいた方がいいと思うが、どうしたものやら。

トトロのDVD

お爺ちゃん、トトロのDVDが届いたよ。観る?「観る」トトロトトロと散々踊った後、「もう一回かけろ」今観たのにまた観るの?「もう一回かけろ!」はあ、良かったよ。買った甲斐がある。ところでトトロは英語吹き替えのほうが日本語よりずっといい。演技が上手。

お爺ちゃんはジブリの映画が気に入ったようだったので、キキの宅急便、千と千尋の神隠し、を購入。すでにそれぞれのDVDを三回以上観ている。でもやはり一番好きなのはトトロみたいだ。


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お爺ちゃん、なぜか本名が!

お爺ちゃん、「おい」じゃなくてちゃんと私の名前をよんでちょうだい。「ふむ」私の名前で呼んでね。「ふむ」ふむじゃなくて、まさか私の名前忘れたの?「忘れとらん!」じゃあ私の名前はなんですか?「あ~、あ~」はあ、遂にそこまで来たのか。私はカカシですよ。カカシちゃんって呼んでご覧。「かかか」かあかあしい「かあかあ煩いわい!」。

お爺ちゃん自分の名前言える?「言える」お爺ちゃんの名前はなんですか?「言えるわい!」名前は何ていうの?「○○じゃ!」え?

とまあ今朝はこんな会話を交わしていたのだが、お爺ちゃんが自分の名前だと言った叫んだのは、実はお爺ちゃんの本名。いや、本名を言って何が悪いと思われるかもしれないが、お爺ちゃんは本名がありきたり過ぎだということで親者とを離れて独立した時に改名したのである。そのことを知っているのは家族でも私を含めて2~3人だ。若い世代は全くしらない。それなのに今日は名前を聞かれて本名で答えているのだ。いったい記憶はどこまでさかのぼってしまったんだろう?

改名後の名前も覚えてはいた。その名前で呼んだらちゃんと答えていたから。でもこうやってどんどん若い頃の記憶だけになっていくんだろうか?


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お爺ちゃん、初めてのおもらし

題名からも明白だと思うので、そういう話を読みたくない人は読まないでください。

本日お爺ちゃんが初めてお漏らしをした。今朝いつものように散歩して折り返し点のベイカリーに寄りコーヒーを飲んで帰る途中、家の前庭にたどり着いた時点でお爺ちゃんがなにやらそわそわし始めた。もしかしてトイレに行きたいのだろうかと思って急いで家のドアを開けて「トイレ行きなさい」と言って振り向くとお爺ちゃんの半ズボンはびっしょり濡れており靴も靴下も濡れていた。あ~、ついにやっちゃったのか!

トイレ行きたいならどうして言わないの?「突然来たんじゃ」突然なわけないでしょ。男性は女性より我慢が効くはず。なんでベイカリーで言わないの、トイレ貸してくれたかもしれないのに!「あっという間だったんじゃ」そんなはずないでしょ!

私は前々からお爺ちゃんの下の世話は絶対にしないと言って来た。その時が来たら介護施設に入ってもらうとずっと言って来た。今回は外を歩いている時だったからまだしもだが、もしも家の中とかレストランとか映画館でこんなことになったらどうするんだ!もうおしめしなければならないのか?冗談じゃないぞ。

出来る限り介護施設は避けて自宅で介護しようと思っていたが、もう限界なのかもしれない。私だけが頑張っても無理だ。


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SFドラマに感化されすぎなお爺ちゃん

お爺ちゃんが観たいというのでイギリスのBBC制作ドクターフー(Doctor Who)というSFタイムトラベル番組で2006年から再開したシリーズを最初からかけ始めた。このシリーズはドクター役の俳優が何度も変わっているのだが、四シーズン目のピーター・カポリに代わってからお爺ちゃんの態度がおかしい。テレビのスクリーンの真ん前に立ち、テレビに触って大声で怒鳴ったりしているのだ。

今日などお昼にダイニングにお皿を持っていくと、お爺ちゃんがテーブルの下にいるのを発見。

なにしてるの?

「隠れているのじゃ」

なにから?

「エイリアンが攻めてくるのじゃ。隠れろ」

はああ?

もうだめ。ドクターフーは駄目。お爺ちゃんのメンタルがおかしくなる。もっと楽しいものにしよう。

それで急遽メリーポピンズをかける。

「レッツゴー、凧をあげよう」

と歌い出すお爺ちゃん。かけるビデオは考えないといけないな。


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踊りすぎて脚が痛いお爺ちゃん

お爺ちゃん、「脚が痛い」え~なんで?一日座ったままテレビ観てただけなのに変ね。カウチに座って脚をのばしてゆっくりしな。「ふむ」次のビデオはミュージカルかけよっか。「ふむ」。

15分後、リビングからドスンドスンと凄い音。お爺ちゃん何してんの?テレビの前でミュージカルのダンサーに合わせて一生懸命タップを踏んでいる(踏もうとがんばっている)お爺ちゃん。

これがお爺ちゃんの脚の痛みの原因であった。


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お爺ちゃん、まだ夜ですよ!

お爺ちゃん午後9時に就寝。割と素直に床に就く。

午後11時、ガチャ、と寝室の音、床のミシミシ音。お爺ちゃん、何してるの?「起きる」起きない!まだ夜だよ。寝なさい。「ふむ」なんとか寝床へ誘導。

午前一時、ガチャ、再びミシミシ。お爺ちゃん、トイレいくの?「起きる」起きない!メラトニンのグミを食べさせる。

午前5時、ガチャガチャと正面玄関を開けようとする音。「開かない!開かない!」お爺ちゃん、どこへ行くの、まだ5時だよ。外真っ暗だよ。「旗をあげるんじゃ」と星条旗をもったままうろうろ。お爺ちゃん、旗は夜が明けてから揚げるの。暗いうちに上げちゃダメだってお爺ちゃんが昔教えてくれたでしょ。「そうか」もうすこし明るくなってから揚げようね。

午前6時半、ガチャガチャガチャ、正面玄関の網戸の鍵が開けられないお爺ちゃん。どうしても国旗掲揚が待てない様子。ま、いっか、夜明けまであと30分だし。

こうやったまた一日が始まる。

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先日ユーチューブでアルツハイマーの母親の介護をしている女性の動画を観た。一年前は穏やかなお母さんで孫と手をつないで遊んだりしていたのに、今は車に乗せてデイケアに行く間にも「帰る、帰る」と大騒ぎ。途中でシートベルトを取ってしまったり大声で怒鳴ったり。身体を前後に揺らしたり。預けていた施設からは他の利用者を怖がらせるから来ないでくれと言われたとか。うちのお爺ちゃんも言われたもんなあ。

幸いにしてうちのお爺ちゃんは家では大声で怒鳴ったりしないし、周りに八つ当たりするようなことはしない。いずれはそういうことをするときが来るんだろうか?

動画の女性は小柄な婦人だが、うちのお爺ちゃんは背は低いけど筋肉質で私よりずっと大きい。男性だし暴れられたら私らの手には負えない。


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お爺ちゃん日記、2023年10月20日

おじいちゃんと私の朝の散歩はだいたい朝7時から歩き始め、7時40分くらいに折り返し点にあるフレンチベイカリーでコーヒーを飲み、お爺ちゃんはペイストリー(菓子パン)を食べて、そこから引き返して9時前までに帰ってくるのが日課である。日課と言っても私が出勤する日はできないので週に2~3回だが。

ベイカリーへの通り道にカフェがある。そこは朝8時にならないと開店しないので行きに寄ったことが無かった。帰りに通りかかる頃には開いていて、いつも常連のご隠居さん達が外のテラスで朝食をとっており、通りかかる我々に「おはよう!」と声をかけてくれる。

一度通りかかった時に誰かがロックス&ベーグル(ベーグルのスモークサーモンサンドイッチ)を食べているのを見かけた。アメリカのジュ―イッシュデリでは定番の朝食だ。それを見たお爺ちゃんが「食べたい」というので、では週末時間のある時に行こうねと言ってそのままになっていた。それで今朝ベイカリーにて、、

お爺ちゃんペイストリー食べな。「わしはあれのほうがいいな」あれって何?「ほれ、あの、あれがはいっとるやつ」ああ、ロックス&ベーグル?「それそれ」まだお店あいてなからだめよ。ペイストリーたべな。「いつ開くんじゃ?」8時。「今何時じゃ?」7時45分。「そうか」早く食べなよ。と言っても食べないお爺ちゃん。お爺ちゃん、ここであんまり時間かけたくないのよ。9時から仕事しなきゃいけないんだから。「今何時じゃ?」もうじき8時。「じゃかふぇが開くな」まさかお爺ちゃん、ここで時間稼ぎしてカフェに行こうという魂胆だな!

ちょっと呆れたけど、そこまで頭が回るのは不思議だ。


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それは大昔のことじゃ!お爺ちゃんの記憶喪失

私の朝は6時から始まる。やることはいつも同じ。お手洗いに行って顔あらって常備薬を飲んで歯を磨く。それが終ったらおじいちゃんの着替え、薬を飲ませて、歯を磨かせる。一年前までは一日ごとにわけたケースに入れておけば自分で薬は飲めていた。今は「お爺ちゃん、手を出して」と言って手のひらにのせてあげないとダメだ。時々手がすごく震えていることがあり、手にのせた薬をばらまいてしまうことがあるので、そういう時は「おくちあ~んして」と言って開けさせた口に薬を詰め込む。「はい水飲んで」といってコップを渡さないとそのまま薬を食べようとする。それでも最近は水を飲む行為すら何度も言わないと出来なくなっている。

さて、毎朝の着替えの時にお爺ちゃんはかならず腕時計を付ける。といっても自分ではうまくつけられないので毎日私につけろという。時々私が忘れると、つけろつけろと煩くせかす。それが昨日の朝、いつも時計が置いてあるドレッサーの上に時計が見当たらなかった。昨晩つけたまま寝てしまったのだろうかとお爺ちゃんの腕を見ると時計はつけていない。

「お爺ちゃん、腕時計どうしたの?」

そう聞くと、何のことかわからないという風で「知らん」という。しらんじゃないでしょ。どこに置いたのよ。「時計なんて持ってない」持ってないって昨日つけてたじゃない。「つけたことない」いつもつけろつけろとせっつくくせに何言ってんのよ。「ああ、それは大昔のことじゃ」

ほらまた出たよ、お爺ちゃんの「大昔のことじゃ」が。お爺ちゃんは私が嘘を言っているとは思っていない。私がお爺ちゃんの覚えていないことを言うと、お爺ちゃんは自分が覚えていなければいけないことを忘れたのだと悟る。それで本当は思い出せないのだが、メンツを保つために「大昔のこと」にして忘れてもしょうがないという言い方をするのだ。記憶力は薄れても理解力は多少残っている証拠だ。

何故こういうことになるのかは不思議だが、お爺ちゃんは昔からすごく好きだったことや物を突然「嫌いだ」と言い出すことがある。昔大好きだったドラマシリーズ、何度も何度も観ていたのに突然観なくなり、なぜ観ないのかと聞くと嫌いだという。でも好きだったじゃないと言うと「それは大昔のことじゃ」と言うのだ。つい昨日まで観ていたのに。オリオクッキーもピスタシヲナッツもそうやって突然食べなくなった。あんなに自慢にして毎日手入れをしていたモノポリーのおじさんのようなあの白い口髭も、ある日突然剃ってしまった。若い頃の写真でも口髭ともみあげのないお爺ちゃんの顔が写ってるのは子供の頃だけで、10代で髭が生えるようになってからは口髭を剃ったことは一度もないというのに。

だんだん自分の身の回りを構わなくなるというのは良くある話だろうが、お爺ちゃんのようについ昨日までやっていたことを突然やらなくなり、しかもそれまでやっていたということすら忘れてしまうというのはどういうことなんだろう?

おじいちゃん、眼鏡はどうしたの?

「眼鏡?知らん」

テレビ観えなくても知らないからねえ。


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溶けたアイスクリームが引き出し中に!

ナイフを出そうと引き出しを開けたらアイスクリームのカートンと溶けたアイスが引き出し一杯に広まっていた。なにこれ~!お爺ちゃん!冷蔵庫開けちゃだめっていったでしょ!

「冷凍庫を開けるなとは言われてない」

屁理屈言うな!

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お爺ちゃんは料理などしないので火の危険はないのだが、冷蔵庫のドアを開けたまま閉めるのを忘れたことがあるので、冷蔵庫は開けちゃだめと言ってあったのだが、アイスクリームの誘惑には勝てなかった模様。


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星条旗掲揚

午後8時。

「カカシ、見ろ!」

え?なあに?

「見ろ!」

と窓の外を指さすお爺ちゃん。国旗が外に出ている。

「ちゃんと掲げたぞ!」

確かに。でも今夜の8時だよ。日没には国旗は下げるんだよ。さっき二人で降ろしたじゃん。

「駄目なのか?」

ううん。いいのよ。ちゃんと掲げられたんだもんね。よくやったよ。でも夜だから私が降ろしておくね。また明日の朝お願いね。でも偉いよ。一人で掲げられたんだから。

「そうじゃろ。わっはっは!」

これでいいのよ。


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