昨晩遅くキャプテンズコータースを読んでいたら、これまでイラクからの悪いニュースしか興味がなかった左向きのニューヨークタイムスにイラクからのいいニュースが載っているとあってちょっと驚いた。
この記事を書いているのは左系のシンクタンク、ブルッキングスインスティトゥーション( Brookings Institution)のマイケル・オーハンロンとケニス・ポーラック(Michael O’Hanlon and Kenneth Pollack)のふたり。二人は最近イラクの視察旅行から帰国したばかりだ。
これがアメリカ人が理解しなければならない一番大事なことなのだが、我々はついにイラクで良い方へ向かいつつある。少なくとも軍隊用語でいえばそうだ。ブッシュ政権のぶざまなイラク政策を厳しく批判してきた二人の分析者として、我々はその目覚ましい向上ぶりに驚いた。必ずしも「勝利」とは言えないまでも、イラク人も我々も容認できるような状況維持の可能性が見られたからである。
バグダッドに着いて天火のような暑さを感じた後、最初に気が付くのは我が軍の士気の高さである。以前の訪問ではよくアメリカ兵たちの怒りや欲求不満を目にしたものだ。多くの兵士たちが作戦は間違っている、間違った戦略によって成功する可能性のない目的のために命が危険にさらされていると感じていた。
しかし今日(こんにち)士気は高い。兵士や海兵隊員たちやは、今回、有能なデイビッド・ペトラエウス将軍を司令官として迎えたことで将軍の戦略で確固たる結果を得ることができると自信をもっていること、やっと必要な兵数が整い状況を好転させることができることなどを我々に語った。
イラク各地でアメリカの陸軍や海兵隊は地元のイラク警備隊と協力し、電気、燃料、清潔な水、衛生といった基本的な生活環境を人々に供給できるよう、地元の必要度にあわせて政治面や経済面での援助に取組んでいるという。その結果市民の死亡率は増派が始まってからなんと1/3に減っているという。このリポートがブッシュ政権のイラク政策に非常に批判的であった人たちからの報告であることもさることながら、それをニューヨークタイムスが掲載したということは大いに意味のあることである。
折も折り、イラク視察から帰国したキース・エリソン議員もイラクの情勢は目覚ましく良くなっていると報告したとミスター苺が書いている。キース・エリソン議員といえば、ミネソタ代表でアメリカ発のイスラム教議員として話題になった民主党の下院議員であり、ブッシュ政権のイラク政策には非常に批判的な議員のひとりだ。
エリソン議員はアンバー地区のラマディを訪問し、地元のシークたちと会見した。このシークたちはアンバー・サルベーション・カウンシル(the Anbar Salvation Council)と言うスンニ派の反アルカエダ勢力のメンバーらしいのだが、彼等はエリソン議員にアメリカに帰って自分達がどれだけアメリカ軍に協力してアルカエダと戦っているかを伝えてほしいと嘆願したという。特にアルカエダはスンニの代表ではないと強調したそうだ。
「彼等はアルカエダが間違ったイスラム教像を広めていることに非常に腹をたてています。」エリソン議員は月曜日帰国途中のドイツから電話で語った。「彼等はもっと洗練された正しいイスラム教のイメージを広めるために私に何ができるかを語りました。」
私はここ数年APやロイターのヘッドラインを読んでいるが、イラク戦争が始まって以来およそ良いニュースを示すヘッドラインを読んだことがなかった。「ラマディ戦闘、アメリカ兵二人戦死!」「バグダッド市街戦で市民10人死亡」といったヘッドラインばかりがもう4年も続いているのだから、多くのアメリカ人がイラク戦争はもう駄目なのではないかと気が滅入るのは当たり前である。
しかし実際にはイラクでは良いことも起きていた。一見悪いニュースに見える記事でも、よくよく読むといいニュースが埋もれていることがままああった。例えば、アメリカ兵が殺されたという記事も、よく読んでみると100人のテロリストに囲まれた十数人のアメリカ兵が勇敢に戦った末、テロリストはほぼ全滅、こちらの犠牲者は二人だったというようなことが結構あったのである。本来ならばこの記事のヘッドラインは「ラマディで激戦、米軍、テロリスト100人を殺傷!」とすべきニュースなのだが、ヘッドラインが与える印象だけでイラクはひどい状態だと考えて中身を読まなかった読者がどれだけ居ただろうか?私が2年前にミスター苺とBig Lizardsをはじめたのも、こうしたイラクからの隠れたいいニュースをなるべく取り上げたいと思ったからだ。
しかし最近ニュースのヘッドラインに変化が起きてきた。イラクやアフガニスタンでの戦闘でアメリカ兵の犠牲者の前にテロリストの死亡数が記載されることが多くなってきたのである。以前にミスター苺はこんなことを言ったことがある。いくら主流メディアでも本当にイラクの情勢が良くなっているなら、いつまでもその真実を隠し通すことはできない。なぜなら昔と違ってネットやケーブルといった情報源は他にもあるし、イラク戦地で実際の状況をみてきた従軍記者や帰還兵からの直接の情報も入ってくる。アフガニスタン戦争中にいくらソ連政府が情報規制をしてアフガニスタン戦況はうまくいってるというプロパガンダを流しても、戦地から帰還した兵士らの話などからソ連軍がアフガニスタンで惨敗している情勢がソ連市民に伝わったように、いずれはイラクからのいいニュースがアメリカ市民の間でも広まるだろうと。
2月から始まったアメリカの新作戦は非常な成功を遂げている。ブッシュ政権のイラク戦争のやり方はまずいと考えていた批評家たちでさえその事実を無視できなくなってきた。だからこそ主流メディアすらもイラクからのいいニュースを報道せざる終えなくなってきたのである。
戦争反対イラク即撤退と騒いでいる民主党が多数議席を占めるアメリカ議会は夏休みが終わって帰ってきたら、ペトラエウス将軍のイラク情勢にかんする報告を受けることになっている。もしそれまでにイラク情勢が左翼メディアですらも無視できないほど好転し、人々がイラクからのいいニュースを毎日読むようになっていたらどうなるのだろう?