アップデートあり

見出しの通り、昨日アメリカの主流メディアが一斉にイスラエル軍が救援物資を取りに来たガザ民に発砲したというニュースを流した。下記はロイター通信から。支援物資待つガザ市民に発砲か、100人超死亡との情報 イスラエル側は異議(ロイター) – Yahoo!ニュース.

支援物資待つガザ市民に発砲か、100人超死亡との情報 イスラエル側は異議

パレスチナ自治区ガザの保健当局によると29日、援助物資を待つ市民100人超がイスラエル軍の砲撃を受けて死亡した。 これはロイターが入手した映像。ロバの荷車に遺体や負傷者を乗せて搬送する様子が映っている。

ホワイトハウスは「深刻な事案」だと表明。米国家安全保障会議は「罪のない人々の命が失われたことを悼み、罪のないパレスチナ人が家族を養おうと努めているガザで悲惨な人道状況があることを認識している」との声明を発表した。 パレスチナ保健当局によると、1度による攻撃の死者数としてはここ数週間で最大規模。また約5カ月にわたる紛争による犠牲者は3万人を超えた。

医療関係者は、この砲撃による負傷者の多さや傷の程度に対応することができなかったと述べた。数十人の負傷者は、イスラエルの襲撃を受け機能の大部分が停止したアルシファ病院へ搬送された。 別の映像には、物資搬送用だとするトラックに遺体や負傷者が積み上げられる様子が映っている。ロイターは撮影場所を確認したが、撮影日時は不明。 国連のグリフィス事務次長(人道問題担当)は死傷者数の報告に「がくぜんとしている」と述べた。 ガザ市のカマル・アドワン病院にいたこちらの男性は、犠牲になった人々は援助物資がナブルシ地区に到着すると聞いて、そこへ向かっていたと証言した。「その4―5分後、イスラエルの戦車が現れて私たちは驚いた。戦車は無差別に発砲した。その直後、私たちが目にしたのは、殉教者と負傷者が無秩序に地面に散乱している光景だった。

これは、子どもたちのために食料を調達しに行って負傷した私の兄だ」 ガザ北部への物資搬送はまれで、混乱を伴う。戦闘が活発な地域を通過して、国連によると多くの人が飢えに苦しむ地域へと運ばれる。 イスラエルは、29日の事件の死者数に異議を唱えている。イスラエル軍は、援助トラックの周りに集まる人々を写したというこの映像を公開した。軍当局者によれば、数十人が踏みつけられたり轢かれたりして死傷したとしている。またトラックに押し寄せた人々の一部が、戦車を含む軍の車両に近づき、イスラエル軍は発砲したとしている。 バイデン米大統領は、戦闘休止に向けた協議を複雑にする公算が大きいという認識を示した。 イスラム組織ハマスは声明で、今回の砲撃は休戦と人質解放に向けた交渉の失敗につながりかねないと警告した。

冒頭から「パレスチナ自治区ガザの保健当局によると」とあるので、もうこの時点で事実はかなりの眉唾物だと判断できる。ただこの記事は最後の方でイスラエル軍の言い分も載せているのでまだいい方なのだが、それでもこれでは救援物資の配給を辛抱強列に並んで待っていたガザ民に向けて、何故かイスラエル軍が一方的に発砲し100人以上が犠牲になったというふうに受け取れる。イスラエル軍側の公式発表を聞く前に、まずこれが現実的な状況かどうか考えてもらいたい。

イスラエルはわざわざ何十台という救援物資をガザ内に送り込み人道回廊まで設け、輸送車の行列に護衛までつけている。にもかかわらず、それを大人しく受け取りに来た群衆に向かって戦車で発砲する?何のために?イスラエルがガザ民を大量に殺害したいなら、救援物資の配給を許可せずガザ民を兵糧攻めにすればいいだけのことだ。なんでわざわざ輸送トラックを調達したりするのだ?

考えの足りない人は、救援物資を送り込まないと国際社会か批判されるからだなどと言ってるが、一旦ガザに入れたトラック行列に集まるガザ民に発砲する方がよっぽども国際社会からの非難を浴びるだろう、現にハマスのプロパガンダを国際メディアが妄信していることからも解るように。

ではイスラエル軍の公式発表を聞いてみよう。下記はIDF Spokesperson RAdm. Daniel Hagariの発表である。例によって私による乱暴な翻訳なのであしからず。

今朝30台の救援トラックを人道的救援の一貫としてガザ北部住民のために輸送した。この支援物資はエジプトから来たものである。この物資はイスラエルのカレムシャロムで検査を受けた後、民間の運送業者によって輸送された。

この貴重な物資はガザ民のところへ行く途中だったところ、何千というガザ民がトラックの列に殺到した。何人かが暴力的に他の人を押し倒したり踏みつけたりし、救援物資を強奪し始めた。この不幸な事件によって、何十人というガザ市民が殺されたり負傷したりした。

ここに事実を記す。午前4時40分最初の人道トラックの列が我々が警備をしている人道回廊を登り始めた。そう、IDFは救援物資の行列がガザ北部の目的地に無事到着するために人道回廊の確保をしていた。我々の戦車は行列を警護するために出動していた。我々のUAV(ドローン)は上空から現場の明確の状況を兵士らに知らせるために出動していた。この人道的作戦の最中、午前4時45分、群衆が行列を待ち伏せし行列は止った。2:07ビデオでも解るように、戦車は行列を守るために居た。

イスラエル兵は平和に群衆を解散させるために何発か空に向けて警報射撃を行った。しかし数百人が数千人へと膨れ上がり、手に負えない状態になった。戦車隊の司令官はその場にいたガザ民に危害が及ばぬよう撤退を決断した。2:42ビデオでも解るように彼等は非常に気を付けて後退を始めた。軍人として言わせてもらうなら、これは非常に安全を保った後退である。彼等は自分達の命を危険にさらしながらも群衆に発砲することはなかった。

イスラエル防衛軍は作戦規約と国際法に乗っ取って行動した。IDFは救援物資行列に向かって攻撃していない。繰り返す。IDFの攻撃は救援物資行列に向かって攻撃していない。それどころか、IDFは人道作戦を行っておりガザ北部の人びとに届くように、人道回廊を守り救援物資が目的地に無事到着するように警護していたのだ。我々はこのような人道作戦を過去四晩に渡り問題なく行って来た。このような事件は初めてのことだ。

この救援物資はイスラエルによってガザ民のために調整されたものである。我々は救援物資がガザの人びとに届くことを望んでいる。我々はこれを実現するために日夜働いている。イスラエルは物資がガザに入ることに何の規制もしていない。我々は人道団体や国際社会と協力して、ガザ内部の配給問題に取り組んでいる。今朝救援物資は無事ガザ北部に到着した。これに対してIDFの攻撃は一切なかった。繰り返す。この物資に対するIDFの攻撃はなかった。我々は物資を守るためにそこに居たのだ。なぜなら我々の戦争はハマスとの闘いであり、ガザ民との闘いではないからだ。

我々は我々が始めたのでも、求めていたわけでもない戦争の中にいる。ハマスがこの戦争を始めたのだ。10月7日にイスラエル市民を大虐殺し拉致した時に。そしてハマスはガザにもどりガザ市民の後ろに隠れている。彼等を人間の盾として使っている。我々は無実のガザの人びとの苦しみを理解している。であるから我々は人道努力を拡大しようとしている。そのために我々は今朝のような人道作戦をおこなっているのである。

先ず、この救援物資トラックはこのトラックに押し寄せた群衆のためのものではなかったということ。これらはガザ北部の住民に届けるためのものだった。つまりそこに居た群衆は救援物資を受け取るために待っていたのではなく、輸送中の救援物資トラックを襲撃して物資を略奪するために集まったのである。

しかも報道官の見せたビデオでも解るように、群衆の数は数百人ではなく数千人にも及んだのだ。このような群衆が一気に攻めて来たにもかかわらず、群衆に向かって発砲しなかったイスラエル軍の自制力は大したものだ。私はこの状況で、もし本当にIDFが群衆に発砲したとしても完全なる正当防衛だと思う。しかしIDFの発表によれば、イスラエル軍はそれすらもしていないのである。ただ一つ認めていることは、空に向かって威嚇射撃をしたこと。この発表では含まれていないが、別の動画では威嚇してもさらに前進してくる群衆の足元を撃ったという発言もあった。

こちらのNBCの報道は本当にひどい。のっけから救援物資を待っていた人々に向かってイスラエル軍の戦車が発砲したと断言している。

しかしNBCの記者がその場に居たと言いながら、実際に戦車が群衆に向けて発砲した映像がない。また戦車やIDF兵士の発砲によって散り散りに逃げ惑う人々の映像もないのだ。わざわざ現場に行きながら、こんないい加減な報道があるか?

我々はこれまでにいくつもハマスが救援物資を運ぶトラックを乗っ取ったビデオを見てきている。もし本当にイスラエル軍が群衆に発砲したというなら、その証拠動画があるはずだ。背後に銃声が聞こえるような動画が出てきてもよさそうなものである。

だいたい救援物資輸送トラックを警護しているイスラエルが、救援物資をもらうために待っている群衆に発砲するという不思議な状況を誰か説明してもらいたい。救援物資はガザ民のためにあるのだ。イスラエル軍はそのために危険を冒してトラック輸送の警護に当たっているのだ。なのに何故そんなことをするのだ?

下記は現場の様子。背後に銃声も戦車の発砲の音も聞こえない。人々が逃げ惑う様子もない。

ハマスがこの事件を大々的に訴えている理由は明白だ。ハマスはすでに完全に追い詰められている。残された最後の砦はラファだけである。もしラファが落ちればハマスは終わりだ。シンワルは重々それを理解している。だからこそ、今の時点で世界中がイスラエルを攻撃し、イスラエルに国際的圧力をかけてラファ攻撃を止めさせようと必死なのだ。

だがそれはうまくいかないだろう。イスラエルは散々国連や国際社会から非難されながらもここまで作戦を遂行してきた。ここまで来て、ラファ落日を目の前に戦闘を止めるなどという愚かなことはしないだろう。そんなことをしたらこれまでの苦労が水の泡となってしまうからだ。

アラブ諸国が考える戦争の勝利は我々の考えるものとは全く違う。彼等はどれだけの戦闘で惨敗し領土を失くしどれだけの民が犠牲になったとしても、政権の首領が囚われの身とならず生き延びることができれば、それこそが勝利なのである。ここでイスラエルがラファ攻撃をせず、ラファに籠城した数千人のハマスが生き延びることが出来れば、イスラエルのような強硬な軍隊を相手に勇敢に戦って勝ったとしてハマスの拍が上がり、今後も支持者が増え国連からの同情支援金がどんどん集まりめでたしめでたしとなり、ガザ復興ならぬハマストンネル復興が始まるのである。そんなことになったらイスラエルにとっては元の木阿弥である。何百人ものイスラエル兵を犠牲にし多額の予算をつぎ込んで戦った意味がなくなるのだ。そんなことをイスラエルが許すはずがない。ここまで来たら最後までやり遂げなければならないのだ。

だからハマスがどうわめこうと、マスメディアがどう騒ごうと、バイデン爺が何を言おうと、この戦争はハマス殲滅が完了するまで終わらないのである。そのことに世界はいい加減気付くべきだ。

アップデート:3/1/24現在

ガザでの仕事を終えてエジプトへ帰ったトラック運転手たちの証言。

声1:みんな、国境を超えるな。パレスチナ人たちは俺たちのトラックを全部破壊した。奴らが犯したダメージが良く見えるだろう。奴らは岩を投げて窓を割った。これが仲間の運転手の血だよ。

声2:奴らが俺たちのトラックに何がしたか見えるか?運転手は重症を負って帰ってきた。見てみろよ!これがガザの奴らの祖業だよ。俺たちが祈ってやった人たちの。もうやめろ。奴らには今起きてる以上の罰がふさわしい。


4 responses to 「イスラエル軍、救援物資を待つガザ民の列に発砲、100人以上が死亡か」というデマを無責任に報道するアメリカメディア

苺畑カカシ2 months ago

よもぎねこさんが紹介してくれているBBCの記事を貼っておこう。

支援物資求めたパレスチナ人100人以上が死亡、軍が発砲も ガザ北部
2024年3月1日 BBC

パレスチナ自治区ガザ地区北部で2月29日、支援物資を得ようとしていたパレスチナ人110人以上が死亡したと報告されている。
ガザ地区北部は物資の供給が困難になっており、大勢が飢餓の危険に直面している。
こうした中、支援物資を載せたトラックが、ガザ市の西にある海岸沿いの道路でイスラエル軍の検問所を通過したところ、待ち構えていた大勢の市民が車列に押し寄せた。
イスラエル軍は、戦車が車列を守っていたが、押し寄せた人々が混乱を引き起こしたと非難。また、脅威と思われる数人に発砲したと述べた。
一方、パレスチナ人のある目撃者はBBCに対し、死亡した人々のほとんどはトラックにひかれたのだと語った。
イスラム組織ハマス運営のガザ保健省は同日、昨年10月7日にイスラエル軍とハマスの戦闘が始まって以降のガザ地区の死者が3万人を超えたと発表した。
地区内では、攻撃による負傷だけでなく、深刻な栄養不良も原因となって、幼い子供さえ犠牲になっている。

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高原剛一郎2 months ago

とても正確で、優れた情報紹介を感謝します。私のYouTube個人チャンネル「ごうちゃんねる」で拡散したいので、これらの翻訳文を使っても良いでしょうか?

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    苺畑カカシ2 months ago

    高原さん、コメントありがとうございます。どうぞお使いください。報道官の発表は私が個人的に訳したもので、イスラエル大使館公式とかではないということを明記して下されば結構です。それとYTのちゃんねるリンクもお願いします。

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