米共和党大統領候補:ロムニーかマケインか葛藤の保守派

フレッド・トンプソンに続いてルディー・ジュリアーニも脱落したので、まだマイク・ハッカビーが居残っているとはいえ、実質上共和党の選択はミット・ロムニー対ジョン・マケインとなった。これはアメリカの保守派にとってはちょっとつらいところだ。
ミット・ロムニーはモルモン教徒であることを除けば、アメリカ保守派には理想的な候補者といえる。その政策も道徳観もネオコンや宗教右翼をまとめるだけの魅力のある候補者だろう。
それに比べてジョン・マケインはイラク戦争以外では共和党とは名ばかりのリベラルな政治家だ。裁判官任命にしろ移民問題にしろ、およそ共和党員らしい行動をしてきていない。共和党の保守派の間ではマケインは人気がないなどという生易しいものではなく、マケインに入れるくらいならヒラリーに入れてやる、なんていう過激なひとまでいるほどだ。
しかし、ここで共和党有権者が考えなければならないことは、大統領選挙は共和党の候補を指名するだけで終わるのではなく、その後の一般選挙で民主党候補をやぶらなければならないということである。ミット・ロムニーは保守派の間での人気はまずまずだが、それだけでは無所属や民主党の保守派を引き付けることは無理だ。
そこへいくとジョン・マケインはリベラルなだけに中間層の無所属有権者を惹き付ける力がある。特にヒラリーが候補者指名された場合、民主党のなかにもマケインなら共和党でも我慢できるとしてヒラリーを見捨ててマケインに投票する人が出てくるかもしれない。
確かに保守派の基盤は大切だ。しかし基盤だけでは勝てない。ここはひとつ勝てる候補者を選ぶ必要がある。となるとアメリカの保守派は鼻をつまんでもマケインを選ぶべきなのかもしれない。
来週の火曜日はいよいよスーパーチューズデー、決着がつくのはもうすぐだ。


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イスラム教批判はイスラモフォビアなのか?

私が二年近く書いてきた過激派イスラム教批判について、ある場所で批判をなさっている方がらしたので、こちらへ来て話されてはどうかとお誘いしたのだが、カカシのブログは読んでいるということなので、彼の私及びアメリカのネオコンに対する批判をちょっと載せてみよう。
まずは一宿一飯さんのあるブログへのコメント。

所詮憶測ながら苺畑カカシさんのイスラモフォビアに関して感じることは、「恐らくこの人は実際にモスリムに合って対話した経験も無ければする気も無く、単に自分の世界観を維持するための仮想的を必要としているに過ぎない」と言うものです。実際に接触してみれば、例えば敬虔なクリスチャン・モスリム・ジューイッシュは「共通する価値観を持っている」訳で、現実にハマス創設者ヤシン師にはユダヤ宗教界における高位の和平支持派ラビとの親交があったと言うような話など実例は幾らでもある訳なのですが。
別に、「真に共存の可能性を持っているのは西欧化した世俗主義者のみ」では無いのですけれどね。苺畑さんの決め付けは多分に「自分の壊れやすく、多分に現実と齟齬を来たしてしまいがちな価値観を守るために、少しでもそれに沿わないものは攻撃せずにはおられない」と言うような衝動的な物に見えてしまう。

一宿一飯さんは私の書いたことを読む前に某ブロガーによる「カカシはイスラム教恐怖症だ」という偏向な意見を読んでしまったため、私の書いていることもそういう色眼鏡をかけてよんだのだろうと思う。もう少し気をつけて読んでくれれば、私が攻撃しているのはイスラム教徒全般ではなく、過激派イスラム教徒およびイスラム教テロリストなのだということがわかるはずである。
常連の読者のかたがたならご存じだが、私はこのブログにおいて我々文明社会はイスラム教全体を敵に回してはならないと何度も強調してきた。イスラムの危機:テロリズムはイスラムの教えに反するにおいて歴史家のバーナード・ルイス博士の言葉を借りてこのように書いた。

現代のテロはイスラム教とほぼ同義語になってしまっているので、テロリズムがイスラムの教えに反するなどといっても、そんなことは頭の弱いリベラル連中のプロパガンダとしか受け止められない読者も多いだろう。私がここで何度も紹介してきたロバート・スペンサーなどもその口で、テロリズムこそがイスラムの真髄だなどと平気で言う。だがここでルイス教授はあえて、イスラムは平和な宗教だと主張する。…

…イスラム教徒はイスラム教を守るために戦うことは義務付けられているが、非戦闘員を殺したり虐待することは禁じられている。死を覚悟で戦うことは期待されるが、自ら命を絶つことは許されない。だとしたら、テロリストのやっていることは完全にこのイスラムの教えに反することになるではないか?何故このようなことをしている人間がイスラム教原理主義者だなどと大きな顔をしていられるのだろう?
…イスラム教過激派はイスラム教の名のものとに西洋に宣戦布告をした。彼らの解釈はコーランの正しい解釈のひとつである。だが、テロリストを正当なイスラム教徒として扱ってはならない。テロリストを原理主義者などと呼んではいけない。コーランの解釈はひとつではない。長くつづられたコーランのなかには戦争を唱える箇所もあれば平和を唱える箇所もある。他宗教に寛容となり、弱いものを守り無実の人間を傷つけてはならないという教えもイスラム教の原理なのである。イスラム教徒の中には、西洋文化の落ち度も理解しながら、また自分らの社会の弱点を捉えながら近代化を進めようとしている人々がいる。前者とは戦い以外に道はない。だが、後者とは歩み寄れる。我々現代人はこの二つのグループを十分に見極める目を養ない、穏健派を出来る限り応援しなければならない。

私は穏健派イスラム教徒となら歩み寄れるという言い方はしたが、歩み寄れるイスラム教徒は「西欧化した世俗主義者のみ」などといった覚えは一度もない。いや、それどころか私はヨーロッパの世俗主義をずっと批判してきている。私の「滅び行く欧州、栄えるイスラムの脅威シリーズ」を読んでいただければ分かるが、私はここでヨーロッパの行き過ぎた世俗主義こそがヨーロッパの崩壊につながると書いている。そのまとめとして目覚めるヨーロッパでこのように書いた。

(マーク)スタインはヨーロッパの世俗主義が現在の欧州の堕落を招いたのだと書いている。私はこれには全く同意見。イスラム教という宗教に対抗できるのはヨーロッパの基盤となっているジュデオ・クリスチャンの価値観しかない。

またカカシはイスラム教こそ悪の根源といいはるロバート・スペンサーの映画を紹介した時もこのように述べた。

私はこのブログでも何度か文明社会がイスラム教徒全体を敵に回すことの危険性を主張してきた。 だから私は悪の根源はイスラムの教えにあるというこのドキュメンタリーの製作者たちの意見には全面的に賛成できないでいる。 特にシューバット氏はイギリスのブレア首相がイスラム教を「平和を愛する宗教」だと何度も繰り返すことに関して、愚かなのか嘘つきなのかどちらかだろう、と言い切ることには全く同意できない。
ブレア首相ほど対テロ戦争に関して自分の政治生命を犠牲にしてまでブッシュ大統領と一緒になって努力してきた政治家はいない。 ブレア首相ほどイスラムテロリストの脅威を正しく理解して戦い続けなければならないと主張した人はいない。 私は911事件以後のこの世の中にブレア首相という立派な政治家がイギリスにいてくれたことを何度神に感謝したか知れない。
「イスラムについて、、」の製作者たちがわかっていないのは、政治家達がイスラムを「平和な宗教」だと主張し、テロリストは過激派であり、本来のイスラム教の教えを歪曲しているのだと語るには理由があるということだ。 イスラム教の人口は12億といわれている。 この中で過激派は約一割というではないか。 彼らはその一割の過激派と戦うために我々文明諸国に対して12億の人々全体を敵に回せというのか? 
無論、数や欧米の戦争技術をすれば、12億の敵をもってしても西洋社会がいずれは勝つだろう。 だが、もしそのような戦争がおきれば、第2次世界大戦どころの騒ぎではなくなるということがこのドキュメンタリーの製作者たちにはわかっているのだろうか?

一宿一飯さんの誤解は過激派イスラム教及びイスラム教テロリストへの批判を、イスラム教全体への批判イスラム教徒への人種差別およびイスラム教恐怖症、と混同してしまっていることにある。イスラム教過激派による犯罪やテロ行為を指摘して批判することは決して個々のイスラム教徒への人種差別でもなければ人権迫害でもない。それを混同してしまうと今ヨーロッパやカナダで起きているような人権擁護法の乱用のようなことが起きてしまうのである。
さて、一宿一飯さんは、私がイギリスのブロガーがイスラム批評をして逮捕状が出たという話を紹介した時、ラディカルフェミニストのフィリス・チェスラー女史のブログからインタビューを引用したことに関して、ラディカル・フェミニストたちのイスラム教蔑視はごう慢であり、イスラム教を批判しているというだけで、カカシが嫌いなはずのラディカルフェミニストを好意的に扱うのは私のアメリカ的なごう慢の現れであるという意見を述べられている。
まず第一に、私はチェスラーなる人がラディカルフェミニストであるという事実は知らなかった。しかし彼女がもしラディカルフェミニストだとしたら、彼女のイスラム教批判は全く理にかなっている。なぜならば、本当に女性優先の思想を持つ人であるならば、男尊女卑の最たるものであるイスラム教を批判するのはごく自然だからである。ラディカルフェミニストと自称する人ならばイスラム教の厳しい掟を恐れるのは当たり前だ。なにしろ強姦された被害者がむち打ちの刑にあうようなイスラム圏国が存在するのである。このような宗教を恐れることはフォビア(恐怖症)などではなく当然な自己防衛的な警戒心である。
私は自分はフェミニストだとか女性救済を目的としているといいながら、敵の敵は味方というせこい考えで非常な女性迫害をしている過激派イスラム教を全く批判しないリベラルフェミニストのほうがよっぽども偽善的だと思う。カカシは自分とは全く意見の合わない人でも信念をもって自分の考えを貫き通すひとのことは尊敬する。それがラディカルフェミニストであれ、共産主義者であれ同じである。反対に言うこととやることが正反対の偽善者は軽蔑する。
一宿一飯さんは、私のパレスチナ人への批判的な考えを『「遅れた、未開な非西欧」に対する敵意』だと考えているようだが、私がパレスチナ人に批判的なのはイスラエルがガザを撤退して自治をする絶好の機会を与えられた時に、ハマスというテロ軍団を政権に選び、自治にはまったく無関心で、ただただユダヤ人殺しだけを念頭において、平和交渉に何度も応じているイスラエルに執拗にミサイルをうち続けているからである。パレスチナ人はアラブ諸国でも民度が低いという悪評の高い民族だ。これはカカシの人種的偏見でもなんでもない。パレスチナ人の子供たちが飢えで死ぬようなことがあったら、これは一重に戦争に明け暮れて自分らの子供たちの将来にむとんちゃくなパレスチナのテロリストどもの責任である。
さて、ここで一宿一飯さんの白人コンプレックスについて反論したい。

..経営者さんは苺畑さんを「アメリカ保守の真似をしている」と評されましたが、私は「大変日本人的な反応」だと感じているのです。

「遅れた、未開な非西欧」に対する敵意と「自分の愛するアメリカ・西欧・白人社会」に固執するが故の「国粋主義」、そしてそれは「自身が日本人であるから」ではないかと。苺畑さんにとって依然憧れの「他者」であるアメリカと言う国の言説は、相互に如何に食い違い、相反していてもそれが「西欧・白人社会・アメリカ」を肯定し補強する範囲においては「矛盾せず」、逆にそれらの価値を批判し、見直そうとする言説には無条件に「敵」のレッテルが貼られるのではないかと。
差別は廃さなければいけないが、それは別に「白人・男性・プロテスタント」の価値観を否定するものでは無い筈なのにこの扱いは何だ、と言うのと同じ感覚を日本人も、そして世界各地のモスリムも持っていると言う事です。
少なくとも私の眼にはネオコンサバティズムとラディカルフェミニズムの「傲慢さ」「愚かしさ」は同じものに映ります。それは一部にドメスティックバイオレンス常習者や過激主義者が居るからと言って「すべての白人男性」「すべてのイスラム教徒」そして「全ての日本人の男」は野蛮で旧弊で遅れていると決め付ける類の愚かさです。
私にとって新保守主義は「保守」でもなんでもない。西洋かぶれの妄言に過ぎません。自分達の文化を否定し、西欧に媚び諂い、彼等にほめて貰う為に他のアジア人を殊更に野蛮と蔑む態度の恥知らずさに「お前達はそれでも日本人か」と怒りたくなることは枚挙に暇がありません。

私はネオコンではない。宗教右翼とか孤立主義の旧保守派とも違うが、どちらかといえば旧保守派に近いと思う。私としてはネオコンはリベラルすぎると思うので。ま、それはいいのだが、この白人に対する羨望という意識は、はっきり言って一宿一飯さん自信の反影だという気がする。アメリカは移民の国であり、その市民の種族も多種多様である。確かに過去には有色人種が差別されるという風潮がなかったわけではないが、カリフォルニアのように出会う人の半分以上が外国出身といういうような社会に住んでいると、白人だから何か特別に偉いなどと感じることはまずなくなる。少なくとも私は白人がうらやましいとか白人になりたいとか思ったことは一度もない。
アメリカにはいい面もあれば悪い面もある。特に日本はアメリカのよくない面を輸入し過ぎると思う。日本の教育界やフェミニストなどが「欧米では〜がとても進んでいる。日本も見習うべき」などといって取り入れる概念が日本社会の役に立ったことなどほとんどないと断言できる。
アメリカに長年住んで、アメリカの保守派思想を取り入れたカカシがアメリカ人なら、アメリカでフェミニスト活動を長年つづけて左翼フェミニストとなった例の小山のエミちゃんも立派なアメリカ人だろう。一宿一飯さんが、欧米を一緒くたにして白人社会と呼んでいるのも、彼が白人はすべて同じだという人種差別意識を持っている証拠だ。
私が生きているのはアメリカであり欧州ではない。欧州とアメリカではその文化に雲泥の差がある。私が価値あるものとしているのは人種や性別や年齢にこだわらずに個人の才能で判断してくれるアメリカの自由主義だ。これは白人であるとかプロテスタントであるとかなどということとは完全に無関係だ。もっとも一宿一飯さんが自由平等は白人プロテスタント男性の専売特許だと言い張るなら、また話は別だが。


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ビルとヒラリー、本当の候補者はどちら?

昨日のサウスカロライナでもその前のネバダでもヒラリー・クリントンの選挙運動は元大統領の夫、ビル・クリントンの活動が目立った。時としてリポーターと怒鳴りあいになったり、ライバル候補者のオバマへの罵倒が行き過ぎたりと、ビル・クリントンの元大統領としてあるまじき態度が話題になった。
しかしヒラリーの選挙運動でビルの活躍があまりにも目立つことが、ヒラリーにとって良いことなのだろうか?ビルは確かに選挙運動の天才ではあるから使い方次第では非常に協力な武器となるが、その一方で彼は両刃の刃でもある。選挙運動員としてのビル・クリントンについて、歴史家のビクター・デイビス・ハンソン教授でこんなことを書いている。
現大統領のジョージ・W・ブッシュが大統領として選挙運動をしていた時、41代目大統領で父親のジョージ・H・W・ブッシュは、ほとんど選挙運動に出てこなかったし、Wの大統領としての実力についてはほとんど述べず、自分にとって大事な息子であるという程度のことしか言っていなかった。前大統領のビル・クリントンがWの悪口をどれだけ言っても、パパブッシュはほとんど反論しなかった。
それにひきかえビル・クリントンときたら単なる応援どころか、ヒラリー・クリントンの選挙運動の総指揮官でもあるかのように振舞っており、時としてヒラリーより観客を惹き付けてしまっている。下記はハンソン教授。

(ヒラリーのではなくビルの)ネバダにおける勝利演説は全くすごいものだった。ビルはヒラリーが隣で黙って見守るなか、延々と続けた。ビルはヒラリーのカムバックを自慢し他の候補者の悪口をいい、もちろん自分のことを話、マイクを握って離そうとしなかった。

ヒラリーの表情ときたらいつもどおりの「私にこのドーベルマンに口かせを付けろなんて言わないでよね。」と言いたげに赤の他人のように凍り付いたまま立っていた。

ミスター苺はヒラリーの選挙運動は日に日にビルに乗っ取られつつあり、そのうち今の選挙運動会長であるパティ・ソリス・ドイル(Patti Solis Doyle)などは会長とは名ばかりで窓際に追い払われ、ビルの昔のキャンペーン運動員たちが参加していつの間にかいったい誰が候補なのかわからなくなるだろうという。そうなれば選挙運動プロのビルに押されてヒラリーは見る影もなくなるかもしれない。
しかしそうなった場合、我々共和党にとってはどういう影響があるだろうか。

一方で、ビル・クリントンはここ数十年間でもっとも才能ある選挙運動家である。なにしろ近年の大統領のなかでもまれに見る落ち度だらけ男を二度も大統領に選ばせたくらだからね。ビルの得意技と言えばなんといっても泥試合。クリントンの度を超えた侮辱に侮辱を重ねた個人攻撃で相手を挑発し相手に無理矢理応戦させる。一旦選挙運動が泥試合に陥ればもうこっちのもの。ビルは必ず勝つ。

しかしもう一方で、いったいアメリカ国民はどれだけビル・クリントンの汚いやり方にたえられるだろうか?
日本のみなさんはクリントン大統領が現役当時結構人気があったとお思いかもしれないが、最初の二年が終わった中間選挙で共和党に議会の多数議席を大規模にとられてしまうほど人気がなかった。戦争もなく平和で経済もITバブル景気真っ最中でアメリカにとって非常に良い時代だったのに、ビルの支持率は常に42%程度という低いものだった。第二期目の選挙の時に全く魅力のないボブ・ドール共和党候補を相手に国民表の過半数も取ることができなかったくらいだからその人気度は分かろうというものだ。
しかも二期目にはセックススキャンダルと弾劾裁判で、ビルとヒラリーの汚い洗濯物を国民はさんざん見せつけられたのである。民主党のなかには自分の党の大統領だから共和党の攻撃に対して弁護せざる終えない立場に追い込まれことを未だに忌ま忌ましく思っている議員も少なくないだろう。そのビル・クリントンが再び全力投球で選挙運動をしようとしているのだ。これにつきあわされる民主党市民も気の毒といえば気の毒なはなし。
ヒラリーがオバマに勝って民主党の大統領指名を受けたとしたら、このキャンペーンは今年の11月まで続くのである。しかもビルの選挙運動を見ていると、今度の選挙に立候補しているのはヒラリーではなくてビルなのではないかという疑いが人々の間に生まれるだろう。ヒラリーはアメリカ始まって以来のフェミニスト大統領どころか、夫に利用された大統領とは名前だけのただの操り人形だというイメージがだんだん強くなってくる。
先日コメンターの方もおっしゃっていたが、ヒラリーは実績実績と繰り返してはいるが、いったい政治家としてどんな実績があるのだろうか?ヒラリーは若い頃から自分の力でキャリアを作り上げたことなど一度もない。ヒラリーの最初の弁護士としての仕事は夫がアーカンサス知事だったコネで法律事務所に就職させてもらっただけだし、その後は大統領の妻。そして元大統領の影響力を利用してビルからニューヨーク代表上院議員の職をあてがってもらった。独立した女性どころか、ヒラリーはすべて何でも夫のビルにお膳立てしてもらって来た夫に頼り切りの情けない女性だ。
今度の大統領選挙にしたって、ヒラリーが元ファーストレディでなかったら彼女をまじめに取り扱ったひとなどいるだろうか?たかが上院議員を二期つとめただけで、議会でこれといった活躍をしたわけでもなく、オバマのように人格的な魅力があるわけでもないヒラリーなど誰が相手にしただろう。
ところで陳さんは共和党にとってヒラリーが候補になるよりオバマのほうが手強いのではないかとおっしゃっていた。候補者としては確かにオバマは魅力的な人間だ。しかしオバマが相手なら共和党候補はまともな選挙運動が出来る。ヒラリーが相手では泥試合を避けることはできない。泥試合になったらクリントンにかなうものはない。
それに心の健康のためにも、アメリカ市民はまともな人間同士の選挙運動を望んでいるのではないだろうか?


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人権擁護法と男女共同参画に共通する政府介入と人権侵害

私はずっと人権擁護法とジェンダーフリーについて別々に書いてきたが、人権擁護法と男女共同参画にはその根底に共通する概念が存在する。それは政府による団体主義の強制であり、個人の人権迫害である。

無論人種差別や男女差別の廃止は奨励されるべきことだ。しかしそうしたことは個人レベルで個々が判断して変えたければ変えていけばいいのであり、政府が介入すべきことではない。これらの法律が人権迫害につながるのは、個人のし好や思想に関することを国がいちいち干渉してくるからである。私が以前に人種差別をなくす法律は存在しないでも書いたように、嫌いなもの同士を無理矢理法律で一緒に仕事や勉学をさせてもかえって反感を買うだけで差別排除にはかえって逆効果なのだ。

また擁護法のように一部の人間を政府が特別扱いするということは、必然的に他のグループの人間を組織的に差別するという結果を生むのである。これは人種差別や性差別をなくす目的で作られたアメリカのアファーマティブアクションが政府が奨励する人種や性差別へと変化してしまったことがいい例だ。これについてもう一度私の過去ログから引用する。

アファーマティブアクションの当初の目的は、雇用や大学などの入学審査のときに、人種や性別によって差別されないよう少数民族や女性の人権を守ることだった。…
ところが人種・男女差別をしてはいけない、という法律がいつの間にか少数民族や女性を特別扱いする法律へと変貌してしまった。…

大学入試を例にして説明すると、大学入学の際、少数民族だからといって入学を拒否されないように、新入生の人種の枠をつける方針が多くの大学で取り入れられた。 この枠組みはアメリカ社会の人口比率が参考にされており…ここでは便宜上黒人20%、ラテン系10%、東洋系10%、白人60%としておこう。 ここで問題なのは大学志願者の比率が社会の人口比率とは一致しない点である。…黒人やラテン系の若者が大学へ進む比率は東洋人や白人のそれよりもずっと低い。…

たとえば単純計算である大学の100人の枠のなかで、黒人志願者が20人、東洋人志願者が100人だったとする。同じ大学へ志願したにもかかわらず黒人の志願者は全員入学できるが、東洋人の合格倍率はなんと10倍。

今やアメリカの大学では女子生徒のほうが男子生徒を上回っているにも関わらず、いまだに女子を優先する大学が後を絶たない。しかし男女平等を主張する左翼フェミニストたちがこの女性上位の状況に文句をいう気配は全く見られない。いまや女子優遇男子冷遇法となったアファーマティブアクションを廃止すべきだという左翼フェミニストなど存在しない。

左翼フェミニストといえば、以前に左翼フェミニストと議論を交わしていたブロガーさんで、ここでも何度か紹介したBruckner05さんは男女平等を政府が政策として起用した場合、単に男女差別はやめましょうというような啓発だけでは済まない、「公的広報のガイドライン、啓発パンフレット、意識調査、学校教育(教科書、副読本)、行政の講座等々」を使って国民意識が操作がされると書いている。強調はカカシ。

行政は法律に基づいて施策を行い、男女共同参画社会基本法は「ジェンダーフリー思想に基づく男女共同参画」を「国民の責務」としているのである。そしてその実現を確かなものとするため国内本部機構を設け、監視の役割まで持たせている。….

呼び掛けはやりました。あとは国民の皆さんの自由選択ですよ、では終わらない。意識啓発は、その自由選択が政府が望む方向に確実に変化し、その変化が広く深いものとなるように、と意図して行われているのだ。…

施策の効果を上げようとすればするほど、介入の度合いは激しくなる。

差別意識を減らすなどという国内政策はそのうち、その成果を国民の意識調査で判断するなどという柔なことだけでは済まなくなる。政府介入は必ずエスカレートする。Bruckner05さんが紹介している家庭内暴力に関するDV防止法などもその典型だろう。括弧内はカカシの注釈。(ちなみにDV防止法は先日改正(改悪?)されたそうだ。)

自由な社会には“機会の平等”こそふさわしいのに、男女共同参画は“結果の平等”を目指す。その実現には上からの強権発動が欠かせないから、これはまぎれもない全体主義だ。「性差より個人差」「性別にとらわれない社会」と言いながら、他方、徹底して「女」にこだわるダブルスタンダード。数値目標によって女性の参画比率を恣意的に引き上げ、DVは事実上、女性のみを保護対象にし、女性限定で起業支援、健康支援をするなど露骨な逆差別。

人種差別も男女差別もこれは個人の意識の問題である。国がすべきなのは差別につながる法律を排除することであって、法律による意識介入ではない。一部の少数派を擁護するという建前で一部を優遇し他を冷遇するのであれば、まさにそれは政府が奨励する組織的差別に他ならないのだ。


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「イラク戦争の大義は嘘で固められていた」という嘘

English version of this entry can be read here.
このAPの記事 には唖然とした。これを日本語で説明しているこちらから引用すると、、

米国の調査報道を専門とする独立系報道機関「公共の完全性に関するセンター」(The Center for Public Integrity)は22日、「イラク戦争・戦争カード―偽装に彩られた戦争への道」(Iraq-The war card orchestrated deception on the path to war)と題するチャールズ・ルイス(Charles Lewis)、マーク・リーディングスミス(Mark Reading-Smith)両氏共同署名による調査報道記事を掲載。

その内容についてAPの説明はこちら。

ふたつの無収益報道組織による調査で、ブッシュ大統領と政権の幹部たちは2001年のテロ攻撃以降二年に渡ってイラクが及ぼす国家安全保障への脅威に関して何百という虚偽の供述を発表していたことが明らかになった。

この調査は「世論を効果的に刺激する目的で仕掛けられた操作があり、その過程において国は誤った前提のもとで戦争に導かれた」と結論付けている。

この調査の著者たちは何とブッシュ大統領とその政権が意図的に国民を騙して戦争をはじめたと糾弾しているのである。少なくとも読者にそういう印象を与える目的でこの『調査』が発表されたことは間違いない。
ではいったい彼等の言うブッシュ政権の「嘘」とは何をさしているのだろうか?

 その中で、両氏は、ブッシュ大統領をはじめ同政権の高官7人―チェイニー副大統領、ライス大統領補佐官(国家安全保障担当、当時)、ラムズフェルド国防長官(当時)を含む―が、2001年9月11日の米同時多発テロ以降2年間にわたって、イラクのフセイン大統領(当時)による国家安全保障上の脅威に関する少なくとも935回の嘘の声明を出していたことを明らかにした。

 またそれによると、演説、背景説明、インタビュー、公聴会やその他の別々の少なくとも532件の局面で、ブッシュ大統領とブッシュ政権の3人の高官が、パウエル国務長官(当時)、ウルフォウィッツ国防副長官(当時)、ホワイトハウスのスピーチライター、アリ・フレイシャー、スコット・マクラーレン両氏とともに、イラクは大量破壊兵器を既に保持している(さもなければ製造もしくは獲得しようとしている)と明言。またイラクが国際テロ組織アルカイダと関係がある、さらにはイラクは大量破壊兵器とアルカイダ双方と関係していると明白に語り、これら一致した発言が、ブッシュ政権のイラク戦争開戦の大儀につながっていったという。
 ブッシュ大統領1人に限ってみると、同大統領は、259件の嘘の声明を出した。そのうちの、231件はイラクの大量破壊兵器問題で、残りの28件は、イラクとアルカイダの関係についてだった。パウエル国務長官は、イラクの大量破壊兵器問題で244件の嘘の声明を出し、イラクとアルカイダの関係については10件の嘘の声明を出した。

「よもやイラクが大量破壊兵器を保持していなかったことやアルカエダと意味のある関係がなかったことは議論の余地はない。」と著者のチャールズ・ルイスとマーク・リーディング・スミスは語っている。二人はブッシュ政権が巧妙に作成し操作した誤った情報の基にアメリカは2003年3月のイラク戦争開戦に導かれたのだと断言する。
著者たちはブッシュ政権の嘘に含めているが、イラクがWMDを所持しようとしていたことは事実であり、調査結果もそれ自体は否定していない。また彼等はブッシュ政権のいうイラクとアルカエダに関係があったこと事態を否定しているわけでもない。単にその関係が「意味のある」ものだったかどうかに異論を唱えているだけなのだ。
下記は調査書からの引用だが、意図的に混乱する書き方になっているため、私の力で正しく翻訳できるかどうか分からないが一応やってみよう。

2002年7月、イラクとアルカエダテロリストとは関係があるのかという問いに対してラムスフェルドは一言「もちろん」と答えた。だが事実は同月に防衛庁諜報機関(DIA)が発表した査定(数週間後にCIAのテネット局長も確認した)では「イラクとアルカエダの間には直接な協力関係があるという確実な証拠」は見つけられなかったとある。さらにDIAはそれ以前の査定で「アルカエダとフセイン政権の関係は明かではない」としている。

この回りくどい文章を分かりやすく分析するのはちょっとしたチャレンジだ。

  1. 調査書の文章: 「2002年7月、イラクとアルカエダテロリストとは関係があるのかという問いに対してラムスフェルドは一言「もちろん」と答えた。

    意味: ラムスフェルドはイラクとアルカエダの関係が存在すると断言した。

  2. 調査書の文章: 査定..では「イラクとアルカエダの間には直接な協力関係があるという確実な証拠」は見つけられなかったとある。

    意味: 後の査定では関係があったことが判明しているが、軍事同盟といえるほどの密着な関係ではなかった。

  3. 調査書の文章: DIAはそれ以前の査定で「アルカエダとフセイン政権の関係は明かではない」としている。

    意味: アルカエダとイラクの関係について解るまで、我々はその関係の性質を知らなかった。

著者たちは1のラムスフェルドの返答が、2と3によって嘘だと証明されるといいたいらしいのだが、どういう理屈を使えばそういうことになるのかカカシにはさっぱり分からない。
彼等がいうもうひとつの「虚偽声明」( “false statement” )の例を出してみよう。いうまでもないが彼等のいう「虚偽声明」とは「明らかな嘘」という意味である。

2003年1月28日。毎年恒例の一般教書演説のなかで「イギリス政府はサダム・フセインは最近かなりの量のウラニウムをアフリカから購入しようとした わが国の諜報部からも核兵器製造に必要な高度の強制アルミニウム管をフセインが購入 しようとしたと報告を受けている。」と語った。しかしこの二週間前に国務庁の諜報調査部のアナリストが同僚に、なぜ自分がウラニウム購入の契約書は「多分偽造書」だと思うのかその理由を諜報関係者に説明する準備をしているとメールを送っていた。

この話は今さらここで持ち出すようなものではない。当時さんざんその真偽が分析されているのだ。ご存じない方のために説明すると、契約書そのものが偽造だったことは後になってわかったのだが、フセインがナイジャーからウラニウムを購入しようとしたのは事実である。ただナイジャー政府が国連からの批判を恐れてイラクへの販売を拒否したためフセインはウランを買うことができなかっただけだ。これはナイジャーへCIAから派遣されて調査に行った元外交官のジョー・ウィルソンがナイジャー政府の高官から聞いた話だとして報告しているのである。(後にウィルソンは自分で書いた報告書とは全く反対の声明文を発表してブッシュ政権を批判。それがもとで妻のバレリー・プレームのCIAでの地位があきらかになったとかなんとかいって訴訟になったが、ま、それはまた別の話だからここでは避ける)
この調査書が数え上げ、APがせっせと報告している何百にも渡る「虚偽声明」とは結局こういった類いのものばかりだ。これらの声明についてブッシュ政権からの説明を得ようという努力もされていないだけでなく、実際に政権の声明や発表が自分らの調査結果とどのように矛盾しているのかという分析など全くされていない。
しかしそれ以前にこの調査書を読んでいて一番疑問に思うことは、彼等のいう「虚偽声明」のうちどのくらいのものを、当時ほとんどの人たちが本当だと信じていたかということだ。共和にしろ民主にしろブッシュ政権と同じ諜報を持っていた議会の役員たちも政権と同じことを言っていたのではないのか?もし後になってブッシュ政権の発表した声明が誤りだったことがわかったとしても、当時誰もが真実だと信じていた事実をブッシュ政権が発表したのだとしたら、それは間違いかもしれないがとはいえないはずだ。いったい彼等の調査書のなかにそんなたぐいのものがどれだけ含まれているのだろうか?調査書はその点を全く明らかにせず、こんなふうにまとめている。

ブッシュは間違いや誤った判断について認めようとしない。それどころかブッシュ政権はイラクの脅威に関する戦前の公式発表と現実の「現場の真実」との明らかな相違について何度も国内諜報部の乏しい諜報のせいにしている。

またブッシュ政権の内部や政府の高官のなかからもブッシュが事実をわい曲したという批判が増えていると書かれているが、増えている批評家が誰なのかということは書かれていない。
ところでこの調査書を発表した二つの組織に関しては興味深い点が二つある。

  • 無収益の報道機関ふたつによる調査とあるが、、

    この二つの機関とは、The Fund for Independence in Journalismとthe Center for Public Integrityというのだが、11人いるFundのほうの8人までもがCenterの役員をやっている。つまりこの二つの機関は独立した別々の組織ではなく腰でつながったシャム双生児なのである。.

  • 独立報道機関とは名ばかりで、、、

    独立どころかCenterの投資者は左翼億万長者でブッシュ憎悪症候群を重く煩っているジョージ・ソロス。 創設者はビル・モイヤーというやっぱり左翼のジャーナリストで、その他にも左翼歌手のバーバラ・ストライサンド、フォードファウンデーション、昔は保守派だったが今や左翼と化したピューチャリタブルトラストなどがある。つまるところ、この二つの機関はバリバリの左翼組織なのである。

この調査書に書かれていることは何もいまさら蒸し返さなければならないほど目新しいニュースでもなんでもない。彼等のいう「虚偽の声明」とは単にリベラルや左翼が反対している意見や解釈の違い、もしくは当時は真実だと誰もが信じていたが後に間違っていることが分かったというものくらいで、おおよそ嘘だの虚偽だのという表現からはほど遠いものだ。
しかもこの調査書を発表したのは独立系でもなければジャーナリストでもない、ただのブッシュ大嫌い左翼プロパガンダ組織なのである。彼等がこんなろくでもない調査書を今の時期に発表したのが大統領選挙予備選真っ最中であることと無関係だと考えるほど我々読者はばかではない。
こんな『偽装に彩られた』プロパガンダをあたかもニュースででもあるかのように報道するAPもジャーナリストとして失格だ。もっとも架空のバグダッド警察署長からのインタビューを何年も載せていたり、テロリストを記者に雇っていたりするAPだ、このくらいはお手の物かもしれない。


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サウスカロライナ予備選バラク・オバマ圧勝! オバマに黒人候補のラベルを貼るクリントンの汚い手口

いえ〜い!!!行け、行け、オバマ!ヒラリーなんかぶっとばせ!
なんて別にカカシはオバマのファンではない。これは単に敵の敵は味方というせこい考えである。(笑)
サウスカロライナの予備選ではバラク・オバマが55%の票を獲得し28%を穫ったヒラリーを大きく引き離しての圧勝だった。

(CNN) 米大統領選挙の民主党予備選が26日、南部初となるサウスカロライナ州で投開票され、アフリカ系のバラク・オバマ上院議員が圧勝した。出口調査によれば、黒人有権者の約8割がオバマ氏を支持している。

開票率99%の時点で、オバマ氏は55%を獲得。女性初の大統領を目指すヒラリー・ロダム・クロントン上院議員は27%、サウスカロライナ州生まれの地元候補ジョン・エドワーズ氏は、18%にとどまった。
サウスカロライナ州は、民主党有権者のうち黒人が過半数を占めており、黒人票がオバマ氏を支持した。一方、オバマ氏を支持した白人有権者は、4分の1だった。また、クリントン氏の支持率がオバマ氏を上回ったのは、65歳以上と年齢が高い層のみだった。

繰り返すようだが私は特にオバマ候補が好きなわけではない。だが、オバマへのビラリー(ビルとヒラリー)の汚い攻撃を見ているとヒラリーだけは勘弁してほしいという思いがさらに強まってきた。
ヒラリーはどこかの討論会でオバマの人種やヒラリーの性別は選挙運動の際に考慮に入れられるべきではないと口先ではきれいごとをいっていた。しかし彼女のキャンペーンはアメリカ初の女性としてフェミニストに訴えかける運動だし、オバマに関しては黒人候補で黒人の間でしか人気がないといわんばかりの攻撃を毎日のように仕掛けているのだ。
サウスカロライナでのオバマの勝利は確かにオバマにとって良いことではあるが、白人票の1/4しか取れなかったというのは問題だ。なにしろ黒人票は全国的にはなんといっても少数派なのであり、やはりアメリカの圧倒的大多数を占める白人の支持を得られなければ大統領に指名されるのは不可能だ。無論それがクリントン派の狙いである。
ヒラリーの夫クリントンは「最初の黒人大統領」といわれたほど黒人の間で人気のあった大統領だった。ところが妻のヒラリーはサウスカロライナの黒人たちから完全にそっぽを向かれている。しかも皮肉なことにその原因が一度は黒人の味方と慕われたビル・クリントンのせいなのである。(APニュースより)

ここ一週間ビル・クリントンはオバマの主要な批評家として運動した…投票者たちは彼に耳を傾けた。APとテレビネットワークがおこなった出口調査では投票者の半分以上が前大統領が決断の際の大事な要素となったと答えた。しかしビル・クリントンの選挙運動に影響を受けたとこたえたひとのほとんどがそれでもオバマを支持すると答えた。

つまり、ビル・クリントンがあまりにもオバマを批判するのでオバマに投票したということになる。投票者の中にはビルのクリントンに投票するのは当たり前というごう慢な態度が勘にさわったという人もいる。ビルはオバマの大統領への野心は「おとぎ話だ」と語り、サウスカロライナの市民を苛立たせた。サウスカロライナの民主党事務所ではビルがヒラリーのキャンペーンの足を引っ張っているのではないかという質問に対して、ビルが来るまではヒラリーはオバマよりも支持率が高かったと語っている。
しかしサウスカロライナではオバマの黒人という人種に焦点をあてることでサウスカロライナの黒人票をうしなったかもしれないが、長い目でみたらこの作戦はオバマのイメージダウンになった可能性は大いにある。なぜならばサウスカロライナでオバマが圧倒的に黒人票を得たことで、一般の投票者は彼を「黒人だけの候補者」と見るようになる危険性があるからだ。アメリカは昔に比べたら決して人種差別意識が高いとはいえない。だが人種を前に押し出しての選挙運動は好ましくないのだ。
ビル・クリントンはオバマの今回の勝利は単にオバマは黒人に人気があるというだけのことであって、市民全体の支持を得ていることにはならないとほのめかしている。「84年と88年にジェシー・ジャクソンだってサウスカロライナで勝ってますからね。」と黒人票以外は全くとれなかったマイナーな黒人候補者を持ち出して来てビルはオバマもその程度の候補で問題にならないと言いたげである。
10日後に予備選がある州の黒人投票者の割合はカリフォルニア8%、ミズーリでは15%、ニューヨークでは20%、テネシー23%、ジョージア47%だ。黒人票だけではこれらの州で勝つことができないのは明白である。
しかしながら女性票には強いと思われたヒラリーだが、サウスカロライナでは10人のうち3人の女性しかヒラリーに投票しなかった。どうやらサウスカロライナでは人種のほうが性別よりも重大だったようである。
米大統領選:ヒラリーの勝利にオバマが勝利宣言、混乱するネ…
ニューハンプシャー予選、期待どおりのマケイン(共)と意外…
ヒラリーが賢く見える? バラク・オバマの連続失言
いよいよ始まったヒラリー対オバマの非難合戦


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ハマス、エジプト国境を襲撃、イスラエルの責任問われる!

The English version of this entry can be read here.
ここ数日ハマス民兵たちがエジプトとガザを分ける国境の壁をブルドーザーなどを使ってエジプト国境警備隊の目の前で襲撃している

壁は未明に十数カ所で爆破された。ガザではエジプトから地下トンネルを使った密輸が盛んだが、密輸業者は朝日新聞の現地助手に「今日は商売あがったりだ」とため息をついた。

 ガザの人々はラジオなどで爆破の情報を聞いて車でラファに向かい、中心部のガザ市などでは人通りが途絶えた。
 武装勢力は壁の爆破後にブルドーザーで道をならし、車も通過できるようにした。住民らはエジプト側のラファのほか約40キロ離れたシナイ半島北部のアリーシュにも向かい、封鎖のために不足している乳製品や砂糖、炭酸ソーダ、たばこ、ガソリン、セメントなどを買い込んだ。

しかしいったい何故この時期にハマスはエジプト国境を襲撃などしているのだろうか?エジプトのホスニ・ムバラク大統領はガザの市民がイスラエルの輸出や交通規制によって人々が飢えているせいだとイスラエルを責めている。上記の朝日新聞の記事でも悪いのはイスラエルといわんばかりの報道である。

イスラエルによる制裁で物や人の出入りがほとんど止められているパレスチナ自治区ガザで23日、正体不明の武装勢力が南部のラファのエジプト境界にある壁の一部を爆破した。ガザの住民ら数万人がエジプト側に殺到し、食料や燃料などを買いだめして戻った。封鎖に風穴を開けようと、住民らが実力行使に出た模様だ。

にっくきユダヤ人め、なんでいつまでもパレスチナ人をいじめるんだ。たかが数千発のロケットを打ち込まれたくらいでガザへの食料や医療の無料供給を止めるなんて、なんて無慈悲なユダ公たちだ。か弱いパレスチナ人たちは切羽詰まってイスラエルの市街地を攻撃する以外に手立てがないというのに、イスラエルときたらそんなかわいそうなガザを秤量攻めにするなんて、鬼だ畜生だ!
飢えて貧乏で何の手立てももたないかわいそうなハマスは、燃料を大幅消費するブルドーザーや爆弾を使ってエジプト国境を襲撃。(爆弾の材料やブルドーザーを使う燃料はいったいどっから出てきたんだろうね?)
ハマスがエジプトを侵略し、腐敗したエジプト警備隊がこの攻撃を見て見ぬ振りをし、無力なムバラク大統領はすべてイスラエルのせいにする。今日の朝日新聞によればエジプト側はハマスの越境を一部許す方針を発表した。

 パレスチナ自治区ガザとエジプトの境界壁が破壊され、大量のガザ住民がエジプト側に不法越境している問題で、エジプト政府は26日、ガザ住民の流入を阻止しない方針を表明した。エジプト治安当局は「自由往来」は食料や燃料など品不足の解消に限り認めるとし、監視強化のため境界に治安部隊を展開。ガザ住民との衝突で部隊側に約40人の負傷者が出ている。

エジプトの警察はモスレムブラザーフッドというテロリストに牛耳られており、大統領といえどもそれほど影響力がないようだ。MBはハマスとは同じ穴のむじななので、ハマスの襲撃行為に積極的な抵抗などしないというのも納得がいく。しかしエジプトがパレスチナ人の越境を許可した場合、軒下貸して母屋とられるということになりかねない。パレスチナ人はアラブでいったら下の下の民族でその柄の悪さは定評がある。こんな奴らの越境を一時的とはいえ認めたらどういうことになるのか、ムバラクはちょっと考える必要がある。
イスラエルはいつまでもパレスチナ民族などというペストの面倒を見る義理はない。今の腰抜けオルメルト政権が倒れれば次のイスラエル政権は保守派強行形のビービーことベンジャミン・ネッテンヤフ首相が指揮をとるだろう。そうなればパレスチナの難民がエジプトにどっと流れ込むこと必至である。
もっとも度重なるハマスのエジプト国境襲撃はイスラエルにとっても心配である。なぜならハマスはエジプトを通じてテロに必要な物資や人員をおおっぴらに輸入するに違いないからだ。イスラエルはハマスのエジプト越境はイスラエル攻撃の準備であるという見方をしており、リゾート地域のサイナイへの旅行は控えるようにと警告している。一年前に自爆テロがサイナイを通ってイスラエル入りしているからである。
エジプトとイスラエルの国境ぞいに壁はない。二つの国は1978年以来ずっと平和的な関係にある。ハマスのテロリストが自由にエジプトに出入りできるとなれば、ハマスがイスラエル・エジプト国境からイスラエルへ攻撃を仕掛けることが容易になる。
オルメルトのパレスチナ対策は失態に次ぐ失態で、すでにカディマ党は崩壊寸前。今選挙が行われればリクード党が多数議席を獲得できるだろう。そうなればイスラエル政府始まって以来の純粋な多数党が誕生するかもしれない。そうなれば新政権は他党の許可なくパレスチナにたいして強行手段がとれるようになるのだ。そういう時にエクド・オルメルト首相はなんとパレスチナオーソリティー(PA)にイスラエル・ガザ通路の警備を受け渡そうと考えているというのだからその馬鹿さ加減はあきれかえってものがいえない。PAに警備を任せるということはハマスの自由通過を認めるというのと同じではないか。こんな味方なら敵はいらない。
ここでちょっとハマスの歴史を振り返ってみよう。ハマスは1987年にシーク・アクメッド・ヤシンというモスレムブラザーフッドのガザ分家リーダーによって創設された。モスレムブラザーフッドの本家は無論だれあろうエジプトイスラミックジハード(Egyptian Islamic Jihad)であり、アルカエダのナンバー2、アイマン・ザワヒリなど多くの過激派テロリストを生み出した凶暴なテロ集団である。
モスレムブラザーフッドの本拠地は間違いなくエジプトであり、最近のハマスとの親密な関係はイスラエルだけでなく対テロ戦争にたずさわる我々全体にとって非常に心配な状況である。


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マケインの選挙役員に元メキシコ政権閣僚が! 大統領候補の怪しげな国境警備政策

昨日ラジオを聴いていたら、ミッシェル・モルキンが共和党の大統領候補ジョン・マケインのヒスパニックアウトリーチディレクターというラテン系投票者の票を集める役員ともいうべき人物が、元メキシコのビセンテ大統領の閣僚であったことが判明したと語っていた。
この人物はワン・ハーナンダズ博士といい、メキシコと二重国籍を持つ。博士はアメリカとメキシコの間の国境は完全にオープンであるべきだと主張している運動家でもある。
なぜこの事実が問題なのかというと、今保守派共和党の間では移民問題および国境警備対策が非常に重大な問題と考えられているからである。マケイン議員は以前から国境に建てる壁に反対したり、民主党議員と共同で違法移民を合法にする法案を提案したことなどもあり、移民問題ではリベラルすぎるという批判があった。大統領候補に出馬した際、マケインはそれまでの姿勢を変えて「自分は間違っていた。法案の失敗を教訓にした」と討論会などでも心変わりを説明し、国境警備に力を入れると強調していた。
そのマケイン議員の選挙役員のなかにオープン国境を唱える運動家がいるということは、マケイン議員が国境警備対策について心変わりをしたというのは単に選挙に勝つための手段であり、もともとそんな気は毛頭ないのではないかという疑問が生まれてしまうのだ。
先日古森さんが、イラクの増派作戦の成功で一時はどん底だったマケイン議員の人気が復活したとおっしゃっていたが、防衛については強いマケイン議員もその他の面では非常にリベラルで、共和党の保守派からはあまり人気がない。特に移民問題や保守派裁判官の任命に関しては保守派はマケインをかなり恨んでいる。そういう背景がある以上マケイン議員では共和党をまとめるのは非常に難かしいだろう。もちろんマケイン対民主党候補なら私はためらいなくマケインに投票する。イラク対策だけでもマケインを支持する価値は大いにあるからだ。しかし正直な話そういう選択は好ましくない。
ところで三日後(1/29)に迫っているフロリダの予備選ではマケインとロムニーの接戦である。リアルクリアポリテイィクスによればなんとその差はたったの0.1%!この時期にハーナンダズ博士のことが話題になればマケインの人気に影響が出ることは確実だ。ただ昨日マケイン支持を表明したニューヨークタイムスなどのリベラル主流メディアはこの問題を大きく取り上げることはしないだろう。となるとこの話が選挙に影響するかどうかはミッシェル・モルキンやタウンホールドットコムのような保守派ブロガーや保守派ラジオのトークショーホストら次第ということになる。
そんな保守派トークショーホストのひとりヒュー・ヒューイットのラジオ番組のなかでベルトウェイボーイズと呼ばれる政治評論家の二人が、これはたいした問題ではないと語っていたが、私にはそうは思えない。まだフロリダ予備選までは三日もあるのでこの話が人々の耳にはいるには十分な時間がある。もしフロリダの選挙で影響がなかったとしても次のスーパーチューズデーまでにはかなり時間があるので、それまでにこの話の影響は明らかになるだろう。


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マケインひいきのニューヨークタイムス、ミット・ロムニーをこき下ろす

English version of this entry can be read here.
アップデートとバンプ:あり、後部参照。
ニューヨークタイムスはジョン・マケインにとって手強い共和党の競争相手であるミット・ロムニーへの個人攻撃に必死だ。「ロムニーのリードは共和党に嫌悪感を起こす」と題されたこの記事を読んでみよう。

最近のヒラリー・ロダム・クリントンとバラク・オバマ上院議員たちの民主党側の争いに注目が行き過ぎているため、ミット・ロムニーに向けて寄せられている他の共和党候補競争相手からの攻撃は影が薄い。

ジョン・マケイン上院議員はニューハンプシャーにおいて、「決して豚と相撲をとってはいけません」 と今月ミット・ロムニーについて質問された時に答えた。「お互いに泥まみれになってしまい、豚はそれを好むからです。」

ロムニーを豚に例えるというのもずいぶん汚いやり方だが、マイク・ハッカビーの選挙運動員であるローリング氏に至ってはロムニーに暴力さえ振るいかねない言い方だ。

「歯でも折ってやりたいと思うようなミット・ロムニーみたいなやつへの怒りが私の思想の邪魔にならないよう努めなければならない。」

NYタイムスはミット・ロムニーへの憎悪は当たり前という姿勢を取った上で、その理由を説明している。

「ロムニーは、我々のように既存の規則に従いません。」とマケイン候補の選挙運動員、チャールズ・ブラック氏は語った。

ニューヨークタイムスはここでマケイン候補はグレン・ジョンソンというAPのリポーターがミット・ロムニーに激しく突っ込みを入れられているビデォを観てほくそ笑んでいたという匿名の目撃者の話をもちだしてくる。このビデオとはグレン・ジョンソン記者がロムニーの記者会見で場所柄も自分の記者としての立場もわきまえずに突然ロムニーを嘘つき呼ばわりして怒鳴りはじめた模様が撮られたビデオのことだ。 ジョンソンはロムニーに付いて密着取材をすべくAPから派遣されていたのだが、なにかとロム二ーに食って掛かっていた。この時もロムニーがマケインの選挙はロビーイストによって仕切られていると批判したことに対して自分だってロビーイストをアドバイザーにしているではないかとロムニーの演説にヤジを入れたのだ。しかし事実マケイン議員の選挙委員長はロビーイストのリック・デイビスであり、マケインに雇われている立場にある。ロムニーが無料でアドバイスを受けているロビーイストとでは立場上雲泥の差があるのだ。
正直な話、ジョンソンの醜態をみてマケインがほくそ笑んでいたという話はちょっと眉唾だ。そんな匿名の目撃者の話よりも過去にマケインと一緒に働いたこともあるダン・シュナー(Dan Schnur)の説明のほうが的を射ているだろう。

シュナー氏はハーバード法律学校のビジネス学科出の常に礼儀正しいロムニー氏と海軍学校で罰則点を友達と競い合った不良少年マケインとのやりとりを校庭に例えて
「かつてジョン・マケインと彼の友達は休憩時間にミット・ロムニーをいじめたのです。」 と語った。

シュナーは共和党の政治戦略者で今は誰の選挙運動にも関わっていないが、マケインの激しい性格についてはよく心得ているひとだ。
マケインの癇癪は悪評が高い。怒るとものすごい勢いで暴言を吐き、執拗なほど相手の行為を根に持つ性格のマケインにとって、優等生ミット・ロムニーはかつてマケインがいじめてロッカーに閉じ込めたまじめな同級生を思い出させるのだろう。 マケインにしてもマイク・ハッカビーやルディ・ジュリアーニにしても、学校ではやんちゃないじめっ子だったという印象を受ける。彼等にとってはミットのような優等生 が経済界で成功し彼等の三人の財産をあわせても全く足りないほどの貯金を持ってることに嫌悪観を抱いていたとしてもおかしくはない。
だがニューヨークタイムスの目的はまじめにロムニーが他の大統領候補から嫌われる理由を分析することにあるのではない。タイムスの目的は自分らが押しているジョン・シドニー・マケイン候補の競争相手をこき下ろすことにあるのだ。
となるとニューヨークタイムスの次の標的は誰だろう? ロムニーをこき下ろすのに利用したマイク・ハッカビーだろうか。ハッカビーもロムニー叩きの役目を果たしたら「信心深すぎる」とかなんとか言って批判されるだろう。それともフロリダで手強そうなジュリアーニに対しては「信心が足りない」といって責め立てるつもりかもしれない。
ニューヨークタイムスは絶対にマケインを批判したりはしない。だがそれもマケインが共和党の大統領候補指名を受けるまでの話だ。一旦指名を受けて民主党候補のライバルとなった日には手のひらを返したように「マケインは狂犬だ」とかなんとかものすごいマケインバッシングをはじめるのは十分に予想できる。
要するにニューヨークタイムスはマケインなら民主党候補に勝てる可能性は低いと踏んでいるのである。そのタイムスがここまでロムニーをこき下ろすということは、タイムスがロムニーの共和党候補としての実力をかなり買っているという証拠ともいえる。少なくともかなり手強い相手だと判断しているのだ。だとしたら我々保守派は断然ロムニーを応援すべきだろう。
アップデート:

本日ニューヨークタイムスは共和党からはマケイン支持、民主はヒラリー支持を表明した。

ニューヨーク(CNN) 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は24日、米大統領選の候補者のうち、共和党のジョン・マケイン上院議員と民主党のヒラリー・ロダム・クリントン上院議員を支持する方針を明らかにした。
同紙論説はマケイン氏について、「怒れる少数の非主流派を代表して、ブッシュ体制を終わらせると確約している唯一の共和党候補」と評価。同氏が議会で超党派的に活動してきた点を指摘し、他の共和党候補よりも幅広く米国民の支持を得るだろうとの見解を示した。
同紙はまた、共和党の別の候補者で前ニューヨーク市長のルディ・ジュリアーニ氏を「同時多発テロをもうかるビジネスに変容させ、選挙戦に利用した」と厳しく批判した。ジュリアーニ氏本人は、同紙の論説委員がリベラル派で、以前から度々失望させられているとして意に介さない姿勢を示すとともに、現職市長時代の実績を強調した。
一方、民主党候補について、同紙はバラク・オバマ上院議員を評価したうえで、クリントン氏の方が大統領に適任との見方を表明した。7年間に及んだブッシュ政権の失敗後、民主党候補は大統領の適性をより厳しく問われると指摘し、「クリントン氏は上院議員としての経験を利用して国家安全保障問題に対応し、世界各国の指導者や多くの米軍関係者の尊敬を得ている」と述べた。

ハッキリ言ってニューヨークタイムスに支持などされたらかえってマケインは迷惑なのではないかな?


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