November 6, 2007

イスラムの危機:テロリズムはイスラムの教えに反する

現代のテロはイスラム教とほぼ同義語になってしまっているので、テロリズムがイスラムの教えに反するなどといっても、そんなことは頭の弱いリベラル連中のプロパガンダとしか受け止められない読者も多いだろう。私がここで何度も紹介してきたロバート・スペンサーなどもその口で、テロリズムこそがイスラムの真髄だなどと平気で言う。だがここでルイス教授はあえて、イスラムは平和な宗教だと主張する。無論、現在世界の平和を脅かしているテロリストがイスラム過激派であることは否定できない。親イスラム教の人間がいくら「イスラムは平和な宗教だ」と言おうとテロリストの信念がイスラム教から派生したものであることは無視できない現実だ。ルイス教授もそのことは充分に認めている。イスラム教が戦いの宗教であることは過激派が好んで使うジハード(聖戦)という言葉に表れている。これについてはコーランの教えを説明するハディース(hadiths)では次のように示されている

ジハードはそなたの義務である、それが神のような支配者の下であろうと邪悪な支配者の下であろうとも。

日夜前線で戦う一日は一月の断食と祈りよりも勝るものである。 殉職者にとって武器による刺し傷よりも蟻の噛み傷のほうが痛い。 なぜなら刺し傷は彼にとって甘く冷たい真夏日の水のように歓迎されるからだ。 この合戦に参加せずに死ぬものは無信心者の死を迎える。 神は鎖によって天国へ引きずりこまれた人々を大切にする。 撃ち方を学べ、的と矢の間は天国の庭だ。 天国は刀の陰にある。

これだけみていると、いったいテロリストの説く言葉とどう違うのだという気がするが、ジハードをするにあたり、戦士はどのような戦闘規則(ROEs)に従わなければならないのかがハディースには明確に記されているという。

捕虜を優しく扱かうことを忠告しておく。 略奪は腐った肉ほども合法ではない。 神は女子供を殺すことを禁ずる。 モスリムはこれらの合意が合法であるとして縛られている。

またユダヤ教とキリスト教から派生したイスラム教は二つの宗教と同じように自殺を堅く禁じている。

預言者曰く、刃で自分を殺すものは地獄の火の中でその刃によって苦しめられるだろう。 預言者曰く、自分の首を吊ったものは地獄でも首を吊られ、自分を刺したものは地獄でも指され続ける... 自分を殺したものは地獄でも同じ方法で、復活の日が来るまで苦しめられる。

つまり、イスラム教徒はイスラム教を守るために戦うことは義務付けられているが、非戦闘員を殺したり虐待することは禁じられている。死を覚悟で戦うことは期待されるが、自ら命を絶つことは許されない。だとしたら、テロリストのやっていることは完全にこのイスラムの教えに反することになるではないか?何故このようなことをしている人間がイスラム教原理主義者だなどと大きな顔をしていられるのだろう?

イスラム過激派もいくつか種類が分かれる。サウジ体制の先制原理主義、イランの革命主義、そして無論アルカエダ過激派。どれもイスラム教の名の下に行動してはいるが、彼らの説くイスラム教はコーランを自分勝手に都合のいいところだけを選りすぐり、自分らの行動に都合の悪い部分は割愛するという、かなりいい加減なものだとルイス教授は指摘する。その典型的な例として教授は1989年の2月14日にイランのアヤトラ・ホメイニが小説家のサルマン・ラシディに向けて発布した「ファトワ」を挙げている。これは、ラシディが預言者モハメッドを冒涜する著書を書いたとしてホメイニがラシディの首に三百万ドルの賞金をかけた事件だが、暗殺者を雇って犯罪者を殺させるなどという行為はおよそファトワとは似ても似つかないものだそうだ。ファトワとは言ってみればシャリア法の起訴のようなもので、その後に容疑者は裁判によって裁かれ有罪となれば罰を言い渡されるのが筋である。ファトワの段階で罰を言い渡すだけでも違法なのに、暗殺者を募って容疑者を殺させるなど歪曲にもほどがあるのだ。

非戦闘員を大量に殺し自殺までする自爆テロにおいてはイスラム教の教えをいくつも違反していることは言うまでも無い。そういう人間を殉職者などと美化した言葉で呼び、自爆後には天国へ行って72人の乙女に囲まれるなどと、よくもまあ見え透いた嘘が言えるものである。

私は911直後にイスラム教諸国からテロリストを糾弾する声は何度か聞いたが、彼らのテロリストへの批判は必ず条件付だった。「テロリストは悪い、、だが、、」「罪の無い人々を殺すのは良くない。だが、、、」この「だが」の後につくことによって、これらの批判は何の批判にもなっていないことが常であった。つまり、「テロリストは悪い。だが最大のテロ国家はアメリカだ」「罪の無い人々を殺すのは良くない。だがアメリカに罪の無い人間などいない」といったように。

しかしこのように自分達の都合のいいように適当にコーランの解釈を変えられるというのであれば、私が考えてきた以上にイスラム教の穏健化には希望が持てることになる。自分らを原理主義などといって悪行の限りを尽くしている過激派は、実は原理主義どころかイスラムの教えから完全に離れた背信者であると穏健派は一般のイスラム教徒を納得させる必要がある。ミスター苺は最近、ジハードという言葉を使わず背信者という意味のハラビという言葉をつかってテロリストを表現するようにしている。我々異教徒がそのようなことをいくらやっても無駄なような気がするかもしれないが、実はそうではないと我々は考える。

これまで欧米諸国はイスラム教過激派に迎合しすぎてきた。彼らが自分達の戦いを聖戦と呼んだり、自分らの聖戦士だの勇士だのと呼んでいるのをわけもわからず彼らの言葉で繰り返してきた。我々は今後そのようなことをせず、テロリストはテロリストと彼らの言葉で呼んでやるべきである。彼らをジハーディストだのムジャハディーンだのと呼んで相手を讃えるべきではない。コーランを持つときにわざわざ手袋をするような自分らが卑しいものだというような態度を示すのは止めるべきである。そして我々は自分らのことをインファデル(無信心者)などと呼ばずに、きちんと彼らの言葉で「聖書の人々」と呼び、自分らの宗教に誇りを持った態度を見せるべきである。対テロ戦争は熱い戦いと共にプロパガンダ戦闘でもあるのだ。我々がテロリストを打倒したければ、そのどちらの戦場でも勝たねばならない。

イスラム教過激派はイスラム教の名のものとに西洋に宣戦布告をした。彼らの解釈はコーランの正しい解釈のひとつである。だが、テロリストを正当なイスラム教徒として扱ってはならない。テロリストを原理主義者などと呼んではいけない。コーランの解釈はひとつではない。長くつづられたコーランのなかには戦争を唱える箇所もあれば平和を唱える箇所もある。他宗教に寛容となり、弱いものを守り無実の人間を傷つけてはならないという教えもイスラム教の原理なのである。イスラム教徒の中には、西洋文化の落ち度も理解しながら、また自分らの社会の弱点を捉えながら近代化を進めようとしている人々がいる。前者とは戦い以外に道はない。だが、後者とは歩み寄れる。我々現代人はこの二つのグループを十分に見極める目を養ない、穏健派を出来る限り応援しなければならない。

これは現在イラクで行われているCOIN(対反乱分子作戦)の重要な鍵となるだけでなく、将来我々がイスラム教全体を敵に回すような大悲劇を起こさないためにも非常に大切な知識なのである。

November 6, 2007, 現時間 7:31 PM

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» イスラム教批判はイスラモフォビアなのか? from In the Strawberry Field
私が二年近く書いてきた過激派イスラム教批判について、ある場所で批判をなさっている方がらしたので、こちらへ来て話されてはどうかとお誘いしたのだが、カカシのブログは読んでいるということなので、彼の私及びアメリカのネオコンに対する批判をちょっと載せてみよう。 まずは一宿一飯さんのあるブログへのコメント。 所詮憶測ながら苺畑カカシさんのイスラモフォビアに関して感じることは、「恐らくこの人は実際にモスリムに合って対話した経験も無ければする気も無く、単に自分の世界観を維持するための仮想的を必要としているに過ぎな... [Read More]

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コメント

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下記投稿者名: アレン

おもしろい。まあ、少数派以外、イスラム教全体を敵に仕立て上げている人はいないかもしれないと思いますけどね。でも、確かにそうならないようにしていくべきだと賛成します。

で、もしカカシさんの仰る通りが本当だとしたら、つまりイスラム教は、ブッシュ大統領の言葉を使ってみれば、いわゆる「平和な宗教」だとしたら、Sura 9:5って節がどうなるんでしょうか。それは、ご存知だと思いますが、「剣の節」で、要約すれば無信心者を殺せって内容になっていますよ。これこそは「平和な宗教」というメムとぶつかり合わないんじゃないですか。

上記投稿者名: アレン Author Profile Page 日付 November 8, 2007 8:00 AM

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