イラクでの殺人減少の兆し、ブッシュ新作戦の効果か?

本日イラク・アメリカ連合軍はいよいよシーア派民兵の本拠地であるサドルシティに攻め入った。この攻撃を報道したAPの記事には大事な点がかなりぼやけて表現されているので、ここで分かりやすく大事な箇所を青文字 で表して分かりやすく説明してみよう。(ミスター苺の分析を拝借した。)

  • アメリカ・イラク連合の特別部隊はサドルシティでの手入れにおいて16人の逮捕した。家族たちは彼等は無実だと主張している。警備作戦サドルシティ奥深くに侵入する。
  • イラク警察は昨日シーア派のアデル・アブドゥール・マフディ副大統領を殺そうとした容疑者を逮捕した。イラク警察は高度な捜索の技術を身に付けはじめている。
  • 警備作戦の始まりで暴力沙汰が不足しているのか、24時間でAPが見つけることが出来た死体はたったの28体。イラク・アメリカ連合軍による警備作戦によって殺人件数は減少の傾向をたどっている。

ここで注目すべきなのは作戦開始の前までは犠牲者の数は 一日100人だったのに作戦開始後は20-30人に減ったことだ。.
さらに今日のAPニュースでは、自動車爆弾や自爆テロなどによる犠牲者はまだ出ているが、シーア派得意の暗殺形殺人が極端に減っているという。

爆弾テロは減っていない。火曜日にはバグダッド近郊ですくなくとも10人が殺された。しかし、警備作戦の成功はしたい安置所で計ることができる。それは体中に民兵の犠牲となり体中に銃弾を打ち込まれた遺体が首都の町中で発見される例が急激に減っていることである。
バグダッドにおいて今月発見された遺体のなかで射殺され拷問の痕のあるものは一月の954体から494体へと50%近く減っている。APの収集した資料によれば去年の12月にはその数は1222体だった。
「過去三週間に渡って減少が見られます。非常に激しい減り方です。」とイラク、アメリカ軍司令官のナンバー2にあたるRay Odierno中将は語った。
多くのスンニは殺人のほとんどがマフディ軍のようなシーア民兵かシーア警察官の一部にいるならず者のしわざだと長いこと主張してきた。

まだアメリカ軍の増派は20%程度しか完成していないにも関わらず、戦闘規則を変えただけでこうも効果があがるとは驚きだ。この調子なら増派二万一千兵の動員が完了する頃にはバグダッドは結構平定されているかもしれない。まだ作戦が始まって二週間も立っていないのに、反戦主義のAPですらアメリカ軍の手柄話を報道せざる終えなくなったとすると、この作戦、イラクでも気の短いアメリカ国内でも成功する可能性が高まった。


View comment

ブッシュ新作戦が生み出したそれぞれの思惑

さっきホットエアを読んでいたら、これまでカカシが書いてきたことをうまくまとめているのでそれを参考に私自身の考えもまとめてみよう。ブッシュの新作戦はまだ2週間もたっていないというのに、イラクの各勢力やアメリカ国内で様々な波紋をよんでいる。
1. シーア対シーア
私はシーア派への連続爆弾攻撃はサドルの仕業? まさかねでサドルが、自分の支持するダワ党のライバル党であるイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の有力者アデル・アブドゥール・マフディ副大統領を暗殺しようとしたのではないかと書いたが、サドルが抹殺しようとしているのはライバル党の政治家だけでなく、自分に忠実でないと思われるマフディ内部の幹部もその対象になっているようだ。
ご存じのようにサドルはイランあたりに隠れて影からイラクのマフディ軍に命令を下しているが、サドルは密かに信用できる幹部はイランなどの避難させ、気に入らない部下を連合軍に売り渡しているらしい。このやり方でサドルはすでに40人以上のマフディ幹部を中和してしまったという。
このようなサドルの対応はイランへの警告の意味もあったらしい。それというのもイランはサドルを通過してサドルの部下に直接援助をしていることが分かってきたからである。イランにとってはイラクが混乱状態にあればいいのであって、サドルなどいずれは用済みになる存在である。イラク・アメリカ連合軍による警備強化でサドルが我が身可愛さに戦わないのであれば、イランはサドルなどに構わずサドルに取って代わろうという野心家に手を貸して連合軍への抵抗を計ることも出来るというわけだ。
またイランが手を貸しているのはマフディ軍だけではない。サドルほどは親密でないとはいえ、ライバル等のSCIRIのなかにも反米でイランと通じている人間が何人かいる。マフディがだめならSCIRIがあるさ、、てなもんである。
サドルの、ほとぼりが冷めるまで大人しくしているという作戦は、案外裏目に出るかもしれない。(ついでにサドルがイランで暗殺でもされれば非常に都合がいいのだが、そうはうまくいかないだろうな。)
2. スンニ対スンニ

バグダッドでの増派が新聞の見出しを独占しているなか、4000の海兵隊員はアルカエダの影響力が強い西部のアンバー地区掃蕩に向かっている。スンニ反乱軍のグランドゼロであるラマディでの戦いは4月になるだろう。ペトラエウス将軍はサダムバース党の元将軍たちを戦闘に起用するつもりらしい。多くのスンニが「スンニを守る」はずのアルカエダを完全に、そして極度に憎むようになってきているおかげで、この作戦はうまくいくかもしれない。–ホットエア–

昨日もアルカエダに反抗的なスンニ派イラク人がアルカエダの自動車爆弾によって大量に殺されたという話をアルカエダ、スンニ派への攻撃激化の持つ意味でしたばかりだが、スンニの間でも強行派の外国人テロリストとバース党残党との間で亀裂がどんどん深まっている。アルカエダが暴力によってスンニ派の寝返りを防ごうとしてるなら、スンニ派は忠誠心よりもアメリカが後押しをしているイラク政府側につくのとアルカエダにつくのとどちらが自分達にとって有益かという選択をするだろう。やたらにスンニのモスクをふっ飛ばして信者たちを大量殺害しているようでは、アルカエダもスンニ派の支持を保つのは難かしいのではないだろうか?
3. 民主党対民主党
マーサ議員の馬鹿げた決議案のおかげで、民主党でもブルードッグと呼ばれる鷹派とムーブオンと呼ばれる反戦左翼との間で大きく亀裂が生まれている。
マーサ議員の失態で、先の選挙で多数派になったとはいえ民主党は党としての方針が統一されておらず、イラク政策についても全くまとまりがついていないことが顕著となってしまった。
お気に入りのマーサ議員の失態はペロシ議長でも弁護しきれないほどひどかった。マーサ議員をずっと押してきた彼女としてはかなりきつい立場に立たされたことになる。
ところで反戦左翼に押され気味の民主党は気をつけないと上院で多数議席を失う可能性が出てきた。鷹派の民主党議員として出馬し反戦左翼の陰謀で民主党候補の座を追われ無所属として立候補して見事当選したジョー・リーバーマン上院議員は、もし民主党の議会が戦費を拒否するようなことになれば今後は共和党と共に投票すると宣言しているからだ。そうなれば上院議会は一票差で共和党が多数派としてひっくりかえる。
それもまたおもしろいかも。


View comments (3)

シーア派への連続爆弾攻撃はサドルの仕業? まさかね

The English version of this entry can be read here.
今日はミスター苺のエントリーをそのまま紹介しよう。以下Big Lizards.net/blogより。
***********
ちょっとここ数日偶然にしては出来過ぎている事件がいくつも起きているので、ここでちょっと気になる点をあげてみた。

  1. モクタダ・サドルがイラク作戦変更と同時にイランへ遁走。
  2. サドルはマフディ愚連隊の仲間たちにもすみやかにイランへ避難しろと命令。あっと言う間にマフディ軍の姿はイラクから消えてしまった。
  3. 安全な場所からサドルはイラクに残っているマフディ軍のメンバーにほとぼりがさめるまで抵抗せずにじっとしてろと命令した。
  4. マフディ軍が街から姿を消したのと同時に、偶然にも大掛かりな自動車爆弾がシーア派居住地区で続けて爆発。しかも一つはシーア派の副大統領アデル・アブドゥール・マフディ氏の暗殺を狙ったものだった。
  5. サドルはすかさず「占領軍」が「スンニ」によるシーア攻撃をとめることが出来なかったと声明文を発表。「警備強化の真っ最中であるにも関わらず、我々は連続自動車爆弾によって我々の愛する罪のない市民が何千人と殺されるのを目の当たりにしている。」

    (無論この何千なんてのは大げさで、犠牲者の数は100人未満だろう。それに警備強化は真っ最中どころかまだはじまって二週間もたっていない。アメリカからの援軍もまだ予定の20%程度しかイラクに入国していない。こんな言い方はしたくないが、サドルはちょっと数字に弱いんじゃないだろうか?)

  6. 最後にブッシュの新しい作戦は完全に失敗だという見解が、サドルもイランもそしてアメリカメディアも全員で一致している。まだ計画のほんの一部しか実行されていないというのに!

このAP記事の巧みな結論に注目されたし。

サドルの声明文は、少なくとも42人が殺されたシーア派専門学校での爆発事件とほぼ時を同じくしてバグダッドにいるサドルの助手によって発表された。アル・サドルの手厳しい言語をつかった声明は今後の警備が難かしくなることの深刻さを示している。

ちょっと一歩下がって全体像を見てみよう。新作戦の前まで一般にいわれてきたことは、スンニとシーアのテロリストによって毎日平均100人のイラク人が殺されていたということだ。ブッシュの新作戦が始まって12日、この計算でいくと1200人のイラク人が殺されていなければならないはずだ。しかし1200人はおろか250人も殺されていない。ということは新作戦が始まってイラクでの死者の数は 80%も減ったことになる!新作戦が大成功だとは言わないが、少なくとも民主党がブッシュ大統領の政策をことあるごとに「無惨な大失敗」 とけなしているほど悪い結果ではない。
しかし昨日も今日もシーア地区で、あたかもサドルが予期したアメリカ軍による警備強化は大失敗するという事実を裏付けるかのように自動車爆弾が爆発した。マフディ軍なくしてシーアは安心できないというサドルの声明文が読まれたのと、まるで打ち合わせでもしたかのようにちょうどいいタイミングだった。
サドルはよっぽど運がいいのか、それともお〜? もしかして〜? ん? 僕の考え過ぎ?自動車爆弾を爆破できるのはスンニテロリストだけとは限らないからね〜。
もっともシーア派への自動車爆弾攻撃がサドルの仕業だなんてことを言うのは邪推というものだろう。まさかいくらサドルでも自分の政治勢力を有利にするために同族のシーアを殺すなんてことはしないだろう。いくらそれがアメリカ軍を追い出す結果になるからといって、いくらなんでもサドルにだって多少の愛国心はあるだろうし、、、
それにサドルがシーア派の副大統領を暗殺しようとしたりするだろうか? スンニ派の副大統領もいるというのに。アブドゥール・マフディはサドルにとっても仲間のはず, だよね?
いや…それがそうでもないんだなこれが。ウィキペディアによると アデル・アブドゥール・マフディ(Adel Abdul Mahdi)はSCIRIのメンバーである。首相の ノーリ・アル・マリキ(Nouri al-Maliki)はサドルの強い味方と噂されている。(口の悪いひとはマリキは、自分がイランの飼い犬であるサドルの、そのまた操り人形だとさえ言う。)そのマリキはダワ党の人間。
SCIRI とダワは宿敵だ。同じシーア派の支持を得ているとはいえ憎みあってるライバル政党なのである。しかもSCIRIはダワ党よりも強力でサドルにしてみれば邪魔な存在。

アブデル・マフディは長年隣国のイランに基盤をおいていた強力なシーア党であるイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)のリーダーで、アメリカ政府の政策には反対していたがクルドやイラク全国議会(Iraqi National Congress)を含むアメリカが支援しているサダム・フセインに対抗するほかのグループとは強いつながりがある。

現在サドルはダワを通じてイラク政府をコントロールしようとしてるわけだが、暗殺されそうになった副大統領はダワのライバル政党のSCIRIのリーダー。– ただの偶然かなあ?.
これらシーア派への連続テロ行為がスンニテロリストの仕業だという証拠はまだ確定されてない。第一爆弾積んだスンニのトラックがシーア派市民が目をこらして見張っているシーア居住区に簡単に入り込めるというのも変な話だ。
でももちろん僕はこれがサドルの自作自演だなんていう気は毛頭ないよ。いくらサドルがイランの息がかかってるからってそんなことがあるはずないよな。トム・クランシーの読み過ぎかな?


View comments (2)

イラク増派阻止議案で大失敗、マーサ議員赤恥を掻く

下院でイラク増派反対という拘束力はないが抗議としては意味のある決議案を通すことが出来民主党は気を良くしていた。この議決が上院でも通り国民の支持を得られれば、それを踏み台にこの次はいよいよ拘束力のあるイラク戦費停止議案も通せるかもしれないと意欲を燃やしていた。
しかし翌日の上院議会では可決に必要な賛成票を60票を集めることができず採決にすらもちこめずに議案は果てた。上院議会で可決できなかったことだけでなく民主党にはもうひとつ問題が生じた。
下院議会が反増派議案を通す直前、海兵隊出身で退役軍人としても申し分ない肩書きのあるジョン・マーサ議員がある議案を提案したのである。これはアメリカ兵が出動されるにあたって十分な休息期間をとっていなければならないとか、武器の安全性を確かめてからでなくてはならぬとか、一見アメリカ兵たちの身を守るかに見える提案だった。
民主党にとっては決して悪い議案とも思えないのだが、何故か民主党からは支持を得ていない。それどころか発案者のマーサ議員から距離を置こうとする動きさえ出ているのだ。そのことについてワシントンポストが詳しくかいている

民主党の新人ジョー・セスタック下院議員は退役海軍大将でイラク戦争反対派として政治力を得たひとだが、セスタック議員はマーサ議員の案はまだ救える部分もあるとしながら、反戦家として声高の議員もマーサ議員の軍隊の作戦に干渉する提案は「ちょっと不安」だと語る。「私はつい最近まで軍隊にいた身ですから、その経験から言わせてもらいます。」

どうもマーサ議員の独断的な行動は民主党内部でも問題なようだ。例えばマーサ議員はこの議案についてもほかの民主党議員達と、きちんと話あった上での発表ではなかったようだし、彼主催の反戦ウェッブサイトをはじめるにあたっても下院議長のペロシ女史にすら話しを通していなかったというのである。
マーサ議員の議案は実際には戦闘員の準備状態や武器の安全性など理不尽な条件をつけて大統領がいちいち議会にお伺いをたてないと軍隊が出動できないようにするという裏口から増派阻止をするという提案だったため、共和党からは戦費を削り取ろうとする陰謀だと激しい攻撃を受けている。にも関わらず民主党からマーサ案を弁護する声は全く聞かれない。

マーサ議員を援助してウェッブページをはじめた元下院議員で反戦運動家のトム・アンドリュース氏は激怒している。「問題は民主党にはどれだけ根性があるのかってことですよ。共和党がいくつもタッチダウンのパスをやってるというのに、民主党はフィールドにすら出てないんですから。」

それに間抜けなことに、マーサ議員はこの案の本当の目的がブッシュ大統領のイラク増派だけではなく、ブッシュ大統領の外交政策をことごとく阻止することにあるとべらべらウェッブサイトのインタビューでしゃべってしまったので、「軍隊を支持する」と主張してきたペロシ議長の足を踏み付ける結果となったのである。
民主党は全体的にイラク戦争には反対とはいうものの、必ずしも戦争をどう終わらせるかという点では意見が一致していない。
退役軍人やイラク帰還兵からなる議員たちの間では、動員されている軍隊の作戦に支障を来すような戦費差し止めは好ましくないという意見があるし、即刻撤退を望む左翼側は戦費を差しとめるなら差しとめるでさっさとやれ、とマーサの遠回しなやり方には多いに不満がある。
マーサ議員の勝手な一人歩きが民主党の間に深い亀裂をもたらしたようである。


View comment

アメリカ軍は撤退すべき、、ヨーロッパからだけど、、、

今日保守派が行き過ぎて完全な孤立主義になってるパット・ブキャナンのコラムを読んでふむふむなるほどという気がした。私はブキャナンは最近右翼が講じてファシズムに走る傾向があるのであまり好きではないのだが、それでもたまにはいいことをいう。イラクからイギリス軍が撤退するというニュースもだが、アフガニスタンへの長期出兵も乗り気でないNATOに対して、ブキャナンはいざという時に便りにならないNATOなんか見捨て、アメリカはヨーロッパから撤退せよと言う。

NATOは世界の勢力が集まっているなどというが、実際にはヨーロッパが危機にさらされた時にアメリカから助けてもらうための保険に過ぎない。ボスニアやコソボが示すようにNATOには一人稼ぎ人に25人の扶養家族がいるようなもんだ。

冷戦の後、国際家のインディアナ代表リチャード・ルーガー議員などは「NATOは遠征しないなら店じまいすべきだ」と言ったほどだ。ルーガー議員の発言はソビエトの脅威が消えた今、NATOはいい加減、世界平和維持の重荷を担ぐべきだという意味だった。
しかし1990年代のボルカン危機でヨーロッパは自分たちの遊び場すら警備できないことをあらわにした。アメリカが出ていってやさしく彼等を押し避けて事の始末にあたった。今日ヨーロッパがアメリカに向けて送っているメッセージはイラクから撤退し、イタリア、ドイツ、フランスなどはアフガニスタンでも戦いたくないというものだ。
「我々は家から出る気はありません。もしアメリカが帝国遊びをしたいならどうぞご勝手に。でも私たちは半世紀も前に撤退した場所へ我々の息子たちを送り出して戦わせるつもりなどありません。ご自分でおやんなさい。」
NATOは何のためにあるのだろうか?NATOなど常にアメリカの外交を批判しながらヨーロッパが危機に陥った時にアメリカをたよりにする脛かじりに過ぎないではないか。
NATOは経費がかかり過ぎる。我々はノルウェーからボルカン、スペインからバルティック、黒海からアイリッシュ海にかけて何十とある基地に何千という兵士を維持している。
それで我々は何を得たというのだ?なぜ我々の税金が自分達を防衛しようとしない金持ちの国々のために使われなければならないのだ?ヨーロッパの警備はわが国の警備よりも大事なのか?
世界大戦の時は一次も二次もヨーロッパはドイツから守ってくれと我々に助けを求めた。そして我々は彼等を救った。冷戦の初期の頃、ヨーロッパは東西ドイツの間にはいって防衛にあたったアメリカ軍を歓迎した。
だが現在、その脅威と共に感謝の意も消えた。今、福祉機構が国の富を食い尽くし、国民は老齢化し、町々が凶暴な移民に満たされている時、彼等はアメリカにこれまで通り彼等を守ってくれというのである、我々のそのやり方を常に批判しながら。
こんなもの同盟とは言えない。こんなものパートナーシップでもない。毛布を切り裂く時が来た。彼等が自分達の国を守る気がないのなら放っておけ。歴代の国々がしてきたように強い国が弱い国を制覇すればいいのである。
第二次世界大戦から60年もたち、冷戦から15年もたった今、ヨーロッパの防衛はヨーロッパの責任だ。

さすが生粋の孤立主義だけのことはある。
しかしアメリカがヨーロッパから完全に撤退する必要はない。ドイツの基地は閉めてポーランドあたりに移してはどうなのだろう。元ソビエト圏の新しいヨーロッパはかなり親米だし、ロシアの脅威はまだまだ存在するので彼等はアメリカを歓迎してくれると思うが。
またヨーロッパだけでなく、韓国や日本からもアメリカは撤退し、アジアの防衛はアジアに任せるというふうになるべきだろう。最近日本はその気になってきてるみたいだし、韓国などはアメリカに出ていけ、出ていけ、と騒いでいるのだからちょうどいい機会だ。
この際だから金のかかる海外基地はなるべく閉めて1990年代にがたがたになったアメリカ軍の再建にお金を使うべきだ。


View comment

武士道と現代戦略が衝突した『硫黄島からの手紙』

私は負け戦は好きではないので第二次世界大戦で日本軍側からみた戦争映画を観るのは気が進まない。硫黄島の戦いを描いた映画なら、ジョン・ウェイン主演の「硫黄島の砂」でもみたほうが気分がすかっとする。やっぱり戦争映画は勝ち戦を観たい。
しかしクリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」は勝ち負けは別として興味深い映画だ。
物語は硫黄島決戦の総指揮官となった栗林忠道陸軍中将(渡辺 謙)が硫黄島に赴任するところから始まる。初日から古いしきたりに従って海辺で敵を迎え撃とうと浜辺で穴掘りを命じていた大杉海軍少将(阪上伸正)と無駄な戦闘で戦士を失いたくないと考える栗林中尉との間で作戦上の衝突が起きる。
また栗林中尉は赴任早々頼りにしていた海軍の艦隊がサイパンで大敗し空軍も海軍も日本本土守備に向かったことを知らされ、硫黄島にいた海軍将校たちはそれを知っていながら赴任してきた指揮官の陸軍中佐にそのことを黙っていたことを知り、栗林は「大本営は一般市民だけでなく軍隊もだまそうというのうか?」と憤りを隠せない。
栗林中尉はアメリカに駐留していたこともあり、西洋風の現代的な戦略が頭にあるのだが、大杉や他の副官たちは御国のためにどのように勇敢に名誉の戦死するかという考えしかなく、どうやってこの戦に勝つかという思慮がまったくない。どのような事態になっても最後まであきらめず戦い硫黄島を守り通す目的の栗林中尉は、攻めてくるアメリカ軍だけでなく内部で何かと玉砕したがる将校たちとの双方と常に戦わねばならないはめになる。
映画の主人公は栗林中尉であるが、ナレーターの立場にいるのは西郷昇(二宮和也)という若い兵士で、彼はもともと軍人ではなく一介のパン屋である。身重の妻を残して召集された身で内地で威張り腐って日本市民を虐待していた日本軍がやっている戦争など全く興味はないし、名誉の戦死などごめん被りたいと思っているただの一等兵である。だからこんな臭い島アメリカにやっちまえとののしって上官にさんざん殴られたりする。

硫黄島からの手紙    硫黄島からの手紙

西男爵(伊原剛志)、栗林中将(渡辺謙)


私は渡辺謙以外の役者は全く知らないが、二宮和也の演技はあまり日本人らしくないという印象を受けた。しかし現代っ子の日本人というのはこういうものなのかもしれない。
この映画は決して反日ではないが、軍事独裁政権であった日本軍の弱さがどこにあったのかということを考えさせられる場面がいくつもあった。例えば、ひとりひとりの将校が個人の手柄ばかりを優先する武士道的な考えが先行しすぎ、戦国時代の日本で「や〜や〜我こそは〜」と刀を振り回して馬を蹴散らすような将校は自分の部隊がどのような行動をとることが戦闘全体に有利になるかとうことを考えていない。何かと刀を振り回しては威張り散らす伊藤海軍大尉(中村獅童)や、戦況が悪くなって指揮そっちのけで玉砕を嘆願する足立陸軍大佐(戸田年治)などがいい例である。こんな指揮官に指揮される部隊はたまったものではない。
そんな中で栗林の意図を理解し現代風の戦争に取り組むのは男爵でオリンピックの乗馬で優勝したこともある西竹一陸軍中佐(伊原剛志)である。西男爵はハリウッドの俳優たちとも食事を交わしたこともあり英語もはなせる教養の高い人物であり、負傷したアメリカ兵に治療を施せと部下に命令するほどの人情家でもある。捕虜にしたアメリカ兵の母親からの手紙を読んでアメリカ兵は鬼畜ではない、彼等も同じ人間だと気が付く日本兵たち。
この映画は硫黄島においてアメリカ軍と戦う日本軍の立場から語られているにも関わらず、アメリカ軍の存在はほとんどない。この映画の主題は日本軍側の独裁制の問題と、伝統的な武士道と現代的な戦略の衝突を描いた映画であるといえる。
もし日本軍が栗林や西のような将校に多く恵まれていたならば、日本軍はアメリカ軍に勝ったかもしれない。だが、もし日本軍が栗林や西で満たされていたならば、アメリカとの戦争など最初から始めなかった、、と言うこともできる。


View comments (2)

アルカエダ、スンニ派への攻撃激化の持つ意味

24日、バグダッド近郊のある聖廟でトラック爆弾が爆発し35人が死亡、60人が負傷するという事件があった。バグダッドで自動車爆弾が爆発したというニュースを聞いても、またか、と思われる方も多いだろうが、明らかにアルカエダの仕業と思われるこのテロの標的がスンニイラク人であることが興味深い。
外国人勢力であるアルカエダと地元抵抗勢力だったスンニイラク人とは、フセイン政権崩壊後米国及び同盟軍をイラクから追い出すという目的で当初は協力関係にあった。だが地元イラク人を卑下しているサウジ・ヨルダン系の外国人勢力とイラク人との間では最初からかなりの亀裂があった。特にザルカーウィのシーア派に対する残虐な行為は同じイラク人であるスンニ派イラク人からかなりの反感を買った。
すでに2004年の暮れあたりから外国人勢力に嫌気がさしたスンニ派部族のリーダー達が内々にではあるがアメリカ軍と和平交渉をおこなってきたことをご存じの方も多いだろう。アメリカ軍の新作戦が始まりテロリストへの取り締まりがより厳しくなるにつけ、無駄な抵抗は止めて安定したイラク政府を求めるスンニイラク人と、なんとしてでもイラクの混乱状態を保ちたいアルカエダ勢力との間の亀裂がさらに深まったものと思われる。

(攻撃を受けた)バグダッドから50マイルほど西にあるハバニヤーの聖廟のイマームはアメリカに支援されているイラク政府へのアルカエダを含めた武装勢力の攻撃に反対していた。

すくなくとも35人が殺され62人が負傷したと、ハバニヤーのアブドゥール・アズィズ・モハメッド少尉は語った。ハバニヤーは反乱軍の温床であるラマディとファルージャの中間に位置する。
犯行を認める宣言はまだ誰もしていないが、バグダッドの西にあるアンバー地区のスンニ同士の争いだという疑いが強い。武装勢力は最近政府を支持し暴力に抗議するスンニリーダーたちへの攻撃を強めている。

このようなテロ事件が相次ぐことで注意をしてみていないとイラクは混乱がさらに深まっているような印象を受ける。だが、アルカエダによるスンニイラク人への攻撃が増えているということは、それだけ反乱軍内部でのまとまりがつかなくなっているということを意味する。これがあともう少しで勝利をつかもうという勢力の行動だろうか? 長期に渡る戦争に疲れてきたのはアメリカ市民だけではないのだ。
アメリカのメディアも含め世界中のメディアはほとんど報道していないが、イラクではアメリカ兵ひとりが戦死するにあたり、その10〜20倍のテロリストが殺されているのである。アメリカ市民がアメリカ軍の犠牲で士気が弱まるのであれば、その十何倍の犠牲を出している敵側の士気消失も過小評価すべきではない。
スンニイラク人の立場に立って考えてみれば、これ以上の抵抗に何の意味があるというのだろう?フセインは処刑されてしまった。戦争によるバース党の再興は先ず望めない。外国からの助っ人は次から次に殺されてしまう。にも関わらず新イラク政府はくずれそうもない。アメリカメディアやアルカエダが繰り返しアメリカ軍は臆病者だからちょっと踏んばれば逃げ出すと繰り返しているにも関わらず、そんな気配は全くない。民主党が選挙で勝ったらアメリカ軍は退散すると聞いていたのに、アメリカ軍は撤退するどころか増派計画を進めている。いったいこんな戦いが何時まで続くのだろう? かといって自分達は外国人テロリストのように自爆する気などさらさらないし、「おい、もう駄目なんじゃねえのかこの抵抗ってやつさあ、この辺が潮時じゃねのかあ?」と考えているスンニ派も多いのではないだろうか?
またこのテロ攻撃がバグダッド市内で起きたことではないということにも注目すべきである。ファルージャ地域、特にアンバーはアルカエダテロ軍団の本拠地であるはずだ。自分達の本拠地で自分らへの犯行分子を処罰するような行為に出ているアルカエダの状態を考えてみよう。
イラクでテロがあったというニュースを聞いて、『アメリカの新作戦はうまくいっていない、イラクはこれまで以上に荒れている』と判断する前にテロ攻撃は何処で起きて誰が誰にやっているのか考える必要がある。
私はこれはアメリカの新作戦がうまくいっていて、アルカエダが追いつめられている証拠だと考えるが、みなさんはどうお考えだろうか?


View comments (3)

ミネアポリス空港イスラム教タクシー運転手の乗車拒否に厳しく対処

去年の10月アメリカのミネアポリス空港において一部のイスラム教タクシーの運転手が酒類を持った乗客を拒否するという事件が相次いでいることをお話した。いまや空港に出入りするタクシー運転手の3/4がサマリア出身のイスラム教徒であることから、乗客からの苦情が殺到し空港側もその対処に困っていた。

ミネアポリスの空港ではタクシーがお客を拒否した場合、一旦空港を出てタクシー乗り場の列の最後部に並び直さなければならないため、暇な時は2時間も3時間も自分の番が再び回って来るのを待たなければならない。そこでこの待ち時間を不服に思ったタクシーの運転手らが、空港に特例を出してもらい、イスラム教徒のタクシー運転手が酒類を持っている、または持っていそうなお客を拒否する権利をもつ特別許可を申し出ていた。空港側は宗教を理由に短距離のお客を断る運転手が出るのを恐れ、この申し出を却下した。

しかし、いくつものタクシーに乗車拒否をされた外部からの乗客から苦情が殺到しているため、空港側は酒類を拒否する車は特別な色のライトを車の上につけることを提案した…
しかし少なくとも今回に限っては、この提案は市民の間で非常に悪評版であったため、案はお釈迦になった。

空港側はタクシー会社の代表者や地元イスラム教団体、サマリア移民団体代表らを招いたりして、自主的な譲歩などお互いに納得のいく解決方法を話し合ってきたが、タクシー運転手側の譲歩は全くなかったという。そこで空港側はタクシー運転手による乗車拒否にたいしてさらに厳しい対応策を提案した。

結果、空港委員会は乗車拒否に対する厳しい罰則を提案する。一回めの違反は30日間の空港での営業許可の差し止め。二回目からは許可とり消しとする。

あっぱれ、あっぱれ、ブラボー!
空港側は一般利用者からの意見を求めており、三月二日まで手紙を受け付けるということだ。私は空港側が運転手側の理不尽な要求を受け入れるのではないかと心配していたのだが、かえって厳しい対処をするとはあっぱれである。
ここはアメリカ、アメリカのやり方が気に入らないならアメリカでタクシーの運転手などするなといったところだろう。ところで、イスラム教徒が酒類を運送できないというイスラム法は存在しないと他のイスラム教徒らは言っている。ニューヨークなどでもアフリカ系やアラブ系のイスラム教運転手がいくらでもいるが、酒類を持っていて乗車拒否されたなどという話はきいたことがない。またカリフォルニアなどイスラム教徒が経営するコンビニでいくらも酒類は売られている。イスラム教徒は自分達が酒を飲むことは禁じられているが、他宗教のものが酒を飲むのを阻止する義務はない。
ここでも何度も紹介しているが、一部のイスラム教過激派はなんとかアメリカや他国にイスラム教を広めようとしている。そしてそれはこのような小さなことから始まるわけだが、我々はその度ごとに戦って勝たねばならない。そうでないと気が付かないうちにいつの間にかアメリカがシャリア法によって支配されることになるからだ。


View comments (2)

アメリカ軍がイラクで戦う意義

先日カカシはイラク戦争に勝つのは重要で70%近くのアメリカ人がイラク戦争に勝つことは重要であると考えていると書いたことに関して、いったいイラクで勝つとはどういうことなのか、という質問がアセアンさんからあった。それについてアセアンさんはご自分のブログで穏健派?タカ派?という題名で書いておられるのでこれについてちょっと返答してみよう。

軍隊は外交交渉が潰えた後に出番が回ってくる的な言説もある訳ですが、それをそのまま使用するならば現在のイラクの状況は「話し合い」という手段が尽きてしまった為に「軍隊」という武力組織が登場していることになります。

つまり、相手を脅しつけようとして”手を振り上げた”状態ではなく、「既に相手をぶん殴ってしまった状態」な訳です・・・そのぶん殴られた相手とはフセイン大統領であり、彼の政権、体制だったのですから、そういう意味ではブッシュ大統領が既に発表しているように「軍事的な勝敗は決した!(=米国が勝利した)」のは間違いがないと考えます。(結論を言うと、一旦、行使してしまった軍事力はその強弱に関係なく、最後迄使い切るしか終結させることは非常に難しい、が故にその行使の判断には重大な責任があり、抜いたからには重大な覚悟が必要だ!っということですが・・・
 問題はその後の「占領政策」にあったのは事実です(ラムズフェルドなんかは、実はその辺り迄は深く考えていなかったのではないか?という雰囲気ですが)。フセイン政権を打倒する為の”懲罰的攻撃”は米国流の理屈からすると「祖国(米国)を護る為の戦い」だったとは思いますがその後の地上軍(州兵を主体とした)の侵攻から彼らの活動(治安維持活動という名称が示すように)の全ては、新生イラク国民を”敵”とは認識することではなく、それこそ平安な生活をイラク国民へ取り戻すことを目的としていたはずです。
現在のイラクで米軍は一体何と戦っているのか?それは何の為なのか?が(多分)一般的な米国民も、共和党も民主党も実は良く分からなくなっているのではないか?っと思えて仕方が無い。 (強調はカカシ)
 上記でも書いたように「米国本土の安全保障の為」という理屈は、タリバン政権とフセイン政権を崩壊させた時点で決着が付いている訳です(報復攻撃、懲罰的攻撃という意味ですが)。

先ずブッシュ大統領はフセイン政権を倒した直後、イラク戦争に勝利したとは言っていない。何度も言うがブッシュ大統領がバカだと思っているひとたちはブッシュが不注意な言葉使いをしていると思う傾向があるが、反ブッシュ派が考えるのとは裏腹にブッシュ大統領は言葉を非常に選んで使うひとなのである。ブッシュ大統領は「主な戦闘は終了した」とは言ったが、あえて「勝利した」とは言わなかった。なぜならブッシュ大統領はイラク復興はそう簡単にはいかないだろうと最初から予期していたからである。ブッシュはそれがどのくらい難かしい作業であるかという計算違いはしたかもしれないが、イラク国内の反乱軍や外国からイラクに潜入してくるテロリストたちと激しい戦いが長期にわたって続くことは考慮に入れていた。それはラムスフェルド防衛長官にしても同じである。
だからイラクに外国人テロリストが集まる可能性について問われたとき、ブッシュ大統領は「Bring it on! (どんとこい!)」と答えたのだ。またラムスフェルド長官もアメリカ国内で戦争をするのではなく、戦争を敵側の陣地にもっていくのだと語っていた。
つまり、イラク戦争はテロリストによるアメリカ国内への攻撃を防ぐために必要不可欠な戦争なのだとブッシュ政権は言いたかったのである。しかし、ブッシュ大統領もラムスフェルドもイラク戦争が対テロ戦争の一貫なのだということをアメリカ国民に充分に説明できていないというのは事実である。私がブッシュ大統領に対して持っている不満があるとしたら、一重にこの「説明不足」にある。
アメリカがイラクで戦っている最終的な目的はイラクの治安維持でも民主化でもない。イラクの治安維持や民主化はアメリカの最終目的を達成するためのひとつの手段に過ぎないのである。アメリカのイラク戦争は対テロ戦争の一部なのだ。アメリカ軍はアメリカをテロ攻撃の脅威から守るために戦っているのである。イラク市民には気の毒だが、イラクはそのための最前線となってしまったのである。
しかしイラクでアメリカ軍がアルカエダのような外国人テロリストと戦うことは対テロ戦争だと言えるかもしれないが、何故イラク人であるスンニ反乱軍やシーア民兵を戦うことが対テロ戦争の一部だと言えるのか不思議に思われるひともあるだろう。
アメリカがアフガニスタンと戦争をしたのも、フセイン政権を倒したのも、911が原因ではあるが、911への報復が理由ではない。ブッシュ大統領はアフガニスタンを攻撃する際に、アメリカは今後一切テロリストもテロリストを擁護する政権も許さないと宣言した。我々と共にテロリストと戦わないのならテロリストの味方をすることになる、とも言った。
アフガニスタンのタリバンが攻撃されたのはアルカエダというテロ組織とその首領のオサマ・ビンラデンを匿っていたからだし、フセインが攻撃されたのもフセイン政権がアルカエダやハマスなどのイスラム教過激派を支援していたことが原因だ。だからイラクにフセイン政権がなくなったとはいえ、戦後の動乱でイラクがテロリストの温床となってしまうのであればイラク戦争の意味が全く失くなってしまうのである。アメリカ軍がスンニ反乱軍やシーア民兵と戦う理由は、これらの勢力が生み出す混乱を利用してイスラム教テロリストがイラクで繁栄してしまうのを防ぐことにある。イラクが民主化することによってテロリストの温床を拒絶するのが最終的な目的なのだ。
ブッシュ大統領がそのことを国民が納得できるほどきちんと説明していないので、イラクでいった何が起きているのか、アメリカは何をやっているのか、理解できていないアメリカ人が多いのではないかと思っていたのだが、今日パワーラインで発表された世論調査を読んでちょっと元気つけられた。

パブリックストラテジーによって行われた世論調査によると、57%のアメリカ人が「イラク戦争は国際的なテロ戦争として大事な鍵を握っている」と答えたという。また57%が「イラクでの任務を完了することを支持し、イラク政府がイラク市民のために警備維持をすることができるまでアメリカ軍を駐留させるべき」だと答えた。
さらに56%が「ブッシュの政策には心配な点も多くあるが、戦争中である以上アメリカ人は大統領のを後ろから支えるべきだ」と答えた。また53%が「民主党が大統領にイラクから塀を撤退させようと押しているのは行き過ぎであり時期早尚である」としている。
また同じ調査において60%がイラクは多分安定した民主主義にはならないだろうと予測し、60%がブッシュの仕事ぶりには不満であると答えている。しかしながら民主党とは違って回答者たちはこれらの問題とイラクにおいてどのように前進すべきかということは区別して考えているようだ。

もっともこの世論調査の対象となったのは大学出で40歳以上の大人がほとんどだったことが結論に偏った影響を与えていると考えられるため、この世論調査のみでアメリカ市民のほとんどがイラク戦争の意義をよく理解していると解釈するのはちょっと乱暴だろう。しかしアメリカの中年世代がカカシと同じように考えてくれていると知ったことは心強い。


View comment

いよいよ始まったヒラリー対オバマの非難合戦

いよいよ民主党の大統領候補の戦いは始まったようである。

ヒラリー、オバマ両氏、非難合戦=民主党指名争い−米大統領選

 【ワシントン22日時事】2008年米大統領選挙で民主党候補指名争いの先頭を走るヒラリー・クリントン上院議員とバラク・オバマ上院議員の両陣営が 21日、激しい非難合戦を展開。民主党候補指名争いの「開幕戦」となる来年1月のアイオワ州党員集会までなお1年近く残し、2大候補のつぶし合いの火ぶたが切って落とされた。
 米メディアによると、両陣営の非難の応酬は、かつてクリントン前大統領のために資金集めに奔走したハリウッドの大物デービッド・ゲフィン氏がオバマ陣営にくら替えし、その資金集めのホストになったことが発端。それにとどまらず、同氏はヒラリー氏批判も繰り広げた。
 ゲフィン氏はスティーブン・スピルバーグ監督らとともに映画制作会社「ドリーム・ワークス」を創立した人物。ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、「クリントン前大統領は無責任な人間。ヒラリー氏は野心満々ではあるが、戦時に国をまとめていけるとは思わない」と切り捨てた。
 これに、ヒラリー陣営は「オバマ氏の資金調達係からの個人攻撃」といきり立ち、オバマ氏による発言撤回を要求。これを拒否する同氏の政治的資質を問題と見なす声明も出した。

まだアイオワ選まで一年もあるのにこんなに早期から殴り合いが始まるとは驚いた。ヒラリーとオバマは双方のウェッブサイトでお互いを攻撃しあっているが、その内容はかなり過激なものになってきている。先ずはヒラリーのウェッブサイトから:

オバマ上院議員は斬ったり焼いたりの政治活動を昨日批判していながら、自分の(選挙運動の)資金調達会長にクリントン上院議員と彼女の夫を辛辣に個人攻撃させている。
もしオバマ議員は誠実に政治活動のトーンを変えたいと考えているのなら、氏は即座にゲッフン(資金調達会長)の供述を糾弾し、氏を選挙運動から解雇し集めた資金は返還すべきだ。
民主党は政策について激しく討論を交わすべきではあるが、わが党においてオバマ議員の資金調達会長がしているような個人的な罵倒が存在する場所はない。

これに関してオバマ議員の返答は面白い。

バラク・オバマはクリントン夫婦とかつてのクリントン最大の支持者との間の仲たがいに関わるつもりは全くない。皮肉なことにクリントン夫婦はデイビッド・ゲッフンが(クリントン氏のために)1800万ドルの資金を集め、(ホワイトハウスの)リンカーンの寝室に招かれ寝泊まりした時は何の文句もなかった。またさらに皮肉なのは、黒人であるバラク・オバマが候補に選ばれれば、民主党全体が一緒に引きずりおろされると語ったサウスカロライナ州上院議員ロバート・フォード氏の支持を全面的に受け入れていることだ。

なんとバラク・オバマはアメリカ最初の黒人大統領(黒人に同情的という意味で)と言われたクリントン大統領の妻ヒラリーを人種差別者だと言って攻撃しているのだ。
さて今日になって、オバマが完全に手中に入れたと思っていたノースカロライナの有力な黒人コンサルタントが、オバマではなくヒラリーと契約を結んだことが明かになった。このコンサルタントはもう一人の候補者エドワードとも契約交渉中だったらしいのだが、どうやらヒラリーが提案した月一万ドルの契約費が他の二人を上回っての落札だったようだ。
オバマの選挙運動委員会はこのコンサルタントとオバマは契約寸前だったのを横からクリントンが契約を奪い取ったとして、オバマ側とコンサルタントのかわしたメールをメディアに公開するなどしてヒラリーを攻撃している。
エドワードはこの間反カトリックの下品なブロガーを雇ったり解雇したりしてかなり評判をおとしてしまったし、アメリカ社会の格差を売り物にして自分は貧乏人の味方だと言っておきながら、貴族のような大豪邸を建てていることが明かになってしまったりで人気がた落ち。
オバマとヒラリーの戦いはアイオワの民主党集会までの一年間どうやら激しくなりそうだ。


View comment