May 30, 2007

目覚めるヨーロッパ

さて、今日はマーク・スタイン著のアメリカ・アローン感想文の最終回として、なぜ私がヨーロッパがイスラム教の侵略によって滅びるなどということはないと希望を持っているのかその話をしたいと思う。これまでのお話は下記参照。

滅び行く欧州、栄えるイスラムの脅威 その1
滅び行く欧州、栄えるイスラムの脅威 その2
滅び行く欧州、栄えるイスラムの脅威 その3

復活するキリスト教

マーク・スタインのほぼ絶望的ヨーロッパ論の最大の間違いはヨーロッパが今のまま全く変化なくイスラム教による侵略に滅ぼされてしまうと結論付けていることだ。なぜヨーロッパが変わらないと断言できるのだろうか?事実ヨーロッパは少しづつではあるが変わりつつある。

スタインはヨーロッパの世俗主義が現在の欧州の堕落を招いたのだと書いている。私はこれには全く同意見。イスラム教という宗教に対抗できるのはヨーロッパの基盤となっているジュデオ・クリスチャンの価値観しかない。それを考えるとまだまだ規模は小さいが歓迎すべき現象がヨーロッパ各地で起きている。

まずフランス。2000年現在の資料を集めたこのサイトによると、1994年の世論調査では自分がカトリック教徒だと答えた人の数は67%で、58%が子供に洗礼を受けさせ50%が協会で結婚式を挙げたと答えている。これはその15年前の数にくらべて40%近い減り方をしていた。しかしその後フランスではじょじょにカトリックが巻き返しを見せており、毎年恒例の聖地Chartresへの巡礼では年とともに数が増し、二万から三万の参詣者が集まるようになっているという、その他の聖地や協会での会合でも年々若い人たちの参加者が増えている。またカトリックでは一番聖なる協会といわれるLourdes or Lisieuxなどでは100万人の参詣者があるという。

また大人になって洗礼を受けるひとの数も年々増えており、1993年では8000人だったのに比べ、1997年では12000人に増えている。1997年8月にジョン・ポール二世法王が来仏した際には一目法王を見ようと100万人がパリに集まったという。

CIAのファクトブックによると2007年現在のフランスではカトリック教徒は83〜88%だという。この数は自分がカトリックだと考えているひとの数ではないため、先の資料とは比較にならないが、次に多いイスラム教徒の5〜10%に比べて圧倒的な多数派を占めていることでもあり、フランス市民が再び宗教に目覚めればイスラムなど恐くない。ちなみに多少ながらユダヤ教徒も増えつつある。

ドイツでも、増えるイスラム教徒への脅威感に対抗すべく過去15年間にわたりキリスト教が再び人気を盛りかえしている。この2006年9月のウィークリースタンダードの記事によると、去年の9月にドイツを訪れたベネディクト法王のヨーロッパは経済発展と世俗主義の関係を考え直すべきだという演説が、ドイツ人の間で広く受け入れられたという。

減り続けていた協会への参詣者の数は、最近は減るどころか若いひとたちのあいだで増えている。今や8200万人いるドイツ市民の三分の二が常時協会へ行くという。カトリック教徒とプロテスタントの数はほぼ同じ。

カトリック教が圧倒的多数を示すイタリアどうかというと、1990年代には人口の90%を占めるカトリック教徒のうち常時協会に通う人の数はバチカンのあるイタリアでお粗末なほど少ないたったの30%だった。それがクリスチャンモニターのこの記事によるとイタリアでもカトリックを見直す傾向が出てきており、2006年現在では大人の人口の約半分が常時協会へ通うようになった。

第二次世界大戦後着々と世俗主義のデカダンスの道を歩んできたヨーロッパはじょじょにではあるが、再び宗教心をとりもどしているように見える。ヨーロッパの文明の基盤はキリスト教なのであり、これを忘れて文明を保つことはできない。そのことにヨーロッパが気が付きはじめているならこれは非常に喜ばしいことだ。

またカトリックへの信仰心が深くなれば産児制限を禁じる教えに従う夫婦も増えてくるだろう。そして宗教によって悲観的な将来像を描いていたヨーロッパ人が救いを見いだすことができればおのずとヨーロッパの出生率も増えてくるはずである。

宗教心が深くなると人々が保守的になってくるのも事実だ。ドイツやフランスで立て続けに保守派の政治家が政権を握ったのも偶然ではないと思う。

こうしてみるとヨーロッパもまだまだ捨てたもんではないと私は思う。希望を捨てるのは早すぎる。私はヨーロッパは目覚めつつあると信じる。

May 30, 2007, 現時間 4:07 PM

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下記は他のサイトからのリンクです 目覚めるヨーロッパ:

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私が二年近く書いてきた過激派イスラム教批判について、ある場所で批判をなさっている方がらしたので、こちらへ来て話されてはどうかとお誘いしたのだが、カカシのブログは読んでいるということなので、彼の私及びアメリカのネオコンに対する批判をちょっと載せてみよう。 まずは一宿一飯さんのあるブログへのコメント。 所詮憶測ながら苺畑カカシさんのイスラモフォビアに関して感じることは、「恐らくこの人は実際にモスリムに合って対話した経験も無ければする気も無く、単に自分の世界観を維持するための仮想的を必要としているに過ぎな... [Read More]

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コメント

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下記投稿者名: goda

こんにちは。

アメリカのイスラム教徒に関する統計の関連記事です。

記事ソース。
Muslims assimilate better in U.S. than Europe, poll finds
2007.05.22 Internet Herald Tribune
http://www.iht.com/articles/2007/05/22/america/muslims.php

私の拙い日本語訳。
http://extravaganza.at.webry.info/200706/article_3.html

情報源。Pew Research Centreの記事。
Muslim Americans: Middle Class and Mostly Mainstream May 22, 2007
http://pewresearch.org/pubs/483/muslim-americans

統計データは此方。
http://pewresearch.org/assets/pdf/muslim-americans.pdf

上記投稿者名: goda Author Profile Page 日付 June 8, 2007 12:25 AM

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