ドイツでは、肥満に関連した医療費を国の医療組織が負担していくのは不公平であるとし、肥満になるような不健康な生活習慣には税金をかけるべきだと提案した政治家がいる。
この政治家の名はマルコ・バンダービッツ(Marco Wanderwitz)というサクソニー州の議員。
「意図的に不健康な生活をする人には経済的に責任をとってもらうのが適切だと思います。」とバンダービッツ議員。
ドイツは日本と同じで国民皆保健の国。そして国経営の組織はどこの国でもそうであるようにかなりの経営難に悩んでいる。それでなんとかその救済をしようと、こういうふうに苦肉の策が出てくる訳だ。
ドイツはヨーロッパでも肥満率が非常に高いとされている。ま、ビールだチョコレートだソーセジだで高カロリーの食品で有名な国だからさもあらんだが、2007年の調査では21%の大人が肥満と出ており、肥満が原因の病気の治療費は年間170億ユーロにのぼるとか。
ハーバード大学の栄養学教授であるウォルター・ウィレット教授は、肥満に税金をかけるのは非人道的だと批判する。なぜなら肥満は生活習慣だけでなく、遺伝とか生活環境なども大きな影響を及ぼすからである。
「太っているというだけで税金をかけるのは公平ではありません」とウィレット教授。「太っている大半の人は、太っていたくはない訳ですから。」
健康経済学者のJurgen Wasem氏は、肥満対策には高カロリーのスナック菓子を規制する必要があるという。
「タバコと同じように、不健康な商品には効率の税金をかけることによって医療システムを守るべきです。」「アルコールとかチョコレートとか、またハンググライダーのような危険なスポーツ用品なども含まれます。」
冗談じゃない。いったいあんた何様? 私がどれだけお酒を飲もうとチョコレート食べようと、余暇にハンググライダーで遊ぼうと、私の勝手でしょうが。不健康な生活習慣っていったい誰が決めるのよ?いい加減にしてほしい!
また、子供の肥満が問題になっているドイツでは、教師達の間で、子供の体重を毎日はかり、肥満のこどもは特別医療クリニックにおくるべきだなどという提案もあるという。
国民皆保健が行き過ぎると必然的にこういうことになる。誰もが保健に入れるとなればどんな生活習慣を持った人でも同じように治療されなければならない。とすれば健康な人が不健康な人の治療費を負担することになり非常に不公平だといえばそうである。
だが、その解決法は政府が決める「不健康な生活習慣」への課税ではない。
例えば、BMIなどの数値で「肥満」と出た人でも、生まれてこのかた病気などしたことがないという人だっているかもしれない。そこの家系は皆太り気味だが、それでも健康そのもの。そんな人でも税金を上げるのか?
また、ジョギング大好きでガリガリに痩せているひとが、運動しすぎで関節を傷め、高額な医療費を必要とする膝のや腰の手術を色々したとしよう。怪我の原因は過激な運動にあったわけだから、ジョギングは不健康な生活習慣ということにして課税するのか?
国民皆保健という社会主義的な考えの枠の中でしかものを考えられないから、明白な解決方法が考えつかず、このような馬鹿げた考えが生まれてくるのだ。
もともと保健というのは、何かあった場合のために入っておくもの。保健は使わないで済めばそれに超した事はない。だが、病気勝ちの人や危険な生活をしている人はそうでない人よりも保健を使う可能性は高いし医療費もかさむ。
ではバンダービッツ議員がいうように、「意図的に不健康な生活をする人には経済的に責任をとってもらう」にはどうしたらいいのか。簡単だ、保険料を上げる、もしくは保険加入を拒むことである。
普通の民間の保険会社なら、タバコを吸う人、スタントマンとか危険な仕事をするひと、持病のある人、などの保険料は健康な人よりもずっと高くとる。あまりにも危険な仕事をしている人は保健に入れない場合もある。
反対に若く健康な人なら何か不遇の事故にでもあわない限り、特に医療費は必要としない。そういう人には安い非常時のみの保険に入ってもらえばいい。もしくは保険に入らないという自由もあるべきだ。
病気なのに保険に入れないなんて困るじゃないかという意見もあるだろう。当然そうだ。だが保険制度が民間企業に任されていれば、危険率の高い人を専門に保険料は割高になるが、保険にいれてくれる保険会社が現れる。
問題なのは保険システムの窓口が政府ひとつしかないということだ。しかも保険料が個人の健康状態ではなく、単に収入の割合で決められる税金だったとしたら、健康でも不健康でも個人の負担が全く変わらないのだとしたら、国民には健康管理をするインセンティブがない。
いますぐドイツに国民保険制度を改正して民間保険を取り入れよといっても無理かもしれない。だがそれならそれで、食品やスポーツ器具などに税金をかけるのではなく、医療費を多く使うひとほど保険料を高くし、個人の負担を増やせばいいではないか? そして医療費を使わない国民の保険料は下げるべきである。
誰も意図的に病気したり怪我をしたりするわけではないが、保険を使えば使うほど自分の負担が多くなると思えば、必然的に健康管理をするようになるだろう。何も国が個人に強制する必要などない。
私はこのように、なんでもかんでも政府が国民の面倒をみなければならない、個人の判断力を信用しない社会主義的な考え方は本当に嫌いだ。