フロリダ大学、多様性関係の従業員を全員解雇に, 一方空軍ではトランス自認男を称賛

こと多様性に関しての政策は三百六十五歩のマーチのように三歩進んで二歩下がるといった感じだ。片方で社会が正気を取り戻しつつあると思うと、もう片方で狂った方へと進んでいく。しかしアメリカ社会は確実に正気な方向へ向かっていると私は確信する。

先ず正気に向かっている方の話をしよう。金曜日、フロリダ大学は多様性・平等、包括性の三つで知られるDEIに関係する従業員を全員解雇すると発表した。同大学の新聞ザ・アリゲーターによると、同大学は同大学の多様性部門を閉鎖することになり、その部門のすべての職種を廃止することになったという。

これは州政府の予算がDEI関係のプログラムにあてがわれてはならないという新しい法律にのっとったものであるとのことだ。

この発表は、カレッジ・フィックス紙が、フロリダ大学では学部生4人につき1人の管理職を雇用しており、10年前と比べて12%増加していると報じた約1週間後に行われた。

UFのDEIイニシアチブは24人のフルタイム職員に相当し、大学には5300万ドルの費用がかかっている

いかにDEIというのがビッグビジネスであるかがわかる。この新しい規制はロン・ディサンティス知事によって署名されたものだが、ディサンティス知事はDEIプログラムのことを「差別的な取り組みである」と言っている。

ところでディサンティスが知事を務めるフロリダ州に基盤を持つディズニー社も最近経営不振で無駄なDEI部門を廃止。どんどん関係者を解雇している。

空軍士官学校、リーダーシップ・サミットでトランスジェンダー将校に注目

さて次は狂ってるほうのニュース。これはデイリーワイヤーの記事から拾ったもの。最近のアメリカ軍隊のお目覚めぶりは酷い。トランプ大統領の時代は軍隊におけるトランスジェンダリズムは禁止されていたが、バイデンになったとたんに単に許容するだけでなく積極的に奨励するようになった。それで防衛省はなんと「トランスジェンダー可視化の日」を推進する一貫として、空軍士官学校にトランス自認の現役軍人を招いてリーダーシップと包括性についての講演を行った。

米国宇宙軍のエンジニアであり、軍におけるトランスジェンダーの活動家でもあるブリー・フラム大佐が、「文化を受け入れ人々に力を与える」をテーマとした全米人格リーダーシップシンポジウムで講演した。軍関係者によると、彼は空軍のLGBTQ+取り組みチームの共同リーダーであり、「空軍と宇宙軍におけるLGBTQ+の軍務に対する障壁をなくすことに専念している 」という。

フラム中佐はトランスジェンダーでは軍隊最高の地位に居る将校なんだそうだ。私はこの男性の演説の様子をビデオで観たが、非常に気持ちの悪い話方をする人だ。ちょっと前なら男が(特に軍人が)あんななよなよした話し方をして将来を担う士官学校の学生たちにリーダーシップについて演説するなど考えられなかったが、バイデン爺さんのアメリカ軍の女々しさには呆れる。

フラム中佐は実際には軍人と言うよりただのトランスジェンダー活動家である。しかも非常に熱心な活動家でアメリカ軍全体を虹色に変えようと頑張っているのだ。彼等の使う「多様性」だの「包括性」だのというのは、以上な性趣向を受け入れるということであり、それが軍隊を強化するのにどんな役に立つかなんてことは二の次なのである。

「包括性には行動が必要であり、包括性には問いかけが必要であり、包括性には理解が必要であり、それはより多くの仕事であり、リーダーにとってはより多くの仕事です。「将来、私たちは頭脳の力で戦い、戦争に勝利することになるでしょう。もしその頭脳がたまたまトランスの身体を持っていたとしても……あなたとともに働いてほしいのです。なぜなら、彼らが宇宙やサイバー、その他あらゆる戦争領域での戦い方に革命を起こすかもしれないからです」

なんだこの訳の分からないスピーチは。ま、それはともかく問題はこのくだらない取り組みにどれだけの軍事予算が注ぎ込まれているかということ。なんと防衛省は2024年だけで1億1千4百万ドルをDEIの「無意識偏見や多様性研修」や「多様性と包括性取り組みの研修」に割り当てたいというのである。

またフラン中佐が中心となって設立された空軍のLGBT取り組みチームは左翼思想を全面的に押し出しており、トランスジェンダー可視化の日などを祝っている。

軍隊というところは比較的右翼保守の集まりのような印象があるかもしれないが、それは個々の軍人には保守的な人が多いというだけであって、上部の将軍たちは政治家であり軍隊の性質はその時の政権によって右へも左へも傾くのだ。近年の軍隊がかなりポリコレになってきているのは、軍隊に居る人間なら誰もが気付いた現象である。

例えばバイデン政権が始まったばかりの2021年1月、海軍勤めの私は職場でオールハンズ(All hands)という従業員全員強制参加の緊急会議に召集された。その内容というのが「どのように過激思想と戦うか」というものだった。これは1月6日の議事堂乱入事件のあった直後であり、彼等のいう「過激思想」とは明らかに右翼保守思想のことだった。職業柄職場の30%以上は現役及び退役軍人であるうちの職場では、個人的には右翼保守の考えの人が非常に多く居たので、この会議(というよりお説教)は非常な反感を買った。とはいえ軍隊という場所は上からの命令は絶対だ。特に現役軍人はやたらな反論は出来ない。なにせこれは大統領命令だから。

魚は頭から腐るというが、まさにその通りなのだ。

このようにアメリカ軍がどんどん左翼化していくにつれ、軍隊への志願兵の数が激減、前代未聞の大危機を迎えている。空軍、陸軍、海軍のどれも2023年の志願兵目標数に達しなかった。特に白人志願者が激減しているという。そりゃあそうだろう。「多様性」というのは反白人男性という意味なのは、もう誰もが知っていることだから。

こういう状況であるにもかかわらず、フランはさらに左翼アジェンダを軍隊の指導者たちに押し付け、軍人は「社会から疎外されたコミュニティーに寄り添い、支援することでアライとなる」ことができると主張するのだ。

私は20年以上も海軍で仕事をしてきたが、軍隊ほど少数派に対して平等な場所はない。軍隊では白人も黒人も東洋人も男性も女性も能力次第で昇進が出来る。民間企業では差別のあった時代でも、軍隊では黒人でも将校になれたし、下の位の人は上官の人種や性別にかかわらず、上官としての敬意を示して来た。軍隊ほど多様性があり包括的な組織は他になかったのである。しかしフランの言う多様性や包括性はそういう意味ではない。

さてこれについて空軍広報担当者はデイリーワイヤーの取材に対し下記のように述べた

「フラム中佐の講演は、軍における多様性の価値と、軍務への不必要な障壁を取り除くことの重要性を強調するものだった。「フラム中佐は、米空軍と米宇宙軍の両方で卓越したキャリアを持ち、その経験とリーダーシップを活かして、我々の戦争遂行任務と軍内の包括性を支援してきた。

広報担当者はまた、男性が女性になることができるというのが空軍士官学校の公式見解であると述べ、「意図的な性別の間違い」は差別に当たる可能性があると付け加えた。

「国防総省と空軍士官学校の方針に従い、米空軍士官学校は、個人の内的または個人的な性別感覚が、出生時に割り当てられた性別と一致しない場合があることを認識しています」と、広報担当者はデイリー・ワイヤー紙に語った。さらに広報担当者は、「意図的な性別の間違いは、機会均等ポリシーのもとではハラスメントや差別とみなされる可能性があります」と述べた。

軍隊がこれでは志願兵が減るわけである。私は軍隊に同性愛者が勤めることに関しては全く問題がないと思っているが、トランスジェンダーはMtFでもFtMでも反対である。何故かと言うと、彼等は先ず精神的に不安定であるということ、肉体的にも異性ホルモンのせいで不健康であり常に医療を必要とすること、特に男性の場合は女性ホルモンによってその運動能力が著しく落ちる弊害がある。など軍人としてはふさわしくない要素を多分に持っているからである。そしてもし性転換手術などということになったら、長期の休暇を必要とし、しかもその後の維持も大変で、とても戦地に赴けるような身体ではない。

フラン中佐はトランプ前大統領が次期大統領として返り咲いた場合は自分は軍隊から追い出される可能性があると示唆している。まったくそうあってほしいものだ。

もうひとつおまけで軍隊の話題。こんどは陸軍の話。Army quietly dropped 5-mile run from airborne school in 2018 (taskandpurpose.com)。実はこれ結構古いニュースで、2018年に陸軍空挺隊学校の卒業必須課目から5マイルランがこっそり取り除かれていたと言う話が、最近になって浮上した。

空挺隊というのは陸軍でもエリートのパラシュート隊のことである。これに関して陸軍の広報部はこのように説明している。

分析によると、身体的な訓練要件は、パラシュートの安全な装着、高性能機からの脱出、降下のコントロール、パラシュート降下の実行など、スタティックラインパラシュート操作に関連するコースの学習目標の達成とは相関していなかった

とのことだった。いや、空挺隊のエリート兵が5マイルくらい走れなくて大丈夫なのか?過去の卒業生の間からは5マイルランは弱い兵士を取り除くのに役に立ったとのことだ。

なんだか米軍の質がどんどん落ちているような気がする。


View comments (2)

能力よりも多様性が優先されるアメリカ航空機関、白人差別やトランスジェンダー特別扱いの危険性

数年前、早朝のロサンゼルス空港でスターバックスの列に並んでいたら背の高いパイロットの制服を着た人が前に並んでいた。空港だからパイロットが居るのは珍しいことではないが、私が気になったのはその人が長髪の髪の毛を雑なポニーテイルにしていたことだ。パイロットで長髪って珍しいな、まさかこの長身で女性ってことはないだろうなどと思っていたら、その人の番になり図太い男性の声で注文しているのが聞こえたので、あ、やっぱり男だと思ったのだが、振り向いたその人は顔に全く似合わない厚化粧をしていた!Oh, one of those! ああ、あっち系の人ね、と合点が行った。でもまあ腕さえよければパイロットが化粧をしていようとどうしようと構わんか、などと自分に言い聞かせてその場を去ったのだが、実はこの「腕さえよければ」というのがかなり怪しいという記事を読んでしまった。

デイリーワイヤーのマット・ウォルシが昨晩遅くXに「FAA(連邦航空局)のフライト・プログラム・オペレーション部門(航空機の運航全般を担当)の高官が、航空業界における白人男性の数を減らす計画を練っている内部映像を入手した」といって始めた長いスレッドには今の連邦航空局では多様性を重視するあまり空の旅の安全が軽視されていると書かれていた。

ウォルシは前々から最近のFAAのDEI(多様性、平等性、包括性)方針は職員の能力よりも人種や性別や性嗜好を優先させ乗客を危険にさらしていると指摘していたが、その確たる証拠を入手したようだ。非常に興味深い記事なので最初から読んでみよう。

先ずウォルシはFAAの航空機運航全般を担当するオペレーション部門のビデオ会議の映像を紹介する。この映像は、FAAの黒人女性のアンジェラ・マッカロー副最高執行責任者代理が、より多くの労働者が 「ランプからコックピットへ 」移動する必要がある、つまり、より多くの手荷物取扱者が航空会社のパイロットになることを望んでいる、と語るところから始まる。

会議が進むにつれ、マッカローは 「少し不快になる 」ことが重要だと宣言する。彼女は、フライトオペレーションが 「白人男性優位」であることを訴え、マネージャーたちに 「将来がどうなるかを話し合う」 必要があると言う。

これに対し、FAAのフライト・プログラム・オペレーション担当副社長であるデビッド・ウィル・リギンズは、「正直言って、素晴らしいことだ。この言葉は、私たちが本当に時間をかけて掘り下げて考えなければならないものです。」と答えた。

この映像は2022年4月のものだが、ウォルシはこの会議はもっと重大な問題が始まる兆候だったという。ここ数週間、ウォルシは航空業界の内部の人たちからDEIが一般市民を危険にさらし、彼らの仕事の邪魔になっているという話を聞いていた。

デルタ航空で働いているパイロットから得た情報によると、デルタ航空は最近、機長から繰り返し悪い評価を受けたトランスジェンダーであるパイロットを昇格させたという。その情報筋によると、このパイロットはトランスでなければ「おそらく研修期間を乗り切ることはできなかっただろう」という。

この情報源はまた、デルタ航空はトランスジェンダーであるパイロットの身だしなみや行動基準に関して、日常的に例外を設けているとも指摘している。社内では、デルタ航空は、自分が間違った体で生まれたと考えるパイロットのために、長いガイドを出版しているほどだ。

この部分を読んでいて私が冒頭で述べたポニーテイルの厚化粧男のことが頭をよぎった。男性パイロットの長髪など言語道断だが、女性でも長い髪の毛は後ろでお団子にしなければならないはずでポニーテイルはプロとしてだらしなさすぎる。それでも許されるのは彼がトランスだからなのだろう。

ウォルシは「このように業界全体があからさまな精神病を受け入れていることは、航空業界のあらゆる側面を苦しめている。」という。

彼が得た別の情報筋によれば、先進的な軍事システムを設計する仕事をしているエンジニアが、ことだが、「ジェンダーを考慮したシートベルト 」のようなDEIの提案に常に振り回されているという。このエンジニアの話では、大学を出たばかりの新入社員がやたらとDEIに関するアイディアを提案してくるというのだ。

このエンジニアによれば、彼の職場には二つのタイプの人間がいるという。一つは寝ても覚めてもDEI/ESG (Environmental, social, and governance 環境社会統治)しか念頭になく電子メールにわざわざ代名詞付きのサインをするような人達、もう一つは黙って仕事をするタイプだ。職場ではしょっちゅう白人以外のあらゆる人種や性嗜好グループを祝う行事が行われ、週に二回はDEI/ESG関係の訓練だの講習だので時間を割かれ、それがない時でも社員全員参加の会議と称してDEI関係の講義に強制参加させられるという。実は私も海軍の民間エンジニアリング部門で全く同じ体験をしている。毎月のようにラテン系だ黒人だ太平洋諸島民族の歴史といった催しがあり、そうでない時はLGBTや女性の月だなんだとゲストスピーカーが招かれて、オールハンズという全員強制参加の講演会があった。このエンジニアの職場では時間外でもDEIの名目でやれ昼食会だ、飲み会だ、映画鑑賞だ、と付き合わされているという。(強制飲み会参加とかまるで日本の職場みたいだな!)

またウォルシの元にはいくつかの情報源から、「eFast」と呼ばれるFAA最大のプログラムのひとつに関する文書も送られてきた。このプログラムでは、「インディアンの部族が所有する企業」と「社会的・経済的に不利な立場にある企業」を優先し、何十億ドルもの重要な助成金を提供している。FAAのeFASTに関する基本発注契約書には、1万ドルから15万ドルのFAA契約は、「社会的・経済的に不利な立場にある企業」のために「自動的に排他的に予約される」と記載されている。

いやあ、これも私の体験と同じだ。私は時々仕事で使う部品を購入することがあったが、軍隊なので近所の電気屋さんにちょっと買いに行くということはできない。ケーブル一本でも軍隊が指定した業者から注文しなければならず、少数派経営とか女性経営とかいったビジネスが最優先される。長年信頼関係を築いてきた業者が居ても、少数派経営の業者以外から注文する場合はいちいち正当な理由を提示しなければならず、それでも却下されることは多々あった。一度など、通常の業者からの購入が却下され、リストに載っていた少数派経営の業者への注文を余儀なくされたことがあったが、約束の納期を大幅に遅れて届いたと思ったら中国製の偽物商品。現場で使おうとしたエンジニアがどうもおかしいと気づいてくれたからよかったものの、気付かずに使っていたらどんなことになっていたか、、ここは軍隊だぞ、まったく!なんで中国製偽物を扱うような業者がリストに載っているんだ!

今年初めに羽田空港で起きた事故にしてもそうだが、あれは明らかに管制塔と湾岸警備隊パイロットとのコミュニケーションの行き違いによるものだ。あの事故は誰の落ち度かはまだはっきりしていないようだが、実はアメリカの空港では大事故には至らないまでも、ああいったニアミスは結構起きているという。管制塔職員やパイロットが能力よりDEIが優先されて採用されていた場合、今後はもっと大変なことが起きるのではないだろうか?

この無能と白人差別の組み合わせが、大規模な航空事故につながるのは時間の問題だ。多くの人々が命を落とす前に、航空業界にはまったく新しい任務、つまり安全性だけに焦点を当てた任務が必要なのだ。

とウォルシは締めくくる。


Comment

国際法専門家でも国際法違反行為を正確に判断できない理由

先日倉山満氏の国際法に関する話をご紹介したが、今回はX上でミリオタ自称のJSKさんが国際法は専門ではない倉山教授の話よりも専門家の意見を聞くべきだといって紹介したこちらのビデオ東澤靖教授のお話をご紹介しよう。このビデオは1時間30分もあるので読者諸氏に全部観ろとは言わない。それより先日紹介した倉山氏の話と関係のある部分の説明と、今のイスラエル軍の行動が国際法に違反するという東澤教授に反論をしたいと思う。以下敬称は省く。

東澤は戦場においてどのような行為が国際法に違反するかを説いている。34:20で民間人・民用物を攻撃対象としてはならない(区別原則)の話をしており軍事標的は軍事目的の施設に限られるとしている。しかしこれが禁止しているのは意図的に民間人や民用物を標的にする行為であって、間違った場合や付随的損害(コラテラルダメージ)は違反行為とはみなされない。

37:06の区別原則:予防措置の部分では攻撃する側にも防御する側にも攻撃から民間人を守る措置が義務付けられているとしている。攻撃する側の義務として自制、中止、警告、選択があり、防御側には移動、回避、予防(人間の盾禁止)などがある。

この部分は倉山が言っていた、標的となる場所が軍事標的であるかどうかの証明は、攻める側にも防御する側にもあると言っていたことと一致している。アル・シファ病院について語るなら、イスラエルは昔からこの病院は軍事標的であると主張しており、多々の証拠を提示していた。またこの病院を攻めるにあたり一か月以上も避難勧告をおこなっていた。

それと共にハマスにはその攻撃から民間人を守るために医療関係者や患者を避難させる(移動)義務もあり、病院が軍事目的に使われていないことを証明して攻撃の回避と予防をする責任があった。

さてではハマスとイスラエルによる国際法違反行為について考えてみよう。

43:48ハマス側の行為をどう考えるかで、東澤は次のような違反行為を羅列している。

  • 10月7日の民間人の殺害
  • 軍事目標以外へのミサイル攻撃
  • 人質をとっていること
  • 軍事施設を病院など民間施設の近くにもうけていること
  • 人間の盾?

何故人間の盾に?が付いているのか分からないが、次に45:13イスラエルの行為についても羅列がある。

  1. 多くの民間施設への砲撃と生活基盤の破壊
  2. 包囲戦
  3. 民間人への移動指示
  4. 病院施設への攻撃

ちょっとこれはおかしいのではないか?1番と4番だが、東澤は民間の施設でも軍事施設として使われていた場合は例外として攻撃の対象となると前に述べている。ではここで東澤はイスラエルが攻撃した施設が軍事施設ではないと証明出来ない限りこれらの行為が違反行為であるとは断定できないはずである。

2番の意味は私には解らないのだが、戦争で包囲戦は一つの作戦であり、戦闘作戦が国際法に触れるというのであればこの法律そのものに問題があると思う。だがそれが法律だというならそれはちょっと横に置いておこう。

3番の民間人を強制的に移動させる行為は違法だというが、それは味方側の占領の目的としてそこに住んでいる人たちを無理やり立ち退かせる行為であって、攻撃の巻き添えにならないように無関係な民間人を避難させる行為とは同じではないはずである。だいたい民間員の避難はハマス側の責任であり、その責任を自らの危険を冒してまで負ったイスラエル側に対してこれが国際法に違反するなどというのは言い掛かりとしか思えない。

東澤はどのような行為が国際法に違反するかの説明はしているが、イスラエルの行為がそれに当てはまるという適切な説明を怠っている。そして私が全く同意できないのが46:39で始まるイスラエルのガザ地区への攻撃継続は、自衛権によって正当化されないと言う部分だ。東澤はまず「自衛権の行使には限界がある。」とし次の項目が必要条件となるとしている。

  1. 武力攻撃の存在
  2. 急迫性
  3. 必要性
  4. 均衡性

そして今の状況はそれぞれどの条件のどれも満たしていないとしてこう説明する。

  1. パレスチナ占領による急迫性の欠如。
  2. ハマス武装勢力を領域内から排除し急迫性は終了している。
  3. 将来の攻撃やテロの可能性は必要性としては不十分。専制的自衛を国際検証は認めていない。
  4. 「反撃」の行っている攻撃は明らかに過剰人質がとられていることは武力攻撃を正当化しない。

東澤はさらに歴史的な背景や大義名分は国際法では考慮されないとも語っている。先ず1と2だが、これはイスラエルがハマスの侵略を追い払ったというのであれば意味があるが、ハマスはイスラエル領に奇襲攻撃をしかけ1200~1300人の民間人を虐殺したうえでガザ側に自発的に引き返したのであって、イスラエル軍の反撃にあって逃げ帰ったわけではない。これは攻めて来た軍隊がこちら側の反撃にあって撤退したのとはわけが違う。なにしろガザはイスラエルと国境を接しておりほんの数キロの余裕もないのである。彼等は単にベース基地に戻って再度の攻撃を狙っているのだ。そしてハマスのリーダーは今後も第2第3の攻撃をすると宣言している。この状況で急迫性がないとはどういう意味だ?

3の必要性にしてもそうだ。イスラエルのやっていることは先制攻撃ではない。宣戦布告をした敵に対しての攻撃である。すでにこちらに攻め入り1300人もの民間人を虐殺(東澤も認める国際法違反行為)をし、今後も責め続けると宣戦布告をした敵への攻撃に必要性がない?いったいどうすればそういう結論が生まれるのだ?

そして均衡性。イスラエルの行為が「明らかに過剰」とは何を基準にして言っているのだ?この均衡性に関しては敵と味方の犠牲者の数では決められないという話は以前にもお話した通りである。

東澤のような弁護士が理解できないのは、これは法廷ではないということだ。相手がどれほど危険であるかを判断するのはその場に居ない法律家ではなく現場で戦争をやっている軍隊がするのだ。だから今現在起きている戦争が国際法に触れるかどうかはハマスのやったようなあからさまな違法行為以外は簡単に判断することは出来ないのである。東澤の専門は法律であり戦争ではない。この戦争に急迫性があるか必要性があるかを判断できるのは同じ敵と長年戦ってきて相手の出方を十分承知している当事者だけである。

つまりどれだけの専門家であろうとも、現場の戦況をきちんと把握できない人には誰がどのように国際法に違反しているかということは正しく判断できないのである。

東澤靖:所属明治学院大学 法学部グローバル法学科 教授学位、法学士(1983年3月 東京大学)LL.M.(1994年5月 コロンビア大学ロースクール) 研究分野:人文・社会・国際法額・交際人権法・公法学、憲法



View comments (2)

アメリカ保守の親たち「今の米軍に息子や娘を入隊させたくない!」軍隊強化より多様性を重視するバイデン政権

アメリカの右翼保守は伝統的に愛国者が多くアメリカ軍を強く支持してきた。一族郎党数人が軍隊経験があり、今も若い世代が軍隊にいるなどという家庭はごく普通である。うちも一応ミスター苺が若い頃に海軍に居たことがある。しかし最近アメリカ軍は志願兵が激減しており、国防に必要な人員枠が満たされていない。こんな状態で戦争でも起きたら一体アメリカはどうなるのだろうか?しかし何故そんなにもアメリカ軍は兵士調達に苦労しているのか。実はそれはバイデン政権の軍隊の多様性重視に問題があるのではないかといわれている。

そんななかバイデン政権の防衛省は2024年度の予算1.147億ドルを「多様性・平等、包括性、手の届きやすさ(diversity, equity, inclusion and accessibility (DEIA))プログラムに使うため予算を上げてほしいと請求した。

「軍部、OSDの多様性・公平性・包摂局、国防機会均等管理研究所にまたがるこの資金は、DEIAを促進し、DEIAの価値、目的、配慮をビジネスや任務遂行の方法に取り入れることを目的としたプログラムやイニシアティブに投資されている。」

だそうだ。で、具体的にこれらはどんな風に使われるんだ?もっとLGBTQ+αの連中を入隊させるのか?女性兵士の中絶の資金を出すのか?トランスジェンダーの性転換手術費用を出すのか?軍隊基地にゲイバーでも作るのか?

防衛相は過去6年にわたり毎年行われる監査で不合格になっている。2023年度の監査では29のカテゴリーのうち7つしか合格していない。税金がどう使われているかも不透明であるのに、これ以上に予算を増やせなど厚かましいと共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は自分のXに書き込んでいる。

保守派ポッドキャスターのマット・ウォルシは、先日家族で一緒になった時、10代の甥が陸軍に志願しようと思っていると語っていたのを聞いて、今の軍隊はやめた方がいいと助言したそうだ。ウォルシは10年前の自分がもしも10年後に親戚の子が軍隊に志願するのをとめようとするなんて考えも及ばなかったという。しかし今の政権を考えると私も全く同じ意見だ。

先日ソーシャルメディアで数年間の軍隊任務を終えた若い男性が名誉の除隊の際に自分のギアを返納するさい、あてがわれたギアの一部が欠けているということで、なんと40万円相当の弁償金を請求されたという。しかしこのギアは二年まえのアフガニスタン撤退の際に重量の関係で飛行機に乗せられず、やむなく現地に残して来たものだという。しかも上からの命令で弁償する必要はないと口約束されていたという。あの無様な撤退のおかげで米兵四人が戦死し、何万というアメリカ人や米軍関係者のアフガニスタン人が置き去りにされた。あんな戦争に行かせるために子供を育てたわけじゃないと思った親たちは多かったことだろう。


Comment

アメリカ陸軍の新しい勧誘コマーシャルが男らしいのは戦争が間近な証拠?

先日陸軍は新しい志願者勧誘コマーシャルを発表したが、その内容が伝統的なマッチョなもので、昔ながらの”Be all you can be, in the army”というスローガンが使われていたことが話題になっている。これは陸軍で自分の最高の可能性に挑戦しようという意味。

背後に流れている音楽は”Be all you can be”の歌で、米陸軍がコマーシャルにずっと使って来た歌だ。今回はメロディーだけで少しメランコリーな調子になっているが、私が若い頃にしょっちゅうテレビや映画館で流れていたのでよく覚えている。

このコマーシャルは一見何気ないものだ。軍隊のCMだから格好いい軍人が格好いいことをしているのを見せるのは当然。しかしここ最近のポリコレな陸軍CMと比べるとまるで違う。先ず登場人物がすべて白人男性。女性は愚か黒人や他の人種が観られない。もしこのCMが1970年代に流れたとしても全く違和感はなかっただろう。

以前に私はアメリカ陸軍は深刻な志願兵不足に悩んでいるという話を何回かしたことがある。そしてその理由として陸軍のWOKEお目覚め主義文化に問題があるのではないかとも書いた。アメリカ陸軍、志願兵激減の危機 – Scarecrow in the Strawberry Field (biglizards.net) バイデン政権になってからというもの、軍隊ではトランスジェンダーが許可され同性愛者や女性の志願兵もどんどん募られるようになった。志願兵の枠を広げレベルを落とすことで数を増やそうと考えたのだとしたらこの作戦は完全な誤算だった。だいたい軍隊に志願しようなんて男たちはポリコレになど興味がない。いや、かえってそんなところは敬遠するだろう。それで、いまや1973年に徴兵制度が禁止されてから最低の志願兵数へと落ちてしまったのだ。添付記事内でも紹介したが、これが去年起用されたポリコレCM。二人の母親に育てられゲイパレードにも参加したという女性兵士の話だ。

去年発表された陸軍リクルートコマーシャル

ご覧の通り、これのどこが陸軍なんだと思うような内容。

さて、ではどうして陸軍は突然伝統的なマッチョなコマーシャルに切り替えたのだろうか?実はこれは、もしかしたらアメリカは再び戦争をやる気だからではないかという噂が流れている。平和時であれば多様性だのLGBTQ+だのと言ってる余裕はあるが、実際に戦争するとなると頼りになる男たちが必要である。戦場に行って命を懸けて闘ってくれる頼もしいマッチョマンが必要なのだ。ではいったいそんな男たちをどこから集めるのかといえば、やはり伝統的に軍隊文化のあるテキサスや南部の州からだろう。そうしてこうした州の若者で軍隊に入ろうなどと考えるのは保守的な白人男性達が圧倒的に多い。だからそうした男たちにアピールできるコマーシャルといえば、伝統的な”Be all you can be.”なのである。

しかし戦争ってどの戦争だ?まさかバイデン政権は米軍を中東に派遣しようというのではないだろうな。一般的に共和党の方が鷹派だという印象をもつが実はそうでもない。ベトナム戦争は共和党のアイゼンハワー政権の時アメリカはアドバイザー的な存在だったが、民主党のケネディー政権を経てジョンソン政権の時に米軍が出動されて拡大した。コソボ・ボスニア戦争もクリントン政権の戦争である。アフガニスタン・イラク戦争は共和党のブッシュ大統領の時に始まったが、同じく共和党のトランプ大統領が終結させた。バイデンが引き揚げを完全に失敗してタリバンにアフガニスタンを獲られてしまうという体たらくだったが。

つまり米国は民主党も共和党も戦争を始めている。最近の政権で戦争を始めずに世界平和に貢献した大統領は共和党のレーガン大統領とトランプ大統領だけだ。

それはともかく、我々がイスラエルとパレスチナの紛争に気を取られている間にも、中東では色々な問題が起きている。イラクではアメリカ大使館がすでにモスリム過激派によって襲撃されているし、米軍の護衛艦はイエメンからのミサイル攻撃を受けているのだ。バイデン政権は外交が下手すぎるのでイランにも中国にも舐められている。このままだと中国が台湾を襲撃するのは時間の問題だ。そうなったらアメリカは二つも三つも戦線をもつことになるのである。

しかしバイデン政権で軍隊に入りたいなどと思う人がどのくらいいるだろうか?アフガニスタンの無様な撤退劇を見ていると、私が親なら共和党政権になるまでは軍隊に入るなと言うだろうな。

ちなみにこちらが1980年代の陸軍のコマーシャル


Comment

アメリカ軍の深刻な志願兵不足は軍隊のお目覚め主義ポリコレ方針が原因か

Tag:世論調査

今現在アメリカ軍は深刻な志願兵不足に悩んでいる。多くの人がこれは最近のアメリカ軍隊は優秀な兵士育成よりも、LGBTQ+などくだらないポリコレ政策を重視しすぎているからではないかと批判しているが、問題は肥満や麻薬依存症など若者の不健康な生活により軍人としてふさわしい候補者が減っていることにあると指摘する人もいる。

現デューク大学の教授でクリントンとブッシュ政権中、国家安全保障会議(the National Security Council)のメンバーだったピーター・フィーバー(Peter Feaver)教授はWOKE(お目覚め主義)の要素は誇張されていると語り、最大の理由は労働市場と若者の不健康な生活環境にあると語る。同教授によれば肥満や麻薬依存症などによって軍人にふさわしい候補者の数が減っていると出張する。

フィーバー教授は新著「サンキューフォーユアサービス( “Thanks For Your Service”)の中で人々の軍隊への信頼感が薄れていることについて追及している。 フィーバー教授によれば軍隊が両政党によってあまりにも政治化されていることが原因だと語る。

最近行われたギャロップ社の世論調査によれば軍隊の信頼度は60%で1997年以来の低さである。58%の回答者が軍隊を信頼していると答えた。信頼度が60%未満だったのは1980年代でソ連など共産圏との冷戦が頂点に達していた時期である。

ギャロップ社によれば2018年くらいまで軍隊への信頼度は74%と非常に高かったが、バイデンによるアフガニスタン撤退の大失態により信頼度は地に落ちてしまった。特に無所属の間では55%にまで落ちた。

フィーバー教授は軍隊がWOKEなどのお目覚め主義も含めあまりにも政治利用され過ぎていると語る。これについてはクリスティン・ワームス陸軍長官も今年の初め記者団にWOKEのイメージが志願数に悪影響を与えていると語っている。

「軍に対する信頼の低下の一因となっているのは、軍指導者の政治化に対する賛否両派の懸念だと思います。(略)軍の指導者たちが政治化された空間に引きずり込まれれば引きずり込まれるほど、本当はそうではないのに、政治的であるという認識を助長することになると思います(略)私が言おうとしているのは、WOKE(お目覚め主義)軍隊に対する批判が、どのように垂れ流されているかということです。

この軍隊のお目覚め主義政策は多々の方面から批判を浴びている。海軍退役軍人のロン・ディサンティスフロリダ州知事は軍隊の「多様性、公平性、包括性(DEI)」について下記のように語った。

「私が見ている軍隊は、私が従軍していた軍隊とは違っていると思います」とデサンティスは今年語った。「今は政治的イデオロギーや、性別の代名詞のようなものが強調されている。DEIのようなものもよく目にしますし、そのせいでリクルートが激減しているのだと思います。」

マイク・ポンぺオ前国務長官もこの件についてフォックスニュースのオプエドコラムで陸軍が目標新規兵に満たなかった時にこのように書いている。

アメリカのために命を懸け、アメリカのために死のうとさえ決意した若者たちに、わが国が本質的に人種差別的であることを肯定しろとどうして言えるのか?ポンペオはこう書いた。「人種や性別という狭いプリズムを通して、戦友や姉妹を見るよう彼らに求めることができるだろうか?彼らの命を戦場で危険にさらすことなしに。覚醒した軍隊は弱い軍隊である。残念なことに、WOKEした弱い軍隊は、バイデンのリーダーシップのもとで我が軍がまさにそうなりつつある。」ポンぺオ長官はさらにバイデン政権は自分の出身校であるウエストポイント陸軍学校でもDEI方針を押し付けていると語った。

ヘリテージ基金のロバート・グリーンウェイ副会長(the Heritage Foundation)は批判的人種理論など軍隊内を分離するような方針が取られていると語る。軍隊にとって貴重な時間と資金が、軍をより有能にするために使われずにDEI教育に注ぎ込まれ、国家防衛のための資源が無駄に使われていると語る。グリーンウエイ氏はDEI教育や人種差別や過激思想と言った教育が軍隊の役に立っているという証拠は全くないと語る。

今や国民による軍隊への信頼度は地に落ちている。イラク・アフガニスタンの戦争が終わり、長く危険な戦地への出動がなくなったにも関わらず、現役及び退役軍人の自殺率が上がっている。アフガニスタンからの屈辱的な撤退の後、軍隊は軍強化ではなくDEI/CRT/LGBTQ政策に力を入れているのだ。

私は2000年代のイラク・アフガニスタン時代の志願兵の数をずっと追っていた。多くの人がアメリカの戦争は泥沼で負け戦となり士気が衰えて軍隊への志願兵が減っていると言いたがっていたが、実はその反対で陸軍や海兵隊は志願兵の数が目標より上回っていたくらいだった。陸軍や海兵隊は一番最前線に行く可能性の高いブランチである。それなのに何故比較的安全な海兵隊や州軍への志願よりも多かったのか?

平和主義者には解らないかもしれないが、一定数の男性には(女性にもだが)冒険を求める習性があるのだ。自分の戦争でもないのにわざわざ傭兵になって戦地へ向かう人もいるくらいだ。であるから愛国心があり軍隊に対する信頼度が高い時には戦時中こそ志願兵が増えるのである。

フィーバー教授は景気のいい時は若者は他に仕事を得ることが出来るので軍隊への入退者は減るというが、アメリカには軍隊家族が結構おり、男は(最近は女でも)何代にもわたって軍隊に勤務するのが普通という家庭が少なくない。軍隊にいたということを誇りに思う人たちが多くいる。しかし現在の軍隊を見ていると、現役軍人がトランスジェンダーだ何だと言ってホルモン治療を受けていたり、将校が化粧してみたり、人種差別がどうのこうのと訓練を受けさせられたり、そんなくだらない軍隊に誰が入りたいとおもうだろうか?

私は同性愛者の入隊にはずっと賛成だったが、今のLGBTQ+に染まった軍隊は御免被りたい。


Comment

アメリカ陸軍、志願兵激減の危機

本日アメリカ陸軍は史上最悪の志願兵不足に危機的状況であるという記事を読んだ。Army recruiting crisis: shortage of soldiers despite record bonuses (usatoday.com)

このUSATodayの記事によると、米陸軍は1973年に志願兵のみの軍隊に変わって以来史上最悪の志願数という危機状態だという。

好景気の時は軍隊への志願数が減るというのはよくあることで、今年は失業率が3.6%という50年以来の低さが原因ではないかと同記事は分析しているが、コロナ禍で若者の間で生まれた新しい生活習慣も影響があるのではないかとしている。

ペンタゴンはヨーロッパ駐留軍に2万人を追加し10万人に増やしたばかりだ。この状態で兵士が足りなくなるというのはかなりの問題だ。(翻訳DeepL)

  • 魅力的な民間雇用市場と有能な候補者の減少により、陸軍は隊員の補充と重要な任務の遂行に必要な若者の数が決定的に不足している。
  • 4月までに陸軍が採用した兵士の数は目標の68%で、目標より8,282人少なかった。海軍は1,473人の水兵が不足し、目標に8%届かなかった。空軍、海兵隊、宇宙軍はいずれも目標を達成または上回っていた。
  • 陸軍は、6年間の入隊を約束した新兵に対して、過去最高額の5万ドルのボーナスを支給することになりました。陸軍は6月の1週間、新兵に高校卒業資格かそれに相当するものを与えるという条件を取り消した。
  • 水曜、陸軍幹部は、陸軍を理解し、兵士としての生活を思い描くことができず、軍を含む米国の制度に対する信頼と信用を失いつつある米国人が少ないことを指摘し、募集の問題についてのメモを発表した。

クリスティン・ウォーマス陸軍長官とジェームス・マクコンビル(将軍)陸軍参謀長は志願兵を46万6千人に増やすべく新方針を発表した。なにしろこのままだと今年度末の9月30日までに44万5千人程度しか集まらない見通しだからである。

陸軍当局によると、軍人年齢の17歳から24歳のアメリカ人で軍人にふさわしい精神的肉体的なレベルの若者はおよそ23%程度だという。コロナ禍で在宅勤務に慣れた若者の生活スタイルは軍隊とは対照的だ。才能ある若者の軍隊離れは深刻である。

しかし原因はそこにあるのだろうか? この記事には書かれていないが、米軍への入隊希望者が減っているとしたら、それは今の軍隊の姿勢に大きな問題があると私は考える。だいたい最近の軍隊のリクルートコマーシャルでレズビアンカップルに育てられた女性の話を起用したり、トランプ大統領が禁止していたトランスジェンダーの入隊許可が始まって以来、ネットでは化粧した男子兵士の動画だの訳の分からないWOKEな軍人の動画で溢れかえっている。

陸軍リクルートコマーシャル

それに加えてアフガニスタン撤退の無様ぶりも記憶に新しい。こんな虹色に染まったアメリカ軍にいったいどういう若者が志願するというのだ?

アメリカ軍が全志願兵制度になってから、軍隊に志願する若者には特徴がある。これは家族の経済状況や人種や階級よりも地域的なものなのである。ちらのサイトに詳しい統計が掲載されている絶対数から言えば志願兵が一番多いのは人口の多いカリフォルニアやテキサスなのだが、人口の割合からいうと上位10州は、1サウスダコタ、2ハワイ、3アラスカ、4フロリダ、5ジョージア、6コロラド、7アラバマ、8テキサス、9ノースカロライナ、10ネバダの順である。

Joining the Military photo

伝統的にこうした州からの志願兵が多いというのも、軍隊に志願しようと思う若者の多くが家族に軍隊経験者がいる。2019年の統計によれば、ほぼ8割がたの志願兵が家族に少なくとも一人軍隊経験者がおり、なんと25%が親が軍人の家庭だ。親や親せきから過去の武勇伝を聞かされたり、軍隊で勤めることは愛国者としての義務だと聞か割れて育てば、そりゃあ自分も軍隊に入ろうという気にもなるだろう。

しかし愛国心溢れ冒険を求める若者にとって、今の軍隊は魅力的な場所だろうか?

だいたい軍隊に憧れる若者が求める者とは何か?すでに銃を持って狩りをやってるようなアウトドアな若者たちが軍隊で何をしたいと思うだろうか?

LGBTQ+αに染まった軍隊が彼等を惹きつけることができると思う方がおかしいのだ。

ここでアメリカ軍がイラクで苦戦していた2007年頃のリクルートの状況を書いた拙ブログのエントリーを張っておこう。当時アメリカ軍は長年の泥沼状態からはい出しつつあった頃であり、戦死者や負傷者の数もかなり多かった。しかし一番最前線に送り込まれる可能性の高い海兵隊は志願兵が減っていなかったという内容だ。米軍隊志願兵が減っているという嘘 – Scarecrow in the Strawberry Field (biglizards.net)

イラク戦争が不人気なため志願者の数が減っているというのが本当だったとしたら、戦場へかり出される可能性が一番高い隊が一番不人気になるはずであるが、実際はその逆である。

戦争において一番危ない戦場へ送り込まれるのは誰かといえば、それは圧倒的に海兵隊だろう。その次が陸軍でむろん空軍は常に危険な空を飛ぶことになる。海軍は比較的安全だが、それでも中東で戦争が起きていれば長期にわたる出動が期待される。また正規軍と比べて予備軍や州兵隊は後方の援護が主な任務であり最前線にいく可能性は低い。それを考えると現在軍隊に志願した若者の傾向は実際に戦場へいく可能性の高い部署ほど人気があるということになる。

それでは最後にロシア軍のリクルートコマーシャルを掲げておこう。君が男ならどっちの軍隊に入りたいかな?


Comment

ロシア・ウクライナ戦争の機密情報を漏洩した21歳の州軍空兵逮捕される

先日ロシア・ウクライナ戦争に関して、ウクライナ国内におけるアメリカやNATO軍の関与に関して機密情報を漏洩した21歳の州兵軍の一等兵が逮捕された。私は機密情報をを漏洩する行為は許せない。特にわが軍の位置や作戦を敵に漏らすような行為は非常に危険だ。

逮捕されたのはジャック・ティヘラ、21歳。マサチューセッツ州の州軍空軍の一等兵。航空警備隊所属で専門はサイバー輸送システム、いわゆるIT専門家だ。彼は「ウクライナに対する米国およびNATOの援助や、米国の同盟国に関する米国の情報評価について詳述」されてる書類の写真をディスコード(Discord)というソーシャルメディアにアップした。

興味深いのは彼の逮捕にはワシントンポストの調査がかなり貢献しており、言ってみればポストが警察の捜査に手を貸したのである。これは非常に不思議な状況だ。これまでにもトランプ政権内部の情報が漏洩したことがあるが、メディアはその情報元を隠すのが普通だった。ところが今回に限ってはメディアは政権の手先となって情報源の暴露に手を貸している。本来であれば、こういう情報こそメディアがこぞって入手し、ティヘラ本人に色々インタビューでもするのがジャーナリストとしての本筋ではないのか?それを早々に本人の逮捕に率先して協力し政権に不都合な情報元の口を塞ぐというのはおかしな話である。

機密情報を漏らすというのは決して許されることではないが、今回の場合、これは単なる漏洩というより内部告発であるという意見もある。それというのも露・ウ戦争の実情はバイデン政権が国民に知らせていた内容とかなり違っていることがわかってきたからだ。

ワシントンポストによるとティヘラはディスコード内部の招待客のみのプライベートチャットに情報をアップしていたらしい。

「(ティヘラ)は政府に対して暗い見方をしていた。若いメンバーは、米国、特に法執行機関や情報機関を、市民を抑圧し、闇に葬ろうとする不吉な力として話していたという。彼は “政府の行き過ぎた行為 “についてわめいた。OGはオンライン仲間に、政府は恐ろしい真実を国民から隠していると話した。」

しかしチャットルームのメンバーたちは、ティヘラはメンバーたちに自分の知識をひけらかすことのほうが目的だったような感じだったと語っている。ではいったいどのような情報が漏洩したのか。APの記事から引用。

「文書は、ウクライナに対する米国およびNATOの援助や、米国の同盟国に関する米国の情報評価について詳述しており、これらの国との関係を緊張させる可能性があると思われる。

また、2月と3月のウクライナとロシアの戦場での位置関係や、失われた戦場道具の正確な数、同盟国からウクライナに新たに流入した戦場道具の数など、リアルタイムの詳細を示すものもある。

また、ウクライナの重要な防空システムのミサイルがあと少しで枯渇しそうな状況も明らかになっている。そうなれば、ウクライナの空は、すでに都市やインフラに打撃を与えているロシアの空爆や砲撃にさらされることになる。

韓国、イスラエル、アラブ首長国連邦などに関するこれまで報道されなかった機密情報も含まれている。

どれだけの文書が流出したのか、明確な答えは出ていない。AP通信が閲覧した文書は約50件で、総数では数百件に上るとの推定もある。」

インテリジェンサーの記事にはもう少し詳しい情報が載っている

「ワシントンポスト紙は、リーク元に関する報道の中で、『約300枚の機密文書の写真を確認した』とし、また、他の情報報告を書き写したと思われるテキスト投稿も確認したと述べている。メディアの報道の多くは、リーク元の約100の文書のコレクションに焦点を当てている。Post紙の報道を見る限り、当初流出したのはそれよりもはるかに多くの資料のようだが、ほとんどの文書は公開されていないようである。

今回公開されたファイルは、NSA、CIA、国防情報局、DEA、国家偵察局(米国のスパイ衛星を管理する機関)が収集した情報に基づき、主に2月から3月に作成された説明文書やスライドの写真である。文書には、同盟国との共有が許可されたものもあれば、米国のみへの公開が指定されたものもあり、これは米国の情報源からのものであることを示す大きな手がかりとなった。

この文書の多くは、統合参謀本部議長のマーク・ミリー氏のために作成されたようだが、十分なセキュリティ・クリアランスを持つ人なら誰でもアクセスできただろう。最初の画像に写っている文書は、機密扱いのブリーフィングの一部である可能性が高く、折りたたまれてページを撮影できる場所に持ち去られたようです。ニューヨーク・タイムズ紙は、画像の余白にある詳細と、リークした疑いのある人物の実家の写真の詳細とを照合することができた。

流通しているリーク文書の中には加工されたものもあるようだが、どうやらそれはリークされた後に親ロシア派のプロパガンディストによって行われたようだ。」

機密情報の漏洩は決して許されることではないので、この青年は厳重に罰せられなければならないが、しかしウクライナの戦況は我々が知らされてきているほど好況とは言えない。

政権が現在続行中の戦争に関してすべての状況を詳細に国民に説明する義務はない。そんなことをしたら敵に我々の手中を知られてしまうからだ。しかしだからと言って、負け戦をあたかも勝ち戦であるかのように報道することは国民への裏切りだ。メディアが政権のいいなりになって大本営報道しかしなければ、国民はこの負け戦のために血税をウクライナに送っていることすら知らずに生きていくことになる。

今現在アメリカのインフレはものすごいことになっている。卵一ダースが1000円もするのだ!

ロシアへの経済制裁は何の役にも立っていない。それどころかかえって欧米の燃料が足りなくなり庶民は恐ろしいほどの値上げに苦しんでいる。

前にも書いたが、カリフォルニア今期の冬は例年になく雨季が長く続き、気温も摂氏0度から10度程度の日々が三か月以上も続いた。この間に天然ガスの値段が4~5倍に跳ね上がり、苺畑家の暖房費は普段の10倍!もっと大きな家に住んでいる家庭では、ガス代の自動引き落としの最高金額の400ドル(5万円近い)を越してしまい、ガス会社から上限を引き上げるように要請が来たという。

未だにコロナ禍の悪影響で経済的に復帰していない人が多くいるというのに、それに煽りをかけるようなこの不況。そして続くウクライナの戦争。

すでにウクライナにはアメリカ軍の特別部隊が出動していることが今回の漏洩ではっきりした。つまりアメリカはすでにロシアと戦争をしているということになる。こういう大事なことは大統領だけの決断で決めてはいけないはずだ。議会はどうなっているのだ?

軍事機密情報の漏洩はいけない。だが、そうしなければならないと思った兵士の気持ちもわからないではない。


Comment

21人の犠牲者を出したテキサス小学校での乱射事件、警察の不手際が原因か

先日テキサス州のウヴァルデ市(UVALDE)の小学校で18歳の青年により19人の小学生と2人の教師が殺された事件で、警察の対応に致命的な間違いがあったのではないかという話が出ている。

それでは当日何が起きたのか、時系列を追ってみよう。

テキサス州の公共安全局、マッククロ―局長によると、犯人の名前はサルバドル・ラモス18歳。

  • 午前11:27 a.m.: 校舎の扉が教師によって開けられた。
  • 午前11:28 a.m.: ラモスのトラックが学校近くの堀に突っ込む。扉を開けた教師は自分の電話を取りに一旦校舎のなかの部屋に戻る。近所の葬儀屋から二人の男性がトラックに近づこうとしたが、銃を持った男が出て来たため葬儀屋の方へ逃げ戻る。男は男性達の方に発砲するが弾はあたらなかった。
  • 午前11:30 a.m.: 教師と思われる人から911に交通事故と銃を持った男のことが通報される。
  • 午前11:31 a.m.: ラモスは学校の駐車場の最後の列に差し掛かる。 ラモスは学校に向けて発砲し始める。警察の車は葬儀屋の方へ向かう。学校区の警官が他の学校から呼び出され駆け付け、ラモスを車で追い抜く。この時ラモスは車の影に隠れて構えていた。警官は教師たちを容疑者と思い、彼らの方へ車を走らせる、
  • 午前11:32 a.m.: 数発の弾が学校に向けて発砲される。
  • 午前11:33 a.m.: ラモスは校舎内に入る。そこでラモスは111号室と112号室に向けて発砲しはじめる。この二つの部屋は隣同士でドアで繋がっている。この時点でラモスはすでに100発も発砲している。
  • 午前11:35 a.m.: ウヴァルデ警察から三人の警官が男が入ったのと同じドアから校舎に入る。すこししてさらに三人の警官と副保安官が校舎に入る。
  • 午前11:37 – 11:44 a.m.: さらに16発が発砲される
  • 午後12:03 p.m.: 合計19人の警官が廊下に集まった。この時112号室にいるという少女から911への電話があり、ひそひそ声ですでに同級生の何人かが殺されたと語る。
  • 同じ少女がその後10分に二回911に電話をして助を求める。
  • 午後12:15 p.m.: 国境パトロール部隊が到着。
  • 午後12:16 p.m.: 同じ少女が再び911に電話し8~9人の生徒はまだ生きていると告げる。
  • 午後12:19 p.m.: 別の少女が111号室から電話をかける。また最初の少女もこの後2回以上911に助けを求める電話をかけている。
  • 午後12:50 p.m.: 数人の警官が鍵をつかってドアを開けて入る。警官がラモスを射殺する。

この時系列を読んでいて、この事件は銃規制だのなんだのと言う話をする以前に、現場の教師や駆け付けた警官の不手際が目立ちすぎて腹が立つ。

先ず男がトラックの事故を起こし、トラックから銃を持って出て来て葬儀屋の男性二人に発砲した時点で、何故校舎のドア付近に居た教師はすぐにドアを閉めて鍵をかけなかったのだ?男が駐車場で銃を発砲している間に、教師はすぐに学校中を駆け回って反対側のドア、もしくは窓から子供たちを避難させることはできなかったのか?ともかく逃げ場のない教室に閉じこもるのは一番危険なことのはずだ。

アップデート: 5月31日現在、実は教師はドアを開け離しにするために石でドアを止めていたのだが、男が銃を持っていると知った瞬間に石を蹴ってドアを閉めた。しかしなぜかドアの鍵が閉まらなかったことが後になって分かっている。

ラモスが校舎に入った2分後にはすでに警官が校舎に入っている。何故これらの警官はラモスを追いかけて111号室に入らなかったのだ?鍵など探さなくても蹴破るか、もしくは外側の窓から入るかすべきだったのでは?子供たちが教室のなかで次々に殺されているのに何故一時間も外に居たのだ。19人も集まって何をやっていたのだ?

警察の記者会見で、記者の一人がドアを蹴破るなり窓から入るなりしようとは思わなかったのですか、と問い詰めると局長はそれはしなかった。明らかに間違った決断だったと語った。間違ったじゃすまないだろうが!19人の子どもと2人の教師が死んだんだぞ!

バイデン大統領はウクライナの防衛のために400億ドルを送るという。そんな金があったら、全国津々浦々の学校に武装した警備員を数人常備させることが出来るだろう。外国の戦争のことより自国の子どもたちの命を守ることが先決ではないのか?

何の役にもたたない銃規制とかろくでもないことを言ってる場合か!

何度も書いているように乱射事件を銃規制で止めることは出来ない。銃を持った悪人を止められるのは銃を持った善人だけなのだ。今回テキサスの警察は完全に大失態を起こしてしまった。

アップデート:最終的に犯人を射殺した国境警備隊は、到着当初地元警察に阻止されて一時間近くも中に入れなかったそうだ。また、警察が何もしないので校舎に入って子供たちを救おうとした親たちは、反対に警察に手錠をかけられたという。いったいこの警察なにやってたんだ?Border Patrol Team Who Ultimately Killed Shooter Were Blocked From Entering School By Uvalde Police for Nearly an Hour | TIMCAST


View comments (2)

ロシアの計画通りに進んでいるロシア軍ウクライナ侵攻

先日私はロシアのキエフ撤退はロシア軍の当初の計画通りなのだと言う話をご紹介した。その続編を先日ご紹介した西田さんが書いてくださっているのでまたまた引用させてもらう。

先ずロシアは何故ウクライナ侵攻を実行したのか。ロシアは当初から停戦のための六つの条件を明確に宣言している。

  1. ウクライナがNATOに入らないことを保証、
  2. 非軍事化
  3. クリミアをロシア領と認める
  4. ドンバス地域の2国(ドネツク、ルガンスク)を独立国として認める
  5. 政権からネオナチの追放
  6. ロシア語を第2公用語に戻す

もともとロシアの軍事目的は、東部のドンバスの制圧「解放」のはずだった。ところがロシアはウクライナ各地を攻撃しキエフに向かって進軍した。これによって西側諜報はロシアの目的はウクライナ全土の支配だとかゼレンスキー暗殺だとか憶測していた。だが実は先日TillyBさんもおっしゃっていたように、キエフ進軍はウクライナ軍を足止めしておくためのおとり作戦だったと考えた方が納得がいく。

ロシアはドンバスに進軍したいが、直接ドンバスまで行くとなると道々ウクライナ軍の抵抗にあう。ロシア軍全体はウクライナ軍より規模は大きいがウクライナに侵攻した軍は20万人で、ウクライナ軍の60万よりは圧倒的に規模が小さい。能率的にドンパスを攻めるにはどうしたらいいのか?

さてここでドンパスがどの地域を指すのか地図をみてみよう。濃い黄色の部分のルガンスク州(Luhansk)とドネツク州(Donetsk)を合わせてドンパス地域と呼ばれる。

See the source image

南部のクリミアはロシアの勢力下にあるため、そこから北上は可能だが、物資の補給をするためには途中のマリウポリ(Mariupol)を陥落する必要がある。そこでロシアが出た作戦とは、、

ロシア軍は ウクライナ軍の主力を首都キエフや北部、東部、南部のそれぞれの都市に閉じ込め、ドンバスにいる最大規模のウクライナ軍を支援できなくする という戦術をとりました。

まず開戦早々、ウクライナ国内の補給線、制空権、コミュニケーション、長距離ミサイル網などを破壊 結果、ウクライナ軍はそれぞれの軍隊の間のコーディネートができなくなった。 3月27日の時点では 529のタンク、1177の軍備装甲車、160のコマンド・通信用のレーダーが破壊、 空軍と海軍消滅そしてそれぞれの地域での作戦が始まる。 北部: キエフをロシア軍で囲い込むことで、ウクライナ軍は首都防衛のために動けなくなった。 赤:ロシア軍支配 青:ウクライナ軍抵抗エリア

Image

以前に私はロシア軍が誤ってウクライナのインフラを破壊しすぎて、ウクライナのセルタワーなども破壊してしまい、自国軍内の通信が滞っているという話をしたが、その時よもぎねこさんが、ロシアが誤ってセルタワーを破壊したとは考えにくい。ウクライナのインフラ破壊は故意にやったことではないかとおっしゃっていた。西田さんの話を読んでいると、よもさんは正しかったことが解る。ロシアの作戦は最初からドンパスに居るウクライナ軍を孤立させることにあったのだ。

なぜロシアがこれだけの損傷を受けても撤退しないのか。それは犠牲は多いとはいえロシアは当初の目的を達成しつつあるからなのだ。すでにクリミアはほぼロシア管轄下にあるし、ドンパス地域の陥落も時間の問題。となるとロシアが提示した条件の一番大事な3と4がうまく行っていることになる。

交渉は弱い立場からより強い立場からする方がいいに決まっているが、ロシアはこの戦争に負けているどころか勝っているわけなので、今すぐ停戦する意味は全くないのだ。ウクライナが折れなければ停戦の希望は全くもてない。

西側のメディアの情報だけ読んでいると、ロシアのウクライナ侵攻は負け戦だという印象を受けるが、ここが我々西側の人間と東側の人間の考え方の違いがあると思う。つまり、最近の西側諸国の考えは軍の消耗に関して物凄いアレルギーがあるということ。

10年戦ったイラク・アフガニスタン戦争を合わせても米軍の戦死者数は8000人程度だった。イラク戦争が始まった当初、戦死者の数がまだ1000人足らずだった頃に、毎日のように戦死者が~、戦死者が~と反戦メディアががなりたてていたのをみて、それまでの戦争に比べたら、この程度の戦死者は非常に少ないと私は思ったものだ。しかしアメリカ軍は自国の戦死者を極力抑える戦略を取れるようになったせいで、西側諸国は戦争とはそういうものだと思い込んでしまったのだ。だからロシア軍がたった数週間の戦争で15000からの兵士を消耗したとしたら、ロシア軍の士気も衰え撤退するのではないかと勘違いしたのである。

しかしプーチンは、戦争には戦死者がつきものだと腹をくくっている。大量の戦死者が出ても目的を達成することが出来ればそれでいいと思っている。プーチンが冷酷非情な元KGBだからこそ出来る物量作戦なのだ。

西田さんは、ロシアの目的と戦略を理解していれば、一見ロシアが撤退しているかに見える記事も、実はロシアが作戦通り着々と目的に近づいていることが解ると指摘する。ロシアはキエフを落とせないのではない。キエフの陥落はもともと目的ではなかったのである。下記は読売新聞の記事より。強調はカカシ。

ロシア、キーウ近郊の空港から撤退…ウクライナ軍前進「30か所が管理下に戻った」2022/04/03 00:45

 【ジュネーブ=森井雄一】ロシアによるウクライナ侵攻で、米CNNは1日、露軍が首都キーウ(キエフ)近郊のアントノフ国際空港から撤退したと報じた。英国防省の2日の発表によると、キーウ周辺では露軍の撤退に伴い、ウクライナ軍が前進を続けている。一方、露軍は、軍事作戦の重心を移すと表明した東部や南部で支配地域の拡大に向け、ミサイルなどでの攻撃を強めている。ウクライナ東部のハルキウ近郊で、ロシア軍の砲撃により炎上するガス輸送管(3月31日、ロイター)

 アントノフ国際空港は、2月24日の侵攻開始直後から露軍が制圧していた。CNNは、米宇宙企業が3月31日に撮影した衛星写真と米国防総省関係者の分析を基に、空港に駐留していた露軍の軍用車両などが姿を消したと報じた。

 ウクライナ軍参謀本部は1日、キーウ周辺などの約30か所の地区が、露軍の撤退を受けてウクライナ側の管理下に戻ったと発表した。空港の南にあるブチャの市長は1日、「市が露軍から解放された」と明らかにした。

 一方、東部では露軍の攻勢が強まっている。ウクライナ軍は1日、東部ハルキウ(ハリコフ)州で輸送の拠点となっているイジュームを露軍が占領したと認めた。露国防省は、東部の複数の軍用飛行場をミサイルで攻撃したと発表した。

 南部オデーサ(オデッサ)では1日、ロシアが併合したクリミアから発射されたミサイルが着弾し、死傷者が出ているという。

 ウクライナ軍は2日、隣国モルドバのウクライナとの国境沿いでロシア系住民らが一方的に独立を宣言している「沿ドニエストル共和国」で、駐留する露軍部隊がウクライナへの攻撃を準備していると指摘した。

 一方、露軍が包囲する南東部マリウポリでは、赤十字国際委員会(ICRC)が住民の退避の支援に向け、2日も引き続き現地入りを試みている。ウクライナ大統領府の高官によると、1日にはマリウポリから独自に住民約3000人が退避したが、約10万人がいまだに取り残されているとされる。

 また、露南西部ベルゴロド州の燃料貯蔵施設がウクライナ軍のヘリコプター2機により空爆されたと露国防省が発表したことについて、ウクライナの国家安全保障国防会議のトップは1日、「事実と全く異なる」と露側の主張を否定した。

なるほど、こうして読んでいくと西田さんやTillyBさんが言っていたことが良く分かる。

ところで西田さんが参照した解説は元アメリカ軍海兵隊のスコット・リッター氏と Gleb Bazov氏とあるが、スコット・リッター氏は聞いたことのある名前だなと思った。確かこの人はイラク戦争中に、イラク大量破壊兵器の国連主任査察官だった人だが、その後にイラクに大量破壊兵器はないと言い出し、アメリカ軍のイラク侵攻に批判的な態度をとるようになっていた。それで当時は「イラクから賄賂でももらったのではないのか、この裏切り者!」と私が勝手に思っていた人である(笑)。

西田さんがロシアの侵攻経過について詳しく説明してくれているので、こちらをご参照のこと


Comment