マケインとオバマでは外交にしろ内政にしろその経験には雲泥の差がある。だが、経験が豊かだと言ってるだけではマケインはオバマの若い息吹には勝てないだろう。特に『変化』を求めるアメリカの若者の票を集めることはできない。
マケインがオバマに勝つためには、マケインは自分の政策がどれだけオバマと異なるか、そしてその政策によってどれだけアメリカが良くなるかを有権者に訴えなければならない。そのためにはやはり国土安全保障もだが、もっと庶民にとって直接影響のある経済問題に取り組むべきだろう。
現在アメリカで一番庶民が心配しているのがガソリンの急激な値上がりだ。東海岸で公共交通網が発達している州に住んでいる人々はあまりその影響を感じていないかもしれないが、カカシのように一日の通勤距離が120マイル(193キロメートル)という人間にとっては切実な問題である。一週間に二回の給油で、これまでより一回につき20ドル近い値上げ。ということは月のガソリン代はこれまでより160ドルも多くなったことになる。給料は上がらないのにこれはしがないサラリーマンには大きな痛手である。
それに石油代が上がって影響が出るのは通勤者だけではない。運送業は陸も海も空も突然の石油値上がりに悲鳴をあげている。運送料が上がれば食料品などの商品の値段をつり上げることになるのは当然だ。最近スーパーなどで食料品がやたら高くなっているのはこの影響である。
最も困っている企業といえば航空会社だろう。私が良く使うユナイテッド航空などは、すでにあずける荷物の最初の一個は15ドル、二個目は25ドルと有料になった。
日本の皆様はご存知ないかもしれないが、実はアメリカには国土のみならず海域も合わせ、将来20年以上全く石油を輸入せずに国内でまかなえるだけの石油を保持している。常識から言って、これだけ石油不足に悩む危機に瀕しているのに自国の石油を発掘しないで外国からの輸入に頼るなどというのは正気の沙汰ではない。にもかかわらず民主党が多数議席を持つアメリカ議会はアラスカの原油やフロリダ沖の海油田の発掘を自然環境保護の理由で全面的に禁止して、一歩も譲ろうとしない。
民主党の政治家たちは「この危機を掘ることで乗り切ることは出来ない」と口を揃えて原油開発に反対している。オバマの支持者であるニュー・メキシコの知事、ビル・リチャードソンなどもその一人だ。
「要するに我々は党を超えた解りやすい政策をとることなのです。ところが現政権やマケイン議員は単に(石油を)掘れ、掘れ、というだけです。」….「この問題は掘ることで乗り切ることはできないのです。」
じゃあその双方の党が同意できる解りやすい政策ってのはなんなんだよ、と聞きたいね。原子力発電を頭から反対している民主党が同意できるとしたら、風車か水力発電くらいしかないではないか。
いやその前に、供給が足りないから自国の石油を掘って供給を増やすことがどうして解決方法にならないというのか先ずそこから説明してもらいたいもんだ。
アメリカの国民はアメリカの原油を掘ってはいけないという民主党のいい分に納得しているわけではない。環境保全ももちろん大切だが、現在の技術を持ってすれば、環境破壊をせずとも原油発掘はできるのである。そのことをマケインが強調して彼の方針は自国で自国の原油を賄うことだと主張すれば民主党のオバマ候補などすぐに打ち負かすことが出来る。
問題なのはマケイン自身が地球温暖化などという馬鹿げた説を信じきってること、アラスカの環境を守るべきだとか沖合の原油発掘は州の判断に任せるべきだとかいう考えに固まりきっているため、全然オバマと対抗できないでいることだ。こういうところでマケインがこちこちの保守でないことが裏目に出る。
マケインはこの際、自信の偏見の殻を破って、アメリカにとって何が一番大切なのか、オバマに勝つためには何をしなければならないのかを悟ってほしい。オバマと同じようなことを言っていては駄目だ。保守派の基盤を見捨てては駄目だ。
市民の生活に直接かかわりのあるこの石油問題。どうかマケインが現実に目を向けてくれるよう保守派はマケインに圧力をかけるべきだろう。