ブッシュ大統領の演説、イラク撤退はベトナムの二の舞いになると主張

先日ブッシュ大統領はミズーリ州のカンザスシティで退役軍人を相手にイラク駐留の大事さについて熱弁を振るった。私は帰宅途中のカーラジオで生放送を聞いていたのだが、ちょうどブッシュ大統領が日本の民主化の歴史について語っているところだった。CNN日本語版では大分演説の内容が割愛されているが一応背景として添付しておこう。

ブッシュ大統領は、ベトナム戦争で米軍が撤退したことにより、何百万人もの無実の市民が代償を払わされたと指摘。また、オサマ・ビンラディン容疑者が、米国人はベトナム戦争と同様にイラク政策にも反対して決起するべきだと発言したことを踏まえ、米軍撤退は米国の信頼性を傷つけ、テロリストを勢いづかせると主張した。

ブッシュ大統領はまた、…(マリキ)首相が続投するかは、ワシントンの政治家らが決めることではない」と、首相支持を強調した。
大統領はさらに、戦時中の日本や韓国やベトナムの共産主義者が、無慈悲な考えで米国人を殺害していたと述べ、アジアでの戦争とテロ対策が「イデオロギーをめぐる戦い」である点で似ているとコメントした。大統領は、戦後の米軍占領を経て自由社会に変貌した日本の前例を指摘し、イラク撤退論も誤りであることが歴史で証明されるだろうと語った。
米政権は、来週予定されている在郷軍事会での大統領演説を前に、イラク政策の進ちょく報告に関する議論に「より広範な文脈を与える」ことを狙ったとみられる。

この「より広範な文脈を与える」というのは、歴史的な面からイラク戦争を理解することが大切だという意味である。特に大統領がベトナム戦争を持ち出したのはアメリカがベトナムの呪いから解き放たれるためにも非常に大事なことだと思う。
私は以前にもベトナム戦争については何度か書いているが、ベトナム戦争は決して当時の左翼メディアが報道していたようなアメリカの軍事的大敗などではなかった。事実はその正反対だった。確かに当初は慣れないゲリラ戦に戸惑った米軍だが、すぐに米軍は適応し能率的な戦闘を繰り返していたのである。
ただ、以前にも書いたように対ゲリラ戦というのは正規軍同士の「とつげき〜!」という戦争とは違って時間がかかる。全体的に見れば第二次世界大戦の方がベトナムよりもよっぽども苦戦した戦争だったのだが、華々しい勝ち戦だったWWIIと違ってベトナムは地味でだらだらと長ったらしく続いた。しかもナチスや日本帝国といった目に見える敵が相手ではなく共産主義という漠然とした思想との戦いだったため、それと東南アジアのベトナムがどう関係があるのか多くの国民が理解出来なかった。アメリカは東南アジアを共産主義から守るどころか、かえって自分達がいることによって問題を大きくしているのではないか、という疑念が生まれたのも当然といえるだろう。ブッシュ大統領はそれをこう語る。

アメリカのインドシナにおける存在は危険だという考え方はかなり長い歴史があります。1955年、アメリカが戦争に参加するずっと以前に、グラハム・クリーンは「静かなアメリカ人」(The Quiet American, Graham Greene)という小説を書きました。主役はサイゴンに住むアルデン・パイルというアメリカ人スパイです。パイルはアメリカの愛国者の象徴です。危険で考えが甘い。別の登場人物がアルデンのことを「あの男ほど正しい動機であれほどの問題を起こす人間に会ったことがない」と説明しています。

ベトナム戦争にアメリカが参加した後、グラハム・グリーンの議論は勢いを増しました。実際多くに人々が我々がベトナムから撤退しても何の悪影響も及ぼさないと主張しました。
1972年、反戦派の上院議員は「遊牧民族や無教養なベトナムやカンボジアの農民にとって、統率者が軍事独裁者であろうが、皇族であろうが、見たこともない遥か彼方の土地にいる社会主義者であろうが、どんな違いがあるというのだろう。」といいました。ニューヨークタイムスのコラムニストもまた同じように、カンボジアやベトナムが共産主義の手に落ちようとしている時、「アメリカ人がいなくなれば、彼等の生活が良くなる以外の状況など想像できない。」と書きました。記事の見出しは「アメリカ人の居ないインドシナ、ほぼより良い生活」 でした。

無論、この考え方がどれだけ間違っていたかは後の歴史が証明している。カンボジアではカメアルージュが教養の高い人間を対象に理不尽な法律を通して大虐殺を行い、何十万という人々が殺された。当時の様子を描いた「キリングフィールド」という映画で助演してアカデミー賞まで得たカンボジア人の俳優は、当時自分は医者だったが病気の妻を救うにも自分が医者であることがばれれば家族もろとも虐殺されるため、妻を見殺しにせざる終えなかったと体験談を語っていた。
またベトナムでもアメリカ軍に協力した南ベトナムの市民は北ベトナム政府によって強制収容所に送られ虐殺拷問とひどい扱いを受けた。私の同僚にもボートピープルといってベトナムから逃げてきた難民が何人もいるが、皆口を揃えていうことは「なぜアメリカは我々を見捨てたのか?」ということだ。
ブッシュ大統領はアメリカ軍によるベトナム撤退が招いた直接の悲劇と並んで、もう一つの問題を指摘している。

ベトナムからの撤退のもう一つの代償は今日我々が直面する、2001年9月11日に、わが国にやってきて何千という我が国民を殺害した敵の口から聞くことができます。911攻撃についてパキスタンの新聞でのインタビューに応じたオサマ・ビンラデンは、「アメリカ人はベトナム戦争に反対して政府に対して立ち上がった。今日もまた同じことをしなければならない。」と宣言しました。

彼の右腕であるザワヒリもベトナム戦争を取り上げています。イラク作戦の幹部に当てた手紙のなかでザワヒリは「ベトナムにおけるアメリカ勢力の崩壊後にどんな風に彼等が手先を見捨てて逃げ去ったか」を指摘しています。
ザワヒリは後にもこの主題に戻り、アメリカは「勝利の希望はない。ベトナムの亡霊があらゆる道を塞いでいるからだ。」と宣言しています。アメリカ国内においては、我々のベトナム撤退は我々の信用度を落とす原因にはなっていないと主張する人がいますが、テロリストはそうは見ていません。

イラクが対テロ戦争の集結地であることは我々の敵がそう宣言していることなのだ。だからブッシュ大統領は敵が我々をどう見ているか、この戦争をどう考えているかに耳を傾けなければならないと主張する。敵が正念場だと考えているイラクから我々が撤退すれば、世界中に散らばる敵が我々がその正念場で大敗して退散したと考え、その後の我々への攻撃はさらにますこと間違いなしである。そう考えればイラク撤退が我々に及ぼす危険は悲劇的なものとなる、とブッシュは言っているのだ。
さらに我々がイラクを見捨てれば、テロリストどもは勝利を利用してもっと多くの志願者を集め、イラクを拠点として世界中にその魔の手を広げることになるだろう。
ブッシュ大統領のこの演説は、9月のペトラエウス将軍の報告を前に地盤を固めておくというものだが、こういう演説をもっと早期に頻繁にすべきであったという感は拭えない。ところで、今日ラジオで昨日も紹介した戦争支持広告を聴いた。911で叔父を失い、イラク戦争で夫を失った未亡人がイラク駐留の大切さを唱えていた。こうした戦争支持の運動はもっと以前から積極的にされるべきだったのだが、遅蒔きながら始まったということはいいことだろう。


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米イスラム評議会、テロ共謀者と名指しされ会員激減

アメリカ国内からテロリストに資金援助をしたとして裁判にかけられているthe Holy Land Foundationという市民団体の裁判において、米イスラム評議会(CAIR)が不起訴共謀者として名指しされたことに関して、CAIRは正式に裁判所に抗議の弁護要旨を提出した。現役の弁護士であるパワーラインのスコット・ジョンソンが、この要旨について説明しているので、それを参照してみたい。
スコットはCAIRの要旨はひどい文章で理屈もなにもなっていない長ったらしいものだとしながらも、興味深い点として、政府からテロリストの共謀者であると正式に名指しされて以来、CAIRは会員が減り、結果会員費や募金の大型減少が起きていると何度も苦情を述べていることをあげている。
CAIRのようにアメリカに住むイスラム系市民の人権擁護団体は人々からの寄付金に頼っているが、政府がCAIRを不起訴共謀者であると名指しして以来、テロリストに寄付など出来ないという市民やCAIRに協力して自分がテロリストと疑われるのを恐れた人々が増えて、寄付金や会員費が大幅に激減したとCAIRは泣き言をいっているのだが、その証拠として今年の6月11日にワシントンタイムスに掲載された記事を証拠文献として提示している。

CAIRの名前が不起訴共謀者であると名指しされて以来、すでにこの団体の行動には非常に凄まじい悪影響が起きている。不起訴共謀者と名指しされて以来、会員数は大幅に縮小された。さらにそれまで受け取っていた寄付金n金額は激減し評議会の行動に必要な月々の予算に全く足りなくなってしまった。

ところがスコットによると、ワシントンタイムスの記事が掲載された翌日の2007年6月12日にCAIRの声明文では、ワシントンタイムスの記事は嘘八百だという抗議の内容が発表されていたというのである。

CAIRは本日、ワシントンDC右翼新聞による政治目的の動機の報道で草の根運動の支持が減っているというあるがこれは虚偽であると批判した。CAIRによると本日のワシントンタイムス紙に載った記事は納税の金額を会員の数が減っているとわい曲して解釈したものであるという。

6月に会員数が減っているとワシントンタイムスが報道した時は、記事は嘘八百だと抗議しておきながら、今になって不起訴共謀者と名指しされてから会員数が減った証拠としてその記事を提示するとは、ご都合主義もここまでくると立派なものだ。
さすがイスラム教テロリストの二枚舌、恐れ入りました!


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ネットが幅を効かせるアメリカ左翼、デイリー・コス年次大会の影響力

先の参議院選挙で主にインターネットでの選挙運動に頼った右翼の新人候補が惨敗したことで、ネットの力を過信しすぎたのではないかという議論があちこちで見られた。今はまだ日本ではインターネットから出た候補者が勝利をおさめるには時期早尚かもしれない。だが将来そういうことが起きないとは断言できない。ネット歴史の浅い日本ではネットの影響力をどう政治に利用していくかその方法がまだはっきりと設立していないだけだ。
現にアメリカではデイリー・コスという左翼ブログが主にネットで活躍する過左翼市民団体のムーブオン・オーグと共に左翼・リベラル系の民主党支持者に多大なる影響を与えている。ここ数年デイリー・コス主催で行われているコス年次大会では、今年も民主党の大統領候補者ヒラリー・クリントンやブラコ・オバマなど大物政治家が何人も参加しており、この参加者の面々を見ればこのブログがどれほど強力な存在であるかが分かる。
ウィキペディアによれば、デイリーコスはマーコス・モーリトサス(Markos Moulitsas Zúniga)によって2002年に創設され週のヒット数は60万をこえるという。ただコスの場合ひとつのブログだけでなく提携ブログが多数あり、無数の掲示板も付属していることから、もうこれはただのブログとはいいがたい。こうしたコスのメンバーのことをコサックス(Kossacks)と呼び、その運動のことを草の根運動・グラスルーツをもじってネットルーツ運動と呼んでいるが、その過激的な思想から右翼系からはナットルーツ(気違い根っこ)ともじって呼ばれている。
さてこのコス年次大会はこの週末に行われたが、そのなかでも面白いエピソードがいくつかあるので紹介しておこう。

ヒラリー氏、ブロガーの集会でブーイング浴びる

2007年08月05日23時56分
 08年の米大統領選で初の女性大統領を狙う民主党のヒラリー・クリントン上院議員が4日、インターネットのブロガーの集会でブーイングを浴びた。…
 この日、リベラル系で人気の政治ブログ「デイリー・コス」がイリノイ州シカゴで開いた集会には、約1500人のブロガーらが参加。候補指名争いでクリントン氏を追うオバマ上院議員らも駆けつけた。インターネットのブログに書き込む草の根の情報発信は、米国政治では無視できない存在となりつつある。
 ブーイングが起きたのは、政治家との癒着が問題となりがちなロビイストの献金について、クリントン氏が「受け取る」と言明したため。「多くのロビイストは現実の米国人を代表している」とまで言い切った。
 民主党支持のブロガーは大半が左派リベラル系で、反ブッシュ色を鮮明にする。古い政治を破壊したい気持ちが強く、ロビイストへの拒否反応は強い。…
 だが、候補指名を得た後、共和党候補と対決する本選挙になると中間層の支持が欠かせない。リベラルなイメージの強かったクリントン氏はここ数年、イラク戦争の開戦に賛成するなど中間層をターゲットに据えてきた。ブロガーの世界では懐疑的に見られているが、嫌われない程度の距離感をとっており、この日もブロガーとの間には一線を引いた。

これは日本のネット会でもありがちなことなのだが、人気のあるブログに集まる意見が必ずしも市民の声を代表しているとは限らない。いや、かえって過激なことを書いた方が人気があがることから、ネットの意見というのは左翼にしろ右翼にしろ極端になることが多い。例えば前述のムーブオンなどはネットの力を利用して2004年の大統領選挙の時、バリバリの反戦派ハワード・ディーン候補を強く後押しした。予選前までは圧倒的に支持率が高く民主党候補も夢ではないと思われたディーン氏だったが、最初の予選でそのあまりに過激な思想から完全崩壊してしまったのは記憶に新しい。また2006年の中間選挙の時もムーブオンは、2000年の大統領選挙では民主党の副大統領候補にまでなった民主党の大御所ジョー・リーバーマン氏を、氏がイラク戦争支持であることを理由に攻撃した。氏の選挙区に民主党から無名の新人を出馬させ、再当選確実だったリーバーマン氏から民主党候補の座を奪ってしまったのである。だが、無所属として上院議員に立候補したリーバーマン氏は民主・共和双方の候補者をやぶって圧勝した。ナットルーツは左翼系はコントロール出来ても中間層からの支持は得られなかった典型例である。
ヒラリー・クリントンがデイリー・コスのメンバーたちの機嫌をとりながらも、一戦の距離をおいているのは、民主党候補となった後の一般選挙のことを考えてのことなのだ。過激派左翼の人気を得ようとあまりに過激な発言をすれば、後で中間層から見放されるのは目に見えている。しかし、基盤となる左翼系の支持なくしては候補に選ばれない。ここらへんの綱渡りが難かしいところだ。
さて、この大会においては色々な話題が取り上げられたが、「軍隊と革新派、お互いそんなに違うのか?」という主題のパネルにおいて質疑応答の際、増派支持について語ろうとした軍人の質問が突然打ち切られるという出来事があった。
質問したのはデイビッド・D・アキナ曹長。アキナ曹長はパネルの専門家たちが言ったことに対して増派は成功していると主張するつもりで、分厚い資料を片手に質問に挑んだが、質問の答えを得る前に司会者のジョン・ソルツ氏から軍人が制服姿で政治討論に参加するのは軍規約に違反する行為だとして警告され、パネルのメンバーたちは曹長の質問には答えず早々に立ち去った。翌日右翼系ブログのパジャマメディアからインタビューを受けたアキナ氏は「厳密的には(ソルツ氏)は正しい」と認めた。「彼は陸軍の将校ですから私はその規則に従います。彼の権威を尊重するからこそ今日は私服できました。」
軍関係の人たちの間でも軍人が軍隊の作戦がうまくいっているかいっていないかについて質問することが政治活動と考えられるのかどうかかなり意見が別れるところなのだが、それにしてもそれを決めるのは軍隊であってコスの司会者ではない。ソルツ氏は元陸軍大尉だったとはいえ現在は民間人でありアキナ陸軍曹長に命令する権限は持たない。だいたい常に軍隊を蔑んでいる民間組織のコスが突然の軍規約を尊重するというのはどうしたものなのだ?
コスの方針が制服姿の軍人の政治活動を許可しないというものであるなら、なぜソルツ氏はアキナ曹長の質問を許したのだろう?最初から制服姿の軍人からの質問は一切受け付けないといって拒絶するべきだったはずである。ソルツ氏がアキナ曹長をさした理由は彼が制服を着ていたからで、現役軍人から戦争反対の意見を聞きたかったからなのだ。それが期待に反して戦争賛成の意見が出てきたので突然軍規約などを持ち出し自分の元将校という権威をふりかざして反対意見を弾圧したにすぎない。反対意見は黙らせるというのが左翼の常套手段だから特に驚くことはない。
パジャマメディアのインタビュアーが「本気で誰かの気持ちを変えさせることが出来ると思ったんですか?』と聞くと、大会に参加していた人々は結構アキナ氏の話を聞いてくれたという。アキナ氏にとってはここも戦場なのだと氏は言う。そこで氏はイラクに駐留していた時自分の隊の食料が不足しておなかをすかせていた時、イラク兵が自分達の間でも足りないほど少ない食料を削って曹長に分けてくれた話をした。アキナ氏はイラク市民と個人的な絆を感じるのだという。
アキナ氏の姿勢は立派だが、このエピソードでも分かるように極左翼のコサックスはイラク戦争がうまくいっている可能性さえ議論する気はないのである。そのような組織から戦争支持の候補者が支持を得ることはあり得ない。いや、イラク戦争には反対でも即撤退は望ましくないというような意見さえ観客を得るのは難かしい。
これに加え9月にイラク戦線司令官のペトラエウス将軍がイラク状況の向上を報告したりしたら、アメリカの中間層と過激派左翼の間で大きな溝が生じることは明白だ。そうなった時、民主党の候補者たちは基盤を守りながら中間層の支持を得るためさらに難かしい立場に立たされるだろう。


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ヒラリーが賢く見える? バラク・オバマの連続失言

アップデートあり:後部参照のこと。
ここ数日民主党から大統領に立候補しているバラク・オバマによるあまりにも政治家として無思慮な発言の連続がヒラリーを嫌いなカカシですら、ヒラリー候補の方がまだましかも、と思うようになっている。(苦笑)
オバマ議員は先日行われた民主党の討論会で自分が大統領になったらまず最初にアメリカに対して敵意を示している諸国のリーダーたちと会見すると断言した。同討論会でヒラリー・クリントン議員はそのような会見は敵国のプロパガンダに利用されるだけなので何かしらこちらが得るものがない限り安易な会見はするつもりはないと発言。さらにクリントンはオバマの発言は無責任だと言及した。(下記はロイターの記事より

クリントン選挙事務所を代表して元アイオワ知事のトム・ビルサック氏は記者への電話で、オバマ候補はイラン、北朝鮮、シリア、キューバ、そしてベネズエラといった諸国リーダーたちと無条件で会見するつもりだとし、このような国々との会見では何かしらの条件をつけてからするものだと語った。

オバマも軽はずみなことを言ってしまったと気が付いたらしく、後に「私は条件付きでという前提で話をしていた。」などと苦し紛れの言い訳をし始めたが、これもまた政治的に賢いヒラリー側はオバマ候補はインタビューされるたびに言うことがころころかわっていると逆に利用されてしまった。
このことで大統領としては腰が低すぎると批判されたオバマは自分には勇気があるということを示そうとでも思ったのか、今度はパキスタンにテロリストが隠れているという確たる証拠がを得たらムシャラフ大統領に有無もいわせずパキスタンを攻撃するなどと勇ましいことをいってのけた。(読売新聞より)

オバマ議員は、アフガニスタンとの国境に近いパキスタン北西部の部族支配地域を「(世界の)安全保障を最も脅かす地点」と表現し、情報機関が信頼に足るテロリストの潜伏情報を上げてきた場合、直接攻撃に踏み切る方針を明示した。また、パキスタンに対して実施している軍事援助について、「テロ組織の訓練キャンプ閉鎖で成果を上げた場合」などと条件をつける考えを示した。

仮にもパキスタンはアメリカの同盟国である。アフガニスタンに潜むアルカエダやタリバンとの戦いでムシャラフ大統領の協力は必要不可欠なものだ。そういう国に対してこれから大統領になろうという男が宣戦布告してどうするのだ!あほ!第一テロリスト退治にパキスタン侵攻も止む終えない事態があったとしても事前にそれを宣言してしまうなど愚の骨頂である。パキスタンには核兵器があるのだぞ。もしムシャラフがアメリカから攻めてこられると本気で心配したら、ムシャラフは自国内にいるアルカエダなどのテロリストと協力してアメリカを相手に核兵器を使うかもしれないのだ。いや、それだけでなく、パキスタンはイランに核兵器を売るかもしれない。そうなったら中東はあっという間に核武装してしまう。そうなったらイラク戦争どころの騒ぎではない!
誰かが言っていたのだが、オバマの魅力は反戦派であるということだったのに、アメリカ軍のイラク撤退どころか、新しくパキスタンとも戦争をはじめるなどと息巻くオバマを、これまで通り反戦左翼が支持するのだろうか?
バラク・オバマの話を聞いているとヒラリー・クリントンが賢者に見えてくる。おそろしや〜!
アップデート(4:20PDT):もうひとつオバマの失言を忘れていた。(下記毎日新聞より。)

【ワシントン及川正也】来年の米大統領選で民主党指名の獲得を目指すバラク・オバマ上院議員(45)は2日、対テロ戦争で核兵器を使用しない意向を明らかにした。AP通信に語った。ブッシュ政権は先制核攻撃を含め戦域・戦術核兵器の使用を排除しない核戦略を取っており、対抗する狙いがあるとみられる。

 オバマ氏は、アフガニスタンやパキスタンでの国際テロ組織アルカイダ撲滅を目的とした核兵器使用について「いかなる状況であれ、核兵器を使用することは深刻な誤りだ」と述べ、核兵器使用は「選択肢にはない」と明言した。戦術核の使用についても同様だ、と答えた。
 オバマ氏は1日、場合によってはパキスタン政府の承認なしにアルカイダを攻撃する考えを表明していた。 オバマ氏の「核不使用」発言について、ライバルのヒラリー・クリントン上院議員(59)は「大統領は核兵器の使用や不使用についての議論には慎重であるべきだし、発言も慎重であるべきだ」とけん制した。


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イラク戦争の成功は問題、と米民主党幹事うっかり本音

なんとか勝てる戦争に負けようと必死で拘束力のないイラク撤退議案を次から次へと提案しているアメリカ民主党議会だが、先日その党幹事がニュースのインタビューで民主党が勢力を得るためにはイラク戦争での成功は好ましくないと、思わず本音をもらしてしまった
サウスカロライナ代表民主党下院幹事のジェームス・クライバーン議員は(House Majority Whip James Clyburn)月曜日デイビッド・ペトラエウス陸軍将軍によるイラクからのいいニュースは民主党を分裂させイラク撤退の時間制限を進めていくのは難かしくなるだろうと語った。
ワシントンポストのおこなったポストトークというオンラインビデオでのインタビューにおいて、クライバーン議員はイラクにおけるアメリカの戦略に関する議案は9月に行われるペトラエウス将軍の報告を待ってからにすべきだと発言。ペトラエウス将軍はブルードッグといわれる保守派の民主党議員たちの間で非常に高く評価されているため、将軍の報告次第でこれらの議員たちの意見はかなり左右されるはずだとし、これらの議員たちの協力なくしてイラク撤退議案は通らないと語った。
私はこのインタビューの模様をラジオで聴いていたのだが、司会者がもしペトラエウス将軍の報告がイラクでの新作戦はうまくいっているという内容だったら民主党はどうするのかという質問に対して、クライボーン議員は「そうなったら我々には大きな問題だ。」と本音を漏らすのを聴いてしまった。

「(ブルードッグ民主党)のグループには現在のイラク方針を保つことを支持する人が充分に出て、もしこれまで通り共和党が団結し続ければ我々(民主党)にとっては問題です。」

自分の国が戦争で勝つことより、自分の政党の勢力を強めることのほうが重大だという民主党。これでは民主党は非国民と責められても文句はいえないだろう。


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ブッシュ政権のプロパガンダ? 国防庁のブロガー座談会

今日は国防庁が主催しているブロガーラウンドテーブルという電話会議について紹介しよう。
言うまでもないがアメリカの国防庁には広報部がある。最近この広報部は軍関係の記事を書いているブロガーたちに注目しはじめている。なにせ主流メディアはイラクやアフガニスタンで自爆テロが何人市民を殺したとか、アメリカ兵が路肩爆弾で何人死んだとかいう話は報道しても、アメリカ軍がイラクで学校や病院を建設したとか、テロリスト相手にどのような戦いをしてどのような成功をおさめているかという功績はほとんど報道しないので、より多くの人々に米軍関係のニュースを読んでもらうには、軍に興味のある人が読んでいるメディアムを探す必要があるからだ。
実は私が国防庁の広報部の新しい方針を知ったのは、何を隠そう広報部の人から直接私のところにメールがきたからである!これはもう一年以上も前のことになるが、私がミスター苺と経営している英語のブログ、Big Lizards.netにアメリカ軍によるイラク軍の訓練の話を書いたのを広報部の人が読んだらしく、アメリカ軍の活動に興味があるのならニュースレターを送ります、と連絡があったのである。今でも広報部の名簿に私のメールアドレスは載っているので、時々ニュースレターが送られてくる。
しかしそれに加えて最近国防庁は人気のあるブロガーを集めて最近の軍の活躍について電話会議をするようになった。うちのような零細ブログは招待されていないが、政治ブログやミルブログの経営者たちが多く参加しているようだ。その会議の結果は国防庁のウェッブサイトのブロガーズラウンドテーブル(ブロガー座談会)というページで読むことができる。
このラウンドテーブルをブッシュ政権のプロパガンダ作戦だと批判しているのはハーパースマガジンに書いてるケン・シルバースタイン(Ken Silverstein)というジャーナリストである。
シルバースタインは、ラウンドテーブルの目的は主流メディアを飛び越してブッシュ政権のプロパガンダをおうむ返しに報道してくれそうな選り抜きの軍事分析者や保守派評論家や退役軍人などのブロガーを集めて政権が報道してほしい情報の要点を示すことにあると主張する。ラウンドテーブルに参加した人々がその後そこで得た情報を元にした記事を書いていることが何よりもその証拠だというのである。

ブロガーたちは自分達は何も悪いことはしていないという前に、彼等に一つ聞きたいことがある。もしも政権が選り抜いたリベラルのブロガーばかりがクリントン時代に同じことをしたら彼等はどう思っただろうか。彼等は強く抗議したに違いない。そして私もそれに同意しただろう。どちらの側にいようと片方だけで政権のゴスペルを広めるべきではない。少なくともジャーナリストの振りをするなら、そのくらいの基準は保つものだ。

しかしラウンドテーブルによく参加しているミルブロガーの大御所、ブラックファイブのグリムによれば、ラウンドテーブルの参加者は保守派だけではないという。例えばこのブロガーはラウンドテーブルの会議の後、ペンタゴンがどんな嘘をついているかという内容の記事を書いているくらいだ。
国防庁は毎朝主流メディアを集めてその日のニュースを発表している。ブロガーたちへのラウンドテーブルはその繰り返しにすぎない。第一ラウンドテーブルで話されたことは国防庁のサイトで公開されているのだから、右翼だろうと左翼だろうと興味のある人なら誰でも読むことは可能なのである。それをあたかもブッシュ政権が選んだ秘密結社の会合かなにかのように批判するシルバースタインの態度には呆れる。
グリムはシルバースタインはこの会合が保守派のみを対象にしていることに抗議をしているのではなく、国防庁のお偉方が主流メディア以外の人々と話をしているということが気に入らないのだという。ニュースのソースはエリートメディアだけであるべきだとでも考えているのだろう。
またグリムはラウンドテーブルで情報提供をしている人々はブッシュ政権の人間ではなく職業軍人だと強調する。軍人は政治家ではない。シルバースタインのようなジャーナリストは軍人を政治家と混同していることに誤りがあるのだという。

「お前たちは本当のジャーナリストではない」というのは彼の言葉で「私のようなプロのみが高官とはなす権利があるのだ、お前らのような資格のない連中とではない。」という意味なのだ。これは「記者」という特別な立場を守りたい、たかがブロガーや一般市民などが重要な人々に面会する資格はない、というアイデアを守っているのだ。 こういう仕事は共和制の門番であるジャーナリストに任せるべきだというのだろう。

ある意味でこれは非常に面白い。私が「ジャーナリストの振り」したがっていると言う考えには笑わされる。ジャーナリストの基準などという私が目指すべく崇高なものが存在するかのようだ。どういう意味か説明させてもらおう。 もし私が軍隊の作戦上の秘密を手に入れたとしよう。私は普通のジャーナリストが経験するという、その話を報道するか国家秘密を守るかというジレンマに悩まされることはない。ジャーナリストによるこの「緊張」は必ず秘密を報道するほうに傾くことに気付く。しかし私にはそのような緊張は存在しない。そのような秘密情報をどうするかといえば、善良な市民なら当然すべきであることをするのみだ。それには敵に役に立つように報道することは含まれていない。
私は現地で戦う我々の人々に忠誠心を感じる。彼等は私たちを守ってくれているのだ。この忠誠心は二方通行である。つまり、私はジャーナリストではない。私はアメリカ市民であり、健康な国内議論に参加しているのだ。そのために資格など要らない。その資格を得る代償がアメリカと敵との間で中立であることだというなら、そんなものは欲しくない。

自分達は左翼のプロパガンダばかりを流しているくせに、ジャーナリスト以外の人間が情報提供をしたらそれは政権のプロパガンダだとがなり立てるエリートメディア。お前たちがちゃんと真実を報道していればブロガーもトークラジオも必要ないのだ。主流メディアが本当のことをきちんと報道しないから我々は他のメディアムに頼ることになるのである。情報はジャーナリストだけのものではない。それをエリートメディアはいい加減気が付くべきだ。


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「冬の兵士」再び、米二等兵の軍隊バッシング

数日前、アメリカのニューリパブリック(TNR)という三流新聞にスコット・トーマスという仮名を使ったイラク駐留米兵によるものとされる「日記」が掲載された。三部に分けて掲載されたその日記に描かれた兵士らの行動は、路肩爆弾で顔に傷を負った女性を大声でからかった話や、大量埋葬地で見つかった子供の骸骨を頭に乗せて遊んでいる兵士、ブラッドリー戦車を乱暴に乗り回して野良犬を殺す悪趣味な兵士の話など、戦争犯罪に値するひどいものであった。(最後に日記の詳細を掲載するのでご参照のこと。)
このため現役や退役及び家族など軍関係の人々が書いているミルブログとよばれるブロガーたちの間で怒りが爆発。この話はねつ造だ、著者が本当はきっと偽兵士に違いない、TNRは真義を確かめもせず掲載したのか、本当にそんな事実があったのなら著者は仮名など使わず実名で正々堂々と名乗りを上げるべきだと、非難轟々の声があがった。そのなかでもあるブロガーは仲間のブロガーたちに、この著者の正体や日記の審議を確かめようとイラクに駐留したことのある軍人らに呼びかけた。
その結果、このスコット・トーマスSir Real Scott Thomasというブログを書いていたイラク駐留陸軍スコット・ビーチャム二等兵であることが判明した。間抜けなことにスコットは自分の本名のファーストネームのスコットとミドルネームのトーマスを仮名としてTNRの「日記」に使っていたのだからおかしい。しかも本人のブログに自分の連絡先まで明記されている。これについて陸軍の名簿を調べたある兵士によると、、

自分は現役の陸軍兵でイラク帰還兵であります。今スコット・トーマス・ビーチャムで陸軍名簿のウェッブサイトを検索してみました。それによると彼の階級は二等兵となっています。…

2006年9月のブログエントリーでは彼は自分の階級を一等兵と記述しています。ということはこの人間は軍隊規則の(Uniform Code of Military Jsutice)の15条に触れる罪を犯して少なくとも一階級格下げされたものと思われ、軍隊に恨みを持っていると考えられます。

格下げされたのか最初から嘘をついて階級を一つ上と偽っていたのかは解らないが、二等兵と言えば陸軍でも一番下っ端である。この男どうやらまったくうだつの上がらない陸軍兵のようだ。最初にビーチャムの日記が掲載された時、元陸軍特別部隊出身のミルブロガー,Black Fiveのジンボー親爺がこんなことを書いていた。

スコット・トーマスは嘘つきの糞野郎だ。どの部隊にもスコット・トーマスみてえな奴はいる。自分のすばらしい才能を誰も認めてくれない、自分は悪くないのにいつも上官から叱られていると文句ばかり言ってる奴だ。だから周りからは、ぐだぐだ文句ばっかいってないで黙って仕事しろと怒鳴られてばかりいるんだ。

ジンボー親爺は、こういう人間が軍隊をこき下ろすのは理解できるし、そういう話をメディアが鵜呑みしたとしても不思議でもなんでもないと語る。スコット・トーマスの正体が割れて、彼が2006年の9月に書いたこのエントリーを読んでみると、ジンボー親爺の分析がどれだけ正しかったかがわかる。(カカシ注:訳そうと思ったが句読点のない、ながったらしい文章なので、このまま訳したら訳が分からなくなる。仕方ないので意訳することにした。これで作家志望だというのだから驚くな。)

毎朝俺は起きる度に自分に言う。俺、スコット・ビーチャム、陸軍兵、ドイツ在住。これが俺の人生だ。俺は今日も糞みてえな扱いをされ、庭仕事や掃除だのをして、人殺しの訓練をする。この経験に耐えられなければ、俺がかつてもっていたもの、そして俺が外へ出てから持つだろう人生のありがたさが十分に理解できなかっただろう。俺が本当にしたいことは歴史を教えたり、寝転んだり、世界中飛び回って世界を修理することなんだ。…でもそれをするにはこの陸軍での経験を積んどかなきゃ出来ないんだ。俺が何をするにしても陸軍体験でハクをつけた後じゃなきゃだめなんだ。

ビーチャムは将来作家になりたいらしい。それでイラク帰還兵だということになれば、それなりにハクがつくからと陸軍に志願したらしいのだが、仕事が思った以上に辛くて毎日愚痴ばかり言ってるというわけだ。しかしビーチャムの所属隊も分かったことだし彼のこれまでの任務もすぐに明らかになることなので、彼のいうような体験を本当に彼がしているならば事実はそのうちハッキリするだろう。
ただ、ビーチャムの書いたようなことが本当に起きたのだとしたら、ビーチャムはその場にいた当事者であったにも関わらず同胞がこのような軍規約に触れる違法行為をしていたことを今まで黙っていたことになり、それ自体規約違反である。もし彼の話が本当ならこれらの事件に関わった人間はビーチャムも含めてすべて戦争犯罪者として罰せられるべきである。
だがもしこれがビーチャムによるただのでっちあげであったとしたら、現役兵隊が軍隊の活動を批判する政治意見を公の場で述べること自体が違法であるから、その罪で罰せられるべきである。とにかくこんな奴が大事なアメリカ軍のブラッドリーの修理に当たっているというのは非常に危険だ。早速最前線から取り除いて帰国させ、臭い飯でも食ってもらいたいものだ。
それにしても、自分の隊にこんな負け犬の非国民が混ざっていたことを知った所属隊の面々はいったいどんな気持ちだろうか?


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とんだ茶番劇! 米議会イラク撤退徹夜議論の結末は

ペトラエウス将軍のCounter Insurgency (COIN)作戦と呼ばれるイラク反乱分子撲滅新作戦は6月に本格的な攻撃に入ったばかり。にも関わらずまだ7月も半ばというのに民主党の議会はまたまた意味のないイラクを120日以内に撤退せよとの議案を提案。議案が決議にもっていけるまで徹夜でがんばると布団や歯ブラシまで持ち出しての大芝居を打ったが、議論を打ち切って決議にかけるのに必要な60票に全く及ばない賛成52対反対47で、民主党全員が賛成、共和党からの裏切り者はいつもの4人。以前と全くかわらない票数のまま夜はあけてしまった。
徹夜議論の際に、共和党の戦争支持議員の間からはいくつも非常に印象に残る演説がされたが、そのなかでも印象に残ったのはアリゾナ州代表ジョン・マケイン上院議員の演説だ。マケイン議員は来期の大統領選挙にも共和党の候補となるべく選挙戦に出ているが、彼のキャンペーンはいまのところ資金不足で立ち往生している。私はマケイン議員は内政の面ではリベラル過ぎてすきではないのだが、ことイラク戦争に関しては非常にまともなことを言っていると思う。特にイラク戦争当初からマケイン議員はラムスフェルド前防衛長官のやり方を厳しく批判し、もっと兵数を増やしペトラエウス将軍を起用しCOIN作戦を取り入れるべきだと誰よりも先に提案していた先見の明のある人でもある。以下マケイン議員の演説から一部抜粋。

過去数日に渡る延々と長引いた討論の間に私は何人もの議員の方々から同じ議論を何度も聞きました。反対側にいる私の友人たちは議案に反対する私たちが相も変わらず「同じ方針を保っている」と攻めます。これは私たちがこの戦争の結末を怪しくさせる結果となった同じやり方をまだ続けようとしているという意味です。

しかし私たちは皆ペトラエウス将軍の登場で方針が変わったことを承知しています。私たちは今、我々の一部の人間が最初からすべきだと言っていた対反乱分子作戦を戦っているのであり、これは我々の強さを最も有効に使い敵の利点を生かせなくする作戦なのです。この新しい戦略はまだ結論は出ていないとはいえ、過去の作戦が失敗であったのに比べ、ずっと成功を遂げているのです。
わが友レビン上院議員とリード上院議員が提案した作戦は、小さな軍隊を前線からは遠隔の基地に閉じ込めるというもので、そこから時々探索や破壊任務やイラク軍訓練に出かけていくtpというものですが、これこそすでに試され大失敗に終わったと誰もが認めている作戦の延長です。議長殿、これこそがこれまでと同じ方針を保つことであり、必ずや我々の敗北につながりイラクにおいて大悲劇を招くでありましょう…
また私は私の同僚から前回の選挙においてアメリカ国民は意思表示をしたのだと繰り返し聞きました。国民のみなさんはイラクからの撤退を要求している、その要求に答えて一刻も早く撤退させることが我々の責任なのだと。しかしそれが我々の一番の責任でしょうか? …私も数々の間違いによって払った大きな犠牲を考えると嫌気がさします。しかし過去の間違いに反応して歴史上もっとひどい間違いをおかすような議案を支持することは出来ません。この間違いは私が大人になってからずっと代表として仕え続けてきた州の人々を非常な危険に陥れることになると信じて疑いません… 我々の忍耐はぎりぎりのところまで試されています。しかしながら負けない可能性がある戦争ならば、敗北を選んではなりません …
…この敗北はイラクのみならず我々にとって非常な悲劇をもたらすことは確実です。私はそのような作戦に加担するわけにはいきません。私はどんなことをしてでもそれを避ける努力をします。議長殿それが私が出来る精いっぱいの努力なのです。志願して肩にライフルをもち我々のために戦ってくれているアメリカ人の足下にも及びません。私の任務は危険でも困難でもありません、しかしわが同胞そしてすべてのアメリカ人が私に反対したとしても私は成功のチャンスがある限り努力しなければならないと思うのです。

マケイン上院議員はベトナム戦争中にパイロットとして撃ち落とされ、北ベトナムの捕虜に7年もなっていたひとなので、決して戦士たちの苦労を知らない人ではない。
現地で実際に戦っているアメリカ兵たちは圧倒的にペトラエウス将軍の作戦に期待をかけており、最後まで戦わせてほしいと願っている。そう主張するのはイラク帰還兵のピート・ヘグセス中尉(First Lt. Pete Hegseth)27歳。ヘグセス中尉はイラク・アフガニスタンの帰還兵で組織したVets for Freedomという草の根運動市民団体のリーダーで、今回民主党がゴリ押ししたイラク撤退議決案が通らないよう旅費や宿泊費など自腹をきって30人の帰還兵を集めてワシントンDCに議員たちとの直談判に乗り込んだ。
ヘグセス中尉たちの記者会見は主流メディアにはほぼ無視されたが、右翼系ラジオ番組では各局が取り上げた。私もビル・ベネットやローラ・イングラムのラジオ番組で中尉の話をきくことができた。彼等のウェッブサイトに載っている記事によれば、共和党の議員たちは皆会見に応じてくれたそうだが、民主党のペロシ下院議員やリード上院議員はたった5分間の会見に応じてくれなかったという。イラクからアメリカ軍を撤退せよと呼びかけている議員たちが、実際に前線で戦ってきた帰還兵との会見を断るとはどういうことだ? 常にアメリカ軍のことを考えているなどといいながら当事者の話を聞きたがらない理由はなんだ?
まったくとんだ茶番劇であった!


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眉唾な『イラク帰還兵が語るイラク米兵の悪行』

昨日もアメリカ軍によるイラク市民虐殺というハディーサ事件がかなり怪しくなってきたという話をしたばかりだが、反戦派は事の真相もたしかめず執拗にアメリカ軍の悪行を羅列するのに余念がない。普段は現場の軍人たちが「状況は向上している」と証言しても絶対に信じない反戦派だが、もし軍人が「イラクでアメリカ兵はひどいことをしている」などといいさえすれば、ことの真相も確かめず担ぎ出してはアメリカ軍全体に汚名を着せる反戦派のやり方はベトナム時代からかわらない。
ベトナム戦争当時戦場から帰還したばかりのジョン・ケリーなる若者がベトナム帰還兵を数十人集めて反戦グループを組織し、アメリカ兵が一般市民を拷問したり虐殺したりしているとし、アメリカ軍は「ジンギスカンの軍隊さながらである」とアメリカ議会で証言し脚光を浴びた。(冬の兵士という題でドキュメンタリーにもなった。)この反戦運動で華々しく政治社会にデビューしたケリー青年こそ後に民主党の大統領候補としてブッシュと一騎討ちをして負けたジョン・F・ケリー上院議員である。
ところが後になって冬の兵士に参加していたメンバーのほとんどが、ベトナム帰還兵どころか軍隊にもいたことがない人たちがほとんどで、彼等の体験談はすべてでっちあげであったことが本当の帰還兵たちの証言で明らかになった。ジョン・ケリーの大統領選挙運動中に当時ケリーと一緒の隊にいた軍人たちがケリーはベトナム戦争時代の手柄話で嘘をついていると訴えて、ケリーの選挙運動に多大なる打撃を与えたことは記憶にあたらしい。
さてイラク版冬の兵士たちがベトナム戦争時代の台本のほこりをはらって、またまたでっちあげ「アメリカ軍の悪行」シリーズ続編を展開させている。アメリカでも社会主義傾向の左翼雑誌ザ・ネイション(The Nation)は50人の「イラク帰還兵」にインタビューし、イラク内で行われているアメリカ軍の悪行を特集している。

ハディーサの大虐殺や14歳のマフムディヤの強姦殺人事件など裁判になった事件や、ワシントンポスト、タイム、ロンドンインディペンデントその他で取り上げられたイラク人の証言によるニュースによってどれだけ一般市民への攻撃が大規模なものであったのか分かるようになってきました。ヒューマンライツウォッチやハーツアンドマインズといった人権保護組織が発表した詳細でつまっているこれらの報告によって、占領軍によってイラク人が殺されることは軍当局が認めているのとは裏腹にごく普通に行われていることを意味します。

ネイションのこの捜査は、これまでで初めてアメリカ軍内部から多くの証人が名前を公開したうえでこうした事件を裏付けた証言を集めたものです。

白状すると私はこのネイションの特集を最初から最後までちゃんと読んだわけではない。それというのも特集の一番最初に出てくる「証人」ジェフ・エンゲルハート(Jeff Englehart)という名前を呼んだ時どっかで聞いたことのある名前だなとピンときたからである。

スペシャリスト、ジェフ・エンゲルハート、26歳、コロラド州グランドジャンクション出身。エンゲルハート兵は第一歩兵隊第三旅団のメンバーで2004年二月バグダッドの北東35マイルほどのあるバクバで任務していた。

私はちょっとグーグル検索をしてみたら、なんと2年前に私がミスター苺と一緒に経営している英語のブログでこの男について書いた記事が出てきた。
実はこのエンゲルハートなる男、2005年にイタリアのテレビインタビューで、アメリカ軍はファルージャで白リン弾という化学兵器を市民に使ってイラク市民を大量に虐殺したと証言していた。このインタビューでエンゲルハートはアメリカ軍が化学兵器を使ったことは間違いない。自分はラジオでウィスキーピート(WP、白リン弾のあだ名だとエンゲルハートは説明)を落とせという命令をはっきりと聞いたし、WPによって殺されたイラク人を目の当たりで目撃し、焼けただれた死体をいくつも目撃したと断言した。
私はこの男がブラッドリーを「戦車」と呼んだり、ハンビーを「トラック」と呼んだりしているのをきいて、普通陸軍兵ならこういういい方はしないのではないかと不思議に思った。また、白リン弾は英語でWhite Phosphorusといい、その略名のWPはウィスキーピートではなく、ウィリーピートのはずである。しかもWPは国際規約では化学兵器という指定はなく、ごく通常の兵器であり違法でもなんでもない武器なのだ。元陸軍兵がこんな基礎的な知識も持っていないというのはどうも変ではないか? しかしもっと決定的にこの男の嘘を証明する事実を私は発見した。それは彼自身が書いていたブログのなかにあったのである。
エンゲルハートは2004年の2月から2005年の2月までFight to Surviveという反戦ブログを仲間の兵士たちと共同で”hEkle”というハンドルネームを使って書いていた。ブッシュ大統領に対する敵意やイラク戦争反対の激しい感情はこのブログでもそのときからあらわにされているが、それよりも気になる点があった。
2004年の11月にエンゲルハートはファルージャの戦いについて書いているのだが、その時のブログエントリーでは上官をファルージャ近郊まで車で運転していったとは書かれているが戦闘に参加したとは書かれていない。また、WPを落とせという命令をラジオで聴いたという話も出てこない。

そしていつものように砲弾の音や、爆発音、そして照明弾の音が聞こえる。そのいくつかは白リン弾だと言われている。…突然ラジオの通信で「バンカーバスター」の攻撃承認を求める声が聞こえてきた。

2004年当時には「白リン弾だといわれている」と伝え聞きしていたものが、どうして一年後には「白リン弾に間違いない」ということになるのだ?しかもラジオ通信でバンカーバスター使用の要求は聞いているのに、WP使用承認を聞いたと書かれていないのはなぜだ?
エンゲルハートは車を運転して上官をファルージャの外側まで連れていったが、彼自身はファルージャ戦闘に参加していたわけではなく、遠隔から戦闘状態を見ていただけである。実際に当時書かれたブログエントリーではビルが破壊された話は書かれているが直接市民が目の前で殺されたという描写は全くされていない。戦闘が終わってから翌日ファルージャへ入って死体の山を目撃したのであればそういう話をするはずだが、数日後のエントリーにもファルージャの話は全く出てこない。次にエンゲルハートがファルージャの話をするのは一年後のことである。
2005年に行われたテレビインタビューでこうも赤裸々に死体の状態を表現できる人間が、戦闘当時にその体験を全くブログに書いていないというのはどうかんがえてもおかしい。彼が当時書いていた反米かつ反アメリカ軍の内容から考えて、エンゲルハートが本当にアメリカ軍による虐殺を目撃したのであればその当時にブログに詳細に渡って書いていたはずである。
というようにエンゲルハートの証言は何から何までつじつまのあわないことだらけなのである。このような人間が帰還兵の代表者のように一番最初の証言者として載っているような記事は最後まで読む価値があるとは到底思えない。私が彼の証言だけを読んでやめてしまった理由はここにある。
またこの特集に載っている「帰還兵」のうちどれだけの人が本当にイラク帰還兵なのか疑わしいし、実際にイラク帰還兵だったとしても必ずしも本当のことを言っているとも限らない。下記のような例もあるのでね。
Fake Soldier exposed
陸軍の基礎訓練キャンプも落ちこぼれたマクベス君が自分が陸軍特別部隊にいたとか陸軍レンジャーだったとか言ってアメリカ軍の悪行を目撃したとでっち上げていた話。基礎訓練キャンプから追い出された書類が出てきて嘘が発覚。(英語)
ケリーの弟子? 反戦イラク帰還兵のおかしな戦話
イラクで戦闘に巻き込まれたこともなければ負傷したこともないのに、陸軍病院で戦闘で負傷した傷の治療に二か月も待たされたと嘘をついていたジョシュア・ランスデールの話。陸軍病院での診断者を提出できず嘘がばれた。
訂正:本文で2月と書いたエンゲルハートが書いているファルージャの戦いは11月でした。訂正します。


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米共和党が馬鹿党といわれる理由: 移民法改正案阻止が共和党の崩壊へとつながる可能性

先日ブッシュ大統領と民主党のジョージ・ケネディ上院議員が協力して発案した移民法改正案が上院議会で否決された。現在崩壊状態にある移民法を改正しようとしていた大統領の希望は共和党の反対によって阻止されてしまった。
実はここ数週間アメリカではこの話題で持ち切りだった。特に保守派の間ではこの改正案は「違法移民に対する恩赦である!」として大の不人気。政治ブログでも朝の右翼系ラジオ番組のトークショーでも「反対、反対、とにかく反対!」の繰り返しで、私はいい加減うんざりした。
ここで日本のみなさんは、どうして共和党の大統領であるブッシュと民主党のケネディ議員が共同で法律を提案するのか、そしてどうしてそれをブッシュ大統領と同じ政党の共和党が反対するのか不思議に思われることだろう。
アメリカはもともと移民の国なので移民が多いのは当たり前なのだが、最近の移民はおとなりのメキシコをつたって南米からの移民が圧倒的多数を占めている。しかし現在の移民法は非常に複雑でその手続きにはお金も時間もかかり、貧乏で教養もないラテン系外国人には手におえない。多くの移民が合法にアメリカ国内での労働ビサを得ることができないため違法に移住してくる。しかしアメリカ国境警備は人手不足で大量に侵入してくる違法外国人を取り締まることができない、完全なお手上げ状態になっている。
アリゾナやカリフォルニア、テキサスといった国境ぞいの州では、警備の甘いところを選んで密入国者が民間人の私有地に入り込んでくるため、地域の民間人がミニットマンと呼ばれる民兵軍を組織して自ら国境警備にあたるという状況がもう数年に渡っておきている。
アメリカ保守派の間では国境ぞいに塀を建設して違法移民を閉め出し、現在アメリカ国内に在住する違法移民を片っ端から国外追放すべきであるという感情が高まっている。
しかし少子化の進むアメリカでは正直な話、違法移民の労働力なくしては経済が成り立たない状態だ。ここでも私は何度も書いているように、私の住んでいるカリフォルニアの地方では果物や野菜の農業が主な産業である。毎朝カカシが通る苺畑で日が昇らないうちから腰をまげて苺を積んでる農家の労働者は皆メキシコ系違法移民である。このあたりでは人手不足がひどく、マクドナルドのアルバイトでさえ一般のアメリカ人を雇うことができない。建設現場や大手マーケットなどで下働きをする労働力のほとんどが移民で補われていることは無視できない現実なのである。
このようにアメリカの経済の大きな一部を支えている違法移民を突然すべて国外追放になどしたら、国境沿いの州は経済破たんし、アメリカ全土でも食料不足で多大なインフレが起きること間違いなしである。アメリカ国民はハンバーガー一個千円などという物価にどれだけ我慢できるだろうか?
ブッシュ大統領はこうした問題を解決すべく、民主党も共和党もお互い妥協しあっていこうという趣旨の法案を提案したのだが、過激派右翼のトークラジオやブロガーが中心となり保守派コラムニストなども一緒になってものすごい反対運動へと広がってしまった。
議論がエスカレートすればするほど、移民法改正法案に反対している人々のいい分は、違法移民だけでなく合法移民まで受け入れるべきではないというような印象を受けた。特にラテン系の移民は白人ではないため、「変な色の外人は入国させるな!」とでも言いたげな人種差別すれすれの発言があちこちで聞かれるようになり、白人でない合法移民の一人として私は非常に不愉快な思いをした。これが私がこれまで同胞と考えていたアメリカ保守派の正体なのか? これが共和党の本質なのか?
ばりばり保守派の私ですらそのような疑心を持つようになったとしたら、もともと共和党に不信感をもっていたラテン系アメリカ人が今回のことでどれだけ共和党に不信感を持つようになったから想像に難くない。もともと共和党は少数民族には同情的でないとリベラル派は常にアメリカ市民に印象づけてきた。今回の右翼連中の大騒ぎを見ていると保守派の私としても返す言葉がなくなってしまうほどだ。
右翼過激派連中はこの法案が否決されたことで自分達が大勝利を得たと思っているかもしれないが、このことで共和党の得た打撃は計りしれない。まず第一にブッシュ大統領はラテン系投票者の40%の票を得て当選した。ブッシュ大統領はスペイン語が堪能でテキサス知事の時代からラテン系市民から人気があった。しかし現在の共和党はラテン系の11%程度の支持しか受けていない。もしもこのままラテン系にそっぽを向かれ続けたなら2008年の選挙で共和党が議席を増やすことなど先ず不可能だし、共和党大統領が選ばれることなど夢のまた夢だ。
そうなれば2009年からヒラリー大統領と民主党議会がアメリカを牛耳り、対テロ戦争などおさらばだ。テロ対策の愛国法もさようなら。911などとは比べ物にならないようなテロがアメリカ各地で頻発し、その度ごとにリベラルは「ジョージ・Wがイラク戦争などしたからこういうことになったのだ!」と大騒ぎをするだろう。
うれしいかアメリカの馬鹿ウヨ達よ!誇りに思うのか過激派右翼!
貴様らの過激なレトリックと運動で共和党が中庸な意見を持つアメリカ市民に見放され過激派左翼に政権を握られる結果になることがそんなにうれしいのか! この愚か者たち!
民主党は悪、共和党は馬鹿、といわれるゆえんが明確になるここ数週間だった。
こうなったらイラク戦争で圧倒的な勝利を得ることによって市民が今回の騒ぎを選挙までに忘れてくれることを祈るのみである。イラク戦争には勝ったのに、過激派右翼の移民法貝瀬案阻止が原因で民主党に政権と議会を握られるなどという結果になったらそれこそ目も当てられない。


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