ここまで来たイギリスの人権擁護法:イスラム批判で保守派ブロガーに逮捕状!

人権擁護法カテゴリーを新しく建設しました。海外における人権擁護法の悪影響や日本が海外から学ぶべき情報を特集しておりますので御覧下さい。*
瀬戸氏のところで、人権擁護法が日本でも浮上しているというお話を読んで、これは由々しき問題だと感じている。私は瀬戸氏の考えには100%同意しているわけではないが、この法律が人権弾圧に悪用される恐ろしい可能性を持つ法律であるという点には全面的に同意する。
日本よりも一足先に人権擁護法を適用したイギリスやカナダでは人権擁護法がイスラムテロリストや犯罪者によって悪用され、善良な一般市民の自由が迫害されているという話を私はこのブログでも何度かしてきたが、今回はイスラム過激派によって生活を台無しにされたイギリスの保守派ブロガー、ライオンハート(Lionheart)の話をしたい。
イギリスといえば、日本やアメリカと同じで自由な国であるはずだ。言論の自由、特に政治的な意見を述べることは国の法律が保証しているはず。誰も命の危険を感じずに思ったことがいえるのが自由主義国の特徴のはず。だが、イスラム過激派に乗っ取られつつあるヨーロッパ諸国では、いまや命の危険を感じずにイスラム批判をすることは出来なくなった。これらの国の政府は人権擁護法を使って命を狙われる市民の身を守るどころか、イスラム批判をする人間を「憎しみや暴力を煽る」という罪でかえって法的に罰するというひどい状況が起きている。日本も今、人権擁護法案が検討されているが、このような法律が適用された場合、これが市民の自由にどのような悪影響を及ぼすか、自由を愛する市民の皆様に肝に銘じていただきたい。
ライオンハートの実名はポール。彼はイギリスのルトン(Luton)の出身だ。このルトンという町は最近パキスタン系イスラム教移民やアルカエダ系の暴力団が多く住み着くようになり、麻薬売買や売春などが蔓延する非常に柄の悪い町と化してしまった。7/7のロンドン地下鉄テロの犯人たちもすべてルトン出身。ルトンには自爆テロを育てるような過激聖廟がいくつかある。
ポールは自分の住む町がイスラム系暴力団に乗っ取られていくのを憂いて、その暴虐の実態を記録し、警察に協力して麻薬販売者を逮捕する手伝いをしたりしていた。しかしポールによると腐敗した警察の内部からポールの本名が情報提供者としてイスラム系暴力団に暴露されてしまったという。
命を狙われはじめたポールは住処を追われ隠れ身となった。そしてポールは自分の身に起きた話を多くの人に読んでもらおうとブログを書きはじめた。これがイギリス警察にいわせると「憎しみと暴力を煽る」行為だというのである。
チェスラークロニクルのフィリスが行ったポール・ライオンハートとのインタビューによると、ポールは現在31歳。逮捕を目前に控えて、友人を通じてイギリスでも指折りの腕のいい弁護士を紹介してもらったという。またアメリカの弁護士も相談に乗ってくれているという。

フィリス: イギリスでは他のブロガーでこういう目にあったひとはいるの?

ポール: いや、ブロガーでは僕が初めてです。
フィリス: いったいあなたは逮捕されるようなどんなことを書いたの?
ポール: 僕は自分が住んでいるルトンとダンスタブル(Dunstable)のなかにある大きなパキスタンイスラム系居住区で起きている現場の様子をこと細かく書きつらねました。ルトンはご存じのように7/7自爆犯人の出発点で、国際イスラムテロリスト非常に多くのつながりがあるのです。僕はそのことについてブログに書きました。
僕は市街を仕切っている麻薬密売暴力団から命を狙われたため逃げなければなりませんでした。知り合いが僕の経験を書き留められるようにとブログを設置してくれました。それ以来僕は住所不定になり図書館や友達のインターネットを借りてブログを書き続けているのです。
フィリス: 「人種差別」の告発の背後にいるのは誰ですか?どうしてイギリス政府がその告発に対処することになったのですか?
ポール: 僕には全くわかりません。でもそのうちに明かになると確信しています。この「人種差別」告発は僕を黙らせるために利用されています。僕は僕をよく知っていてこの告発がどれだけ馬鹿げたものかを反論してくれる多人種の友達をいくらでも紹介することができます。僕の親友の一人は黒人です。僕にはユダヤ人の友達がたくさんいますし、僕はイスラエルのために命をかけることだってできる。オマー・バクリとアム・ハムザ(7/7事件の犯人)事件に関わったグレン・ジェニーも僕を応援してくれてます。
フィリス: ユダヤ人嫌いや反ユダヤ差別が人種差別だと理解しているなんて新鮮だわ。あなたはこの戦いには何がかかっていると思う?
ポール: 僕の自由、僕の命、僕が自分の身に個人的に何が起きているのか、僕の町で、僕の国で、そして文明社会で、西側諸国に仕掛けられたイスラム教聖戦について真実を語る自由です。さらに文明社会全体がかかっています。イスラム世界はユダヤ人種や西側諸国の完全破壊を唱えているのです。

にも関わらず、イギリス警察は西側社会を崩壊せよと唱えるイスラム過激派やイギリス国内の安全を脅かす当のイスラム暴力団を野放しにしてその悪行を暴いているポールを逮捕しようというのだから本末転倒だ。ポールはイスラム過激派が西洋社会を破壊し世界支配をしようとしていることは明らかであり、自分らの世代が戦わなければいったい文明社会の将来はどうなってしまうのだと問いかける。
ところで、ポール自身がニオナチだという噂がアメリカのブログ界でひろがった。その原因はポールが英国ナショナル党(BNP)というニオナチグループに同情的な意見を書いたことが何回かあることだ。確かに過去ログのなかにはBNPを支持するようなエントリーがあるにはある。ポールにいわせるとBNPはニオナチではないという考えらしい。彼自身はナチスを嫌っているし自分のブログにはキリスト教の十字架とユダヤ教のデイビッドの星を並べて「連合!」と書かれているくらいだから、彼自身がニオナチということはないと思う。しかし人種差別を糾弾する立場の人間が人種差別を売り物にしているようなグループと交友関係をもっているというのはちょっと問題だ。誤解を受けるようなエントリーがあったことも十分反省の余地があるだろう。
しかし仮に彼がニオナチでも、だったら彼の言論の自由は迫害されてもいいという理屈にはならない。ポールはイスラム教徒を一斉に狩出して皆殺しにしてしまえ、などと言ったわけではないのだ。実際に自分の住む地元でイスラム系暴力団によってどのような犯罪がおかされているかを暴露しただけなのだ。これがなんで「憎しみや暴力を煽った」などという罪になるのだ?「ニオナチのブロガーの身に起きたことだからどうでもいい」などと考えていると、次の逮捕状は我々に送られてくるかもしれないのだ。
人権擁護法などという法律が、本当に人権擁護になど使われた試しはない。どこの国でもこの法律が取り入れられると人権擁護と称した自由弾圧と人権迫害に悪用されるだけなのだ。イギリスしかり、カナダしかりである。
日本にはイスラム教テロリストなどいないから関係ないなどと考えるならそれはとんでもない思い違いだ。日本にも中国や東南アジアの暴力団関係者がいくらも入ってきているではないか。もし外国人暴力団によって脅かされている地元の日本人が地元の状況をブログに「うちの近所では中国系暴力団の経営する風俗店で麻薬売買が行われている。」とか「中国人らしいやくざな男たちが町を歩き回り、婦女子は恐くて通りをあるけない」などと書いたら、中国人に対する人種差別、「中国人への憎しみと暴力を煽る行為」といわれて告訴されるなどというシナリオは人権擁護法の下では十分にあり得ることなのである。
こうした西側諸国の前例から日本の人々もよく学んでいただきたいと思う。
人権擁護法断じて反対!
関連エントリー:
カナダ:イスラム批判は人権迫害? 
カナダ:イスラム批判は人権迫害? その2
人権保護という名の言論弾圧


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新テロ対策特別阻止法に見る憲法の限界

日本の衆院が参院で否決された法案を再可決するという57年ぶりのまれにみる動きにより、新テロ対策特別措置法が再可決されたというニュースを読み、非常に喜んでいるカカシである。

海上自衛隊によるインド洋での給油活動を再開させるための新テロ対策特別措置法(給油新法)は十一日午後の衆院本会議で、憲法五九条に基づいて自民、公明両党など三分の二以上の賛成多数で再可決、成立した。これにより焦点は、十八日召集の通常国会での二〇〇八年度予算案と関連法案審議をめぐる与野党攻防に移る。政府・与党は政権運営にかかわる重要法案成立のためには、衆院での再可決を辞さない構え。民主党は福田康夫首相問責決議案の参院提出の時期を探っており、衆院解散含みの展開となるのは必至だ。…

 給油新法成立を受け、石破茂防衛相は斎藤隆統合幕僚長、吉川栄治海上幕僚長らに給油活動再開に向けた準備を指示した。
 政府は十六日にも派遣実施計画を閣議決定。今月中に補給艦などを出航させ、二月中旬にも活動を再開する。

日本の給油活動はいずれ再開されるであろうと考えていたので、この結果は特に驚くべきことではないが、三か月という間をあけてしまったのは日本の国際的立場を考えるとあまり好ましい出来事ではなかった。この問題に関して産經新聞の「主張」が興味深いのでちょっと拝借。

…石破茂防衛相が「(給油活動中断で)パキスタン艦船は活動時間が4割減った。監視活動が密から疎になっている」と語ったように、海自の撤収は多国籍海軍の海上パトロールなどにダメージを与えた。喜んだのは、麻薬を積んで武器を買って戻るテロリストたちなのである。

 ペルシャ湾からインド洋にいたる多国籍海軍が守る海域は、中東に原油の9割を依存する日本にとって海上交通路(シーレーン)と重なる。
 ところが反テロ国際行動から脱落したことで、海自は海上テロなどの情報を共有できなくなってしまった。日本のタンカーは危うさの中に放置されていたといえる。多国籍海軍への給油支援は日本の死活問題でもある。
 国際社会は給油再開を歓迎しているが、それにとどまってはならない。日本は反テロ国際共同行動を担う能力と責務を担っている。日本が信頼できる国かどうかが試されてもいよう。

これは私の主観だが、どうも日本の方々は海上交通路の重要さを十分に理解していないのではないかという気がしてならない。直接輸出入に関与していない市民は海を使ってどれだけの物資が我々のもとに届けられているか実感が湧かないのかもしれない。空路や道路がいくら発達しているとはいっても、輸送の主体はいまでも海路なのである。
海路を使って輸送されているのは原油だけでなく、食料、科学薬品の原料、乗用車など数え上げたらきりがない。海路の安全が保たれなければ日本のような海に囲まれた国はお陀仏である。
ここでも何度か書いているように、私は仕事柄一年のうち半年以上は船に乗っている身であり、アメリカの海域を出ることも多々あるので、海上保全は他人事ではない。天候の関係で補給が切れて三日三晩コーンドッグ(ホットドッグに衣をつけて揚げたもの)とチキンナゲットを食べさせられた経験もあるので補給の大事さは身にしみているつもり。(ちょっとせこいかしら?)
ただ心配なのはこ特別阻止法は一年ごとに見直しが必要だという点。

 新テロ法の問題点は期限を1年間にしたことだ。海自の活動を給油・給水に限定してもいる。これでは国際社会の期待に応える活動はできない。期限切れが近づけば、また政争を繰り返そうというのだろうか。

 恒久法制定は待ったなしだ。海外で新たな事態が起きるたびに特別措置法を定めて自衛隊を派遣する現状を改め、国際平和協力をより迅速に行わねばならない。

やはり問題の根源には日本の憲法に限界があるという点ではないだろうか。産経新聞が指摘しているように、何かある毎に特別措置法などを定めていては時間的に間に合わないし、その時の政治状況で日本が迅速な反応を示せるかどうか解らない。いつまでも臨時に憲法を回り道するようなやり方をやっていては日本は本当に国際社会で信用を失うし、第一日本の国防のためにも良くない。
日本ではそろそろ憲法改正をするという前提で真剣な討論がされるべき時ではないかと思う。もっともイラクへの自衛隊派遣やインド洋への補給活動などは、自衛隊が正規軍として活動するという既成事実を作ってしまうという意味では良いことなのかもしれない。私は法治国家の日本が憲法をわい曲した形でバンドエイド型の措置法をとるやり方は好まない。だが、日本の現状を考えると、こういうふうにじょじょに既成事実を作ってしまって、憲法では違法だが事実自衛隊はすでに正規軍的な活動をしているのだから、という理由で改正がやりやすくなるという考えもあるのかもしれない。


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選挙は関係なし! 遠慮せず強気の外交に専念できるブッシュ

よくアメリカではすでに任期終了を待つだけになって政策上の実権がなくなっている政治家のことをレイムダックと呼ぶ。二期目の任期もあと一年足らずとなり、従来この時期の政権からは特にこれといった新政策は期待できない。
この時期はある意味でアメリカにとって非常に危険な時期でもある。まずイラクだが、大統領選挙に影響を与えようと選挙をめざしてテロ行為が激化することは間違いない。また先日のイランのように任期を一年未満に控えた大統領が新しく戦争などはじめるはずがないと踏んで挑発をしてくる敵もあるだろう。
しかし今回は従来とはちょっと違う状況がある。従来なら現在の政権の方針を引き継いで大統領に立候補する副大統領が、健康上の理由から立候補していない。大統領の外交政策は議会の承認を必要としない。ということはブッシュ大統領は来期の選挙運動を控えた支持率の束縛や議会のうるさい小言など気にせずに強気な外交に専念できるというわけだ。ブッシュはレイムダックだからと甘く見てやたらにアメリカを攻撃してくると敵は思わぬ猛反撃を受ける可能性がある。
2008年のブッシュ外交政策はこれまでよりも強気なものになるのではないかという意見がStratforに載っている。(メンバー登録必要(Hat tip seaberry

イラク戦争はジハーディスト戦争の延長だ。2001年のアフガニスタン侵略の後、合衆国はアルカエダを可能にしたサウジアラビア、シリア、イランそしてパキスタンという四つの勢力と同時に戦うだけの軍事力に欠けていることに気が付いた。そこでブッシュ大統領の最初の手段はアフガニスタンに対抗する碇(いかり)を確保するためにパキスタンに無理矢理アメリカと同盟を結ばせた。第二段階は他の三つの国を威嚇しアルカエダとの戦いへの協力を強制するため、これらの国と国境を接するイラクを占領した。そして最終段階ではアルカエダが崩壊するまでこの戦争を押し進めるというものだった。

多くの思いがけない犠牲を払ったとはいえ、2008年の夜明けを迎えた今、この作戦がアルカエダが機能不能になるまで潰すことに成功したことが明らかになってきた。 はっきり言ってジハーディスト戦争はもうほぼ終わりを遂げているのである。合衆国は勝っているだけでなく、最初にアルカエダを可能にしたスンニ勢力全体を味方につけてしまった。
これでこの地域においてただ一つ非スンニ派勢力のイランは合衆国との同意を求めなければならないという非常に居心地の悪い立場にたたされることになった。

イラク情勢:
現在イラクではファンタム・フィニックスという大掃蕩作戦が行われており、すでに何十人というテロリストが殺されている。特にファンタム..の一部であるハーベストアイアンではアンバー地域から逃げたアルカエダの連中の温床となっていたディヤラ地区が焦点とされている。
現場の司令官によるとアメリカ・イラク同盟軍は期待したほどの抵抗にはあっていないということだ。これは我々の攻撃が事前に敵側に洩れたため、アルカエダの連中がかなり多く逃げてしまったのが原因らしい。
しかしこれまでの作戦と違ってペトラエウス将軍のCOIN作戦では、一旦制覇した土地は去らずにあくまで守り通すので、テロリストから戦って奪い取ろうが逃げ去ったテロリストの留守中に制覇しようが結果は同じだ。テロリストは奪われた土地を奪い返すことはできないからだ。
イラク戦争がうまくいくいつれて、アメリカ国内でも日本でもイラク戦争の話をあまりきかなくなったが、アメリカ市民が大統領選挙で気を奪われている間にもイラクではアメリカ軍がテロリスト退治を着々と進めているのである。大統領選挙に影響を与えようとテロリストが躍起になって自爆テロ作戦を練っていることは確かだが、味方軍の攻撃から逃れながら住処を次から次へと奪われている最中にメディアをあっといわせる大規模なテロ作戦を練るというのはそう簡単にできるものではない。
イラン:
この間のイランによる挑発行為で、アメリカ海軍は何もしないで見ていたという見解は間違っている。アメリカ側は確かに応戦はしなかったが、イランがこちらの反応を観察したのと同じようにこちらもイランのやり方を注意深く観察していたのである。それにアメリカ側がわざと反応を遅らせて意図的に誤った情報を与えた可能性も考える必要がある。
もしまたイランがあのような挑発行為をとることがあったら、アメリカ側からの反応はかなり恐いものがある。ブッシュ大統領はイランへの武力行使をオプションのひとつとして考えているのは確かだが、それをやる前にイランに対して強気の対処をすることは可能だ。例えばホルムス海峡を通るイランへ出入りする船をすべて差しとめてしまうということなら意外と簡単にできる。これに経済制裁を加えれば、イランの経済は突如として立ち止まってしまうのだ。
それではここで再びイランをどう攻めるか、軍事歴史学者のアーサー・ハーマン博士の提案を振り返ってみよう。

  1. まずホルムズ海峡を通る石油輸送を阻止する国はどこであろうと容赦しないと発表する。
  2. その脅しを証明するために対潜水艦船、戦闘機、じ来除去装置、イージスBMDシステムなどを含む空母艦バトルグループをペルシャ湾に派遣する。むろんこちらの潜水艦も含む。
  3. アメリカ一国によるイランの石油タンカー通行を封鎖。イランから出る石油、イランへ入るガソリンなどを完全阻止する。ほかの国の船は自由に通過させる。
  4. イランの空軍基地を徹底的に攻撃し、イランの空の防衛を完全に破壊する。
  5. イランの核兵器開発地及び関係基地、インフラなどを攻撃する。
  6. そしてこれが一番大切なことなのだが、イランのガソリン精製施設の徹底破壊である。
  7. アメリカの特別部隊がイラン国外にあるイランの油田を占拠する。

読者の皆様もお気付きと思うが、アメリカはすでに1と2を実行に移してしまっている。ブッシュ政権は今年中にイランになんらかの強攻策をとるはずである。
イスラエル・パレスチナ問題:
今ブッシュ大統領はイスラエルを初訪問中。ブッシュ政権はこれまでのどの政権よりも親イスラエルとはいうものの、イスラエルに妥協を迫ってパレスチナに歩み寄るように圧力をかけるという点では従来の政権とあまり変化はない。カカシは他の点ではブッシュ大統領の政策を支持しているが、ことイスラエル・パレスチナ問題に関してはあまり期待していない。オルメルト首相との会話も中東和平よりもイランの脅威に終始した模様で、パレスチナ和平についてはあたりさわりのない会話しかなったようだ。

 【エルサレム笠原敏彦】…パレスチナ和平をめぐってはオルメルト首相が7年ぶりに再開した和平交渉への「完全な関与」を改めて表明したものの、交渉進展へ向けた具体策は示せなかった。
 初のイスラエル訪問となるブッシュ大統領の首相との会談は、予定を約40分も超過。2国家共存に向けてパレスチナ国家の輪郭(国境画定、難民の帰還問題など)を決める交渉の年内妥結やイランへの対応で、突っ込んだ論議を行った模様だ。
 イスラエルは和平問題よりイランへの対応を重視。ブッシュ大統領は会見で「イランは03年秋に核兵器開発を停止した」とする米機密報告書の公表が波紋を広げている事態に言及、「イランは脅威であり続ける」との認識を改めて示し、イスラエルの米政策への懸念軽減に努めた。…
 一方、焦点のパレスチナ和平では、オルメルト首相が改めてパレスチナ側の暴力停止が和平推進の前提だとの立場を強調。ブッシュ大統領は強い圧力を行使する姿勢は見せず、「指導者らがロケット攻撃や入植地の問題に固執し、歴史的な合意の潜在性を見失うことが懸念の一つだ」と述べるにとどまった。
 両首脳とも和平問題では「決意表明」にとどまり、昨年11月の米アナポリス中東和平国際会議での「約束」を「履行」に移す突破口は開けていない。

ブッシュのイスラエル訪問は卒業写真程度の意味しかないという批判もあるが、アメリカ大統領がイスラエルを訪問するのは非常に危険を伴う行為であるから、少なくともその危険をおかしてまで訪問したということに多少の意義はあるかもしれない。私はアメリカのイスラエルへの方針は「放っておけ」というもの。どうしても口出ししたいなら、イスラエルからのイランなどへの諜報と交換に武器供給をするのが得策と思う。


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フェミニストマガジン『Ms.』が見せたくない広告

私はこの間からアメリカのフェミニスト運動が左翼運動家にのっとられ、女性人権や男女平等の促進よりも左翼政治促進が優先されているという話をしてきたが、今回それを示す典型的な出来事が起きた。(Hat tip Power Line)
アメリカユダヤ議会(The American Jewish Congress、AJC)がイスラエルにおける女性の地位について、Ms.Magazine(ミズマガジン)に広告掲載を依頼した。この広告はイスラエルの外相Tzipi Livni女史、最高裁裁判所長Dorit Beinish女史、そしてイスラエル議会(the Knesset)の議長Dalia Itzik女史の三人の女性の写真の下に「これがイスラエルだ」とか書かれているものだ。ミズマガジンは昨日AJCの依頼を断った。(広告の写真はこちら

「ほかにどのような結論に達することができたでしょうか」とAJC会長のリチャード・ゴードン氏、「ミズマガジンの出版社もミズマガジンのかなり多くの読者もイスラエルを嫌うあまり、イスラエルどのような良い広告もみたくないと解釈する他に。」

AJCの女性支部長(Director of AJCongress’ Commission for Women’s Empowerment)Harriet Kurlander女史が広告掲載を依頼したところ、女史は出版社からこの広告は「火の嵐を巻き起こす」といわれた。そしてこの主題には「強い意見が存在する」といわれたという。この主題とはつまりイスラエルについて何か良いことを言ってもいいかどうかという意味と思われる。ミズマガジンのエレノア・スミール女史は受取証に署名をした写真を受け取ったかどうかも、ゴードン氏の一週間にわたる度重なる電話連絡にもまったく応答していない。

ミズマガジンの代表者スージー・ギリガン女史は、ミズマガジンは「女性の権威拡大や生殖の自由についての広告なら大歓迎するが、これだけはできない」としたが、「これ」がなにをさすのかの説明はしていない。
ミズマガジンといえばジェンダーフェミニストの代表のようなものだが、それでも女性の地位向上もイスラエルの場合は認めないということらしい。最近のアメリカ左翼はあからさまに反ユダヤ教意識をあらわすようになったが、左翼フェミニストも左翼意識がフェミニズムを先行するという典型例である。


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イランの挑発、アメリカは迎撃すべきだったのか?

昨日イランがホルムズ海峡でアメリカ海軍の米軍艦艇に信じられない挑発行為を行った。

【1月8日 AFP】(一部更新、写真追加)ペルシャ湾(Persian Gulf)のホルムズ海峡(Strait of Hormuz)の公海上で5日、イランの革命防衛隊(Revolutionary Guards)に所属するとみられる5隻の高速艇が、3隻の米軍艦艇に対し攻撃を示唆する威嚇行為を行った。米テレビ局CNNが米軍関係者の話として伝えた。
 米軍関係者によると、イラン側は「われわれは攻撃を行う。あと数分で吹き飛ばす」などと無線を通じて攻撃を示唆。高速艇は米軍艦艇の正面の海中に白い箱状の物体を投下したという。米軍側が攻撃を開始しようとした直前に高速艇は引き返し、交戦には至らなかった。
 ホルムズ海峡はペルシャ湾の出入り口という戦略上重要な海域で、米軍艦艇は同海峡を通過中だった。

このバトルグループの一部として参加していたイージス艦、USSホッパーから撮ったビデオはこちらで見ることができる。実は二年前に真珠湾で仕事をしていた時、ホッパー艦上で乗組員と仕事をしたことがあり、今では乗組員は入れ替わっているだろうが、どうも他人事という気がしない。
それはともかく、アメリカ側が応戦の準備をしている最中にイランが引き返したので交戦にはいたらなかったという事実に関して、そんな逃げ腰でいいのかという批判が出ている。下記当ブログもいつもお世話になっている陳さんの意見

アメリカはこんなナメたマネされても何もできないような腰抜けの国になってしまった。アメリカドルの裏づけの半分は、その圧倒的な軍事力が世界通商の安全を保障しているからだ。

ホルムズ海峡という地政学的・戦略的要衝で、交戦すれば瞬殺のイランの魚雷艇相手に目視距離まで近づかれて、爆雷攻撃の真似事されて、何もできないとなれば、この前提が崩れたと言っても良い。つまり、ドル売りだ。
今のブッシュはジミーカーターに劣るインポ野朗だ。

なんか陳さんが言うと迫力あるなあ。陳さんと同意見のアメリカ人コラムニストのラルフ・ピータースもニューヨークポストでイラン船はすべて沈めるべきだったと書いている。

イラン船たちはずっと迫ってきて、フットボール球場二つ分程度の200メートルにまで近付いてきた。我が海軍は発砲の用意が出来ていたというが発射の命令がでる寸前イラン船が引き上げたのでうたなかったという。

すべて沈めてやるべきだったのだ。
それは我々が戦争好きだからではない。イランは我々を口頭でも物理的にも威嚇したのだ十分に戦闘行為だ。いったいいつになったら我々は初期に行動をとることが後になって多くの命と宝を救うことになるということを学ぶのだ?

ピータースはワシントンからしたら自制したとかなんとかいうだろうが、重大なのはイランが我々の反応をそどう受け止めるかだという。イランがブッシュ政権がイランと交戦しなかったのはアメリカがイランを恐れているからだと思ったとしたらこれは大変なことである。
これは最近のNIEの調査書でイランが核開発を何年も前にやめていたという報告と重なって、イランはアメリカがイランが核兵器開発をやめたなどと信じているはずがないと思っているから、それなのにあんな報告を発表したのは、アメリカがイランを恐れて戦わないで済む口実を探しているからだと考えているだろう。

「いまならアメリカの臆病者を押し倒せる。奴らはイラクで懲りて、完全に落ち込んでるからな。次の大統領なライオンに狙われた鹿のように逃げるだろう。」「奴らの軍隊ですらおれたちを恐れている。日曜日やつらは俺たちの気力にひれ伏した。奴らは恐れて神に見放された。そして今こそ奴らを倒す時がきたのだ」

とかなんとかイランのムラーたちは言ってるのではないか、とピータースは想像しているが、カカシもこれには同意見だ。
以前から西側諸国はイスラム圏政権を刺激しないことがテロ攻撃や戦争を避ける得策だと間違った解釈をしてきた。だからなるべく波風たてないように何もかも穏便にという姿勢が普通に取り入れられていた。だが911以後の世界ではそんな甘い考えは通用しない。平和を守りたいのであれば戦う覚悟をする必要がある。戦争を避けたければこちらから威嚇して相手を古いあがらせ相手の戦意を失わせる以外に道はない。
去年、イギリスの海軍兵と海兵隊員がイランに拉致された時も、彼等はほとんど抵抗せずにイランに連れ去られてしまった。あの時私はあれがアメリカならああ簡単には拉致などされなかっただろうと書いたが、今回のアメリカの反応をみているとなんだか心配になってきた。
イランの威嚇は、我々の戦闘能力を試す稽古のようなものだった。我々がどれだけすぐに侵入者を察知するか、攻撃態勢に入るのにどのくらいの時間がかかるのか、といったことを知るのも大事だが、彼等がもっとも知りたかったことは、現場にいる司令官はワシントンの命令を待たずに独自の判断で攻撃者に反撃できるのか、アメリカ政府はイランに反撃するだけの根性があるのかどうかであったことは間違いない。そうだとすれば今回のアメリカ軍による「自制」はかえって相手を図に乗らせ将来のイエメンで自爆テロに攻撃されたUSSコールの二の舞いになるのではないかという心配はある。
イランのアメリカへの挑発はこのままでは終わらないだろう。次回はもっと攻撃的な手段をとってくるはずだ。そうやって彼等はアメリカがどこまで折れるか試しているのだ。我々の態度を見守っているのは何もイランだけではない。世界にはびこるテロリストどもがアメリカが根性があるかどうかじっくりと観察しているはずだ。
この次にアメリカ艦艇に近付くイラン船は生きて返してはならない。すべて撃沈すべきである。それを怠れば、アメリカはイランとの戦争は避けられないだろう。
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ニューハンプシャー予選、期待どおりのマケイン(共)と意外なヒラリー(民)の勝利!

以下CNNの記事より

(CNN) 米大統領選ニューハンプシャー州予備選が8日に行われ、共和党ではジョン・マケイン上院議員が勝利した。民主党はヒラリー・ロダム・クリントン上院議員がアイオワ州党員集会で先勝したバラク・オバマ上院議員との接戦を制した。

開票率73%の時点で、共和党ではマケイン氏が得票率37%で首位。2位はミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事(32%)、3位がアイオワ州の党員集会で勝利したマイク・ハッカビー前アーカンソー州知事(11%)。
マケイン氏は勝利を受けて演説し、かつて民主党のクリントン前大統領が使用した「カムバック・キッド」ということばを引用しながら「わたしはキッド(子ども)ということばを使うには年が行き過ぎているが、今夜われわれはカムバック(返り咲き)を見せつけた」と宣言し、支持者らの喝采を浴びた。
一方、民主党では開票率77%で、クリントン氏が得票率39%でリード。オバマ氏は36%とクリントン氏に3%差まで詰め寄ったが、健闘は及ばず、支持者らの前で敗北を宣言した。3位はジョン・エドワーズ元上院議員(17%)。
また、出口調査の結果、両党の党員・支持者が最も関心を持っている問題は経済で、2位はイラク情勢だった。3位は共和党員・支持者が不法移民、民主党員・支持者が医療保険と分かれた。

共和党のほうではジョン・マケインはミット・ロムニーを制して接戦で勝つという予想だったので、特に驚くほどではないが、民主党はオバマが10%以上優勢だという前評判だっただけにヒラリーの勝利はオバマ陣営にとっては大ショックだろう。
マケインは2004年の大統領選挙でもニューハンプシャーで圧倒的勝利を得たのに、結局候補指名を受けられなかったという過去もあるので、この勝利だけではなんともいえないのだが、それでもロムニーとの差は思ったよりも大きく、今後の活躍に期待できそうだ。しかし二位になったロムニーもちょっと作戦変更の必要はあるかもしれないが、ロムニーの言い回しを借りるなら、「銀が二つで金が一つ」ということでまだまだ期待できる。
民主党のほうはというと、新鮮なイメージのオバマの話題が独占していたニュースなのに、ふたを開けたらやっぱりヒラリーが勝ったということは、ヒラリーの組織力の勝利というべきだろうか。それともこの間鉄の夫人というイメージのあったヒラリーが支持者からの質問につい涙ぐんでしまうという女らしさをみせたことが良かったのか、このヒラリーの勝利は非常に大きな意味を持つ。
しかし今回のことで一番の敗者は世論調査会社だ。なんなんだあの予測はあ〜!何の役にもたっていないではないか。どうしてくれる。といいたいところだが、調査モデルにかなりの問題があるようだ。ぜひとも党大会の頃までには直しておいてほしいものだ。
コメンターの方からジュリアーニはどうなっているのでしょう、というご質問があったが、ジュリアーニは序幕選を無視して一気にスーパーチューズデイに挑みたいようだ。


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ジェンダーフェミニストの見分け方

アップデートあり、下記参照。
先日から続いているフェミニズムに関する討論で、macskaさん(ペンネームは小山エミ)はかなりお疲れのようなので彼女の最新の反論を取り上げながら、ジェンダー及びエクイティフェミニズムについて最終的にまとめてみたいと思う。その後でmacskaさんが犯した間違いについて指摘してただしておきたい。


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エクイティーフェミニストからジェンダーフェミニストへ

先ず最初に言っておくが、私の先のブログエントリー、ジェンダーフリー、左翼が幅を効かす女性運動はmacskaさんへの個人的な攻撃ではない。私が攻撃したのはアメリカ及び日本の女性運動を乗っ取った、もしくは乗っ取ろうとしている左翼連中なのである。
しかしmacskaさんは私の意見に関して反論をなさっておいでなので、礼儀としてこちらでも誤解のないよう説明をしておくべきだろう。


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ニューハンプシャー民主党大統領予選を斬る!

私がかなり信用できると考えている世論調査機関ラスマスンのリポートから、火曜日に迫るニューハンプシャー州大統領予選について、民主党候補者たちの状況を考えてみよう。
一番新しい電話アンケートによるとバラク・オバマが支持率39%、ヒラリー・クリントンは27%と、ヒラリーはかなりオバマに差をつけられている。このアンケートはアイオワコーカスが終わった金曜の夜から昨日の討論会の始まる前の夕方にかけておこなわれたもの。同調査でジョン・エドワーズは18%、ビル・リチャードソンは9%、デニス・クシニッチ3%。

バラク・オバマが指名された場合88%の予選投票者がオバマに投票すると答えた。まったく同じ数値の88%の投票者がジョン・エドワーズの場合も同じだと答えている。しかしヒラリー・クリントンの場合、ヒラリーが指名された場合に投票しようと考えていると答えたひとは80%をわずかに上回る率であった。

民主党支持者はオバマが一般選挙で一番勝てる可能性のある候補者だと考えており、多少なりとも勝てる可能性はあるという答えを含めると87%がオバマなら勝てると答えているのに対し、これがヒラリーになると76%、三位のエドワーズの75%とたいして変わらない。この候補者ならまず勝てるだろうと答えたのは、オバマの場合は51%、ヒラリーの場合はなんとたったの38%!民主党の予選投票者の間ではヒラリーに対する信用度はかなり低い。
また民主党投票者たちはヒラリーや他の候補者よりも、オバマに好意的な感情を持っているようである。
世論調査ではなく、ラスマスンマーケットデータといって未来市場を予測をするデータによると、バラク・オバマがニューハンプシャーで勝つ可能性は83.4%だが、ヒラリーが勝つ可能性はたったの20%。
昨晩、共和党も民主党もニューハンプシャーでそれぞれ候補者らによる討論会が行われたが、その後に討論会に関する感想を投票者から聞く番組があった。そのなかでオバマが主張している「改革」に関して、ヒラリーが「改革、改革、と口でいってみても中身がなければ意味がない。私は実際に35年間改革を続けてきた実績がある」と語ったことに対して投票者からの反応が非常に冷たかったのが印象に残った。
民主党の投票者たちはヒラリーが「実績、実績」と騒ぐたびに使い古されたレトリックだというイメージを持つようだ。それに対してオバマは経験は浅いが、何かをかえてくれるという希望を市民に与えるという印象を持っているようだ。共和党候補たちと比べて、民主党のトップ候補者たちは三人とも経験が浅い。となってくると彼等の魅力は政治家としての実績よりも人間として誰が一番信用できるか、つまりパーソナリティーの問題になってくるわけだ。夫のビル・クリントンと違ってヒラリーには他人を魅了するチャームというものがない。ビルの場合は嫌なやつだと思っていても、つい好きになってしまう魅力を備えていた。
オバマにはそういう「いいやつだ」と思わせる魅力がある。若くてハンサムだということもあるが、それ以上にオバマには新鮮な息吹を感じるのではないだろうか?
オバマのような若くて新鮮な候補者相手では、共和党はハッカビーのような宗教右翼やマケインのような老人では絶対に勝てない。共和党の保守派たちは理想をおい過ぎて自滅しないように勝てる候補者を選んでほしい。
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ジェンダーフリー、左翼が幅を効かす女性運動

ちょっと前に私は『ジェンダーフリーという神話』というエントリーを書いたが、この時、私は日本語でいうところのジェンダーフリーという言葉の意味をあまりきちんと理解しておらず、ウィキペディアで検索した定義をそのまま紹介して、どうやら私が理解しているところのジェンダーフェミニズムのようなものだろうと書いた。

「ラディカル・フェミニズム」においては、「ジェンダー」は、男性と女性を平等で相互補完的に位置づけているものではなく、「男が上で女は下」「男が支配し女が従う」といった、一方的な支配関係として機能している、と捉えている。「ジェンダー」は男女の支配従属の関係を維持するための装置であり、また、ジェンダーを根底から規定し、女性を差別的状況におく社会的仕組みの中心をなすのが、性別役割分業であるとしている。

すなわち、ジェンダーフリー運動における「ジェンダー」は、中立的な概念・用語ではなく、性別役割分業を階級構造であると見なし、また、これを解消すべきという意図を持った政治的な概念・用語となっている。

このジェンダーフェミニズムという言葉はアメリカの哲学者クリスティナ・ホフ・ソマーズ女史(Christina Hoff Sommers)がその著書Who Stole Feminism(誰がフェミニズムを乗っ取ったのか)で紹介した造語である。それについて日本語のウィキは下記のように説明している。

ホフ・ソマーズは、この用語を、現代の性役割を批判し、全廃することを望むたぐいのフェミニズムを説明するために使っており、これが、現代のフェミニスト理論の多くの本質的な特徴であると主張する。その代わりにホフ・ソマーズが好むのがエクイティ・フェミニズム (これも同書でジェンダー・フェミニズムと対立するものとして造られた用語)で、その目標は、女性と男性の完全な法的平等および機会均等の確立である。ホフ・ソマーズは、彼女が「ジェンダー・フェミニスト」と呼ぶフェミニストたちが、女性に対する優遇措置を支持し、女性を犠牲者として描くのに対し、エクイティ・フェミニズムは、フェミニズムに存続可能なもう一つの形を提供するのだと主張し、異常なほど女性中心的かつ男性差別的な、現代のアカデミックな中流階級のフェミニスト運動を批判するために、この用語を使っている。

(注)エクイティ (equity) は「公正、公平」という意味を持つ英語。

正直な話、私はソマーズ女史の”Who Stole…”は10年くらい前に読んでいたが、ジェンダーとエクイティフェミニズムという言葉を最初に使ったのがソマーズ女史であることはすっかり忘れていた。それに加えてエクイティをクオリティなどと間違って覚えていてそれをそのままブログエントリーに書いてしまい大恥をかいた。(笑)
幸いなことに私の間違いを親切に指摘して下さった*minx* [macska dot org in exile]というブログがある。このブログ経営者のmasckaさんという人は、そのブログの内容を読む限り、オレゴン州のポートランド在住で、女性学(特に性に関する)専門の教授らしい。アメリカ各地の大学で講演などを活発に行っている人のようだ。
しかしアメリカのフェミニストを見慣れているカカシからみるとmasckaさんは典型的なアメリカの左翼系(多分共産主義者)レズビアンフェミニストに見える。いやいや彼女が同性愛者だという言っているのではない。私がこれまでに遭遇したそういう部類の人に似ている、といっているだけだ。masckaさん自身は自分に張られた左翼というレッテルが気に入らないらしいが、左翼が自分が左翼であることを認めたがらないのは何も今始まったことではない。
アメリカのフェミニズムはもうずいぶん昔に共産主義の一角であるマルクス主義者に乗っ取られてしまった。ホフ・ソマーズ女史がいうところのジェンダーフェミニズムの支持者はすべて左翼だといって間違いない。私がmasckaさんもその部類だろうと判断するのには根拠がある。


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