このあいだ私の英語のブログのほうへ、イランがリスをスパイ容疑で取り押さえたという記事を紹介してくれたコメンターがいた。その時には私はその記事は一笑に伏して終わったのだが、後になってイランがアメリカ市民二人をスパイ容疑で逮捕していまだに拘束中だという記事を読んでこれは笑い事ではないのかもしれないと考え直した。
読者のみなさんは「え?リス?」と、もう一度一行目を読み返していらっしゃるかもしれないが、その通り、あのしっぽふさふさの動物のことだ。

イラン、リスを逮捕!

イラン警察は14匹のリスをスパイ容疑で拘束したと発表した。
このげっ歯類動物はイラン国境沿いで発見され盗聴器を身に付けていたという。この発表は公式にイスラミックリパブリックニュース(IRNA)から出たものである。
スパイリスの逮捕似ついて質問を受けた警察署長は「話には聞いているが詳細はしらない」と答えた。
IRNAによるとリスは外国諜報部によって放たれたもので二週間前に捕獲されていたと発表した。

これだけ聞いていると冗談だろうと笑ってすんでしまうような話なのだが、実はイランではここ数カ月おかしな方針がまかり通っており、それとあわせて考えるとまんざら冗談とも思えなくなってくるのだ。
イランは回教徒の国とはいいながら、サウジアラビアのように厳しい掟を施行してこなかった。イランに仕事でしょっちゅう出かける人から聞いた話では、イランの通りで頭からつま先まで隠れるバーカを着ている女性など見かけたこともないし、男性も長髪でヒゲのないひとなどざらだったという。ところがここ数年、イランはサテライトディシュを規制したり、インターネットの取り締まりなども厳しくし、今年の五月にイラク警察は突然女性のコートの長さまで規制しはじめ、正しい服装をしていない女性に警察官が罰金を課したり、大人しく注意に従わない女性を拘束したりしはじめた。数週間前には取り締まりの対象は若い男性へと移り、長髪、髭がない、西洋風の服装をしている、といった口実で危険分子と思われる若者が取り押さえられ警察から暴行を受けたうえ汚物の入ったやかんを首からぶらさげて町中引きずり回されるといったことが起きている。この新しい規則によって逮捕されたり暴行を受けたり罰金を課せられた若者はすで二15万人に及ぶ。
(参考文献: Crackdown in Iran over dress codes, Iran Focus
さて、そんななかでイラン出身のアメリカ市民がイランに滞在中にスパイ容疑で逮捕されるという事件が起きた。(以下IRAN: THE CONSPIRACY THAT WASN’T、By AMIR TAHERI から参照。)
1979年にイスラミック共和党が宗教革命によって政権を握ってからというもの、イラン政府は外国からの陰謀で政権が倒されるのではないかと神経質になっている。この被害妄想は最近おきたイラン系アメリカ市民二人の逮捕に現れている。「イスラムの敵」、「悪魔の手先」と責められているこの二人は小柄な女性ハレーさん(Haleh Esfandiari-Bakhash)67歳と, キアンさん40歳(Kian Tajbakhsh)。
国営テレビの報道ではこの二人はイランで革命を起こそうと企んでいるとされているが、テレビに映った二人の「自供」は明かに強制されたもので、自供をテレビ番組の一部に使うべきではないとイラン政府検察官ですら距離を置いているという。
さて逮捕された二人はイラン出身でアメリカ在住だがしょっちゅうイランを訪問しており、ブッシュ政権のイラン対策には批判的だった。ハレーさんはウッドロー・ウイルソン国際センターというシンクタンクのメンバーで、イラン政府とアメリカとの正式な国交の回復に、もう何年も努力をしてきた人である。つい最近もイラク調査委員会のメンバー、リー・ハミルトンのイラン対策に助言をしたことでも知られている。ハレーさんの過去30年に渡る意見書を読めば、彼女が女性の待遇について多少の批判はあるものの、イラン宗教革命を支持し現イラン政府がイランにとって一番適したかたちであると信じていることが明確なはずである。
ハレーさんにしてもキアンさんにしても現イラン政府には非常に同情的であり現イラン政府のムラーたちを批判するような発言はしたことがないだけでなく、シャーの時代に戻るべきだなどという考えには真っ先に反対してきた人たちである。イラン革命などこの二人にとって考えられないことのはずだ。この二人がアメリカの工作員だなどということはあり得ない。
人によってはこれはイラン政府の内部争いの結果ではないかという見方もある。過激派アフマネナジャド大統領はこの二人が穏健派元大統領のハシミ・ラフサンジャニを来期の選挙で援助するのではないかと懸念してのことだというのである。
しかしハレーさんは過去32年もイランには在住しておらず、キアンさんにいたっては10代にイランを出たきりである。二人ともイラン政治に影響を及ぼせるようなコネは持っていない。
この二人の逮捕はイラン政府が日に日に自分の影におびえていることの現れであり、アフマネナジャドが穏健派による革命が企てられているという陰謀説を信じて疑わないことを象徴するものだとコラムニストのアミアー・タヘリは言う。ここで最近のアフマネナジャドの被害妄想ぶりを振り返ってみよう。

  • 今年の5月に始まった服装取り締まりですでに15万の若い男女が拘束、暴行、罰金などの処罰を受けている。
  • 400人の大学生や教授が反イスラム教の危険思想を持つとして追放されている。
  • 少数民族の住むパキスタン国境沿いの東南地域で非常事態勢が引かれている。
  • 組合長のマンスアー・オサンロー(Mansour Osanloo)を含む少なくとも30人の労働組合員が逮捕されており、組合の資産は没収され組合は閉鎖された。
  • 何十社という新聞、雑誌は閉鎖され、何百人ものジャーナリストや著者がブラックリストに載せられている。
  • 先の大統領ムハマッド・カタミの弟を含むアフマネナジャドの強力ライバルたちが次々に逮捕され裁判にかけられている。
  • アフマネナジャドはラフサンジャニやその取り巻きに対して、自分の言いなりにならなければ1989年から2005年にわたる彼等の贈賄などの腐敗を公表すると恐喝している。

独裁政権は独裁者がどれだけ他者を弾圧できるかによって機能している。だから独裁者が権力を保つためには常に自分に取って代わろうとするライバルを牽制しておかねばならない。今は自分の側近でも、あまり実力のある人間や他者から人気のある人間は役に立つ分将来危険である。だから独裁者は常に自分の身の回りにいる人間を疑い続けなければならない。独裁者が被害妄想になるのはそれほど不思議なことではないのである。
さて、これに関連した記事として、イラクで暗躍しているイランの特別部隊がイラン政府の手に終えなくなっているという話がある。しかしこれに関してはミスター苺はイランの特別部隊がイラクでしている行為は彼等の勝手な暴走であってイラン政府には責任がないと後で言い訳できるように技と流したガセネタではないかと疑っている。


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