安倍首相の慰安婦強制性否認発言、米各誌が批判

アップデート:オオニシ記者の邦訳の一部を掲載しました。後部参照。
アメリカでは旧日本軍の俗に言う慰安婦問題が取りざたされることはめったにない。普通のヘッドラインニュースという主なニュースを集めているニュースフィードでは先ず見かけないので私などは常に見逃している。今回も親日オーストラリア人のマットとアメリカ人のゲーリーが経営している英語ブログOccidentalism(オクシデンタリズム)が旧日本軍の慰安婦問題について特集しているのを読んで初めてアメリカで阿部首相の発言が報道されていた事実を知った。全く灯台下暗しというかお恥かしい限りである。
先ずここで私ははっきり言っておくが、私は慰安婦問題の事実関係がどうであれ、旧日本政府がしたことを現在の日本政府が現在の朝鮮や中国に謝る義理はないと考えている。ましてや部外者のアメリカ議会が議決など通して日本に責任を問うなどお門違いもはなはだしい。
安倍総理の慰安婦に関する発言は私が観る限りアメリカの各新聞が批判的な書き方をしている。しかし阿部氏の発言が誤って翻訳され、実際よりも衝撃的な発言として報道されたのではないかとマットは指摘している。元記事になったと思われるニューヨークタイムスの記事を書いたのがあの反日で悪名たかい日系カナダ人のオオニシ記者であるからこの誤訳は意図的なものなのではないかという気もしないではない。 では先ず米各誌が問題にしている安倍総理の発言とは何か。
先ずこれがAPの記事だが、英語を日本語に訳してみると、、(著者はコーゾー・ミゾグチ記者)

東京 – 日本の国粋主義総理大臣は木曜日、日本軍が第二次世界大戦中に女性を強制的に性奴隷としていた事実を否認し、同国歴代政府の謝罪に疑いの影を投げかけアジア近隣諸国とのもろい関係に危惧を及ぼしている。

1993年の性奴隷に関する謝罪を撤回しようとしている政治家のメンバーである阿部新造の発言は「慰安所」といわれた軍売春宿に関して首相としてこれまでにない明確なものであった。
歴史学者たちによると1930年代から1940年代にかけて20万人に及ぶ女性たちが、主に朝鮮と中国から日本軍の売春宿で勤めたという。 犠牲者の多くが日本兵に拉致されたうえ強制的に性奴隷にさせられたと証言している。
しかし9月に首相に就任して以来日本の学校において愛国心を促進する積極的な外交政策を取り入れてきた安倍総理は女性たちが強制的に売春行為をさせられたという証拠はないと語った。
「事実として強制があったことをを裏付ける証拠がない。」と安倍氏は語った。(“The fact is, there is no evidence to prove there was coercion,” Abe said.)
氏の発言は1992年に歴史学者たちが発掘した日本軍が直接仲買人を使って強制的に女性たちを調達していたことを示す書類の示す証拠と矛盾することになる。
これらの書類は、売春宿は東アジアにおいて広がっていた占領軍による無制御な強姦に対応するため日本政府によって設置されたという犠牲者や兵士らの証言にと一致している。.

マットはこの安倍氏の発言は意図的に誤訳されたのではないかと言う。ここでも以前に右翼が日本で言論の自由を奪おうとしていると書いた日系カナダ人のノリミツ・オーニシ記者は安倍氏の発言をこのように訳している。

“There is no evidence to prove there was coercion, nothing to support it,” Mr. Abe told reporters. “So, in respect to this declaration, you have to keep in mind that things have changed greatly.”
強制があったことを裏付ける証拠がない。(強制性を)支えるものが全くない。」と安倍氏は記者団に語った。「であるからこの宣言に関しては、事が大きく変わったのだということを考慮せねばならない。」

二つの記事で私が強調した部分が全く同じ文章であることに注意。普通翻訳をする場合、同じ発言でも翻訳をする個人によって多少言い回しが変わるものだが、APもニューヨークタイムスも全く同じ言い回しを使っているというのが興味深い。 マットによると安倍首相の元の発言は

「当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」 そして「定義が大きく変わったことを前提に考えなければならない」

だったのだという。ここで「定義されていた強制性」という言葉が抜けているため、安倍氏の発言がまるで慰安婦問題そのものを否定するかのように表現されてしまったわけだ。
マットが提供している安倍氏のインタビューから解釈すると、安倍氏は「強制」という定義には狭い意味と広い意味があると考えているようで、狭い意味とは日本軍やその手先が婦女子を拉致し連行して無理やり性行為をさせたという意味と、広い意味では貧しい環境にあって売春を余儀なくされたという場合が含まれるというものだ。安倍氏が「証拠がない」と言っているのはこの狭い意味での「強制性」なのである。
私は1992年に公開されたという書類の内容を呼んでいないので、ここにこの強制性がどのように表現されているのか知らない。以前にも坂さんが慰安婦はいわゆる身売りという形でおきたもので強制ではないと書いていたが、同ブログでゲーリーが張っている慰安婦募集の新聞記事が本物だとすれば、日本軍が慰安所を設置していたというのが事実だとしても、そこで働いていた女性たちが(安倍氏のいう狭い意味で)強制されて働いていたという説は弱まる。
日本の歴史上恥かしいことではあるが、身売りによる売春は当時日本でもごく普通であったので、朝鮮や中国でもそのようなことがあったとしても不思議でもなんでもない。私が昔読んだパールバックの「大地」でも日本軍の侵攻前の中国で、主役のワンルンが貧しさのなかで子供を売るかどうか妻と話す場面が出てくる。正直言って家計を支えるために我が子を売り飛ばすなどという習慣は今でも東南アジアでは日常茶飯事なことであり、なにも戦時中の日本に限ったことではない。
確かに女衒に騙されて売春宿に売られた婦女子も多々いたことだろう。なかには金儲け主義の女衒が無理やり若い女性を誘拐したこともあったかもしれない。日本でもサンダカン八番娼館などでも描かれているように、自分の意思に反して売られた子供はいくらでもいる。だが、それを旧日本軍が組織的に奨励していたという証拠はないと安倍氏は言っているのだ。
つまり、このように何処の国でも普通に行われていた身売りの習慣が、単にその働き場所が日本軍専用の宿だったというだけで日本がわざわざ国際的にその「罪」を認めて謝る必要があるのかという疑問が生まれるわけだ。 特に私としては慰安施設の設置が地元の婦女子への暴行を防ぐためというものだったとしたら、それほど悪いこととも思えないのである。
アップデート:
下記オオニシ記者の記事より抜粋(木走まさみずさん訳):

東京、3月1日: 木曜日、安倍晋三首相は、日本の政府の長年の公的立場に逆らって、第二次世界大戦中の日本軍が性的奴隷制度を外国人女性に強制してきたことを否定した。
安倍氏の声明は、政府が否認する準備をしている、売春宿を設置し性的な奴隷制度に女性を強制したことに直接もしくは間接的に軍の関与を認めた1993年の政府声明からは、最も明確に遠いものとなった。 当時の宣言は遠回しに「従軍慰安婦」と呼ばれた女性たちへの謝罪も言及していた。
 「当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と、安倍氏は報道陣に発言。 「定義が大きく変わったことを前提に考えなければならない」(カカシ注:木走さんには申し訳ないが、英語の原文には「当初定義されていた」とは書かれていない。これはカカシが本文中で指摘した通り。)
アメリカ議会下院では、日本政府が戦時の性奴隷制度における軍の役割を「謝罪しかつ認める」ように呼びかける決議について審議を始めている。
しかし、同時期、日本の戦時の歴史を改訂しようとする最近の傾向が保たれている中で、与党自由民主党内の保守派は、1993年の宣言を無効にせよとの主張を促進させている。  安倍氏は、一連のスキャンダルにより支持率が急降下し、リーダーシップが無いと認識されはじめているが、このグループ(保守派)に同調するようだ。 (以下略)

つまりオオニシ記者は安倍首相が下がってきた支持率を上げるために日本の右翼に迎合していると言いたいらしい。


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カカシまた長旅に出る

先週からまた長期出張に入っている。 今回は去年のようにハワイや東海岸ではないので、週末など暇があれば車で実家に帰ることもできると思ってハワイ出張をサンディエゴ出張の同僚と代わって貰ったのだが、こちらの仕事はきついのなんのって。 もう毎日15時間の勤務は普通である。 土日もうかうか休んでいられないとあって、こんなことならいっそハワイへ行けばよかったと後悔している。
とにかく忙しいのでブログを書く暇がない。この週末にはなんとか色々書き溜めて読者の皆さんにご迷惑をかけないようにしたいと思う。
もし更新の頻度が衰えたらそういうことなのでご了承願いたい。


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ブッシュのイラク新作戦-三週目の成績はまずまず

イラクにおけるブッシュの新作戦の経過を折々ご報告しているが、今回もそのシリーズを続けて行きたい。過去の関連記事は次の通り。イラク関係に興味のある方は右側の帯にあるカテゴリーからイラク関係を選んでいただければ、これまでの私のイラクに関するエントリーを読むことが出来るのでよろしく。
効果をあげるブッシュのイラク新作戦
イラクでの殺人減少の兆し、ブッシュ新作戦の効果か?
さて、この三週間のイラクでのイラク・アメリカ連合軍による警備活動は非常に大きな効果を挙げている。jules Crittendenがその総まとめをしているので、英語に自身のある方はそちらを読んでいただければ手っ取り早い. しかしそれでは私が日本語で書いている意味がないので、ここでそのいくつかをご紹介しておこう。
まずは三月一日付けロイターのこの記事によるとアンバー地区にてイラク軍は何十人ものテロリストを退治したとある。

バグダッド (ロイター) – イラク警備隊は水曜日、西アンバー地区の村を襲撃したアルカエダとの丸一日に渡る激しい戦いで、アルカエダの武装勢力を何十人と殺害したと警察当局は木曜日に発表した。
スンニの種族長たちによる同じスンニ派であるアルカエダとアンバー地区の統括を巡って勢力争いは激しくなるいっぽうだ。アンバーは膨大な砂漠地域でスンニアラブ反乱軍の本拠地である….
イラク内政省の報道官アブドゥール・カリム・カーラフ氏は地元民がアルカエダに反抗していたアミリヤットアルファルージャというアンバー地区の村での衝突でアフガニスンや他のアラブ人を含む外国人戦闘員を混ぜた武装勢力80名が殺され50名が拘束されたと発表した。
地元警察のアクメッド・アルファルージ氏は殺された武装勢力は70人で警察菅が三人殺されたと語っている。正確な数の確認はまだ出来ていない。
「あんまり多くの(テロリスト)が殺されたので、確実な死亡者数をお伝えできないのです」と警察はロイターに語った。
目撃者の話によると何十人というアルカエダのメンバーが村を襲撃したため、逃げた村民がイラク競売に助けを求めたことが警察とイラク兵士の動員となった。

この間から地元スンニイラク人と外国人テロリストであるアルカエダとの分裂が激しくなっているという話をここでも何度かしてきたが、スンニイラク人対スンニ外国人との戦いは今後ももっと激しくなると思われる。アルカエダがイラクで勢力を失ってきている証拠である。またイラク軍のお手柄にも拍手を送りたい。
昨日も産経新聞がバグダッドではシーア民兵を温存しているという批判的な記事が載ったのとは裏腹に、実際にはイラク・アメリカ軍の連合軍がシーア民兵マフディ軍の本拠地に徹底的な取り締まりを続けている。
サドルシティでは検問所をあちこちに設け、町の家々を一軒づつ捜索してまわる作戦が取られている。サドルシティ内部での厳しい取り締まり作戦はこれまでシーア派の政治家による反対が強く実施できないでいたが、今回はこれまでとは全く違った徹底したものになるという話である。
さて、問題のバグダッド市内だが、バグダッドはあまりにも静かなため、いつもイラク反戦の主流メディアですら静かだというニュースしか報道できないでいりう。jules Crittendenはそれ自体良いニュースに違いないとして、これまでイラク戦争についていい話しなどめったに書いたことがないAPの記事を紹介している。
バグダッド-(AP) バグダッドは木曜日、ここ数ヶ月において一番暴力事件の少ない日を経験した。二つの爆発で一人が死亡したと報告されている。

アメリカ・イラク連合のバグダッド警向上作戦三週目にしてバグダッドは比較的暴力の少ない日を迎えた。ブッシュ大統領は首都において個々の家々を回って捜索し民兵の非武装化にあたる警備に17,500人の米兵をあてがるよう命令した。

米軍は月曜日路肩爆弾の数も警備作戦が始まってから20%減ったと発表した。また、宗派間の殺人件数もここ一年間で最低の数になったという。

昨日ミスター苺がローカルニュースをテレビで観ていたら、イラクに関しては悪いニュースしか報道しないローカルニュースですらも、ブッシュの新作戦を評価する報道をしていたという。「増派といわずに警備作戦と呼ぶようになったみたいだ。」とミスター苺。そういえば、ロイターでもAPでも「増派」という言葉が聞かれなくなった。
無論アルカエダは今後もあの手この手で攻めてくるに違いない。自動車爆弾テロは成功すれば50人~60人といっぺんに殺すことが出来るので、まだまだ油断は許されない。だが、今のところ新作戦の成績はまずまずといったところだろう。


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イラク掃蕩作戦に悲観的な産経新聞

同じ状況をみていてもこれだけ見解の差があるのかという記事を読んだので、ちょっとコメントしたい。産経といえど主流メディアであることに変わりはないし、何とかブッシュの新作戦のあら捜しがしたいようだ。
「掃討作戦」開始から2週間 シーア派、民兵温存と題して村上大介記者はイラクでの掃蕩は殺人の数なども減り、一見うまくいっているかのように見えるが、これはサドルとマリキ首相が事前に打ち合わせておいた「一時的潜伏」作戦の結果であり、アメリカの作戦がうまく言っているという意味ではないとしている。

イラクのイスラム教シーア派民兵組織とスンニ派武装勢力を標的とした駐留米軍とイラク治安部隊の大規模掃討作戦開始から2週間たった。最大の目標とされていた宗派抗争による無差別殺人は激減したものの、これは宗派殺人の中心となっていたシーア派民兵が事前に潜伏したためだ。シーア派側にうまくかわされた形の今回の作戦では、宗派抗争の実行部隊は温存される一方、スンニ派武装勢力の仕業とみられるテロも続いている。…

汎アラブ紙アルハヤートなどによると、サドル師は、マリキ首相の密使として派遣されたジャアファリ元首相(シーア派)との会談で「マフディー軍潜伏」を決断したという。「掃討作戦の対象はシーア派、スンニ派を問わない」との公式な立場を取るマリキ首相も、マフディー軍の「一時的潜伏」により大規模掃討作戦の目標の半分が、実質的に空振りに終わることを、暗黙のうちに認めていることになる。
 イラクの多数派として政府、議会の主導権を握るシーア派勢力にとって、コミュニティー内部の権力闘争や思惑の食い違いはある。しかし、米軍の段階的撤退が視野に入ってきた現状で、その後も“シーア派覇権”を維持するために独自の軍事力の温存は宗派全体としての中・長期的な“戦略的利益”にかなう。

敵が攻めてくると、さあ~と退いて身の潜め、敵がいなくなったら再び浮上するというやり方は、アラブ人特有の戦闘方法である。 アラブ戦闘員はおよそ踏ん張って守りの戦をするということをしない。このやり方は相手の数が少なく侵攻した領土を相手側が守るだけの人員が足りない場合には成功する。だが、一旦明け渡した領土に敵が居座ってしまったらどうなるのか。以前にもサドルの計算違いで書いたようにサドルはアメリカ軍2万1千の増派の意味をきちんと把握していないように思う。
サドルはこの機を利用して自分が気に入らなかった部下を連合軍に売り渡したりしているが、拘束されていつまでも釈放されずにいるマフディ軍の連中がサドルの裏切り行為を悟るのは時間の問題だ。そうなったとき、彼らは自分らの知っている情報をアメリカ軍にどんどんしゃべり始める可能性がある。どこで路肩爆弾を製作しているとか、どこにアジトが集中してるとか、イランとどのように連絡を取っているとか、エトセトラ、エトセトラ。
また、カカシが予測した次のような可能性も考えていただきたい。

最後にここが一番の問題だが、アルカエダの勢力は昔に比べたら大幅に衰えている。シーア派民兵が抵抗しなければバグダッドの治安はあっという間に安定する。つまり、サドルの思惑はどうでも傍目にはブッシュの新作戦が大成功をしたように見えるのである。アメリカ議会が新作戦に反対しているのはこの作戦が失敗すると思っているからで、失敗した作戦に加担したと投票者に思われるのを恐れた臆病者議員たちが騒いでいるに過ぎない。だが、新作戦が大成功となったなら、奴らは手のひらを返したようにブッシュにこびへつらうだろう。そして勝ってる戦争なら予算を削ったりなど出来なくなる。そんなことをすればそれこそアメリカ市民の怒りを買うからだ。
結果アメリカ軍は早期撤退どころか、イラクが完全に自治ができるまで長々と居座ることになるだろう。

しかし産経新聞はアルカエダとの戦いもそう簡単にはいかないと悲観的である。

米軍とイラク治安部隊は、自動車爆弾の取り締まりに力を入れ、バグダッド市内の通行が不自由になっている。このため、米軍は、武装勢力側が従来以上に「自爆テロ」の手法を多用してくると予測しており、スンニ派武装勢力に限っても、掃討作戦成功へのカギはみえていないのが現状だ。

「掃討作戦成功のカギはみえていない」などと断言できるのは村上大介記者に想像力が無いからである。村上記者自身がイラクでの自爆テロは20%ほど減っていると書いている。これはいったい何が原因だと村上記者は考えるのか。まさかアルカエダまでが潜伏作戦を取っているわけではあるまい。
では何故アルカエダからの攻撃が減っているのか。その理由は簡単だ。イラク・アメリカ軍の対応が向上し、多くのテロが未然に防げるようになったからである。確かにアルカエダの連中はこれからも新しい方法でアメリカ軍やイラク人を攻撃してくるだろう。だがこれまでにも敵の動きにあわせて順応してきた連合軍が、これからも敵の作戦変更に順応できないという理由はない。それを全く考慮にいれずに作戦成功へのカギがみえていない」などとよく言えたものだ。
成功している作戦ですらここまでこき下ろす主流メディア。イラク新作戦の成功は文章の行間から読まなければならないようである。


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イラクでの殺人減少の兆し、ブッシュ新作戦の効果か?

本日イラク・アメリカ連合軍はいよいよシーア派民兵の本拠地であるサドルシティに攻め入った。この攻撃を報道したAPの記事には大事な点がかなりぼやけて表現されているので、ここで分かりやすく大事な箇所を青文字 で表して分かりやすく説明してみよう。(ミスター苺の分析を拝借した。)

  • アメリカ・イラク連合の特別部隊はサドルシティでの手入れにおいて16人の逮捕した。家族たちは彼等は無実だと主張している。警備作戦サドルシティ奥深くに侵入する。
  • イラク警察は昨日シーア派のアデル・アブドゥール・マフディ副大統領を殺そうとした容疑者を逮捕した。イラク警察は高度な捜索の技術を身に付けはじめている。
  • 警備作戦の始まりで暴力沙汰が不足しているのか、24時間でAPが見つけることが出来た死体はたったの28体。イラク・アメリカ連合軍による警備作戦によって殺人件数は減少の傾向をたどっている。

ここで注目すべきなのは作戦開始の前までは犠牲者の数は 一日100人だったのに作戦開始後は20-30人に減ったことだ。.
さらに今日のAPニュースでは、自動車爆弾や自爆テロなどによる犠牲者はまだ出ているが、シーア派得意の暗殺形殺人が極端に減っているという。

爆弾テロは減っていない。火曜日にはバグダッド近郊ですくなくとも10人が殺された。しかし、警備作戦の成功はしたい安置所で計ることができる。それは体中に民兵の犠牲となり体中に銃弾を打ち込まれた遺体が首都の町中で発見される例が急激に減っていることである。
バグダッドにおいて今月発見された遺体のなかで射殺され拷問の痕のあるものは一月の954体から494体へと50%近く減っている。APの収集した資料によれば去年の12月にはその数は1222体だった。
「過去三週間に渡って減少が見られます。非常に激しい減り方です。」とイラク、アメリカ軍司令官のナンバー2にあたるRay Odierno中将は語った。
多くのスンニは殺人のほとんどがマフディ軍のようなシーア民兵かシーア警察官の一部にいるならず者のしわざだと長いこと主張してきた。

まだアメリカ軍の増派は20%程度しか完成していないにも関わらず、戦闘規則を変えただけでこうも効果があがるとは驚きだ。この調子なら増派二万一千兵の動員が完了する頃にはバグダッドは結構平定されているかもしれない。まだ作戦が始まって二週間も立っていないのに、反戦主義のAPですらアメリカ軍の手柄話を報道せざる終えなくなったとすると、この作戦、イラクでも気の短いアメリカ国内でも成功する可能性が高まった。


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ブッシュ新作戦が生み出したそれぞれの思惑

さっきホットエアを読んでいたら、これまでカカシが書いてきたことをうまくまとめているのでそれを参考に私自身の考えもまとめてみよう。ブッシュの新作戦はまだ2週間もたっていないというのに、イラクの各勢力やアメリカ国内で様々な波紋をよんでいる。
1. シーア対シーア
私はシーア派への連続爆弾攻撃はサドルの仕業? まさかねでサドルが、自分の支持するダワ党のライバル党であるイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の有力者アデル・アブドゥール・マフディ副大統領を暗殺しようとしたのではないかと書いたが、サドルが抹殺しようとしているのはライバル党の政治家だけでなく、自分に忠実でないと思われるマフディ内部の幹部もその対象になっているようだ。
ご存じのようにサドルはイランあたりに隠れて影からイラクのマフディ軍に命令を下しているが、サドルは密かに信用できる幹部はイランなどの避難させ、気に入らない部下を連合軍に売り渡しているらしい。このやり方でサドルはすでに40人以上のマフディ幹部を中和してしまったという。
このようなサドルの対応はイランへの警告の意味もあったらしい。それというのもイランはサドルを通過してサドルの部下に直接援助をしていることが分かってきたからである。イランにとってはイラクが混乱状態にあればいいのであって、サドルなどいずれは用済みになる存在である。イラク・アメリカ連合軍による警備強化でサドルが我が身可愛さに戦わないのであれば、イランはサドルなどに構わずサドルに取って代わろうという野心家に手を貸して連合軍への抵抗を計ることも出来るというわけだ。
またイランが手を貸しているのはマフディ軍だけではない。サドルほどは親密でないとはいえ、ライバル等のSCIRIのなかにも反米でイランと通じている人間が何人かいる。マフディがだめならSCIRIがあるさ、、てなもんである。
サドルの、ほとぼりが冷めるまで大人しくしているという作戦は、案外裏目に出るかもしれない。(ついでにサドルがイランで暗殺でもされれば非常に都合がいいのだが、そうはうまくいかないだろうな。)
2. スンニ対スンニ

バグダッドでの増派が新聞の見出しを独占しているなか、4000の海兵隊員はアルカエダの影響力が強い西部のアンバー地区掃蕩に向かっている。スンニ反乱軍のグランドゼロであるラマディでの戦いは4月になるだろう。ペトラエウス将軍はサダムバース党の元将軍たちを戦闘に起用するつもりらしい。多くのスンニが「スンニを守る」はずのアルカエダを完全に、そして極度に憎むようになってきているおかげで、この作戦はうまくいくかもしれない。–ホットエア–

昨日もアルカエダに反抗的なスンニ派イラク人がアルカエダの自動車爆弾によって大量に殺されたという話をアルカエダ、スンニ派への攻撃激化の持つ意味でしたばかりだが、スンニの間でも強行派の外国人テロリストとバース党残党との間で亀裂がどんどん深まっている。アルカエダが暴力によってスンニ派の寝返りを防ごうとしてるなら、スンニ派は忠誠心よりもアメリカが後押しをしているイラク政府側につくのとアルカエダにつくのとどちらが自分達にとって有益かという選択をするだろう。やたらにスンニのモスクをふっ飛ばして信者たちを大量殺害しているようでは、アルカエダもスンニ派の支持を保つのは難かしいのではないだろうか?
3. 民主党対民主党
マーサ議員の馬鹿げた決議案のおかげで、民主党でもブルードッグと呼ばれる鷹派とムーブオンと呼ばれる反戦左翼との間で大きく亀裂が生まれている。
マーサ議員の失態で、先の選挙で多数派になったとはいえ民主党は党としての方針が統一されておらず、イラク政策についても全くまとまりがついていないことが顕著となってしまった。
お気に入りのマーサ議員の失態はペロシ議長でも弁護しきれないほどひどかった。マーサ議員をずっと押してきた彼女としてはかなりきつい立場に立たされたことになる。
ところで反戦左翼に押され気味の民主党は気をつけないと上院で多数議席を失う可能性が出てきた。鷹派の民主党議員として出馬し反戦左翼の陰謀で民主党候補の座を追われ無所属として立候補して見事当選したジョー・リーバーマン上院議員は、もし民主党の議会が戦費を拒否するようなことになれば今後は共和党と共に投票すると宣言しているからだ。そうなれば上院議会は一票差で共和党が多数派としてひっくりかえる。
それもまたおもしろいかも。


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シーア派への連続爆弾攻撃はサドルの仕業? まさかね

The English version of this entry can be read here.
今日はミスター苺のエントリーをそのまま紹介しよう。以下Big Lizards.net/blogより。
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ちょっとここ数日偶然にしては出来過ぎている事件がいくつも起きているので、ここでちょっと気になる点をあげてみた。

  1. モクタダ・サドルがイラク作戦変更と同時にイランへ遁走。
  2. サドルはマフディ愚連隊の仲間たちにもすみやかにイランへ避難しろと命令。あっと言う間にマフディ軍の姿はイラクから消えてしまった。
  3. 安全な場所からサドルはイラクに残っているマフディ軍のメンバーにほとぼりがさめるまで抵抗せずにじっとしてろと命令した。
  4. マフディ軍が街から姿を消したのと同時に、偶然にも大掛かりな自動車爆弾がシーア派居住地区で続けて爆発。しかも一つはシーア派の副大統領アデル・アブドゥール・マフディ氏の暗殺を狙ったものだった。
  5. サドルはすかさず「占領軍」が「スンニ」によるシーア攻撃をとめることが出来なかったと声明文を発表。「警備強化の真っ最中であるにも関わらず、我々は連続自動車爆弾によって我々の愛する罪のない市民が何千人と殺されるのを目の当たりにしている。」

    (無論この何千なんてのは大げさで、犠牲者の数は100人未満だろう。それに警備強化は真っ最中どころかまだはじまって二週間もたっていない。アメリカからの援軍もまだ予定の20%程度しかイラクに入国していない。こんな言い方はしたくないが、サドルはちょっと数字に弱いんじゃないだろうか?)

  6. 最後にブッシュの新しい作戦は完全に失敗だという見解が、サドルもイランもそしてアメリカメディアも全員で一致している。まだ計画のほんの一部しか実行されていないというのに!

このAP記事の巧みな結論に注目されたし。

サドルの声明文は、少なくとも42人が殺されたシーア派専門学校での爆発事件とほぼ時を同じくしてバグダッドにいるサドルの助手によって発表された。アル・サドルの手厳しい言語をつかった声明は今後の警備が難かしくなることの深刻さを示している。

ちょっと一歩下がって全体像を見てみよう。新作戦の前まで一般にいわれてきたことは、スンニとシーアのテロリストによって毎日平均100人のイラク人が殺されていたということだ。ブッシュの新作戦が始まって12日、この計算でいくと1200人のイラク人が殺されていなければならないはずだ。しかし1200人はおろか250人も殺されていない。ということは新作戦が始まってイラクでの死者の数は 80%も減ったことになる!新作戦が大成功だとは言わないが、少なくとも民主党がブッシュ大統領の政策をことあるごとに「無惨な大失敗」 とけなしているほど悪い結果ではない。
しかし昨日も今日もシーア地区で、あたかもサドルが予期したアメリカ軍による警備強化は大失敗するという事実を裏付けるかのように自動車爆弾が爆発した。マフディ軍なくしてシーアは安心できないというサドルの声明文が読まれたのと、まるで打ち合わせでもしたかのようにちょうどいいタイミングだった。
サドルはよっぽど運がいいのか、それともお〜? もしかして〜? ん? 僕の考え過ぎ?自動車爆弾を爆破できるのはスンニテロリストだけとは限らないからね〜。
もっともシーア派への自動車爆弾攻撃がサドルの仕業だなんてことを言うのは邪推というものだろう。まさかいくらサドルでも自分の政治勢力を有利にするために同族のシーアを殺すなんてことはしないだろう。いくらそれがアメリカ軍を追い出す結果になるからといって、いくらなんでもサドルにだって多少の愛国心はあるだろうし、、、
それにサドルがシーア派の副大統領を暗殺しようとしたりするだろうか? スンニ派の副大統領もいるというのに。アブドゥール・マフディはサドルにとっても仲間のはず, だよね?
いや…それがそうでもないんだなこれが。ウィキペディアによると アデル・アブドゥール・マフディ(Adel Abdul Mahdi)はSCIRIのメンバーである。首相の ノーリ・アル・マリキ(Nouri al-Maliki)はサドルの強い味方と噂されている。(口の悪いひとはマリキは、自分がイランの飼い犬であるサドルの、そのまた操り人形だとさえ言う。)そのマリキはダワ党の人間。
SCIRI とダワは宿敵だ。同じシーア派の支持を得ているとはいえ憎みあってるライバル政党なのである。しかもSCIRIはダワ党よりも強力でサドルにしてみれば邪魔な存在。

アブデル・マフディは長年隣国のイランに基盤をおいていた強力なシーア党であるイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)のリーダーで、アメリカ政府の政策には反対していたがクルドやイラク全国議会(Iraqi National Congress)を含むアメリカが支援しているサダム・フセインに対抗するほかのグループとは強いつながりがある。

現在サドルはダワを通じてイラク政府をコントロールしようとしてるわけだが、暗殺されそうになった副大統領はダワのライバル政党のSCIRIのリーダー。– ただの偶然かなあ?.
これらシーア派への連続テロ行為がスンニテロリストの仕業だという証拠はまだ確定されてない。第一爆弾積んだスンニのトラックがシーア派市民が目をこらして見張っているシーア居住区に簡単に入り込めるというのも変な話だ。
でももちろん僕はこれがサドルの自作自演だなんていう気は毛頭ないよ。いくらサドルがイランの息がかかってるからってそんなことがあるはずないよな。トム・クランシーの読み過ぎかな?


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イラク増派阻止議案で大失敗、マーサ議員赤恥を掻く

下院でイラク増派反対という拘束力はないが抗議としては意味のある決議案を通すことが出来民主党は気を良くしていた。この議決が上院でも通り国民の支持を得られれば、それを踏み台にこの次はいよいよ拘束力のあるイラク戦費停止議案も通せるかもしれないと意欲を燃やしていた。
しかし翌日の上院議会では可決に必要な賛成票を60票を集めることができず採決にすらもちこめずに議案は果てた。上院議会で可決できなかったことだけでなく民主党にはもうひとつ問題が生じた。
下院議会が反増派議案を通す直前、海兵隊出身で退役軍人としても申し分ない肩書きのあるジョン・マーサ議員がある議案を提案したのである。これはアメリカ兵が出動されるにあたって十分な休息期間をとっていなければならないとか、武器の安全性を確かめてからでなくてはならぬとか、一見アメリカ兵たちの身を守るかに見える提案だった。
民主党にとっては決して悪い議案とも思えないのだが、何故か民主党からは支持を得ていない。それどころか発案者のマーサ議員から距離を置こうとする動きさえ出ているのだ。そのことについてワシントンポストが詳しくかいている

民主党の新人ジョー・セスタック下院議員は退役海軍大将でイラク戦争反対派として政治力を得たひとだが、セスタック議員はマーサ議員の案はまだ救える部分もあるとしながら、反戦家として声高の議員もマーサ議員の軍隊の作戦に干渉する提案は「ちょっと不安」だと語る。「私はつい最近まで軍隊にいた身ですから、その経験から言わせてもらいます。」

どうもマーサ議員の独断的な行動は民主党内部でも問題なようだ。例えばマーサ議員はこの議案についてもほかの民主党議員達と、きちんと話あった上での発表ではなかったようだし、彼主催の反戦ウェッブサイトをはじめるにあたっても下院議長のペロシ女史にすら話しを通していなかったというのである。
マーサ議員の議案は実際には戦闘員の準備状態や武器の安全性など理不尽な条件をつけて大統領がいちいち議会にお伺いをたてないと軍隊が出動できないようにするという裏口から増派阻止をするという提案だったため、共和党からは戦費を削り取ろうとする陰謀だと激しい攻撃を受けている。にも関わらず民主党からマーサ案を弁護する声は全く聞かれない。

マーサ議員を援助してウェッブページをはじめた元下院議員で反戦運動家のトム・アンドリュース氏は激怒している。「問題は民主党にはどれだけ根性があるのかってことですよ。共和党がいくつもタッチダウンのパスをやってるというのに、民主党はフィールドにすら出てないんですから。」

それに間抜けなことに、マーサ議員はこの案の本当の目的がブッシュ大統領のイラク増派だけではなく、ブッシュ大統領の外交政策をことごとく阻止することにあるとべらべらウェッブサイトのインタビューでしゃべってしまったので、「軍隊を支持する」と主張してきたペロシ議長の足を踏み付ける結果となったのである。
民主党は全体的にイラク戦争には反対とはいうものの、必ずしも戦争をどう終わらせるかという点では意見が一致していない。
退役軍人やイラク帰還兵からなる議員たちの間では、動員されている軍隊の作戦に支障を来すような戦費差し止めは好ましくないという意見があるし、即刻撤退を望む左翼側は戦費を差しとめるなら差しとめるでさっさとやれ、とマーサの遠回しなやり方には多いに不満がある。
マーサ議員の勝手な一人歩きが民主党の間に深い亀裂をもたらしたようである。


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アメリカ軍は撤退すべき、、ヨーロッパからだけど、、、

今日保守派が行き過ぎて完全な孤立主義になってるパット・ブキャナンのコラムを読んでふむふむなるほどという気がした。私はブキャナンは最近右翼が講じてファシズムに走る傾向があるのであまり好きではないのだが、それでもたまにはいいことをいう。イラクからイギリス軍が撤退するというニュースもだが、アフガニスタンへの長期出兵も乗り気でないNATOに対して、ブキャナンはいざという時に便りにならないNATOなんか見捨て、アメリカはヨーロッパから撤退せよと言う。

NATOは世界の勢力が集まっているなどというが、実際にはヨーロッパが危機にさらされた時にアメリカから助けてもらうための保険に過ぎない。ボスニアやコソボが示すようにNATOには一人稼ぎ人に25人の扶養家族がいるようなもんだ。

冷戦の後、国際家のインディアナ代表リチャード・ルーガー議員などは「NATOは遠征しないなら店じまいすべきだ」と言ったほどだ。ルーガー議員の発言はソビエトの脅威が消えた今、NATOはいい加減、世界平和維持の重荷を担ぐべきだという意味だった。
しかし1990年代のボルカン危機でヨーロッパは自分たちの遊び場すら警備できないことをあらわにした。アメリカが出ていってやさしく彼等を押し避けて事の始末にあたった。今日ヨーロッパがアメリカに向けて送っているメッセージはイラクから撤退し、イタリア、ドイツ、フランスなどはアフガニスタンでも戦いたくないというものだ。
「我々は家から出る気はありません。もしアメリカが帝国遊びをしたいならどうぞご勝手に。でも私たちは半世紀も前に撤退した場所へ我々の息子たちを送り出して戦わせるつもりなどありません。ご自分でおやんなさい。」
NATOは何のためにあるのだろうか?NATOなど常にアメリカの外交を批判しながらヨーロッパが危機に陥った時にアメリカをたよりにする脛かじりに過ぎないではないか。
NATOは経費がかかり過ぎる。我々はノルウェーからボルカン、スペインからバルティック、黒海からアイリッシュ海にかけて何十とある基地に何千という兵士を維持している。
それで我々は何を得たというのだ?なぜ我々の税金が自分達を防衛しようとしない金持ちの国々のために使われなければならないのだ?ヨーロッパの警備はわが国の警備よりも大事なのか?
世界大戦の時は一次も二次もヨーロッパはドイツから守ってくれと我々に助けを求めた。そして我々は彼等を救った。冷戦の初期の頃、ヨーロッパは東西ドイツの間にはいって防衛にあたったアメリカ軍を歓迎した。
だが現在、その脅威と共に感謝の意も消えた。今、福祉機構が国の富を食い尽くし、国民は老齢化し、町々が凶暴な移民に満たされている時、彼等はアメリカにこれまで通り彼等を守ってくれというのである、我々のそのやり方を常に批判しながら。
こんなもの同盟とは言えない。こんなものパートナーシップでもない。毛布を切り裂く時が来た。彼等が自分達の国を守る気がないのなら放っておけ。歴代の国々がしてきたように強い国が弱い国を制覇すればいいのである。
第二次世界大戦から60年もたち、冷戦から15年もたった今、ヨーロッパの防衛はヨーロッパの責任だ。

さすが生粋の孤立主義だけのことはある。
しかしアメリカがヨーロッパから完全に撤退する必要はない。ドイツの基地は閉めてポーランドあたりに移してはどうなのだろう。元ソビエト圏の新しいヨーロッパはかなり親米だし、ロシアの脅威はまだまだ存在するので彼等はアメリカを歓迎してくれると思うが。
またヨーロッパだけでなく、韓国や日本からもアメリカは撤退し、アジアの防衛はアジアに任せるというふうになるべきだろう。最近日本はその気になってきてるみたいだし、韓国などはアメリカに出ていけ、出ていけ、と騒いでいるのだからちょうどいい機会だ。
この際だから金のかかる海外基地はなるべく閉めて1990年代にがたがたになったアメリカ軍の再建にお金を使うべきだ。


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武士道と現代戦略が衝突した『硫黄島からの手紙』

私は負け戦は好きではないので第二次世界大戦で日本軍側からみた戦争映画を観るのは気が進まない。硫黄島の戦いを描いた映画なら、ジョン・ウェイン主演の「硫黄島の砂」でもみたほうが気分がすかっとする。やっぱり戦争映画は勝ち戦を観たい。
しかしクリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」は勝ち負けは別として興味深い映画だ。
物語は硫黄島決戦の総指揮官となった栗林忠道陸軍中将(渡辺 謙)が硫黄島に赴任するところから始まる。初日から古いしきたりに従って海辺で敵を迎え撃とうと浜辺で穴掘りを命じていた大杉海軍少将(阪上伸正)と無駄な戦闘で戦士を失いたくないと考える栗林中尉との間で作戦上の衝突が起きる。
また栗林中尉は赴任早々頼りにしていた海軍の艦隊がサイパンで大敗し空軍も海軍も日本本土守備に向かったことを知らされ、硫黄島にいた海軍将校たちはそれを知っていながら赴任してきた指揮官の陸軍中佐にそのことを黙っていたことを知り、栗林は「大本営は一般市民だけでなく軍隊もだまそうというのうか?」と憤りを隠せない。
栗林中尉はアメリカに駐留していたこともあり、西洋風の現代的な戦略が頭にあるのだが、大杉や他の副官たちは御国のためにどのように勇敢に名誉の戦死するかという考えしかなく、どうやってこの戦に勝つかという思慮がまったくない。どのような事態になっても最後まであきらめず戦い硫黄島を守り通す目的の栗林中尉は、攻めてくるアメリカ軍だけでなく内部で何かと玉砕したがる将校たちとの双方と常に戦わねばならないはめになる。
映画の主人公は栗林中尉であるが、ナレーターの立場にいるのは西郷昇(二宮和也)という若い兵士で、彼はもともと軍人ではなく一介のパン屋である。身重の妻を残して召集された身で内地で威張り腐って日本市民を虐待していた日本軍がやっている戦争など全く興味はないし、名誉の戦死などごめん被りたいと思っているただの一等兵である。だからこんな臭い島アメリカにやっちまえとののしって上官にさんざん殴られたりする。

硫黄島からの手紙    硫黄島からの手紙

西男爵(伊原剛志)、栗林中将(渡辺謙)


私は渡辺謙以外の役者は全く知らないが、二宮和也の演技はあまり日本人らしくないという印象を受けた。しかし現代っ子の日本人というのはこういうものなのかもしれない。
この映画は決して反日ではないが、軍事独裁政権であった日本軍の弱さがどこにあったのかということを考えさせられる場面がいくつもあった。例えば、ひとりひとりの将校が個人の手柄ばかりを優先する武士道的な考えが先行しすぎ、戦国時代の日本で「や〜や〜我こそは〜」と刀を振り回して馬を蹴散らすような将校は自分の部隊がどのような行動をとることが戦闘全体に有利になるかとうことを考えていない。何かと刀を振り回しては威張り散らす伊藤海軍大尉(中村獅童)や、戦況が悪くなって指揮そっちのけで玉砕を嘆願する足立陸軍大佐(戸田年治)などがいい例である。こんな指揮官に指揮される部隊はたまったものではない。
そんな中で栗林の意図を理解し現代風の戦争に取り組むのは男爵でオリンピックの乗馬で優勝したこともある西竹一陸軍中佐(伊原剛志)である。西男爵はハリウッドの俳優たちとも食事を交わしたこともあり英語もはなせる教養の高い人物であり、負傷したアメリカ兵に治療を施せと部下に命令するほどの人情家でもある。捕虜にしたアメリカ兵の母親からの手紙を読んでアメリカ兵は鬼畜ではない、彼等も同じ人間だと気が付く日本兵たち。
この映画は硫黄島においてアメリカ軍と戦う日本軍の立場から語られているにも関わらず、アメリカ軍の存在はほとんどない。この映画の主題は日本軍側の独裁制の問題と、伝統的な武士道と現代的な戦略の衝突を描いた映画であるといえる。
もし日本軍が栗林や西のような将校に多く恵まれていたならば、日本軍はアメリカ軍に勝ったかもしれない。だが、もし日本軍が栗林や西で満たされていたならば、アメリカとの戦争など最初から始めなかった、、と言うこともできる。


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