February 24, 2007

アルカエダ、スンニ派への攻撃激化の持つ意味

24日、バグダッド近郊のある聖廟でトラック爆弾が爆発し35人が死亡、60人が負傷するという事件があった。バグダッドで自動車爆弾が爆発したというニュースを聞いても、またか、と思われる方も多いだろうが、明らかにアルカエダの仕業と思われるこのテロの標的がスンニイラク人であることが興味深い。

外国人勢力であるアルカエダと地元抵抗勢力だったスンニイラク人とは、フセイン政権崩壊後米国及び同盟軍をイラクから追い出すという目的で当初は協力関係にあった。だが地元イラク人を卑下しているサウジ・ヨルダン系の外国人勢力とイラク人との間では最初からかなりの亀裂があった。特にザルカーウィのシーア派に対する残虐な行為は同じイラク人であるスンニ派イラク人からかなりの反感を買った。

すでに2004年の暮れあたりから外国人勢力に嫌気がさしたスンニ派部族のリーダー達が内々にではあるがアメリカ軍と和平交渉をおこなってきたことをご存じの方も多いだろう。アメリカ軍の新作戦が始まりテロリストへの取り締まりがより厳しくなるにつけ、無駄な抵抗は止めて安定したイラク政府を求めるスンニイラク人と、なんとしてでもイラクの混乱状態を保ちたいアルカエダ勢力との間の亀裂がさらに深まったものと思われる。

(攻撃を受けた)バグダッドから50マイルほど西にあるハバニヤーの聖廟のイマームはアメリカに支援されているイラク政府へのアルカエダを含めた武装勢力の攻撃に反対していた。

すくなくとも35人が殺され62人が負傷したと、ハバニヤーのアブドゥール・アズィズ・モハメッド少尉は語った。ハバニヤーは反乱軍の温床であるラマディとファルージャの中間に位置する。

犯行を認める宣言はまだ誰もしていないが、バグダッドの西にあるアンバー地区のスンニ同士の争いだという疑いが強い。武装勢力は最近政府を支持し暴力に抗議するスンニリーダーたちへの攻撃を強めている。

このようなテロ事件が相次ぐことで注意をしてみていないとイラクは混乱がさらに深まっているような印象を受ける。だが、アルカエダによるスンニイラク人への攻撃が増えているということは、それだけ反乱軍内部でのまとまりがつかなくなっているということを意味する。これがあともう少しで勝利をつかもうという勢力の行動だろうか? 長期に渡る戦争に疲れてきたのはアメリカ市民だけではないのだ。

アメリカのメディアも含め世界中のメディアはほとんど報道していないが、イラクではアメリカ兵ひとりが戦死するにあたり、その10〜20倍のテロリストが殺されているのである。アメリカ市民がアメリカ軍の犠牲で士気が弱まるのであれば、その十何倍の犠牲を出している敵側の士気消失も過小評価すべきではない。

スンニイラク人の立場に立って考えてみれば、これ以上の抵抗に何の意味があるというのだろう?フセインは処刑されてしまった。戦争によるバース党の再興は先ず望めない。外国からの助っ人は次から次に殺されてしまう。にも関わらず新イラク政府はくずれそうもない。アメリカメディアやアルカエダが繰り返しアメリカ軍は臆病者だからちょっと踏んばれば逃げ出すと繰り返しているにも関わらず、そんな気配は全くない。民主党が選挙で勝ったらアメリカ軍は退散すると聞いていたのに、アメリカ軍は撤退するどころか増派計画を進めている。いったいこんな戦いが何時まで続くのだろう? かといって自分達は外国人テロリストのように自爆する気などさらさらないし、「おい、もう駄目なんじゃねえのかこの抵抗ってやつさあ、この辺が潮時じゃねのかあ?」と考えているスンニ派も多いのではないだろうか?

またこのテロ攻撃がバグダッド市内で起きたことではないということにも注目すべきである。ファルージャ地域、特にアンバーはアルカエダテロ軍団の本拠地であるはずだ。自分達の本拠地で自分らへの犯行分子を処罰するような行為に出ているアルカエダの状態を考えてみよう。

イラクでテロがあったというニュースを聞いて、『アメリカの新作戦はうまくいっていない、イラクはこれまで以上に荒れている』と判断する前にテロ攻撃は何処で起きて誰が誰にやっているのか考える必要がある。

私はこれはアメリカの新作戦がうまくいっていて、アルカエダが追いつめられている証拠だと考えるが、みなさんはどうお考えだろうか?

February 24, 2007, 現時間 5:27 PM

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さっきホットエアを読んでいたら、これまでカカシが書いてきたことをうまくまとめているのでそれを参考に私自身の考えもまとめてみよう。ブッシュの新作戦はまだ2週間もたっていないというのに、イラクの各勢力やアメリカ国内で様々な波紋をよんでいる。 先ずはシーア対シーア 私はシーア派への連続爆弾攻撃はサドルの仕業? まさかねでサドルが、自分の支持するダワ党のライバル党であるイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の有力者アデル・アブドゥール・マフディ副大統領を暗殺しようとしたのではないかと書いたが、サドルが... [Read More]

トラックバック日付け February 27, 2007 12:50 PM

コメント

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下記投稿者名: asean

こんちは、カカシさん

どうもカカシさんのエントリーは少々、事態を単純化する傾向が強過ぎません?
(非常にアメリカ的だ、言えばアメリカ的なんだけど、メディアの報道もそうだとするなら
ブッシュ政権は困っているんじゃないかなぁ?)

スンニ派が全て旧フセイン派だとする根拠とか、未だにアル・カイダがイラクでのテロの中心に居るかのような
事実が本当にあるんですかね?

僕は基本的には、イラク全体でみれば米国のイラク政策は順調に推移していると思いますよ。

ただ、対応が下手であったり、後手だったり、モタついている等の混乱があるのは確かで
僕はそれを非難はしていますが、全てが失敗だ等とは全く思っていない。

っということで
A True victory in the Iraqi War.-3:A just cause of the Iraqi War
っをご参考迄に。

ところで何時からロードに出ちゃうんすか?

上記投稿者名: asean Author Profile Page 日付 February 25, 2007 10:25 PM

下記投稿者名: scarecrowstrawberryfield

アセアンさん、

どうもカカシさんのエントリーは少々、事態を単純化する傾向が強過ぎません?非常にアメリカ的だ

明確といっていただきたい。(笑)

本当はすでに出張中なんですが、まだ待機中です。来週からはまた海にでますが。その時はまたブログで発表します。

カカシ

上記投稿者名: scarecrowstrawberryfield Author Profile Page 日付 February 25, 2007 11:16 PM

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