米軍イラク新作戦、いよいよ本格的に開始

ことイラク作戦に関しては右も左も「増派、増派」というだけでいったい実際にどんな作戦がとられているのかメディアは詳細を報道しない。それでイラク戦争に関してきちんと注意を払っていないと、アメリカ軍はやたらに兵士の数だけ増やして訳の分からないことをやっては殺されているという印象を受けかねない。
しかしありがたいことに、主流メディアがきちんと報道しない現地での状況をアメリカのミルブロガーと呼ばれる人々が詳しく説明してくれているので、そのうちの一人、ビル・ロジオのブログThe Fourth Railを参考にイラクにおけるアメリカ軍の新作戦を考えてみよう。
現在イラクで行われている作戦はバグダッド治安安定を目的としたファンタムサンダー作戦である。五日目にはいったこの戦闘はアメリカ軍とイラク軍の複数の隊によるもので、細かく分けてダイヤラーの首都バクバー市で行われているアローヘッドリッパー作戦、南バグダッド地域で行われているマーントーチ作戦とコマンドイーグル作戦、そして名前は分からないがアンバー地区の東部で行われている作戦との四つの戦線を持つ広範囲の戦闘作戦である。
アローヘッドリッパー作戦(Operation Arrowhead Ripper)
メディアから一番注目を浴びているのがバクバーの戦闘だろう。下記は朝日新聞の記事より

イラク駐留米軍は同日、中部ディヤラ州バクバ周辺で1万人を動員した大規模なアルカイダ掃討作戦を始めた、と発表した。「フセイン政権崩壊後で最大規模の作戦の一つ」だという。

西部アンバル州やバグダッド周辺では米軍などの掃討作戦が続く。地元系のスンニ派部族や武装勢力もアルカイダ系に反旗を翻したため、アルカイダ系はディヤラ州に流入。バクバ周辺の治安は悪化していた。19日に外出禁止令が発令され、激しい銃撃戦が続いている模様だ。米軍は同日午前中までに戦闘員22人を殺害したと発表した。

バクバはディヤラ地方の首都にあたり、アルカエダがイラクイスラム国家の本拠地と宣言した場所であり、1000人以上のアルカエダ戦闘員が待機しているものと思われる。このあたりは路肩爆弾や地雷、狙撃兵などで武装されている。従軍記者のマイケル・ゴードンによればアメリカ軍は西バクバにて医療体制の整ったアルカエダ戦場病院を発見したという。この病院ではなんと酸素マスクだの手術用の機械を作動する発電機などが備え付けられていたという。まったくアルカエダはいったいどっからこんな立派な病院を設置する資金や器具を取得したのだろう?
この作戦により、少なくとも41人のテロリストが殺され、5つの武器庫のなかから25の路肩爆弾、爆弾装備の家屋などが発見され破壊された。
マイケル・ゴードンも体当たりフリーランス記者のマイケル・ヨンもバクバの陸軍に従軍しているが、地元庶民からアルカエダに関する情報がかなり入ってきているらしい。マイケル・ヨンによると地元市民はアメリカ軍によってアルカエダが殺されていることをうれしくおもっているらしく、アメリカ軍への協力に積極的だという。「市民は路肩爆弾の場所や敵の陣地の場所などを指摘してくれるため、アルカエダにとってはうまくいっていません」とヨン記者。
マーントーチ作戦とコマンドイーグル作戦(Operations Marne Torch and Commando Eagle)
南バグダッド地帯に新しくできた多国籍軍の二つの司令部がそれぞれ行っている作戦。マーントーチはバグダッド南東部、コマンドイーグルはバグダッドの西南部の担当である。
すでにマーントーチとイラク軍はチグリス川において武器輸送をしていた17隻のボートを破壊し、多国籍軍当局の発表によればアメリカ軍は5人のテロリストを殺害し、12の改良爆弾を破壊、13人の指名手配テロリストを拘束したとある。
コマンドイーグルのほうでは21日、ヘリコプターとハンビーを駆使した攻撃により29人のテロリストを退治、多数の武器庫を発見破壊、75枚のCDにおさめられたプロパガンダおよび拉致や拷問の仕方やヘリコプターの撃ち落とし方などの教科書を発見した。
東アンバール地域、名無し作戦
東アンバールで行われている戦闘の作戦名はまだ公開されていない。米軍報道官のジョン・アレン准将によると、現在ファルージャ、カーマ(Karma)、ターター(Thar Thar)のみっつの地域に焦点が当てられているという。ファルージャでは11地区において市民による隣組み風の組織がつくられ警察と協力関係にあるという。ファルージャ地域の治安維持作戦はアルージャ(Alljah)と呼ばれているそうだ。これはラマディで成功した作戦を取り入れているのだという。
ファルージャは8月頃にはほぼ安定するものと思われる。カーマとターターは7月以内にはなんとかなりそうだ。しかしカーマにおける改良路肩爆弾の攻撃は毎晩あちこちで起きており、まだまだ油断のできない地域である。しかし米軍によればファルージャは日に日に状況が向上しているということだ。
マフディ軍との戦い
アルカエダに対する戦いが激化する一方、アメリカ軍はモクタダ・アルサドルの率いるマフディ軍への圧力も引き続き強めている。
6月20日、アメリカ軍特別部隊はサドル市への手入れにおいて誘拐や攻撃を企んでいた民兵の司令官とその仲間二人を逮捕した。逮捕された三人はこれまでにもイラク市民の誘拐や殺害に必要な警察の制服、身分証明書などを供給していたという。イランが援助しているマフディの秘密グループは、先月におきたイギリス民間人5人を誘拐したと考えられている。また今年の一月に5人のアメリカ兵を殺したのもこのグループであるとされている。
ペトラエウス将軍によれば、イギリスの民間人が拉致される数日前にアメリカ軍は秘密グループの指導者を逮捕していたのだが、作戦はすでに部下によって進行されていた。 この秘密グループはジャイシアルマフディ( Jaish al-Mahdi [al-Mahdi Army])軍と呼ばれるマフディ軍の一部だが、直接サドルの支配下にあるとは限らず、アメリカ軍が必死に崩壊しようと努力しているイラン系カーザリネットワークの仲間らしい。
ほかにも色々な戦闘があちこちで起きているが、その成果はまずまずといったところだ。イラク戦争の新作戦は決して単なる意味のない増派ではない。増加された軍隊は能率的に対テロリスト作戦に起用されているのである。今年の8月下旬頃までにはかなりの成果が期待されるであろう。


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米・イスラエル、繰り返される愚かなパレスチナ対策

ガザにおけるハマスによるクーデターで、パレスチナ難民はガザのハマスと西岸のファタハ勢力と二分することとなった。米国およびイスラエルは、イスラエル撲滅を公言しているハマスに対して少なくとも表向きはイスラエルとの平和共存の交渉を唱えているファタハに肩入れして、ハマスを孤立させたい意向だ。(以下産經新聞の記事より

米、パレスチナ援助再開 ハマス封じ込め イスラエルと協議へ

 【ワシントン=山本秀也】ブッシュ米大統領は19日、ホワイトハウスでイスラエルのオルメルト首相と会談する。パレスチナ自治政府のアッバス議長が、イスラム原理主義組織ハマスを排除した非常事態内閣(ファイヤード首相)を発足させたことを受け、アッバス議長率いるファタハと新内閣への本格的な支援と、ガザ地区を事実上制圧したハマスをどう押さえ込んでいくのかが協議される。
 ブッシュ大統領は、会談に先立つ18日、アッバス議長との電話会談で、ハマス主導政権が発足した後、1年余り停止していたパレスチナ自治政府への直接援助を再開する方針を伝えた。記者会見したライス国務長官が明らかにした。
 米側の援助再開はルクセンブルクで行われた欧州連合(EU)外相理事会がアッバス議長への「全面支持」を表明し援助再開を固めたのに歩調を合わせた格好。ハマスを押さえ込みたい欧米諸国の決意を示したものだ。

しかし援助再開は西岸のファタハのみならず、ガザ地区でも再会されるという。ライス国務長官はハマスに対して「パレスチナの分断を狙っている」と強く非難する一方で、ガザに4000万ドルの援助金を拠出することを決めたという。パレスチナ人が貧困に陥ることでかえってハマスへの支持が高まるのではないかという懸念からくるものらしい。
はっきり言って私はこの援助再開は大間違いだと思う。ハマスが事実上パレスチナの統治権を獲得して以来、西側諸国はテロリスト政権は支持できないとして援助を中断していた。それがその当のハマスがファタハ勢力を武力で制してガザ完全制覇を達成したらそのご褒美に西側諸国は援助を再会? これでは話が逆ではないか!
また、ハマスに比べれば多少はましという理由だけでファタハに肩入れし過ぎるのもどうかと思う。ファタハはつまるところ故アラファト率いる悪名高いパレスチナ解放機構(PLO)の成れの果てだ。アラファト議長はパレスチナ独立にもイスラエルとの平和交渉にも口先だけ応じるような体を見せながら、実際には何の努力もせず、のらりくらりと西側の要求をかわして援助金だけはちゃっかりもらって私服を肥やし、ノーベル平和賞までもらっていた。(最近その勲章が盗まれたという話。罰があたったな。)
だが、アメリカもイスラエルもこのだらしないPLOに、その腐敗と不能によってハマスという過激派を生み出したこのどうしようもない機構に、再び期待して何億ドルという金を無駄に注ぎ込もうというのである。過去何十年にも渡る間違いから何も学んでいないのか? とデイリースタンダードで問いただすのはトム・ローズ。(A Bad Week for the Good Guys, Hamas, Fatah, and the new Palestinian reality. by Tom Rose, 06/22/2007)

PLOは1964年、イスラエルがガザと西岸を占領する三年前に設立された。この機構は22番目のアラブ国家を作るためではなく、イスラエル国家を破壊する目的で設立されたのである。ハマスがガザのPLOを覆したのはPLOの夢を変更させるためではなく、その夢を実現させるためだ。


(この援助は)外交上の不能ぶりを宣伝することになるのもさることながら、さらにより悪いことにこのぶざまな反応はそれが求めるのとは反対の結果を生むことになる。PLOへの強制援助はハマスを弱体化させるどころか、PLOの二重機構を再び明らかにしかえってハマスの勢力を助長することとなるだろう。PLOへの援助はパレスチナの穏健派勢力を強めるどころか、再び腐敗と不能に満ちた組織との関係が明らかとなり穏健派への不信につながるだけだ。
パレスチナ社会を生まれ変わらせるためにはその崩壊の責任者を救出するなどという方法では出来ない。テロリズムを作り出した組織に報酬をあたえることでどうやってテロリズムと戦うのだ?「ファタハ優先」派はすでに予算も武装も十分にあったファタハへさらに経済援助をすることで、ハマスの武装勢力を前にぶざまに尻尾をまいて逃げ出したファタハの「警備」戦闘員が、ワシントンから小切手を受け取ったからといって奪われた拠点をとりもどせると本気で考えているのか?彼等は20万人もの不能な役員(そのうちの6万はやくざやテロリストで、13にも渡る「警備隊」を含む)を再契約することがPLOの腐敗と戦うのに一番いい方法だとでも思うのか?

PLOへの援助がこれまでに試されたことがないというのであればまだ話もわかる、とローズは言う。しかし米国もイスラエルもこれまでにも一度ならず二度、三度とPLOを援助し、その度に散々な目にあってきているのである。

1970年に時の大統領ニクソンはヨルダンのフセイン王にヨルダン崩壊に失敗したPLOを非武装させるよう圧力をかけた。しかしPLOは反対にレバノンを崩壊した。1982年にアメリカは再びイスラエルによるレバノン侵略の折りPLOをレバノンから救い出した。三回目はもっとも打撃的な救援である1993年のオスロ平和合意。これはアメリカによるものではなくイスラエルによるものだった。

ローズはPLOはすでに終わっているという。パレスチナ人もアラブ人もPLOなど毛沢東にから中国を取りかえそうとしていた蒋介石くらい全く無能な勢力なのだということを知っている。なぜかアメリカとイスラエルだけが未だにそれに気が付いていないのだ。ファタハが勢力があるとされる西岸ですらPLOなどすでに幻想の存在だという。リーダーのアブ・マゼンなど西側の想像的存在にすぎない、とローズは断言する。西岸に存在する13の民兵隊もアブ・マゼンの統治下にはない。パレスチナにはマゼンに従うものなどいないのだ。そんな人間をファタハの代表者として持ち上げてみても成功などにはつながらない。
今、イスラエルにとって一番危険なのはガザだ、西岸ではない。ハマスはガザを拠点として今後イスラエルにたいしてさらに危険な攻撃をしかけてくるだろう。ハマスはイランから多額の資金援助を受けており、不能で腐敗しきったファタハと比べてやる気満々だしイスラエル妥当精神はもその組織力も抜群だ。またアルカエダのテロリストもガザにその魔の手をのばしている。アメリカやイスラエルが本気でテロと戦うつもりならば、ガザにこそ注意を払うべきなのである。
しかし、アメリカはなんとアメリカにもイスラエルにも危険なテロリスト政権の市民に資金援助をするという!そんなことでパレスチナ市民がアメリカに感謝などすると本気で思うのか?ハマスへの支持が減るとでも?
以前から私は何度となく繰り返してきたが、ガザ市民はハマスの統治によって苦しまねばならないのだ。そうなってこそ初めてパレスチナ人はハマスが市民の代表なのではなく、パレスチナの独立などにも興味がなく、自分達の勢力を強める以外なんの興味もない暴力団の集まりだということを悟るからだ。
ハマスへの支持を減らすためにガザ市民に資金援助など全く本末転倒である。
ことイスラエル・パレスチナ対策においては、アメリカの外交は常に間違いだらけである。


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花を盗むと不能になる、、、花泥棒防止に苦肉の策

釘で打ち付けてないものはなんでも持っていかれるという中国では、スーパーの前に飾ってある鉢植えの花がしょっちゅう盗まれて店主は困り果てていた。そんな折り、彼がおもいついたのがこの警告看板。スーパーの壁に掲げられた看板には何がかいてあるのかというと、、

この警告文……
曰く
「科学は証明している:花を盗む者は脳溢血で半身不随になりやすく、花を盗む者の家族が病院に行くのは花の盗難と関連があり、盗んだ花を送り返す者は災い転じて福となる。」

カカシは考えることが汚いのか半身不随と書いてあったのになぜか下半身不随と読んで「不能になる」と解釈してしまった。そして面白いのがこのオチ。

この告知文を掲げてからというもの、盗まれた花の一部が本当に帰ってきたのみならず、盗んでもいない花を送り届けてくる者まで出現

この話をミスター苺にしたら、「信じられない!」というので「中国人て迷信深い人がおおいのかもね」と言ったらそうじゃなくて「そんなに多くの中国人が字が読めるとは信じられない、、、」だとさ。


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高波たてるイージス艦

イージス艦

米イージス艦、デストロイヤー、正面から


イージス艦

米イージス艦、デストロイヤー、横から


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危険物を含む中国製のおもちゃアメリカ全土で次々にリコールされる!

ちょっと〜、中国、いい加減にしてよ、もう!
昨日も賞味期限が二年前に切れた冷凍食品をラベルだけかえて出荷しようとしている中国の冷凍食品会社の話をしたばかりだが、今日のニューヨークタイムスの見出しに中国製のおもちゃがアメリカで大規模にリコールになったとあるのが目についた。
リコールされているおもちゃは「トーマスとお友達」という機関車のおもちゃで、その塗料になんと服用すると脳障害を起こす鉛が含まれていることがわかった。このおもちゃは三歳から五歳程度の幼児の間で人気があるが、このくらいの歳の子供はなんでも口に入れるからこれは大変に危険だ。
中国製おもちゃは先月にも偽目玉のおもちゃに灯油が含まれていることがわかってリコールされたばかりであう。これまでにも鉛の塗料は中国製のぬいぐるみの熊や太鼓などからも発見されており、乳児用のおもちゃにのどに支えるような小さな部品が含まれてリコールされた例など、中国製の危険なおもちゃがリコールされた例は数知れない。
ニューヨークタイムスによるとアメリカ国内でリコールされる中国製品の数はここ5年間でそれまでの倍に増えたという。去年アメリカでリコールされた中国製品はなんと467種にものぼりこれまでの記録で最高だという。つまるところ、現在アメリカでリコールされる製品のうち60%が中国製であるという計算になる。
もっともこれは中国製品が最近危険になったというよりも、中国による世界のおもちゃ市場拡大が直接の原因となっている。いまや中国はアメリカ国内で販売されるおもちゃの70から80%の製造元となっているからだ。
中国の製造元の品質管理がずさんであることは、これまでにもあった一連の毒物入りペット食品や、偽グリセリン使用の歯磨きや医薬品などからも分かるように、明らかなはずである。とすれば中国に品質管理を期待しても無駄だ。輸入する側の国が中国製の製品には特別に厳しい監視の目をむけるべきで、中国が姿勢を改めない限り中国製品の輸入を大幅に規制すべきである。
先日も紹介した毒性のある偽グリセリンによる中毒にしろ鉛にしろ、欧米社会では何十年も前からその危険性は知られており、自分達の得た痛い経験からこうした製品は厳しく取り締まわれている。アメリカの食品薬品局が設立された直接の原因は毒性の偽グリセリン使用により大きな被害がアメリカで出たことだったのだから。
いまでこそ品質管理という点では非常に神経質で定評のある日本製品だが、日本はいつもこのように高度な製品を製造していたというわけではない。1950年代から60年代にかけて、安価な日本製品がアメリカ市場に出回ったが、その時はメイドインジャパンと言えば「安かろう悪かろう」というあまり好ましくない評判だった。それが多々の失敗を繰り返しそこから学ぶことによって今や世界中から日本製品は安全でしかも質がいいと信頼されるようになったのである。
つまり、日本も含め欧米社会も決して最初から今のように公害対策だの品質管理だのに心掛けてきたわけではない。18世紀後期から19世紀の初期に始まった産業革命は欧米社会にこれまでにない富をもたらした。しかしそれとともに工場性機械工業を取り入れることによる公害の悪影響はひどいものだった。我々はイギリスの首都を「霧のロンドン」などというが、ロンドンの霧はほとんどスモッグだったという話である。
日本でも水俣病など知られるように、工業用廃水垂れ流しによる環境汚染が改善されるまでずいぶん時間がかかった。
欧米諸国や日本がいまのようにきちんとした安全対策をとれるようになったのも、我々が道義上中国より優れているからというよりも、自分らの住む環境を破壊したり消費者を殺してしまうような近視眼的な利益主義は長い目でみて決してよい商法ではないと学んだからである。
しかし我々先進国がそうした勉強をしていた時代には前例がなかった。だから我々は被害が出て初めてその危険性を学び対策を考える以外に方法がなかった。それにひきかえ中国や他の発展途上国は先進国の間違いから学ぶという非常に有利な立場にあるといえる。公害や事件がおきてしまってから対策を練らずとも先進国の公害対策や品質管理をそのまま受け入れれば後進国は先進国が出したような多大なる被害を出さずに産業革命の恩恵だけを受けることが可能という恵まれた環境にあるのである。
にもかかわらず中国は欧米社会が百年前に犯した間違いをそのまま繰り返している。産業の発展に長年の共産主義の悪影響で政府は臨機応変に対応できていない。
中国が資本主義を取り入れ、このまま経済を発達させればいずれは中国も先進国のように公害対策や陰湿管理の大切さを学ぶであろう。問題なのはそれまでに何十年かかるかわからないということと、その間に出る被害の数々である。現在のようなグローバル経済では中国の間違いは中国だけではおさまらない。中国の危険物は世界中の市場に出回って多大なる被害を及ぼすからだ。
中国そのものが大人になるのを我々は悠長に待っているわけにはいかない。中国が早く19世紀のメンタリティーから抜け出られるように、我々諸外国が中国に圧力をかける以外今のところ方法はない。諸外国からの注文が極端に減って利益に直接悪影響を受ければそのときこそ中国も品質管理の大切さを学ぶであろう。資本主義こそが最高の安全対策だからである。


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中国、二年前に期限切れのちまきを販売?

中国食品の品質管理が問題になっている昨今だが、またまたこんな記事を読んでしまった。

「ちまき」悪臭ふんぷん、賞味期限切れ2年の偽装発覚

賞味期限切れの「ちまき」を販売しようとしているという通報に基づき、安徽省品質技術監督局が合肥皖毛毛速凍食品有限公司への立ち入り調査を16日に行ったところ、2年前に賞味期限が切れた製品をパッケージを交換しただけで出荷しようとしていたことが判明した。
 賞味期限切れの「ちまき」を販売しようとしているという通報に基づき、安徽省品質技術監督局が合肥皖毛毛速凍食品有限公司への立ち入り調査を16日に行ったところ、2年前の2005年に賞味期限が切れた製品をパッケージを交換しただけで出荷しようとしていたことが判明した。18日付で新華社が伝えた。
 調査により新たなパッケージに詰め替えられて出荷されようとしていた「ちまき」約2000キログラム相当が押収された。賞味期限は2005年内で、悪臭が立ち込め、既に米粒の形状がなくなっていたという。
 同局は合肥皖毛毛速凍食品に対して市場に出回っている全ての「ちまき」の回収を命じた。これまでに1400キログラム相当が返品された。中国では「端午の節句」は旧暦の5月5日。2007年は6月19日に相当し、その前後は多くの人々が「ちまき」を買い求める。

『柱の傷は一昨年の、五月五日の背比べ、ちまき食べ食べ兄さんが、はかってくれた背の丈』なんて歌が聞こえてきそうだが、中国にも「端午の節句」があったとは知らなかった。
ま、それはともかく、二年も前に賞味期限が切れて悪臭もぷんぷんしてるような「ちまき」表示を変えただけで本気で売るつもりだったとは、
だいたいちまきというのは餅米を使っているはずで、冷凍しても餅米というのは普通の米よりも餅が、、じゃない持ちが悪い。古くなると固くなって食べられてたものではないはずなのに。いくら冷凍食品だからといって二年前に賞味期限の切れた臭いちまきなんていくらなんでも買う人がいるとは思えないのだが。
恐ろしい国だなあ中国は。


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アルカエダに狙われるフランス新政権

先日行われたフランスの議会選挙ではサルコージの与党が大勝利を遂げた

フランスで国民議会決選投票、サルコジ与党が圧勝へ

 【パリ=島崎雅夫】フランス国民議会(下院、定数577)の決選投票が17日、行われた。
 保守与党・民衆運動連合(UMP)の圧倒的優位は変わらず、サルコジ与党が歴史的大勝を収めるのは確実となっている。即日開票され、17日夜(日本時間18日早朝)には、大勢判明の見通し。
 第1回投票後、社会党候補は、与党の付加価値税(VAT)引き上げ案を批判する戦術を取ったが、サルコジ与党の勢いは衰えていない。直前の世論調査によると、UMP(現有議席359)は選挙協力候補を含めて380—420議席を獲得する見通し。
 社会党(同149)は153—195議席にとどまると見られている。
 サルコジ新政権は圧勝した場合、26日から特別国会を開き、週35時間労働制の弾力運用や、公共輸送ストの際の最低運行保証、犯罪者・不法移民の厳罰化などの法案を提出し、公約実現に向けた抜本改革を加速させる方針。

保守派で改革派というサルコージ政権が設立されるということは非常に好ましいことではあるが、それと同時にフランスには古くて新たらしい頭痛の種が生まれている。14日付けのロサンゼルスタイムスにはフランスがアルカエダから狙われているという記事があった。(Working in Algeria, the terror group has been laying the groundwork for attacks. By Bruce Riedel, BRUCE RIEDEL)
フランスにとってアルジェリアといえば昔ながらの敵である。フランスはアルジェリアを植民地として昔はかなり虐待していたから独立戦争が起きたのは仕方ないとしても、独立してアルジェリアを支配するようになったのはイスラム教の独裁政権。このアルジェリアでは最近オサマ・ビンラデン率いるアルカエダがその魔の手をのばしつつある。アルカエダはアルジェリアを拠点として北アフリカ及びヨーロッパで聖戦テロを行おうという魂胆だ。
ビンラデンとその副官のアイマン・ザワヒリはすでに過去二年間に渡ってアルジェリアのサラフィスト集団にアルカエダに参加するよう働きかけてきたが、去年ビン・ラデンは正式にグループの名前をイスラミックマグレブのアルカエダ(Al Qaeda in the Islamic Maghreb)と改名させ、その名の下に西側の警察などへの一連の攻撃を開始した。
今年の4月12日には、これまでアルジェリアではあまり知られていなかったこのグループがアルジェリア政府高官を狙って複数の自爆テロを行い40人近い市民を殺害している。

しかしザワヒリは本命の標的はフランスであることを明らかにした。2006年9月11日のマグレブ支部発足宣言にあたり、ザワヒリは「アルジェリア政府の背教者の無念や欲求不満そして悲しみの根源は裏切り者のフランスの息子たちにある。」と宣言し、「アメリカとフランスの十字軍たちの喉につまる骨になるように」と呼びかけた。 フランス諜報部では北アフリカにあるフランス関係施設が攻撃の標的になるだろうと予測しており、フランスそのものも遅かれ早かれ攻撃されるものと見ている。現にヨーロッパの聖戦主義者ウェッブサイトではサルコージが勝利を得て以来、フランスへの攻撃が予言されている。

旧サラフィスト集団によるフランスへの脅迫は何も今にはじまったことではない。2005年2月のメディアリポートによれば、フランス国内の諜報部はフランス国内に約5000人のシンパと500人近い過激派民兵が存在するものと推定している。フランスのアルジェリア系市民はすでに2005年貧民窟で起きた暴動の際のサルコージによる厳しい取り締まりに腹を立てている。またサルコージは先代よりもイスラエルに同情的だと考えられている。(注:シラクに比べれば誰でもそうなる)

フランスはイラク戦争に真っ向から反対した国であり、アルカエダはフランスに恨みなど持つ理由は特にないはずだ。しかしアルカエダの目的は復讐ではない。アルカエダにとってはヨーロッパが対テロ戦争に参加しているかどうかなどということはどうでもいいことなのだ。彼等の目的はただ一つ、自分らに狂った宗教で世界制覇をすることにある。そのためにフランスにもともと恨みのあるアルジェリアのサラフィストを利用しているに過ぎない。
ところで1994年に未然に防がれたアルジェリア系テロリストによるテロ陰謀は、エアフランセ旅客機を乗っ取ってエッフェル塔に突っ込むという計画だった。これが後にアメリカでおきた貿易センターテロの下敷きになったことは想像に難くない。


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世代を超えた魅力、ナンシー・ドルー探偵記

私は小学生の頃から読書が非常に好きだったのだが、私の通っていた小学校の図書館にはそれほど価値ある児童書はおいてなかった。しかし中学生になって雨が降ると雨漏りするような木造校舎の二階にあった図書館には古い図書がいくつも置かれていた。そのなかで少女向け探偵小説ナンシー・ドルーは懐かしい。中学校の図書館においてあったナンシー・ドルーはその表紙からどうみても1950年代の再販版で、登場人物の物腰などもかなり古くさい感じのする小説だった。にもかかわらず私はナンシーの頭の良さとその推理力に魅かれて図書館においてあったシリーズは最初から最後まで何冊も続けて読んでしまった。

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ナンシー・ドルー


ナンシー・ドルーが最初に発行されたのは1930年代初期のことである。原作者はキャロリン・キーンということになっているが実はそういう人物は存在しない。この名前はストラトメイヤーシンディケート(The Stratemeyer Syndicate)という出版社が生み出した架空の作家名である。ストラトメイヤーはシリーズ物を生み出す専門家で、複数の作家を起用しながら一つの架空の作家名で出版することで有名である。このシンディケートの生み出した少年用推理小説ハーディボーイズもナンシー・ドルーシリーズと共に世界中の少年少女たちに愛読されている。

このシリーズは時の少年少女らにアピールする目的で書かれているため、時代と共に挿絵や表紙だけでなく、中身も年代にあわせて新しくされ元の筋は保ったまま時代にそった内容に書き換えられている。リンク先のサイトにも最新版の表紙が載っているが、邦訳版の表紙はまるでアニメさながらである。(私としては完全にイメージくずれるのだが)。

最近になって1930年代に書かれたオリジナル編が何冊も再発行され、挿絵も表現もオリジナルそのままのものを私はいくつか今度は英語で読んだ。金融大恐慌の時代に書かれた原作は21世紀の少年少女の世界とは全く違うが、それなりに別の世界をかいま見るようで興味深い。金髪美少女のナンシーは経済が低迷してアメリカの失業率25%という時代に、ロードスターという自家用車を乗り回しベスとジョージという二人の女友達と一緒に高級ホテルで昼食をとるような女の子。優しく頼りになる弁護士の父親と二人暮しで何不自由ない暮らしをしているナンシーの生活は当時本一冊買うこともできなかった少女らの幻想を反映している。

ナンシー・ドルーはこれまでにも何度も映画やテレビでドラマ化されているが、今回はアンドリュー・フレミング監督の最新映画ナンシー・ドリューをご紹介しよう。(公式サイトはこちら

新作のナンシー・ドルー(エマ・ロバーツ)は21世紀の小さな田舎町に弁護士の父親(テイト・ドノバン)とお手伝いさんとの三人暮し。父親がロサンゼルスの大企業の顧問弁護士となるべくナンシーを連れてカリフォルニアへ一時転勤。ロサンゼルスで親子が借りた屋敷は25年前に人気女優が殺され幽霊が出るという噂のある家。ナンシーは父親に危険だから探偵ごっこはしてはいけないと厳重にとめられているのだが、女優の謎の死はナンシーの好奇心をかき立てる。父親との約束をやぶって謎解きをはじめるナンシーの身辺で次々に不思議な事件がおこりはじめる。

ロサンゼルスに引っ越してくると、ナンシーが通いはじめる高校の生徒らは完全に今風のファッションだし、周りの景色も現在のロサンゼルス。ファッションも価値観も古いスタイルで、学力満点、陸上をやれば人一番早いし、大工仕事では男の子たちより手先が起用。何をやっても優等生のナンシーは場違いに浮いてしまうのだがこれは意図的。

私は最初に予告編を観た時、以前に1970年代のテレビ番組を元にしたブレイディバンチの家族のように、周りが21世紀なのにも関わらず自分らだけが1970年代のままというようなコメディタッチの映画になるのかなと思っていた。しかしそうではなく、単にナンシーは古いものが好きなだけで、ちゃんと携帯電話も使うし謎解きにはデータベースのお世話にもなる現代っ子である。

そして、どんな場合でもパニックに陥らずに用意周到機転の効くナンシーは原作のナンシーの精神をそのまま保っている。明かにフレミング監督はナンシー・ドルーのファンだ。ナンシーの魅力は行動力もあり運動神経も抜群だが、決して女の子らしさを失わないことだろう。ナンシーのはにかみやのボーイフレンド、ネッド(Max Thieriot)との淡い関係はまだまだあどけなさが残っている。

それで肝心な謎解きのほうはどうかというと、ちょっと筋が単純すぎる感がなくもない。もっとも原作もアガサ・クリスティーのような込み入った内容ではなかったからこれはこれでいいのかもしれない。

ただ、時代考証がちょっとおかしいなと思われる場面が多い。冒頭で市役所に泥棒に入った間抜けな二人組にナンシーが人質になるシーンでは、ナンシーだけでなく泥棒や保安官及び周りの市民の服装などから一見1950年代を思わせる。私は映画そのものが1950年代を舞台にしているのか、それとも回想シーンなのかなと思っていたら、父親のカーソンが古いロードスターにのりながら、おもむろに懐から携帯電話を持ち出したので、あれ〜?と首を傾げてしまった。

それからロサンゼルスの屋敷で殺人事件が起きたのが25年前という設定になっているから1982年の出来事のはずだが、ナンシーが見つける昔の写真は1970年代頃を思わせる。殺された女優の身の回りの出来事を考えても、舞台を1950年代にして事件が起きたのが1930年代だったことにした方が話のつじつまがあうような気がする。もっともこれは私にとって25年前の1982年なんてそれほど昔という気がしないので、昔の事件の謎を解くとかいわれても神秘的な気にならないというおばさんの偏見なのかもしれない。(笑)

ドルー親子が借りた屋敷も殺人事件のいわれがある屋敷なのだから、もう少し神秘的な雰囲気を持った方がいいのではないだろうか。屋敷のなかで起きる不思議な現象の原因があまりにも早く暴露されすぎてちょっと気が抜ける。もうすこし観客を怖がらせてもいいような気がする。

ロサンゼルスで知り合いになり謎解きに協力する12歳の少年コーキー(Josh Flitter)との友達関係はちょっと不自然。フリッターの演技はいかにも12歳という感じで好感は持てるが無理矢理コメディリリーフをつけたようで演出が行き過ぎ。どちらかというと原作どおりベスとジョージ(Amy Bruckner、Kay Panabaker)と一緒に謎解きに取り組むか、でなければ1930年代の映画のようにボーイフレンドのネッドと一緒に行動するかした方が観客としては納得がいく。

しかし全体的に好感の持てる映画で十代の女の子でなくても十分に楽しめる映画になっている。デートでも家族ぐるみでも安心して見られる健康的な探偵映画である。

途中ブルース・ウィルスのカミオ出演がある。


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10年前にも起きていた中国製医薬品による事故死

最近起きた中国製の薬品を含む歯磨き粉に毒素が含まれていたという事件は実は今回が初めてではなく、中国製の薬品を使って死亡者が出るという事件が10年前にも起きていたとニューヨークタイムスは報道している。
ニューヨークタイムスの記事によると、1997年、ハイチで中国製のグリセリンを成分にした医薬品で何十人という子供が死亡した事件についてアメリカのFDA(食品医薬品局)はこの危険な成分を供給したのはどこの会社なのかという調査をはじめた。アメリカでは中国からグリセリンが大量に輸入されており、歯磨き粉などの日常品に多く使用されていたからである。
しかし、このような危険な製品をなぜ中国の衛生局は安全であるとして輸出したのか、危険な製品の製造元はどこなのかという調査に関して中国政府からはいっさい協力が得られず、独自の調査で突き止めた製造元をFDA捜査官が訪問した時点ではすでに証拠となる書類はすべて処分された後だったという。
問題は中国の製造元が高価なグリセリンの代わりに安価で毒素のあるダイエセリン・グライコール(車などのアンティフリーズに使われる成分)をグリセリンに混入させたことにある。FDAは今後このようなことが二度と起きないように真相を突き止めなければならないと言っていたのだが、真相を突き止めることができないまま10年後に同じ事件が今度はパナマで再発した。なんと中国製の偽グリセリンを使った製品で去年だけでパナマでは100人が死亡したという。そしてこの偽グリセリンは最近アメリカおよび7か国で歯磨き粉などに混入していたことが発覚し前代未聞の大型リコールが始まった。
ニューヨークタイムスが入手した1997年発行のFDA調査報告では中国衛生局のずさんな管理に問題があることが指摘されており、今回の事件は10年前の事件にも関わらず、中国の衛生管理は全く改良されていないことを物語っている。
以前にも中国野菜の危険性について書いた時に指摘したように、中国製の危険な製品を消費者が避けるというのは口でいうほど容易なことではない。例えばこの偽グリセリンにしてもそうだが、ハイチやパナマで起きた毒入り薬品事件は中国の製造元が原因だったが、この製薬会社は医薬品を製造する許可を中国政府から与えられていなかったという。にも関わらず国立の輸出会社はこの製品をヨーロッパの仲買人に輸出。仲買人は製造元を公開せずにそのまま諸外国へ輸出という経路をへているため、最終的な消費者は製品が中国製であることを知らずに偽グリセリンを使用してしまうというという結果を生んだ。この場合、悪の根源は中国国立輸出業者にあるとはいえ、仲買に入っているヨーロッパ業者らの衛生に関する無頓着さの責任も無視できない。
グローバル経済の中、製品はいくつもの手を経るが、その度ごとにもともとの衛生関係の分析書類などはどこかでなくなってしまう。仲買にはいる業者も金儲けだけが目的で最終消費者に与える危険度など全く気にとめていない。パナマの場合は五つ、ハイチの場合は六つの業者が仲買にはいったという。こうやって危険な偽医薬品が世界中に出回ってしまうのである。
毒物の入った食品や薬品の第一犠牲者はなんといっても中国市民だ。以前にも工業用の油が食用油に混じって使われていることが明らかになり、中国市民の間では安全と分かっている食用油を持参でレストランへいく人がいるなどという笑い話にもならない話を聞いたことがある。民主主義国家であれば、こうした危険な製品を製造する会社を市民が訴えるなどして状況を改善していく方法もあるが、共産主義独裁政権がファシズムにかわりつつある中国では政府と企業の癒着による腐敗という問題がある以上、状況が改善される見通しは暗い。
こんな言い方はひどいかもしれないが、中国政府の腐敗が中国だけで問題を起こしているのならまだしも、その腐敗が世界中に与える影響を考えると国際社会は中国の衛生管理を放置しておくことは非常に危険である。中国が衛生管理を改善しない限り、中国製食品及び医薬品の輸入は断固禁止し中国に多大なる経済制裁をして圧力をかけていく努力を世界中がしなければこの問題は解決しないだろう。


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イスラエル占領下のほうがまし、ガザ市民の悲痛な訴え

二月から五か月続いていた長期出張がやっとおわってカカシは昨日帰宅した。最初の数週間のホテル住まいも疲れたがそれでもネットアクセスがあるだけまだましだった。中期から始まった船のなかでの生活は多少のネットアクセスはあるとは言え他の乗組員との共同使用なので自分だけ長々とネットサーフやブログエントリーなど書いてる暇はない。それで長期のアンダーウェイ(航海)が続くと皆、外の社会の出来事に疎くなってしまう。時々ヘリコプターによるメールコールで誰かが新聞をもってきてくれたりすると乗組員の間で取り合いになる。かくいう私も普通なら絶対読まないロサンゼルスタイムスを、ゴミ箱に無造作に捨ててあるのを引っ張り出してむさぼり読んでしまったくらいだ。乞食には選択の余地はない。(笑)
さて、第一面でひときわ目立っている事件といえば、なんといっても中東のいざこざだろう。特にガザの状況は深刻だ。ガザではファタ勢力が惨敗し事実上ハマスの独裁統治が実現したようである。ただ西岸はファタ派の勢力が圧倒的に強いため、パレスチナはガザのハマススタンと西岸のファタススタン領に別れるのではないかという見方が強まっている。アメリカ政府もこの路線で政策をたてているようだ。(以下2007年6月16日付け読売新聞より)

米、ハマスのガザ統治容認…「西岸優先」策推進へ

 【ワシントン=貞広貴志】米ブッシュ政権は、ハマスによるガザ統治を事実上容認し、アッバス議長が押さえる“ハマス抜き”のヨルダン川西岸を集中的に支援する「西岸優先」策を推進する構えを見せている。
 15日付の米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、ライス米国務長官は14日、アッバス議長による非常事態宣言に先立つ電話会談で、議長の行動を支持すると表明。米政府はその後も、議長を「パレスチナの正統な権威」と繰り返している。
 対照的にハマスに対しては、「ガザ住民を養うことは、今やハマスの責任」(マコーマック国務省報道官)と圧力をかけ始めた。
 ハマスを「テロ団体」と見なす米政府にとって、「挙国一致内閣」は関与しにくい存在だったが、今回の紛争で「西岸=ファタハ」「ガザ=ハマス」の住み分けができれば、再び議長支援の道が開ける。ハマス支配のガザ地区が国際支援を失ってさらなる窮状に陥れば、ハマスの勢力低下につながるとの読みもある。(注:強調はカカシ)

しかし迷惑なのはガザのパレスチナ市民たちだろう。ハマスは単なる愚連隊の集まったテロ集団であって政(まつりごと)の出来るような政権ではない。ガザの日常生活に必要なインフラが崩壊するなか打倒イスラエルを唱えてはガザ内部で抗争するしか脳がない奴らである。これならイスラエルの支配下にあったほうがよっぽどもよかったと言う悲痛な声がパレスチナ市民のあいだからあがっている。イスラエルのブロガー、イヨーニ(Yoni The Blogger)がイスラエルニュースの記事を紹介している。

「大きな声では言えないんですが、下手すると処刑されるかもしれないので、でも私を含めて多くの人たちがイスラエルが戻ってきてくれた方がいいと考えてます。そのほうが今の状態よりはよっぽどもましです。」とガザ在住のイスラミック大学の女子大生、サマラさん(仮名)は言う。

最近ハマスによって占領された元ファタ本拠地近くに住むサマラさんによると、ガザ内部では恐怖が蔓延し武装勢力や軍人以外は誰も外出しないという。
「子供たちはいつも脅えています。」とサマラさん。「私の甥たちは『どうしてイスラエルは撃ってくるの?』と聞くので『撃ってくるのはパレスチナ人だよ』と答えると、『どうしてパレスチナ人が撃ってくるの?』と聞くのです。私には答えるすべがありません。」
「家には食べるものがありません。もう何日もスープと缶詰だけの生活です。 電力もなければ水の供給すらありません。医療品や衛生上の必需品などとんでもありません。」とサマラさんは説明する。

このブログでも何度か紹介したアドベンさん(adventureoftheultraworld)というイスラエル在住の日本人学生も同じことを書いている。

ハーレツのDanny Rubensteinが困惑気味に「ハーレツには『どうか再度占領し、私たちをハマスから救ってください』というガザ住民からのメールがいくつも届いている」と書いていた。

以前から何度も書いているように、私はイスラエルによるガザ入植者撤退には賛成だった。それはイスラエルがパレスチナ難民キャンプから撤退すればガザが平穏になるなどという幻想からではなく、現在起きているような状況が起きるに違いないと予測してのことである。
私は最初からパレスチナのテロ集団に領地の統治など出来るはずがないと踏んでいた。だが、イスラエルがガザを占領している間はパレスチナ人に起きる全ての不幸がイスラエルのせいだと言う口実をあたえてしまう。だから私は、イスラエルが完全撤退してパレスチナ人の生活が地に落ちれば、その時こそパレスチナ庶民は自らが選んだハマスという勢力がどれだけ身勝手でパレスチナ人の生活やパレスチナ領の独立などには無頓着かということを実感するだろう、イスラエル打倒だけを唱えていても自分らの幸せにはつながらないということが分かるようになるだろうと考えたのだ。パレスチナ人による独立政権を設立するためには、パレスチナ人たちが先ずテロリズムを完全拒否するところからはじめなければならないからだ。しかし今の状況を見ていると実際にパレスチナ難民キャンプが独立に向かう道はまだまだ遠い。
イスラエルがガザを再び侵攻する可能性についてアドベンさんは、「イスラエル軍がシリアへの警戒を強めている中、ガザへの大規模侵攻は考えにくい」としているがそれはどうなのだろうか?
イスラエルがシリアとガザという二つの戦線に巻き込まれる可能性については回を改めて書くつもりだ。


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