先日行われたフランスの議会選挙ではサルコージの与党が大勝利を遂げた

フランスで国民議会決選投票、サルコジ与党が圧勝へ

 【パリ=島崎雅夫】フランス国民議会(下院、定数577)の決選投票が17日、行われた。
 保守与党・民衆運動連合(UMP)の圧倒的優位は変わらず、サルコジ与党が歴史的大勝を収めるのは確実となっている。即日開票され、17日夜(日本時間18日早朝)には、大勢判明の見通し。
 第1回投票後、社会党候補は、与党の付加価値税(VAT)引き上げ案を批判する戦術を取ったが、サルコジ与党の勢いは衰えていない。直前の世論調査によると、UMP(現有議席359)は選挙協力候補を含めて380—420議席を獲得する見通し。
 社会党(同149)は153—195議席にとどまると見られている。
 サルコジ新政権は圧勝した場合、26日から特別国会を開き、週35時間労働制の弾力運用や、公共輸送ストの際の最低運行保証、犯罪者・不法移民の厳罰化などの法案を提出し、公約実現に向けた抜本改革を加速させる方針。

保守派で改革派というサルコージ政権が設立されるということは非常に好ましいことではあるが、それと同時にフランスには古くて新たらしい頭痛の種が生まれている。14日付けのロサンゼルスタイムスにはフランスがアルカエダから狙われているという記事があった。(Working in Algeria, the terror group has been laying the groundwork for attacks. By Bruce Riedel, BRUCE RIEDEL)
フランスにとってアルジェリアといえば昔ながらの敵である。フランスはアルジェリアを植民地として昔はかなり虐待していたから独立戦争が起きたのは仕方ないとしても、独立してアルジェリアを支配するようになったのはイスラム教の独裁政権。このアルジェリアでは最近オサマ・ビンラデン率いるアルカエダがその魔の手をのばしつつある。アルカエダはアルジェリアを拠点として北アフリカ及びヨーロッパで聖戦テロを行おうという魂胆だ。
ビンラデンとその副官のアイマン・ザワヒリはすでに過去二年間に渡ってアルジェリアのサラフィスト集団にアルカエダに参加するよう働きかけてきたが、去年ビン・ラデンは正式にグループの名前をイスラミックマグレブのアルカエダ(Al Qaeda in the Islamic Maghreb)と改名させ、その名の下に西側の警察などへの一連の攻撃を開始した。
今年の4月12日には、これまでアルジェリアではあまり知られていなかったこのグループがアルジェリア政府高官を狙って複数の自爆テロを行い40人近い市民を殺害している。

しかしザワヒリは本命の標的はフランスであることを明らかにした。2006年9月11日のマグレブ支部発足宣言にあたり、ザワヒリは「アルジェリア政府の背教者の無念や欲求不満そして悲しみの根源は裏切り者のフランスの息子たちにある。」と宣言し、「アメリカとフランスの十字軍たちの喉につまる骨になるように」と呼びかけた。 フランス諜報部では北アフリカにあるフランス関係施設が攻撃の標的になるだろうと予測しており、フランスそのものも遅かれ早かれ攻撃されるものと見ている。現にヨーロッパの聖戦主義者ウェッブサイトではサルコージが勝利を得て以来、フランスへの攻撃が予言されている。

旧サラフィスト集団によるフランスへの脅迫は何も今にはじまったことではない。2005年2月のメディアリポートによれば、フランス国内の諜報部はフランス国内に約5000人のシンパと500人近い過激派民兵が存在するものと推定している。フランスのアルジェリア系市民はすでに2005年貧民窟で起きた暴動の際のサルコージによる厳しい取り締まりに腹を立てている。またサルコージは先代よりもイスラエルに同情的だと考えられている。(注:シラクに比べれば誰でもそうなる)

フランスはイラク戦争に真っ向から反対した国であり、アルカエダはフランスに恨みなど持つ理由は特にないはずだ。しかしアルカエダの目的は復讐ではない。アルカエダにとってはヨーロッパが対テロ戦争に参加しているかどうかなどということはどうでもいいことなのだ。彼等の目的はただ一つ、自分らに狂った宗教で世界制覇をすることにある。そのためにフランスにもともと恨みのあるアルジェリアのサラフィストを利用しているに過ぎない。
ところで1994年に未然に防がれたアルジェリア系テロリストによるテロ陰謀は、エアフランセ旅客機を乗っ取ってエッフェル塔に突っ込むという計画だった。これが後にアメリカでおきた貿易センターテロの下敷きになったことは想像に難くない。


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