ことイラク作戦に関しては右も左も「増派、増派」というだけでいったい実際にどんな作戦がとられているのかメディアは詳細を報道しない。それでイラク戦争に関してきちんと注意を払っていないと、アメリカ軍はやたらに兵士の数だけ増やして訳の分からないことをやっては殺されているという印象を受けかねない。
しかしありがたいことに、主流メディアがきちんと報道しない現地での状況をアメリカのミルブロガーと呼ばれる人々が詳しく説明してくれているので、そのうちの一人、ビル・ロジオのブログThe Fourth Railを参考にイラクにおけるアメリカ軍の新作戦を考えてみよう。
現在イラクで行われている作戦はバグダッド治安安定を目的としたファンタムサンダー作戦である。五日目にはいったこの戦闘はアメリカ軍とイラク軍の複数の隊によるもので、細かく分けてダイヤラーの首都バクバー市で行われているアローヘッドリッパー作戦、南バグダッド地域で行われているマーントーチ作戦とコマンドイーグル作戦、そして名前は分からないがアンバー地区の東部で行われている作戦との四つの戦線を持つ広範囲の戦闘作戦である。
アローヘッドリッパー作戦(Operation Arrowhead Ripper)
メディアから一番注目を浴びているのがバクバーの戦闘だろう。下記は朝日新聞の記事より

イラク駐留米軍は同日、中部ディヤラ州バクバ周辺で1万人を動員した大規模なアルカイダ掃討作戦を始めた、と発表した。「フセイン政権崩壊後で最大規模の作戦の一つ」だという。

西部アンバル州やバグダッド周辺では米軍などの掃討作戦が続く。地元系のスンニ派部族や武装勢力もアルカイダ系に反旗を翻したため、アルカイダ系はディヤラ州に流入。バクバ周辺の治安は悪化していた。19日に外出禁止令が発令され、激しい銃撃戦が続いている模様だ。米軍は同日午前中までに戦闘員22人を殺害したと発表した。

バクバはディヤラ地方の首都にあたり、アルカエダがイラクイスラム国家の本拠地と宣言した場所であり、1000人以上のアルカエダ戦闘員が待機しているものと思われる。このあたりは路肩爆弾や地雷、狙撃兵などで武装されている。従軍記者のマイケル・ゴードンによればアメリカ軍は西バクバにて医療体制の整ったアルカエダ戦場病院を発見したという。この病院ではなんと酸素マスクだの手術用の機械を作動する発電機などが備え付けられていたという。まったくアルカエダはいったいどっからこんな立派な病院を設置する資金や器具を取得したのだろう?
この作戦により、少なくとも41人のテロリストが殺され、5つの武器庫のなかから25の路肩爆弾、爆弾装備の家屋などが発見され破壊された。
マイケル・ゴードンも体当たりフリーランス記者のマイケル・ヨンもバクバの陸軍に従軍しているが、地元庶民からアルカエダに関する情報がかなり入ってきているらしい。マイケル・ヨンによると地元市民はアメリカ軍によってアルカエダが殺されていることをうれしくおもっているらしく、アメリカ軍への協力に積極的だという。「市民は路肩爆弾の場所や敵の陣地の場所などを指摘してくれるため、アルカエダにとってはうまくいっていません」とヨン記者。
マーントーチ作戦とコマンドイーグル作戦(Operations Marne Torch and Commando Eagle)
南バグダッド地帯に新しくできた多国籍軍の二つの司令部がそれぞれ行っている作戦。マーントーチはバグダッド南東部、コマンドイーグルはバグダッドの西南部の担当である。
すでにマーントーチとイラク軍はチグリス川において武器輸送をしていた17隻のボートを破壊し、多国籍軍当局の発表によればアメリカ軍は5人のテロリストを殺害し、12の改良爆弾を破壊、13人の指名手配テロリストを拘束したとある。
コマンドイーグルのほうでは21日、ヘリコプターとハンビーを駆使した攻撃により29人のテロリストを退治、多数の武器庫を発見破壊、75枚のCDにおさめられたプロパガンダおよび拉致や拷問の仕方やヘリコプターの撃ち落とし方などの教科書を発見した。
東アンバール地域、名無し作戦
東アンバールで行われている戦闘の作戦名はまだ公開されていない。米軍報道官のジョン・アレン准将によると、現在ファルージャ、カーマ(Karma)、ターター(Thar Thar)のみっつの地域に焦点が当てられているという。ファルージャでは11地区において市民による隣組み風の組織がつくられ警察と協力関係にあるという。ファルージャ地域の治安維持作戦はアルージャ(Alljah)と呼ばれているそうだ。これはラマディで成功した作戦を取り入れているのだという。
ファルージャは8月頃にはほぼ安定するものと思われる。カーマとターターは7月以内にはなんとかなりそうだ。しかしカーマにおける改良路肩爆弾の攻撃は毎晩あちこちで起きており、まだまだ油断のできない地域である。しかし米軍によればファルージャは日に日に状況が向上しているということだ。
マフディ軍との戦い
アルカエダに対する戦いが激化する一方、アメリカ軍はモクタダ・アルサドルの率いるマフディ軍への圧力も引き続き強めている。
6月20日、アメリカ軍特別部隊はサドル市への手入れにおいて誘拐や攻撃を企んでいた民兵の司令官とその仲間二人を逮捕した。逮捕された三人はこれまでにもイラク市民の誘拐や殺害に必要な警察の制服、身分証明書などを供給していたという。イランが援助しているマフディの秘密グループは、先月におきたイギリス民間人5人を誘拐したと考えられている。また今年の一月に5人のアメリカ兵を殺したのもこのグループであるとされている。
ペトラエウス将軍によれば、イギリスの民間人が拉致される数日前にアメリカ軍は秘密グループの指導者を逮捕していたのだが、作戦はすでに部下によって進行されていた。 この秘密グループはジャイシアルマフディ( Jaish al-Mahdi [al-Mahdi Army])軍と呼ばれるマフディ軍の一部だが、直接サドルの支配下にあるとは限らず、アメリカ軍が必死に崩壊しようと努力しているイラン系カーザリネットワークの仲間らしい。
ほかにも色々な戦闘があちこちで起きているが、その成果はまずまずといったところだ。イラク戦争の新作戦は決して単なる意味のない増派ではない。増加された軍隊は能率的に対テロリスト作戦に起用されているのである。今年の8月下旬頃までにはかなりの成果が期待されるであろう。


1 response to 米軍イラク新作戦、いよいよ本格的に開始

In the Strawberry Field17 years ago

イラク新作戦を理解できない反戦派たち

まだ始まって数日しかたっていないバグダッド掃蕩作戦がすでに失敗だ〜と騒いでる人たちがいる。このマシュー・イグレシアスなんてのがその典型だろう。 マシューはファルージャから多くのアルカエダ高官メンバーが戦わずして遁走してしまったことを指摘して、2004年のファルージャ闘争の時も全く同じことが起きたとし、テロリストどもは戦闘が終わればまた戻ってくることの繰り返しで、アメリカ軍は過去の間違いから何も学んでいないと語る。 これに対して、このような意見を述べるマシューこそイラクにおける新作戦を理解していないの…

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