「ロムニー候補の大統領当選は断固阻止されねばならない!」 リベラル新聞の行き過ぎ社説

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アメリカでは個々の新聞が社説などでどの候補者を支持するか明らかにすることは珍しくない。しかし、最近の新しい傾向なのか、リベラル派の新聞社が共和党大統領候補のミット・ロムニーを「反支持」する社説を掲載した。いや、単にロムニーを支持しないどころか、投票者にロムニーには投票するなと呼びかけているのである。
これは12月22付けのニューハンプシャー州はコンコードモニターに掲載された “Romney should not be the next president” (ロムニーは次の大統領になるべきではない)という題の社説だ。

共和党大統領候補を部品セットから築き上げるとしたら、スポーツマンで筋肉質な体系、レーガンのような髪、カリスマ的な演説スタイル、ぱりっとしたスーツといった部品を想像するだろう。それに加えて美人の奥さんにかわいい子供たち、大成功しているビジネス。これに大統領に必要なリーダーとしての知事の経験もちょうど良い加減にある。 そして共和党のおきまりの経費節約に減税をとなえ、加えて2008年の共和党の新しい姿勢である反移民政策を取り入れ宗教に焦点をあてればもう言うことない。

こうした要素をすべてあわせ持つのがミット・ロムニーだ。彼の不穏な姿はまさに次の大統領そのものだ。そしてロムニー候補の大統領当選は断固阻止されねばならない。

コンコード・モニターはどう見てもリベラルな新聞だ。過去にイランがレーガン時代になってから人質を返還したのはカーター大統領の努力のたまものなのだといった記事を書いてみたり、以前にもロム二ーの宗教について批判的な記事を載せたり、違法移民に運転免許書を発行すべきだなどといった姿勢をとったりしている。
しかしながら、社の方針はどうあれ、候補者が大統領になるのを「断固阻止せねばならない」などと書くのは、いくらなんでも行き過ぎである。これは新聞社がリベラルであるとか保守派であるとかにかかわらずジャーナリストとして一線を超える行動だ。
新聞社が「何々候補に投票すべき」というのと「誰々だけは投票してはならない」というのとではグランドキャニオンほどの溝があるとミスター苺は言う。これは一般人が「ヒラリーだけは勘弁してほしい」というのとは訳が違うのだ。一個人の意見と主流な新聞ではその影響力は比べ物にならない。
それにしてもコンコードモニターはいったいロムニーの何が気に入らないのだろう?彼等のあげる言い訳はあまりにもくだらなく理由にもなにもなっていない。

ロムニーのマサチューセッツ知事時代の経歴だけをおっていれば現実主義で穏健で、社会的な面ではかなりリベラルな面もあり民主党ともうまくやっていく才能のある人間だという印象を持つ。 一方で大統領候補としての選挙運動だけを追っていれば、彼は本格的な保守派でどんな犠牲をはらっても宗教右翼に迎合すると確信するだろう。この両方に注意を払ったとしたらいったい彼の根本には信念というものがあるのかどうか疑問が残る。

1994年の上院議員の候補者として、彼はライバル候補のテッド・ケネディより同性愛者の権利を守ると主張した。しかし近頃では同性愛結婚や養子縁組に反対であることを主張している。.
一時期彼は避妊具をもっと容易に手に入るようにしたいといっていたのが、後になって処方せんなしの避妊ピル販売を否決したりしている。
昔のロム二ーは投票者に自分は人工中絶を支持していると保証していた。「その点について揺らぐことはありません。」とロムニーは1994年に発言している。その時彼は親戚に起きた違法中絶の失敗の悲劇を引き合いに出し、人工中絶は合法で安全な形で保つべきだと語った。しかし最近では彼は自分は プロライフ(カカシ注:命を尊重するという意味だが、一般的に人工中絶に反対な意見をいう。)だと言っている。
ロムニーは幹細胞の医学調査を支持すると言っていた時があった。その時ロムニーは自分の妻の多発性硬化症を理由にこのような調査は彼のような家族を助けることになると説明した。しかし最近は主に調査に反対している。知事候補時代のロムニーは反税金政策はギミックだといっていたが、最近は(反税金議案に)まっさきに調印している。.
人は変わるものだ。変化がないことが人徳とは限らない。しかしロムニーのこうした変化は自分の野心のためだけの何者でもないことが参権者には明らかだ。

日本の読者のみなさんには、ロムニーの変化がどういう方向へ向かっているのか分かりにくいと思うが、実は彼の変化は一方通行であり、すべてが左から右への変化なのである。しかも彼の変化は突然おきたものではなく、数年にかけてじょじょに起きたものなのだ。 つまり、こんコードモニターは「ロムニー候補の大統領当選は断固阻止されねばならない」理由はロムニ年をとって経験を積むにつれて保守的になってきたからだというのである。
保守派の共和党支持者の間でも最初から右翼でない人間を疑う傾向があるとはいうものの、現実として一般人は年をとって人生経験を積むにしたがって保守的になるのは普通だ。こうした変化をとげたことで有名なのは保守派の英雄ロナルド・レーガンその人がある。ほかにも元はリベラルだったのが保守派にかわった、いわゆるネオコンと呼ばれるひとたちはいくらでもいる。年をとってから右から左へ移行するという例外がないわけではないが、そういう例は非常に稀である。
こんな一般的な心変わりをロム二ーの大統領当選を反対する理由にあげることからして、これがコンコードモニターの本音でないことは明らかだ。なぜならこのような変化なら他の共和党候補者であるマケインにしろ、ハッカビーやジュリアーニにしろ皆体験しているからだ。
リベラルなコンコードモニターは必然的に民主党支持だ。そのモニターがロムニーに強く反対するということは、ロムニーなら民主党の候補者を破れる可能性が強いと踏んでいるからだ。はっきり言って敵側の助言を聞くほど愚かなことはない。モニターが押している共和党の候補者はマケインもしくはハッカビーだが、その理由は明白だ。この二人は非常に個性が強くその政治的方針もかなり極端なため共和党全体がまとまって支持しない可能性が高いのである。
例えばジョン・マケインだが、彼はイラク戦争などの国防には強いが社会的な面では非常にリベラルだ。マケイン上院議員のおかげでブッシュ政権のもとで保守派の裁判官任命がかなり阻止されてしまったことでマケインに腹をたてている共和党支持者は少なくない。一方マイク・ハッカビーはマケインと正反対に福音書宗教右翼の支持を強く受けているが、極右翼過ぎるため穏健派世俗主義の共和党支持者に敬遠される嫌いがある。なんにしてもこの二人では共和党はまとまらない。
過激派宗教右翼は別として一般の保守派はロム二ーがモルモン教徒であることを特に気にしていないし、ジュリアーニの保守派の裁判官を任命するという公約を信じて、彼の人工中絶支持には目をつむる用意がある。つまり、ロム二ーやジュリアーニには共和党をまとめる力があるが、マケインやハッカビーは票を割る可能性が高く、従って民主党候補に有利になるというのがコンコードモニターの狙いなのだ。
だから民主党大統領当選の最大の障害物であるミット・ロムニーの大統領当選は断固阻止されねばならない、、ということになるわけだ。そういう本音を隠して理由にならない理由をあげてロム二ーの評判を落とそうなどとはいくら社説とはいえ、主流新聞としてはあるまじき態度である。


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共和党討論会YouTube質問に民主党運動員を潜入させていたCNN!

今日アメリカの保守派ブログをいくつか読んでいて、昨日の共和党討論会におけるCNNによる信じられない陰謀を知った。なんと討論会を主催したCNNが採用した共和党大統領候補たちへのYouTubeでの質問の多くがヒラリーやエドワーズの選挙運動員によるものだったというのだ!
詳しいことをミッシェル・モルキンがまとめているのでここで、そのいくつかを紹介しよう。

  1. イスラムに関する質問をしたのはイスラム教市民団体でテロ組織と深い関係もあるCAIRの元インターンだった。
  2. 年金問題について質問した男性は民主党上院議員ディック・ダービィンのところで年金関係の仕事をしている人だった。
  3. とうもろこし生産援助に関する質問をした男性は民主党下院議員ジェーン・ハーマンの元インターンだった。
  4. 人工中絶について質問した若い女性ジャーニーと、子供二人とビデオに映っていたリアーンという若い母親は二人とも民主党大統領候補のジョン・エドワーズの支持者だった。
  5. 共和党同性愛政治団体のメンバーだと言っていたデイビッドという若い男性は実は民主党大統領候補のバラク・オバマの支持者だった。
  6. 軍隊の同性愛政策に批判的な発言をした退役軍人キース・カー准将はヒラリー・クリントンの支持者だった。

このほかにもまだかなりあるらしいのだが、何千と応募のあったビデオ質問のなかから、限られた時間で放映されたビデオのなかにこれほど多くの民主党支持者が入っているというのは偶然にしては出来過ぎている。CNNがこれらの人々の政治背景を知らなかったと言い訳するにしては、ここに登場した人々はこれまでにネット上で自分らの意見を大々的に発表しており、本名で検索すれば彼等のホームページや彼等が製作したビデオなどを簡単に見つけることができる。たとえば人工中絶について質問したジャーニーなる女性は別のビデオで「ジョン・エドワーズ’08」と書かれたTシャツを着ているし、共和党員だといっているデイビッドなる男性のHPのプロフィールで「私がバラク・オバマを支持する理由」といってオバマを称えているのを読むことができる。ミッシェルのページでこれらの映像が載っているので興味のある読者は参照されたし。
ま、CNNが民主党寄りなのはすでに周知の事実ではあるが、ここまであからさまに民主党のプロパガンダに協力するとは恥知らずにもほどがある。
それにしても、YouTubeというネット機構を使いながら、ネット検索という強い道具に気が付かなかったというのもCNNの間抜けぶりが伺われる。こんな子供だましが今時通用すると思ってるのだから。


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悲劇的な封切り、ディパルマ監督の反米映画「リダクテド」

このあいだも反戦映画が不入りなのはなぜか?でも書いたが、アメリカで次々に公開されている対テロ戦争への批判メッセージを多分に含んだ反戦映画が全く人気がない。しかしその中でもアメリカ兵がイラク少女を強姦しその家族を惨殺するという話を描いたブライアン・ディパルマ監督の「リダクテド」には観客は全く近寄らない。ニューヨークポストによれば、封切りの週末の売り上げ成績はなんとたったの$25,628、全国でこの映画を見た人はたった3000人という計算になる。 これは興行上まれにみる大惨事となった。プロデューサーのマーク・キューバンはディパルマに経費だけで売り下げたいと提案したが、周到なディパルマは断った。

映画評論家のマイケル・メッドビッドは「私が見たなかで最悪の映画」と批判。…「Aリストの映画監督、大規模な宣伝、タイムス、ニューヨーカー、左よりのサローンのようなサイトなどでの高い評価にもかかわらずです。もっと少ない劇場で公開されたジョー・ストラマーのパンクロックバンド、クラッシュのドキュメンタリーの三周目より少ない客入りです。」とある映画関係者はメールで語った。「映画の反戦テーマに賛成してるひとたちですら観にいく努力をしなかったということになります。」

反戦だからといって反米とは限らないと私は何度も強調しているのに、まだ映画関係者は分からないらしい。
私が心配するのは、アメリカ国内でこのような映画がいくら不人気でも、これが諸外国で公開された場合の悪影響である。特に言論の自由のないイスラム諸国では、真実でない背信映画を国が政策を許可するはずがないと考える。だからこのような映画がアメリカ人の手でつくられたということは真実に違いないと勘違いしてしまう可能性が高い。それでなくてもアメリカへ嫌悪の意識が高いこれらの国へ、アメリカ人自らの手で反米プロパガンダをつくることの愚かさ。これでテロリストへの志願者が増え、アメリカ人が一人でも多く殺されたら、彼等の血はマーク・キューバンとブライアン・ディパルマの手に塗られていると自覚してもらいたいものだ。


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イラク・アフガニスタン帰還兵は自殺率が高いって本当?

11月最後の木曜日は感謝祭。私も久々に休みをとってうちでゆっくりしているところである。
しかし11月は11日にベテランデイといって元軍人に感謝する日があるので、反米メディアはこぞって元軍人の悪口を報道するのが常になっている。今年も例外なく軍隊バッシングがおこなわれたが、イラク帰還兵の自殺率はほかの人口より高いとか、アメリカの浮浪者の1/4が帰還兵だなどという記事が目に付いた。
これについて、従軍記者などのバリバリやっている自分も元軍人のマイケル・フメントは、この自殺率の話はかなり眉唾だと指摘している。
私はこの番組は見なかったのだが、二回に分けて報道されたこの特別番組では、自殺した兵士の妻などへのお涙ちょうだいのインタビューで埋め尽くされていたらしい。しかもCBSは2005年の調査によると、元軍人は一般市民よりも自殺する可能性が二倍の率であると断言したという。
しかしCBSは偏向のない独立した調査会社に調査を依頼したのではなく、自分らでこの調査を行っており、視聴者はその真偽を確かめるすべがない。またこの数はDepartment of Veterans Affairs(VA)という元軍人について扱っている政府機関の調査の数よりもずっと多いことをCBSも認めている。
番組中で、このVAの調査は疑わしいとCBSのインタビューに答えている元軍人ふたりは、フメントによると結構名の知れた政治活動家で、そのうちの一人はイラク戦争反対の反戦運動かなのだという。およそ公平な立場でものがいえる人たちではない。そういう人間の身元をはっきりさせずにインタビューしたということだけでも、この番組の意図は明白だ。
しかし調査以外にネットワークの悪質な嘘を証明するもっとも決定的な証拠はほかにあるとフメントはいう。例えば、CBSが現在の戦争の帰還兵に特別な焦点を当てていることだ。

「ひとつの年代が目立ちます。」と番組。「元軍人の20歳から24歳で対テロ戦争に参加したグループです。彼等は元軍人のなかでも自殺率がもっとも高く、一般の同年代の若者より二倍から四倍の率といわれています。」

CBSは若い元軍人の自殺率は10万人につき22.9人から31.9人だという。
しかし現在対テロ戦争についている現役軍人の数と比べてみるとこの数字はどうも変だ。先月陸軍は現役軍人の自殺率に関する調査結果を発表したが、2006年における現役軍人の自殺率は10万人につき17.3人だったという。CBSの元軍人の率よりかなり低い。なぜ現役の軍人よりも最近除隊したひとたちのほうが高い率で自殺したりするのだろうか。

フメントの最後の質問はちょっと変だと思う。現役でバリバリ戦ってた戦士より、除隊して一般社会に溶け込めずに気が滅入って自殺する人は結構いるかもしれないし、戦場では押さえていた恐怖心とか猜疑心とかが、除隊した後で沸き上がってきて絶望するなんて例もあるかもしれないからだ。しかし、肝心な点は、軍人や元軍人の方が一般市民よりも自殺をする率が高いのかどうかという問題だが、この点についてフメントはそんなことはないと書いている。
軍隊、特に戦地からの帰還兵は圧倒的に男性が多い。自殺率は若い男性の方が若い女性よりも高いというのはごく一般的なことだ。であるから、軍人の自殺率を計る場合には一般市民も軍隊と同じく男女の比率を調整してからでなくては意味がない。陸軍はその調整をおこなって調査をした結果、一般市民の自殺率は10万人につき19人と陸軍より高い数値になったという。
となると、帰還兵の年、性別、人種などを一般市民の間でも調整したら、CBSのいうような一般市民の「二倍から四倍」も高い率などという数字が出てくるとは思えない。
湾岸戦争の70万にもおよぶ帰還兵や、2004年に行われたベトナム戦争帰還兵対象の調査でも、元軍人が一般市民より自殺する確率が高いという結果は出ていない。過去半世紀にわたるアメリカの大きな戦争でも、帰還兵の間で自殺率が高くなるという傾向がないのに、CBSは現在の対テロ戦争だけは特別に軍人らを絶望のふちに追い込んでいるというのである。
元軍人の間でもベトナムや湾岸での戦闘体験のある人とない人の間で自殺率はかわらないという。戦争時で勤めたひとでも平和時で勤めた人でも自殺する率に変化はないのである。となるとCBSが強調したい、『元軍人の間では対テロ戦闘によって心的外傷後ストレス障害(PTSD)を起こして自殺におよぶケースが増えている』という主題がかなり怪しくなってくる。
無論PTSDはばかにできない病気だ。フメント自身もイラクはラマディで待ち伏せされた戦闘の後で2〜3日はPTSDに悩まされたという。しかしPTSDについては多くの調査が行われいるが、PTSDが自殺の要因となるケースは非常にすくないという。事実ほんの一週間前にVAが発表したPTSDの比較調査結果によればPTSDと診断されたひとより、そうでない人のほうが自殺率は高いという結果がでたのだ。
この調査は80万人を対象にPTSDと診断された人とそうでない人の間の自殺率を比べた結果、PTSDと診断された人の自殺率は10万人につき68.16人、そうでない人の間では10万人につき90.66人と、PTSDでない人の自殺率のほうが圧倒的に多かったのである。この原因に関して調査者たちは、PTSDと診断された人は治療を受けている可能性が高いため、自殺を防げるのかもしれないと語っている。
また戦闘体験の後遺症についても、1998年に行われた調査によると、戦闘での衝撃的な体験が将来身体に及ぼす害は非常に少ないという結果がでている。
つまり、帰還兵がより自殺する傾向にあるという納得のいく証拠など存在しないのである。
フメントは自殺は常に悲劇であり、数が多い少ないに関わらず減らすことを考えるべきだとしながらも、そのためには自分らの政治的アジェンダを持ち出していてもはじまらないという。全くその通りだ。
CBSが本気でアメリカ軍人の精神状態を慮っているのであれば、元軍人が格安で簡単に治療を受けられるような施設つくりに貢献してはどうか?ボランティアをつのってPTSDに病んでいる軍人らの手助けをしてはどうか?そんな努力もしないで、一部の元軍人らの悲劇を自分らの政治的アジェンダに悪用するなんて、CBSのニュースは下の下である。


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米軍、APのストリンガーを正式にテロリストとして起訴

APのカメラマンとして賞までとったことのあるイラク人、ビラル・フセインという男がテロリストとしてアメリカ軍に取り押さえられた話は、去年の暮れ頃ここでも紹介した
彼はアメリカの記者の代わりに現地で取材をする所謂(いわゆる)ストリンガーだが、彼が撮ったテロリストの写真は、どう考えてもテロリストの協力を得て撮ったものが多々あった。フセインは去年アメリカ軍に逮捕されテロリストとしてイラクで拘束されている。そのフセインにアメリカ側から正式にテロリストとして罪が課されることになったと、当のAPが報道している。(Hat tip Powerline)

NEW YORK (AP) – 米軍はビューリツァー受賞者のアソシエイトプレス(AP)のカメラマンに対して、イラクの裁判所で犯罪訴訟を起こす考えをあきらかにした。しかしどのような罪で起訴するのか、どのような証拠があるのかはいっさい明らかにしていない。

APの弁護側はこの決断に断固とした抗議をしており、米軍の計画は「いかさま裁判だ」と語っている。このジャーナリスト、ビラル・フセインはすでに19か月も起訴されないまま拘束されている。
ワシントンではペンタゴンの報道官ジェフ・モレル氏が起訴内容について「フセインに関する新しい証拠が明らかになった」と説明している。…
モレル氏は軍が「ビラル・フセインのイラク反乱分子の活動につながりがあり、イラクの治安維持に脅威を与える人物であると確信できる確かな証拠がある」とし、フセインを「APに潜入したテロ工作員」と呼んだ。

APは自社の記者に関するニュースだけに、いまだにこのストリンガーがテロリストではないと言い張っている。弁護側にいわせると軍はフセインの罪について詳細をあきらかにしていないため、どのように弁護していいかわからないということだ。APはフセインがテロリストとは無関係だという根拠として、彼の撮ったほとんどの写真がテロ活動とは無関係なもであり、テロ活動が写っている写真でもストリンガーがテロリストと前もって打ち合わせをしていた事実はないと断言している。しかしパワーラインも指摘しているが、「ほとんど」がそうでなくても、テロ活動を一枚でも写真に撮ることができるとしたら、フセインにはそれなりのコネがあると考えるのが常識だ。フセインの撮った写真で有名なのは私が上記で掲載したイタリア人記者殺害後のテロリストがポーズをとってる写真。(2005年におきたイラクはハイファ通りでの真っ昼間の暗殺事件を撮ったのもフセインだという話があるが、これはAPは否定している。)

Bilal Hussein and his picture    Italian

テロリストと一緒に逮捕されたAPカメラマン、ビラル・フセイン(左)フセイン撮影イタリア人記者の遺体の前でポーズを取るテロリストたち(右)


ビラル・フセインがピューリツァー賞をとった写真はこれだが、テロリストがイタリア人記者を殺しているところにたまたまAPの記者が居合わせるのが不可能なのと同じように、テロリストがアメリカ軍に向かって撃っているところを真横にたって撮影するなんてことがテロリストの仲間でもないカメラマンに出来るはずがない。これらの写真はどう考えても、まえもって打ち合わせをしてのみ撮れるものである。はっきり言ってフセインの撮った写真そのものが、ビラル・フセインの正体を証明しているようなものだ。


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反戦映画が不入りなのはなぜか?

私が好きな映画のひとつに第二次世界大戦中につくられたフォロー・ザ・ボーイズという映画がある。これはユニバーサルスタジオのオールスターキャストの映画だ。筋自体は非常に単純で、戦争当時に兵士慰問の目的で組織されたUSOの成り立ちの話だ。主役の興行師がどうやってハリウッドのスター達を集めて慰問公演を実現するに至ったかという話に沿って戦地での慰問公演に積極的にスター達がボランティア活動をしたという筋立てになっている。主な役柄以外の出演者達はすべて本人として出演し、スターが出てくるたびに歌ったり踊ったり手品をやったりする。当時はハリウッドスタジオはどこもこういう映画を作ったが、要するに戦地で慰問公演を直接見られない兵士らのために、人気スターたちを集めたもので、筋そのものはどうでもいいようなものである。
とはいうものの、それはさすがに昔のハリウッドだけあって、そんな映画でも結構まともな筋になっている。それに人気スターたちが自分らの身の危険も顧みずに戦地への慰問を積極的におこなった姿勢が出ていて、ハリウッドがこんなに戦争に協力してくれるとは本当にいい時代だったなあとつくづく感じるような映画である。
それに比べて現在のハリウッドときたら、戦争に協力して軍人を慰めるどころか、反戦が講じてアメリカ軍人やアメリカ政府を悪く描く映画しか撮らない。
ここ最近、連続してイラク戦争や911以後のアメリカの対テロ政策に関する映画が公開されたが、どれもこれも不入りで映画評論家からも映画の娯楽価値としても厳しい批判を浴びている。下記はAFPの記事より。

CIAの外国へテロ容疑者の尋問を外注する政策を描いたリース・ウィザースプーンとジェイク・ギレンハール(Reese Witherspoon and Jake Gyllenhaal)主演の「レンディション( “Rendition”)」は売り上げ1000万ドルという悲劇的な不入りである。

オスカー受賞者ポール・ハギス監督のイラクで死んだ息子の死について捜査する父親を描いた「インザ・バレーオブエラ(”In the Valley of Elah”)は、 いくつか好評を得たが9月公開以来売り上げが9百万ドルにも満たない。
アクションを満載したジェイミー・フォックスとジェニファー・ガーナー(Jamie Foxx and Jennifer Garner)主役の「ザ・キングダム(”The Kingdom”) ですら、4千7百万の予算をかけたにもかかわらず、売り上げが7千万を切るという結果になっている。

こうした映画の不人気は公開予定のロバート・レッドフォード監督の「ライオン・フォー・ラムス」やアメリカ兵によるイラク少女強姦を描いた「リダクテド」の売り上げも心配されている。どうしてイラク戦争や対テロ戦争関連の映画は人気がないのかという理由についてAFPはムービードットコムの編集者ルー・ハリスにインタビューをしている。

「映画には娯楽性がなくちゃいけません」とハリスはAFPに語った。「反戦だとか反拷問だというだけの映画をつくって人があつまるわけがありません。」

ハリスはまたイラク戦争そのものが人気がないので、人々の関心を集めることが出来ないとも語っている。AFPはさらに、イラク戦争や対テロ戦争は第二次世界大戦と違って凶悪な敵がはっきりしないため、人々が興味をもって映画を見ようという気にならないのではないなどと書いている。(テロリストが悪いという判断が出来ないのはハリウッドとリベラルだけだろうと私はおもうが。)テレビニュースで戦争の話をいやというほど聞かされている観客は映画でまで戦争について観たくないのではないかなどと色々な理由をあげて分析している。
しかしAFPが無視している一番大事な点は、これらの映画がすべて反米だということだ。ハリウッドのリベラルたちの反戦感情は必ずしもアメリカの観客の感情とは一致していない。映画の観客の多くは自分が軍人だったり家族や親戚や友達に軍人がいるなど、軍隊に関係のある人が多いのである。そうした人々が、アメリカは悪い、アメリカ軍人は屑だ、イラク戦争も対テロ戦争も不当だという内容の映画をみて面白いはずがない。これはイラク戦争や対テロ戦争が国民の支持を得ているかどうかということとは全く別問題だ。また、戦争に反対だったり戦争の状況に不満を持っている人々でも、彼らはアメリカ人なのである。アメリカ人が金を払ってまで侮辱されるのが嫌なのは当たり前だ。しかしハリウッドの連中は自分らの殻のなかに閉じこもって外の世界を観ようとしないため、これらの映画がどれほど不公平で理不尽なものかなどという考えは全く浮かばないのだろう。
私はアフガニスタンやイラク戦争について現地からのニュースをかなり詳しくおってきたが、これは映画の題材としては完璧だなと感じる記事をいくつも読んできた。アメリカの観客がみて胸がすっとしたり、ジーンと来るような話はいくらでもある。たとえば先日も紹介した「ローンサバイバー」などがいい例だ。これはアメリカのアフガニスタン政策の落ち度を指摘する傍ら、アメリカ兵の勇敢さを描いた話になっている。他にもアメリカ兵が地元イラク人と協力してつくった病院とか学校が残虐なテロリストに爆破される話とか、テロリストによって苦しめられてきた地元イラク人がアメリカ兵の勇敢な姿に打たれてアメリカ軍と協力してテロリストと戦うようになった話とか、イラク兵養成学校でイラク兵を育てるアメリカ兵の話とか、いくらでも説教抜きでイラク戦争やアフガニスタン戦争をテーマにした愛国主義の映画を作ることは可能なはずだ。
ところでローンサバイバーは映画化される予定になっている。監督がキングダムのピーター・バーグなのでどういうことになるか、かなり心配なのだが、もしもバーグが原作の精神に乗っ取った映画をつくることができたとしたら、この映画の人気次第でアメリカの観客が戦争映画に興味があるのかないのかがはっきりするはずだ。もしもハリウッドの評論家たちがいうように、最近の戦争映画に人が入らない理由がイラク戦争に人気がないからだとか、ニュースでみてるから観客があきあきしているというような理由だとしたら、ローンサバイバーも不人気かもしれない。だがもしもこのアメリカの英雄や親米なアフガニスタン人の話が売り上げ好調だったら、観客は反米映画が嫌いなだけで、戦争映画がきらいなのではないということがはっきりするだろう。
なんにしても、この映画の出来具合と人気次第でハリウッドもなにか学ぶことが出来るはずだ。


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戦争は兵隊に任せろ! アメリカ兵に手かせ足かせの戦闘規制

今朝、ハワイの地方新聞Honolulu Advertiserを読んでいたら、ハワイ出身の陸軍兵が犯したとされるイラク市民殺人事件について、この兵士が意図的にイラク人を殺したと言う証拠はないとして、裁判をしない推薦がされたという記事が載っていた。この事件は逮捕して武装解除されたイラク市民を上官の命令で部下が銃殺したという容疑だったが、部下は殺すのが嫌でわざとはずして撃ったと証言していた。すでに捕らえて直接危険でない人間を殺すのは戦闘規制に反する行為ではあるが、果たしてこれが犯罪といえるのかどうかその時の状況によって判断は非常に難しい。正直いって、アフガニスタンやイラクの戦争では、少しでも怪しい状況があるとすぐに兵士を逮捕して取り調べると言う事件があまりにも多すぎる。兵士らは当たり前の戦闘行為をしているのに、いちいち自分らの行動が犯罪としてみなされるかどうか心配しながら戦争をしなければならないのだからたまらない。
たとえばこの状況を読者の皆さんはどう判断されるだろう。アフガニスタンの山奥にテロリストのアジトがあるので偵察に行って来いと命令を受けた海軍特別部隊シール4人が、偵察中に羊飼いの村人三人に出くわした。戦闘規制では非武装の非戦闘員を攻撃してはいけないということになっているが、彼らの顔つきから明らかにアメリカ人を憎んでいる様子。シールの4人はこの三人を殺すべきか開放すべきか悩んだ。開放すれば、中間達に自分らの任務を知られ待ち伏せされる可能性が多いにある。かといって、キリスト教徒としてまだあどけない顔の少年を含む一般市民を殺すのは気が引ける。第一タリバンかどうかもわからない市民をやたらに殺したりすれば、殺人犯として帰国してから裁判にかけられる可能性は大きい。シールたちはどうすればよかったのだろうか?
結論から言わせてもらうと、シールたちは殺すという意見が一人で、もう一人はどっちでもいい、他の二人が殺さずに開放するという意見で羊飼いたちは開放された。そしてその二時間後、シール4人は200人からのタリバン戦闘員たちに待ち伏せされたにもかかわらず敵側を100人近くも殺した。しかしいくら何でもたった4人で200人の敵にはかなわない。大激戦の末、味方側の三人が戦死、一人が瀕死の重傷を負って逃げた。この生き残った一人は、羊飼い達を解放すると決めたひとりだったが、あとになって「どんな戦略でも、偵察員が発見された場合には目撃者を殺すのが当たり前だ。それを戦闘規制(ROE)を恐れて三人を開放したことは私の生涯で一番の失態だった」と語っている。無論そのおかげで彼は自分の同胞三人を殺されてしまったのだから、その悔しさは計り知れない。
上記は2005年アフガニスタンで同胞3人をタリバンとの激戦で失い、救援に駆けつけたチームメンバーたちの乗ったヘリコプターをタリバンのロケット弾に撃ち落され全員死亡。ひとり生き残ったシール、マーカス・ラテレルの身に起きた実話だ。彼の体験談はLoan Survivorという本につづられている。
私は理不尽なROEがどれだけアフガニスタンにいる特別部隊やイラクの戦士たちの任務の妨げになっているか以前から書いてきたが、それが実際に十何人というアメリカ軍でもエリート中のエリートを殺す結果になったと知り、改めて怒りで血が煮えたぎる思いである。
実は先日、私はCBSテレビの60ミニッツという番組で、アフガニスタンにおけるNATO軍の空爆についての特集を観た。詳細はカカシの英語版のブログbiglizards.net/blogで数日前に書いたのだが、関連があるのでここでも紹介しておこう。
この番組では司会者のスコット・ペリーはアフガスタンではタリバンによって殺された一般市民の数と同じかそれ以上の数の市民がNATO軍の空爆の巻き添えになって殺されていると語った。いや、ペリーはさらにNATO軍(特にアメリカ軍)は敵側戦闘員が居る居ないの確認もせずにやたらに市民を攻撃しているとさえ言っているのである。
ペリーが現地取材をしたとするアフガニスタンからの映像では、明らかに爆撃をうけて破壊された村の一部を歩きながら、ペリーは女子供や老人を含む親子四代に渡る家族がアメリカ軍の空爆で殺され、ムジーブという男の子だけが生き残ったと、お涙頂戴風の臭い演技をしながら語った。確かにアメリカ軍が意味もなく一般市民の家を破壊して四世代の非戦闘員を殺したとしたらこれは問題だ。だがこういう話にはよくあることだが、本当はもっと複雑な背景がある。
実際破壊された家の家主で、生き残った少年の父親は地元タリバンのリーダーで、アメリカ軍がずっと捜し求めているお尋ねものである。空爆時には家にはいなかったが、家主がタリバンのリーダーということは部族社会のアフガニスタンでは家族も必然的にタリバンである。そんな家が建っている村は必然的にタリバンの村なのであり、村人はすべてタリバンだと解釈するのが妥当だ。しかも、アメリカ軍がこの村を空爆した理由はその直前に丘の上にあるアメリカ軍基地にロケット弾が数発打ち込まれ、激しい打ち合いの末、ライフル銃をもったタリバンがこの村へ逃げ込むのが目撃されたからなのである。ペリーはこの状況をこう語る。

時間は夜でした。アメリカ軍は地上で敵との接触はなかったにもかかわらず、モーター攻撃の後に空爆援助を呼ぶ決断をしました。アメリカ空軍の飛行機はこの近所にひとつ2000ポンドの重量のある二つの爆弾を落としました。(瓦礫の中を歩きながら)これが一トンの高性能爆発物が当たった泥つくりの家の跡です。爆弾は標的に当たりました。しかし煙が去った後、ライフルをもった男達の姿はありませんでした。いたのはムジーブの家族だけです。

敵と地上での接触がないもなにも、この村の付近からアメリカ基地はロケット弾を撃たれているのである。しかもライフル銃をもった男達がタリバンのリーダーが住んでいる村へ逃げ込んだのだ。アメリカ軍はこの状況をどう判断すべきだったとペリーは言うのだ?第一、破壊さえた家でライフルをもった男達が発見されなかったという情報をペリーは誰から受け取ったのだ?もしかしたら自分らはタリバンではないと言い張っている村でインタビューをしたタリバンの男達からか?
だいたいアフガニスタンの村でライフルを持っていない家など存在しない。だからといって彼らが皆テロリストだとは言わない。強盗や盗賊に襲われても警察など呼べない山奥の部族たちは自分らの手で自分らをまもらなければならない。ソ連軍が残していったカラシニコフ(AKライフル)がいくらでも有り余ってるアフガニスタンだ、一般人がライフルをもっていても不思議でもなんでもない。もしタリバンのリーダーの家でライフルが一丁も発見されなかったとしたら、それこそおかしいと思うべきだ。

このアフガニスタン人たちは、他の市民と同じようにアメリカが支援している政府を支持するかどうか迷っています。私たちは怒りは予想していましたが、これには驚きました。

ペリー:(村人の一人に)あなたはまさかソビエトの方がアメリカよりも親切だなどというのではないでしょうね?
村人:私たちは以前はロシア人をアメリカ人よりも嫌っていました。でもこういうことを多くみせつけられると、ロシア人のほうがアメリカ人よりよっぽど行儀がよかったと言えます。

タリバンがロシア人よりアメリカ人を嫌うのは当たり前だ。すくなくともタリバンはロシア人を追い出したが、アメリカ人はタリバンを追い詰めているのだから。
マーカスの本にも書かれているが、タリバンやアルカエダの奴らは西側のボケナスメディアをどう利用すればいいかちゃんと心得ている。イラクでアメリカ軍に取り押さえられたテロリストたちは、アメリカ兵に拷問されただのなんだのと騒ぎたて、アルジェジーラがそれを報道すれば、西側メディアはそれに飛びついてアメリカ軍やブッシュ大統領を攻め立てる。テロリストたちは自分らの苦情を聞き入れたアメリカ軍がアメリカ兵を処罰するのを腹を抱えて笑ってみていることだろう。「なんてこっけいな奴らなんだ、敵を殺してる味方の戦士を罰するなんて、間抜けすぎてみてらんねえや。」ってなもんである。
だからこのタリバンの奴らも取材に来たアメリカの記者団を丁重に扱い、何の罪もない善良な村人に扮してCBSの馬鹿記者の聞きたがる作り話をしているにすぎない。それも知らずにペリーのアホは村人が自分らはタリバンではない、ただの平和を愛する羊飼いだと言っているのを鵜呑みにし、村人がソビエトよりアメリカが嫌いだという証言に衝撃を受けたなどと、とぼけたことをいっているのだ。
私はこういうアメリカのボケナス記者どもに一度でいいからアメリカの部隊に従軍でもして実際に敵と面と向かってみろと言いたいね。殺さなければ殺されるかもしれない状況でとっさに自分らの目の前に居る人間が敵か味方か判断できるかどうか、自分で体験してみろ!それができないんなら黙ってろ!お前らのいい加減で無責任な報道がどれだけのアメリカ兵を殺す結果になるとおもってるんだ!
マーカスの体験談を読むに付け、私はこういう無知蒙昧なリポーターをぶん殴ってやりたい思いでいっぱいになった。


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少しづつ盛り返しつつあるアメリカ市民のイラク戦争支持

歴史的にみて、戦争を国民が支持するかしないかは、戦争に大義名分が成り立っているとか、自国の犠牲者が多いとかということで決まるのではない。国民が戦争を支持するかしないかは、自国が戦争に勝っているという印象を国民が持っているかどうかに左右される。
イラク戦争には、中東からアメリカに脅威をもたらすサダムフセイン独裁政権を倒し、イラクに民主主義をもたらすという大義名分があるにはあるが、当初80%からのアメリカ市民がこの戦争を支持した理由は、アメリカの圧倒的な武力をもってすればイラク政府など簡単に倒すことが出来る。湾岸戦争のときのようにすばやく害の少ない圧倒的勝利を得てアメリカ軍は名誉の帰還をするこが出来ると信じたからである。
確かにフセイン政権打倒は計算以上にうまくいった。フセインのイラク軍など張子の虎で、アメリカ軍にかかってはみるもひとたまりもなかった。だから2003年5月当時のブッシュ大統領の支持率は90%近かったのではないだろうか?
しかし、イラク復興がおもったよりはかばらないことや、当初の戦闘での戦死者はわずか500人程度だったのに、その後あっちでひとり、こっちでひとり、と路肩爆弾や自動車爆弾による犠牲者が増え始めるとアメリカ国民の戦争への支持は激減した。大義名分も変わっていないし、犠牲者の数もそれほど増えているわけではない。問題はアメリカ国民がアメリカは負けているという印象をもちはじめたことにある。
先日もアメリカの主流メディアは悪いニュースばかりに注目していいニュースを軽視する傾向があると書いた。地味なアメリカ兵及び諸外国の連合軍によるイラク復興活動などはほぼ完全無視され、自爆テロや路肩爆弾攻撃ばかりが報道された。これではアメリカ市民が気分がいいはずがない。
無論私は2003年後半から始まった反乱分子によるアメリカ軍及び連合軍への攻撃によって我々が打撃を得たことや、イラク内の治安が荒れたことを否定しているわけではない。イラク情勢は我々が当初考えていたほど安易なものではなかったことは事実である。だからアメリカ国民の支持が下がった理由を主流メディアのせいばかりにはしていられない。いくら主流メディアが悲観的だといっても、大本営放送がメディアを独占しているわけではないから、他からも情報は入ってくる。それが同じように良くないニュースなら、本当に戦況は思わしくないと判断せざる終えない。
だが逆に、戦況が本当によくなっていれば、いくら主流メディアが良いニュースを無視しようと過小評価しようと、戦争から帰還した兵士らや、現地にいる兵士や民間人や従軍記者らからの情報で、実際に戦況はよくなりつつあるという情報はすこしづつでも巷に広がるものなのである。そうなってくれば、主流メディアもいつまでも良いニュースを無視しつづけることはできなくなるのだ。
さて、前置きが長くなってしまったが、今日のこのAPのニュースも戦況が良くなっていることの証拠だと思う。内容を読まなくてもこの見出しUS, Iraqi Forces Detain Militia Fighters(米・イラク連合軍、民兵戦闘員を拘束)だけで主流メディアのイラクに対する姿勢が変わってきたことがわかる。

BAGHDAD (AP) – アメリカ・イラク軍は土曜日、ポーランド陸軍のヘリコプターに援助され、シーア民兵が勢力のあるバグダッド南部を襲撃、何十人という民兵を逮捕した。二人の民兵は殺された。イラク首相は地元の知事と会見をしたが、知事はこの攻撃を「犯罪者」を根絶やしにするものだと語った。

イラク警察によると夜明け前の手入れでイランの飼イ豚モクタダ・アルサドルのマフディ軍民兵30人が逮捕されたそうだ。このあたりはイギリス軍撤退後、ライバルのシーア民兵たちが石油の利権をめぐって縄張り争いを始めており、地元市民をずいぶんと苦しめているようだ。今回の手入れがうまくいったのも、そんな無法者と戦う決心をした地元シーア市民の協力があったからである。

住民はアンバー地域ではじまった、スンニ部族がアルカエダに立ち向かってアメリカ軍と一緒に地道にアルカエダを追い詰め始めた傾向をみならっている。

以前ならばアメリカ軍とテロリストの戦闘の末、テロリストが50人から殺され、アメリカ人に2人の戦死者が出るなどという場合でも、「アメリカ兵二人戦死!バグダッドで激戦」というような見出しで、あたかもアメリカ軍が激戦の末大敗したとでもいいたげな始まり方をしていたものだ。それが、イラク各地で地元市民がアルカエダにしろシーア民兵にしろ反乱分子にアメリカ軍と協力して立ち向かっているという話が報道されるようになったというのはすばらしい変化と言える。
このメディアの姿勢の変化が国民の世論を変えるまでにはまだまだ時間はかかる。だが、その兆候はもう少しながら見え始めている。ハリスポールという世論調査ではイラク戦争支持率はわずかではあるが増えているとある。以下ワシントンタイムス参照

イラク戦況はアメリカ軍にとって良くなっていると答えた人の数は3月の13%から8月の20%そして現在の25%と確実に上昇している。

アメリカ軍にとって悪くなっていると答えたひとも数も一月の55%から三月の51%そして現在の32%とかなり減少した。

この傾向が続けば、来年の選挙の時までにはアメリカ市民の意見は再びイラク戦争支持になっているかもしれない。そしてイラク戦争を成功させたとしてブッシュ大統領及び共和党への支持率も上がるかもしれない。なんにしてもアメリカ市民が真実を見極められるようになってきたというのは良いことである。


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イラク米兵犠牲者数激減は報道の価値なし?

イラクでの新作戦が始まって、半年近くたつが、今年9月のイラク米兵の戦死者数がここ最近で最小の数となったという話は以前にもした通りである。しかしこのニュースはアメリカの主流メディアはほとんど報道していない。
ニュースバスターが紹介しているCNNのハワード・カーツ司会のトークショーにおいても、このことが取り上げられた。

ハワード・カーツ司会: イラクからのニュースはここ数年死と破壊の連続で気の滅入るものばかりでした。しかし政権が今週イラク犠牲者の数について向上的な数字を発表するとメディアはほとんど注意を払いませんでした。。CBSの「 イブニングニュース」でもNBCの「ナイトリーニュース」 でもほんの数行、ニューヨークタイムスは10面に、ワシントンポストは14面、USA トゥデイでは16面、ロサンゼルスタイムスではほんの2-3行が第4面の下のほうに載っただけでした。

例外はABCのワールドニュースで、これでは司会者のチャールズ・ギブソンがトップニュースとして報道した。
これについてカーツは、ワシントンポストのロビン・ライト記者と、CNNのバーバラ・スター記者をスタジオに招いて、メディアがイラクからのいいニュースを報道しない傾向について質問した。

カーツ: ロビン・ライトさん、イラクでの犠牲者数減少についてもっとメディアは注目すべきなのではないですか?

ライト:いえ、そうともいえません。これはまだ傾向の始まりですし、いや、まだ傾向といえるかどうかも怪しいのです。それにどうやって数えたかということについてもかなり意見が割れています。イラクには色々な死があるのです。戦闘による死、宗派間争いによる死、犯罪による死などです。アメリカ側が数に入れていないものがかなりあるのです。たとえばイラク南部ではシーア対シーアの暴力が起きてますがこれは宗派間争いの数には入っていません。それにアメリカは南部ではあまり勢力がないのです。ですから数そのものはやっかいなのです。長い目でみて、オディアーノ将軍が今週ワシントンで言っていたのですが、逆行しない勢いを探しているということです。それはまだこの二ヶ月くらいではそこまで達していないのです。

米軍隊志願兵の数など、一年中目標を満たしていても、一ヶ月でも目標に満たない月があると、「米軍志願兵、目標に見たず!志願兵不足に四苦八苦する米軍」などと大々的な見出しで第一面で報道するくせに、イラクで犠牲者が二ヶ月続いて激減しているという数は「やっかいだ」「あやしい」と言って報道しないというわけか。こんなの理屈にあってるだろうか?ニュースバスターのノエル・シェパードも、株市場などでは傾向の最初から今後どうなると予測をたてるジャーナリストはいくらでもいるという。ところがことイラクとなるとジャーナリストは慎重になるというのはどうも納得がいかない。これについてもうひとりのゲスト、バーバラ・スターはこう説明する。

バーバラ・スター:それが問題なんですよ。私たちはイラクでアメリカ兵が殺されている数が減少の傾向にあるのかどうかわからない。これは継続した進歩とは言えません。確実な進歩への可能性としては非常に良い第一歩ですが。

「非常に良い第一歩」ならそう注釈をつけて報道すればいいではないか。良い傾向かどうかわからないから報道を控えるというのは、ジャーナリストが一般市民の判断能力を信用していない証拠だ。これが良い傾向かどうか市民の判断に任せればいいではないか。さすがにカーツもこの答えには偽善があると察知したらしく、もしニュースが逆にイラク市民の犠牲者が増えたとかいうものだったら、新聞の第一面を飾るのではないかという質問に対して、スターは、、

スター:もちろんそうでしょう。それならどう考えてもニュースですから。いいですか、ペンタゴンの記者ほど死者の数を報道をしたり、悲しむ家族や手足を失った兵士にインタビューするのを止めたいものはいないのです。でもこれは本当に長続きする進歩なのでしょうか?

ペンタゴンはこれまで5年間も進歩はあった、進歩派あったといい続けてきました。疑い深くて申し訳ないですが、私としてはたかが一ヶ月ちょっとの結果をみても手放しで喜べないのです。

死者が増えているという話はニュースになるが、減っているという話はニュースではない、ときたか。もうジャーナリストとして偏向のない報道をしようなどという気持ちはさらさらないと白状したようなものだ。


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マーサ米下院議員よ、海兵隊員侮辱を釈明せよ!

米下院議員のジョン・マーサ氏は法廷において、ハディーサ事件で議員がまだ調査も行われていなかった時点で米海兵隊員たちがイラク市民を虐殺したとメディアに発表したことについて、釈明しなければならない可能性が高まっている。
それというのも、ハディーサ事件の容疑者として逮捕され、最近になって証拠不十分で起訴取り消しになった海兵隊曹長Marine Sgt. Frank Wuterich氏がマーサ議員を名誉毀損で訴えたからである。
マーサ議員が当時どのような発言をしていたか、2006年の6月にカカシが書いたハディーサ事件:それぞれの思惑
を振り返ってみよう。
****米軍の捜査経過の詳細を研究したとして民主党の下院で反ブッシュのマーサ議員があちこちのテレビ局で海兵隊員が一般市民を虐殺した証拠があると発表した。下記はABCがおこなったマーサ議員のインタビューの記事を訳したもの。(翻訳:妹之山商店街さん)

マーサ議員:IEDが爆発したんです…毎日外に出る度にIEDが爆発するんです…ですから毎回プレッシャーが高まっていく訳です。この場合はIEDが爆発し、海兵隊員一人が死亡。そこにタクシーがやって来て、中には四、五人が乗っていました。武装していなかったのですが、この人達を射殺しました。その後、民家を襲撃して人々が殺害したんです。女性の一人は、海兵隊の人から話を聞いた所、子供をかばって命を助けてくれと懇願したにも関わらず射殺したということです。更に気になるのはイラクの人達はこのことを知っていたということなんです。家族に補償金を支払ったからです。それに加え、隠蔽工作が行われたんです。間違いありません。最初この人達はIEDで死亡したと言ったんです。翌日調査の為に要員が派遣されました。ところがそれについて何の報告も行われず、三月になってタイム誌がこれを伝える時誰も何が起こったのかを知らなかったのです…
質問:写真や画像証拠があるとのことですが、本当ですか
マーサ議員:その通りです。捜査を担当した人とイラク側の証拠を入手しました。何が起こったかについては、疑いようがないんです。問題は、誰が、何故、隠蔽工作をしたかということなんです。何故明らかになるのに半年も掛かったんでしょうか翌日調査を行い、ニ、三日後にはこの人達が殺害されたことが分かっていたんです。

まだ米軍による調査がすんでもいないのに、何が起きたかは間違いないとか、隠ぺいが行われたとか適当なことを良く言えたものだと思う。問題なのはマーサ議員があらゆるニュース番組にはしご出演してこのような発言をしていた時、マーサ議員はまだ軍当局から捜査結果の報告を受けていなかったということだ。マーサ議員はタイムスの記事を書いたイラク記者の報道をそのまま鵜呑みにして事実確認もせずに米海兵隊を有罪と決めつけ軍当局が隠ぺいしたと言い切っているのである。******
無論、その語の捜査で、ハディーサ事件は海兵隊員が戦闘規約に従って正しく行動していたことが明らかになり、ウーテリック曹長ならびに他の容疑者の審査過程で、ハディーサにおいて犯罪は起きていなかった。この事件の容疑は最初から最後まで捏造だったという結論が出ているのである。
しかしマーサ議員は下院のなかでも有力な政治家であり、現職の議員は裁判で証言する義務を免除されるという法律があるため、それを使って証言を避けるのではないかという見方もある。だが、もしもマーサ議員がその特権を使って証言を避ければ、かえって証言をした場合よりもマーサ議員のみならず、民主党にも悪い結果になるのではないかという意見もある。
民主党はブッシュ大統領を忌み嫌うばかりに、ブッシュに都合の悪いことならアメリカにとって悪い結果になるような行為でも積極的にやってきた。特にアメリカ軍隊への攻撃にはひどいものがある。アメリカ市民は戦争に反対している人たちでも反軍隊とは限らない。南部の民主党支持者は戦争自体には反対でも家族に軍人がいたり、今現在イラクやアフガニスタンに出動している人も少なくない。そうしたアメリカ社会でことあるごとにアメリカ軍隊を侮辱する民主党のやり方は一般のアメリカ市民からかなり反感を買っているのである。
そんな中で、自分も元海兵隊員という肩書きをことアルごとにひけらかしているジャック・マーサ議員は証拠もないのに無実の海兵隊員の名誉を汚し、その発言を法廷で釈明せよとの法廷命令を議員の特権を使って拒否するとなったなら、国民は民主党のことをどう考えるだろうか?
ジョン・ケリーは「勉強しないとイラクへ行く羽目になる」といってアメリカ軍人を馬鹿にする失言をしたばっかりに大統領立候補から降りなければならないという失態を起こした。一般のアメリカ人はアメリカ軍を馬鹿にする政治家を許さない。このことに関して他の民主党員がどう反応を示すかによっては、アメリカ市民はついに民主党の本性を見ることになるかもしれない。
少なくとも共和党の大統領候補諸君には今後の選挙運動で、どんどんこの件を話題にして、民主党はアメリカ軍の敵だと投票者に印象付けさせて欲しいものだ。


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