戦争は兵隊に任せろ! アメリカ兵に手かせ足かせの戦闘規制

今朝、ハワイの地方新聞Honolulu Advertiserを読んでいたら、ハワイ出身の陸軍兵が犯したとされるイラク市民殺人事件について、この兵士が意図的にイラク人を殺したと言う証拠はないとして、裁判をしない推薦がされたという記事が載っていた。この事件は逮捕して武装解除されたイラク市民を上官の命令で部下が銃殺したという容疑だったが、部下は殺すのが嫌でわざとはずして撃ったと証言していた。すでに捕らえて直接危険でない人間を殺すのは戦闘規制に反する行為ではあるが、果たしてこれが犯罪といえるのかどうかその時の状況によって判断は非常に難しい。正直いって、アフガニスタンやイラクの戦争では、少しでも怪しい状況があるとすぐに兵士を逮捕して取り調べると言う事件があまりにも多すぎる。兵士らは当たり前の戦闘行為をしているのに、いちいち自分らの行動が犯罪としてみなされるかどうか心配しながら戦争をしなければならないのだからたまらない。
たとえばこの状況を読者の皆さんはどう判断されるだろう。アフガニスタンの山奥にテロリストのアジトがあるので偵察に行って来いと命令を受けた海軍特別部隊シール4人が、偵察中に羊飼いの村人三人に出くわした。戦闘規制では非武装の非戦闘員を攻撃してはいけないということになっているが、彼らの顔つきから明らかにアメリカ人を憎んでいる様子。シールの4人はこの三人を殺すべきか開放すべきか悩んだ。開放すれば、中間達に自分らの任務を知られ待ち伏せされる可能性が多いにある。かといって、キリスト教徒としてまだあどけない顔の少年を含む一般市民を殺すのは気が引ける。第一タリバンかどうかもわからない市民をやたらに殺したりすれば、殺人犯として帰国してから裁判にかけられる可能性は大きい。シールたちはどうすればよかったのだろうか?
結論から言わせてもらうと、シールたちは殺すという意見が一人で、もう一人はどっちでもいい、他の二人が殺さずに開放するという意見で羊飼いたちは開放された。そしてその二時間後、シール4人は200人からのタリバン戦闘員たちに待ち伏せされたにもかかわらず敵側を100人近くも殺した。しかしいくら何でもたった4人で200人の敵にはかなわない。大激戦の末、味方側の三人が戦死、一人が瀕死の重傷を負って逃げた。この生き残った一人は、羊飼い達を解放すると決めたひとりだったが、あとになって「どんな戦略でも、偵察員が発見された場合には目撃者を殺すのが当たり前だ。それを戦闘規制(ROE)を恐れて三人を開放したことは私の生涯で一番の失態だった」と語っている。無論そのおかげで彼は自分の同胞三人を殺されてしまったのだから、その悔しさは計り知れない。
上記は2005年アフガニスタンで同胞3人をタリバンとの激戦で失い、救援に駆けつけたチームメンバーたちの乗ったヘリコプターをタリバンのロケット弾に撃ち落され全員死亡。ひとり生き残ったシール、マーカス・ラテレルの身に起きた実話だ。彼の体験談はLoan Survivorという本につづられている。
私は理不尽なROEがどれだけアフガニスタンにいる特別部隊やイラクの戦士たちの任務の妨げになっているか以前から書いてきたが、それが実際に十何人というアメリカ軍でもエリート中のエリートを殺す結果になったと知り、改めて怒りで血が煮えたぎる思いである。
実は先日、私はCBSテレビの60ミニッツという番組で、アフガニスタンにおけるNATO軍の空爆についての特集を観た。詳細はカカシの英語版のブログbiglizards.net/blogで数日前に書いたのだが、関連があるのでここでも紹介しておこう。
この番組では司会者のスコット・ペリーはアフガスタンではタリバンによって殺された一般市民の数と同じかそれ以上の数の市民がNATO軍の空爆の巻き添えになって殺されていると語った。いや、ペリーはさらにNATO軍(特にアメリカ軍)は敵側戦闘員が居る居ないの確認もせずにやたらに市民を攻撃しているとさえ言っているのである。
ペリーが現地取材をしたとするアフガニスタンからの映像では、明らかに爆撃をうけて破壊された村の一部を歩きながら、ペリーは女子供や老人を含む親子四代に渡る家族がアメリカ軍の空爆で殺され、ムジーブという男の子だけが生き残ったと、お涙頂戴風の臭い演技をしながら語った。確かにアメリカ軍が意味もなく一般市民の家を破壊して四世代の非戦闘員を殺したとしたらこれは問題だ。だがこういう話にはよくあることだが、本当はもっと複雑な背景がある。
実際破壊された家の家主で、生き残った少年の父親は地元タリバンのリーダーで、アメリカ軍がずっと捜し求めているお尋ねものである。空爆時には家にはいなかったが、家主がタリバンのリーダーということは部族社会のアフガニスタンでは家族も必然的にタリバンである。そんな家が建っている村は必然的にタリバンの村なのであり、村人はすべてタリバンだと解釈するのが妥当だ。しかも、アメリカ軍がこの村を空爆した理由はその直前に丘の上にあるアメリカ軍基地にロケット弾が数発打ち込まれ、激しい打ち合いの末、ライフル銃をもったタリバンがこの村へ逃げ込むのが目撃されたからなのである。ペリーはこの状況をこう語る。

時間は夜でした。アメリカ軍は地上で敵との接触はなかったにもかかわらず、モーター攻撃の後に空爆援助を呼ぶ決断をしました。アメリカ空軍の飛行機はこの近所にひとつ2000ポンドの重量のある二つの爆弾を落としました。(瓦礫の中を歩きながら)これが一トンの高性能爆発物が当たった泥つくりの家の跡です。爆弾は標的に当たりました。しかし煙が去った後、ライフルをもった男達の姿はありませんでした。いたのはムジーブの家族だけです。

敵と地上での接触がないもなにも、この村の付近からアメリカ基地はロケット弾を撃たれているのである。しかもライフル銃をもった男達がタリバンのリーダーが住んでいる村へ逃げ込んだのだ。アメリカ軍はこの状況をどう判断すべきだったとペリーは言うのだ?第一、破壊さえた家でライフルをもった男達が発見されなかったという情報をペリーは誰から受け取ったのだ?もしかしたら自分らはタリバンではないと言い張っている村でインタビューをしたタリバンの男達からか?
だいたいアフガニスタンの村でライフルを持っていない家など存在しない。だからといって彼らが皆テロリストだとは言わない。強盗や盗賊に襲われても警察など呼べない山奥の部族たちは自分らの手で自分らをまもらなければならない。ソ連軍が残していったカラシニコフ(AKライフル)がいくらでも有り余ってるアフガニスタンだ、一般人がライフルをもっていても不思議でもなんでもない。もしタリバンのリーダーの家でライフルが一丁も発見されなかったとしたら、それこそおかしいと思うべきだ。

このアフガニスタン人たちは、他の市民と同じようにアメリカが支援している政府を支持するかどうか迷っています。私たちは怒りは予想していましたが、これには驚きました。

ペリー:(村人の一人に)あなたはまさかソビエトの方がアメリカよりも親切だなどというのではないでしょうね?
村人:私たちは以前はロシア人をアメリカ人よりも嫌っていました。でもこういうことを多くみせつけられると、ロシア人のほうがアメリカ人よりよっぽど行儀がよかったと言えます。

タリバンがロシア人よりアメリカ人を嫌うのは当たり前だ。すくなくともタリバンはロシア人を追い出したが、アメリカ人はタリバンを追い詰めているのだから。
マーカスの本にも書かれているが、タリバンやアルカエダの奴らは西側のボケナスメディアをどう利用すればいいかちゃんと心得ている。イラクでアメリカ軍に取り押さえられたテロリストたちは、アメリカ兵に拷問されただのなんだのと騒ぎたて、アルジェジーラがそれを報道すれば、西側メディアはそれに飛びついてアメリカ軍やブッシュ大統領を攻め立てる。テロリストたちは自分らの苦情を聞き入れたアメリカ軍がアメリカ兵を処罰するのを腹を抱えて笑ってみていることだろう。「なんてこっけいな奴らなんだ、敵を殺してる味方の戦士を罰するなんて、間抜けすぎてみてらんねえや。」ってなもんである。
だからこのタリバンの奴らも取材に来たアメリカの記者団を丁重に扱い、何の罪もない善良な村人に扮してCBSの馬鹿記者の聞きたがる作り話をしているにすぎない。それも知らずにペリーのアホは村人が自分らはタリバンではない、ただの平和を愛する羊飼いだと言っているのを鵜呑みにし、村人がソビエトよりアメリカが嫌いだという証言に衝撃を受けたなどと、とぼけたことをいっているのだ。
私はこういうアメリカのボケナス記者どもに一度でいいからアメリカの部隊に従軍でもして実際に敵と面と向かってみろと言いたいね。殺さなければ殺されるかもしれない状況でとっさに自分らの目の前に居る人間が敵か味方か判断できるかどうか、自分で体験してみろ!それができないんなら黙ってろ!お前らのいい加減で無責任な報道がどれだけのアメリカ兵を殺す結果になるとおもってるんだ!
マーカスの体験談を読むに付け、私はこういう無知蒙昧なリポーターをぶん殴ってやりたい思いでいっぱいになった。


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少しづつ盛り返しつつあるアメリカ市民のイラク戦争支持

歴史的にみて、戦争を国民が支持するかしないかは、戦争に大義名分が成り立っているとか、自国の犠牲者が多いとかということで決まるのではない。国民が戦争を支持するかしないかは、自国が戦争に勝っているという印象を国民が持っているかどうかに左右される。
イラク戦争には、中東からアメリカに脅威をもたらすサダムフセイン独裁政権を倒し、イラクに民主主義をもたらすという大義名分があるにはあるが、当初80%からのアメリカ市民がこの戦争を支持した理由は、アメリカの圧倒的な武力をもってすればイラク政府など簡単に倒すことが出来る。湾岸戦争のときのようにすばやく害の少ない圧倒的勝利を得てアメリカ軍は名誉の帰還をするこが出来ると信じたからである。
確かにフセイン政権打倒は計算以上にうまくいった。フセインのイラク軍など張子の虎で、アメリカ軍にかかってはみるもひとたまりもなかった。だから2003年5月当時のブッシュ大統領の支持率は90%近かったのではないだろうか?
しかし、イラク復興がおもったよりはかばらないことや、当初の戦闘での戦死者はわずか500人程度だったのに、その後あっちでひとり、こっちでひとり、と路肩爆弾や自動車爆弾による犠牲者が増え始めるとアメリカ国民の戦争への支持は激減した。大義名分も変わっていないし、犠牲者の数もそれほど増えているわけではない。問題はアメリカ国民がアメリカは負けているという印象をもちはじめたことにある。
先日もアメリカの主流メディアは悪いニュースばかりに注目していいニュースを軽視する傾向があると書いた。地味なアメリカ兵及び諸外国の連合軍によるイラク復興活動などはほぼ完全無視され、自爆テロや路肩爆弾攻撃ばかりが報道された。これではアメリカ市民が気分がいいはずがない。
無論私は2003年後半から始まった反乱分子によるアメリカ軍及び連合軍への攻撃によって我々が打撃を得たことや、イラク内の治安が荒れたことを否定しているわけではない。イラク情勢は我々が当初考えていたほど安易なものではなかったことは事実である。だからアメリカ国民の支持が下がった理由を主流メディアのせいばかりにはしていられない。いくら主流メディアが悲観的だといっても、大本営放送がメディアを独占しているわけではないから、他からも情報は入ってくる。それが同じように良くないニュースなら、本当に戦況は思わしくないと判断せざる終えない。
だが逆に、戦況が本当によくなっていれば、いくら主流メディアが良いニュースを無視しようと過小評価しようと、戦争から帰還した兵士らや、現地にいる兵士や民間人や従軍記者らからの情報で、実際に戦況はよくなりつつあるという情報はすこしづつでも巷に広がるものなのである。そうなってくれば、主流メディアもいつまでも良いニュースを無視しつづけることはできなくなるのだ。
さて、前置きが長くなってしまったが、今日のこのAPのニュースも戦況が良くなっていることの証拠だと思う。内容を読まなくてもこの見出しUS, Iraqi Forces Detain Militia Fighters(米・イラク連合軍、民兵戦闘員を拘束)だけで主流メディアのイラクに対する姿勢が変わってきたことがわかる。

BAGHDAD (AP) – アメリカ・イラク軍は土曜日、ポーランド陸軍のヘリコプターに援助され、シーア民兵が勢力のあるバグダッド南部を襲撃、何十人という民兵を逮捕した。二人の民兵は殺された。イラク首相は地元の知事と会見をしたが、知事はこの攻撃を「犯罪者」を根絶やしにするものだと語った。

イラク警察によると夜明け前の手入れでイランの飼イ豚モクタダ・アルサドルのマフディ軍民兵30人が逮捕されたそうだ。このあたりはイギリス軍撤退後、ライバルのシーア民兵たちが石油の利権をめぐって縄張り争いを始めており、地元市民をずいぶんと苦しめているようだ。今回の手入れがうまくいったのも、そんな無法者と戦う決心をした地元シーア市民の協力があったからである。

住民はアンバー地域ではじまった、スンニ部族がアルカエダに立ち向かってアメリカ軍と一緒に地道にアルカエダを追い詰め始めた傾向をみならっている。

以前ならばアメリカ軍とテロリストの戦闘の末、テロリストが50人から殺され、アメリカ人に2人の戦死者が出るなどという場合でも、「アメリカ兵二人戦死!バグダッドで激戦」というような見出しで、あたかもアメリカ軍が激戦の末大敗したとでもいいたげな始まり方をしていたものだ。それが、イラク各地で地元市民がアルカエダにしろシーア民兵にしろ反乱分子にアメリカ軍と協力して立ち向かっているという話が報道されるようになったというのはすばらしい変化と言える。
このメディアの姿勢の変化が国民の世論を変えるまでにはまだまだ時間はかかる。だが、その兆候はもう少しながら見え始めている。ハリスポールという世論調査ではイラク戦争支持率はわずかではあるが増えているとある。以下ワシントンタイムス参照

イラク戦況はアメリカ軍にとって良くなっていると答えた人の数は3月の13%から8月の20%そして現在の25%と確実に上昇している。

アメリカ軍にとって悪くなっていると答えたひとも数も一月の55%から三月の51%そして現在の32%とかなり減少した。

この傾向が続けば、来年の選挙の時までにはアメリカ市民の意見は再びイラク戦争支持になっているかもしれない。そしてイラク戦争を成功させたとしてブッシュ大統領及び共和党への支持率も上がるかもしれない。なんにしてもアメリカ市民が真実を見極められるようになってきたというのは良いことである。


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イラク米兵犠牲者数激減は報道の価値なし?

イラクでの新作戦が始まって、半年近くたつが、今年9月のイラク米兵の戦死者数がここ最近で最小の数となったという話は以前にもした通りである。しかしこのニュースはアメリカの主流メディアはほとんど報道していない。
ニュースバスターが紹介しているCNNのハワード・カーツ司会のトークショーにおいても、このことが取り上げられた。

ハワード・カーツ司会: イラクからのニュースはここ数年死と破壊の連続で気の滅入るものばかりでした。しかし政権が今週イラク犠牲者の数について向上的な数字を発表するとメディアはほとんど注意を払いませんでした。。CBSの「 イブニングニュース」でもNBCの「ナイトリーニュース」 でもほんの数行、ニューヨークタイムスは10面に、ワシントンポストは14面、USA トゥデイでは16面、ロサンゼルスタイムスではほんの2-3行が第4面の下のほうに載っただけでした。

例外はABCのワールドニュースで、これでは司会者のチャールズ・ギブソンがトップニュースとして報道した。
これについてカーツは、ワシントンポストのロビン・ライト記者と、CNNのバーバラ・スター記者をスタジオに招いて、メディアがイラクからのいいニュースを報道しない傾向について質問した。

カーツ: ロビン・ライトさん、イラクでの犠牲者数減少についてもっとメディアは注目すべきなのではないですか?

ライト:いえ、そうともいえません。これはまだ傾向の始まりですし、いや、まだ傾向といえるかどうかも怪しいのです。それにどうやって数えたかということについてもかなり意見が割れています。イラクには色々な死があるのです。戦闘による死、宗派間争いによる死、犯罪による死などです。アメリカ側が数に入れていないものがかなりあるのです。たとえばイラク南部ではシーア対シーアの暴力が起きてますがこれは宗派間争いの数には入っていません。それにアメリカは南部ではあまり勢力がないのです。ですから数そのものはやっかいなのです。長い目でみて、オディアーノ将軍が今週ワシントンで言っていたのですが、逆行しない勢いを探しているということです。それはまだこの二ヶ月くらいではそこまで達していないのです。

米軍隊志願兵の数など、一年中目標を満たしていても、一ヶ月でも目標に満たない月があると、「米軍志願兵、目標に見たず!志願兵不足に四苦八苦する米軍」などと大々的な見出しで第一面で報道するくせに、イラクで犠牲者が二ヶ月続いて激減しているという数は「やっかいだ」「あやしい」と言って報道しないというわけか。こんなの理屈にあってるだろうか?ニュースバスターのノエル・シェパードも、株市場などでは傾向の最初から今後どうなると予測をたてるジャーナリストはいくらでもいるという。ところがことイラクとなるとジャーナリストは慎重になるというのはどうも納得がいかない。これについてもうひとりのゲスト、バーバラ・スターはこう説明する。

バーバラ・スター:それが問題なんですよ。私たちはイラクでアメリカ兵が殺されている数が減少の傾向にあるのかどうかわからない。これは継続した進歩とは言えません。確実な進歩への可能性としては非常に良い第一歩ですが。

「非常に良い第一歩」ならそう注釈をつけて報道すればいいではないか。良い傾向かどうかわからないから報道を控えるというのは、ジャーナリストが一般市民の判断能力を信用していない証拠だ。これが良い傾向かどうか市民の判断に任せればいいではないか。さすがにカーツもこの答えには偽善があると察知したらしく、もしニュースが逆にイラク市民の犠牲者が増えたとかいうものだったら、新聞の第一面を飾るのではないかという質問に対して、スターは、、

スター:もちろんそうでしょう。それならどう考えてもニュースですから。いいですか、ペンタゴンの記者ほど死者の数を報道をしたり、悲しむ家族や手足を失った兵士にインタビューするのを止めたいものはいないのです。でもこれは本当に長続きする進歩なのでしょうか?

ペンタゴンはこれまで5年間も進歩はあった、進歩派あったといい続けてきました。疑い深くて申し訳ないですが、私としてはたかが一ヶ月ちょっとの結果をみても手放しで喜べないのです。

死者が増えているという話はニュースになるが、減っているという話はニュースではない、ときたか。もうジャーナリストとして偏向のない報道をしようなどという気持ちはさらさらないと白状したようなものだ。


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マーサ米下院議員よ、海兵隊員侮辱を釈明せよ!

米下院議員のジョン・マーサ氏は法廷において、ハディーサ事件で議員がまだ調査も行われていなかった時点で米海兵隊員たちがイラク市民を虐殺したとメディアに発表したことについて、釈明しなければならない可能性が高まっている。
それというのも、ハディーサ事件の容疑者として逮捕され、最近になって証拠不十分で起訴取り消しになった海兵隊曹長Marine Sgt. Frank Wuterich氏がマーサ議員を名誉毀損で訴えたからである。
マーサ議員が当時どのような発言をしていたか、2006年の6月にカカシが書いたハディーサ事件:それぞれの思惑
を振り返ってみよう。
****米軍の捜査経過の詳細を研究したとして民主党の下院で反ブッシュのマーサ議員があちこちのテレビ局で海兵隊員が一般市民を虐殺した証拠があると発表した。下記はABCがおこなったマーサ議員のインタビューの記事を訳したもの。(翻訳:妹之山商店街さん)

マーサ議員:IEDが爆発したんです…毎日外に出る度にIEDが爆発するんです…ですから毎回プレッシャーが高まっていく訳です。この場合はIEDが爆発し、海兵隊員一人が死亡。そこにタクシーがやって来て、中には四、五人が乗っていました。武装していなかったのですが、この人達を射殺しました。その後、民家を襲撃して人々が殺害したんです。女性の一人は、海兵隊の人から話を聞いた所、子供をかばって命を助けてくれと懇願したにも関わらず射殺したということです。更に気になるのはイラクの人達はこのことを知っていたということなんです。家族に補償金を支払ったからです。それに加え、隠蔽工作が行われたんです。間違いありません。最初この人達はIEDで死亡したと言ったんです。翌日調査の為に要員が派遣されました。ところがそれについて何の報告も行われず、三月になってタイム誌がこれを伝える時誰も何が起こったのかを知らなかったのです…
質問:写真や画像証拠があるとのことですが、本当ですか
マーサ議員:その通りです。捜査を担当した人とイラク側の証拠を入手しました。何が起こったかについては、疑いようがないんです。問題は、誰が、何故、隠蔽工作をしたかということなんです。何故明らかになるのに半年も掛かったんでしょうか翌日調査を行い、ニ、三日後にはこの人達が殺害されたことが分かっていたんです。

まだ米軍による調査がすんでもいないのに、何が起きたかは間違いないとか、隠ぺいが行われたとか適当なことを良く言えたものだと思う。問題なのはマーサ議員があらゆるニュース番組にはしご出演してこのような発言をしていた時、マーサ議員はまだ軍当局から捜査結果の報告を受けていなかったということだ。マーサ議員はタイムスの記事を書いたイラク記者の報道をそのまま鵜呑みにして事実確認もせずに米海兵隊を有罪と決めつけ軍当局が隠ぺいしたと言い切っているのである。******
無論、その語の捜査で、ハディーサ事件は海兵隊員が戦闘規約に従って正しく行動していたことが明らかになり、ウーテリック曹長ならびに他の容疑者の審査過程で、ハディーサにおいて犯罪は起きていなかった。この事件の容疑は最初から最後まで捏造だったという結論が出ているのである。
しかしマーサ議員は下院のなかでも有力な政治家であり、現職の議員は裁判で証言する義務を免除されるという法律があるため、それを使って証言を避けるのではないかという見方もある。だが、もしもマーサ議員がその特権を使って証言を避ければ、かえって証言をした場合よりもマーサ議員のみならず、民主党にも悪い結果になるのではないかという意見もある。
民主党はブッシュ大統領を忌み嫌うばかりに、ブッシュに都合の悪いことならアメリカにとって悪い結果になるような行為でも積極的にやってきた。特にアメリカ軍隊への攻撃にはひどいものがある。アメリカ市民は戦争に反対している人たちでも反軍隊とは限らない。南部の民主党支持者は戦争自体には反対でも家族に軍人がいたり、今現在イラクやアフガニスタンに出動している人も少なくない。そうしたアメリカ社会でことあるごとにアメリカ軍隊を侮辱する民主党のやり方は一般のアメリカ市民からかなり反感を買っているのである。
そんな中で、自分も元海兵隊員という肩書きをことアルごとにひけらかしているジャック・マーサ議員は証拠もないのに無実の海兵隊員の名誉を汚し、その発言を法廷で釈明せよとの法廷命令を議員の特権を使って拒否するとなったなら、国民は民主党のことをどう考えるだろうか?
ジョン・ケリーは「勉強しないとイラクへ行く羽目になる」といってアメリカ軍人を馬鹿にする失言をしたばっかりに大統領立候補から降りなければならないという失態を起こした。一般のアメリカ人はアメリカ軍を馬鹿にする政治家を許さない。このことに関して他の民主党員がどう反応を示すかによっては、アメリカ市民はついに民主党の本性を見ることになるかもしれない。
少なくとも共和党の大統領候補諸君には今後の選挙運動で、どんどんこの件を話題にして、民主党はアメリカ軍の敵だと投票者に印象付けさせて欲しいものだ。


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イラク世論調査:大多数が増派はうまくいってないと返答

私がよく行く掲示板でイラクからの悪いニュースを専門に書いてるひとが、またまたこんな記事を紹介してくれた。これはイラクの世論調査でイラク人の大半が米軍の増派作戦は失敗していると感じているという内容である。
約70%のイラク人が増派が始まって以来治安は悪化したと答えた、として始まるこの記事は最近イラク人2000人を対象に、イギリスのBBC, アメリカのABCNews, そして日本のNHKが共同でスポンサーとなって行ったものだが、さらにこの調査では60%のイラク人がアメリカ軍への攻撃は正当だと答えたとしている。これはスンニ派では93%、シーア派でも50%がそう答えたと言う。
それでこの記事を紹介した人は、もしアメリカ軍や従軍記者が言うように、スンニ派の部族がアルカエダに嫌気がさして米軍と協力して戦っているなどということが真実だとしたら、このような世論調査の答えはおかしいではないかと問いかける。無論彼は反イラク戦争派なので、従軍記者たちは米軍からの検閲にあって、自由に記事が書けないと結論付けているのだが。
しかし反米君の疑問にも一理ある。もし90%ものイラクスンニ派が米軍への攻撃を正当だと感じているなら、何故米軍に協力などするのか?反対に、もし米軍や従軍記者が言うように多くのスンニ派部族が積極的に米軍に協力しているというのが本当なら、どうして90%ものスンニ派が米軍への攻撃を正当だなどと答えたりするのだろうか?
一口に世論調査などといっても中東で行われる調査は日本やアメリカのような先進国で行われる調査のようなものだと考えるのは大きな間違いである。独裁政権の下で長年生き延びてきた市民は政府や体制に対する不信感が強い。誰かに意見を聞かれても、その質問に答えることで自分の生活がどのように影響を受けるのかを先ず考えねばならない。このような社会では世論調査の質問に正直に答えなければならないという感覚はまったくない。
冷戦時代にソ連で一般市民にマイクを向けてアメリカの取材班が取材をおこなっていたところ、取材の記者とたあいない世間話に応じただけの商人が記者が立ち去った後にKGBらしき男から詰問されていた映像をみたことがある。
また、先日CNNヨーロッパの放送を見ていてアフガニスタンで取材をした女性がこんなことを言っていた。彼女はタリバン時代から何度もアフガニスタンに足を運びアフガニスタンの女性の生活についてリポートを続けているが、最近の訪問で一般市民にインタビューをしようとしたら、ある女性から「あんたの質問に答えて私に何の得になるというの?」と聞かれて言葉を失ったと言う。
他にも市民が質問者が自分らの生活を悪化させるなり向上させるなりの力のある人だと感じれば、質問者が聞きたいことを答えるということも大いにありうる。一度私は中華の惣菜店で「この料理には卵は使われているか?」と聞いたことがある。これは私が卵を避けていたからなのだが、最初中国人の店員は「卵、欲しい?入ってるいるよ」と調子よく答えた。ところが「それなら私はいらない」言うと「おー、入ってないあるよ。大丈夫。」と答えを変えたのである。この店員にしてみれば、料理に卵が入っているかどうかという事実よりもどう言えば客が品物を買ってくれるかという考えが先行していたのだ。
欧米のメディアがイラクで世論調査をするといっても、彼らが直接イラクへ行って人々に質問をするわけではない。アラブ語の話せるエージェンシーに調査を依頼するのだ。もしもこのエージェンシーが雇った質問者がスンニ派でテロリストと強いつながりがあると地元市民が知っているか、疑っているかした場合には、市民は何と答えるだろうか?シーア派にしたところで、地元の反米権力者と関係があるらしい人が質問をしたら、親米な答えなど正直に言うだろうか?
これについて、ミスター苺はこんなことをいっている。

イラクでの世論調査はあてにならない。イラク人や他のアラブ人たちが世論調査をどう理解しているのか我々にはわからないからだ。彼らは増派が失敗したと言えば地域にもっと多くの軍隊を送ってもらえると考えたかもしれない。もし増派は成功したと答えたらアメリカ軍はすぐに撤退してしまうのではないかと恐れたのかもしれない。

また我々には実際の質問がどういうものだったのか知らされていない。COINのような新作戦がうまくいっているかどうかは、客観的に確認できる事実で判断されるべきであり、人々の意見で一喜一憂すべきではない。

我々は自由社会に住み好き勝手なことを好きなときに言えるので、つい他の社会の人々も同じだと思い勝ちである。だが、実際は中東社会は他の社会とはまったく違うのである。それを我々の物差しで計ろうとするのは非常に危険である。


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報道されるほど悲観的でないイラク報告書の中身

本日一斉に各新聞の紙面を飾っているこのニュース。記事だけ読んでいるとイラク軍の能力はまだまだ一人前にはほど遠いという印象を受ける。下記は朝日新聞の記事より抜粋。

イラクの軍や警察を中心とする「治安部隊」(ISF)の練度や能力を調べていた米国の独立評価委員会(委員長・ジョーンズ元海兵隊総司令官)の報告書の概要が5日、明らかになった。CNNが6日の公表を前に報じたもので、ISFは今後1年から1年半たっても、米軍など外国の軍隊の助けを借りずに国防や治安維持などの任務を全うすることはできないとしている。警察を管轄する内務省は「機能不全と宗派間対立に陥っている」として、国家警察はいったん解散してゼロから出直した方が良いと提言をしている。

しかし実際の報告書は報道されているほど悲観的な内容なのだろうか。そうではないと主張するのはウィークリースタンダードで書いているフレッド・ケーガン(Fred Kagan)である。

報告書はリポーターが願うような内容でないことがよくある。 国家情報評価(the National Intelligence Estimate)にしろ政府監査基準(Government Accountability Office)の報告書にしろ、最初に漏えいされた報道は実際よりもずっと暗く描かれていた。特にNIEの報告書は実際の内容よりもずっと暗く報道された。今回のジョーンズ元海兵隊総司令官によるイラク治安部隊に関する報告書ではこの傾向はもっと強い。

むろん朝日新聞は単にアメリカのニューヨークタイムスやワシントンポストの記事を焼き直しして掲載しているに過ぎないので、自然とその報道の仕方は悲観的な内容となるわけだ。ではいったい実際にこの報告書の内容とはどんなんものなのだろうか。ケーガンの分析を元に重要な点を箇条書きにしてみよう。

  • 軍隊と警察からなるイラク治安部隊の上達はまちまちである。しかしイラク国内の警備を提供する能力と準備性の上達はさらに向上するものと期待される。
  • 戦闘援助や後方支援能力の欠如は深刻であるが、新イラク軍、特に陸軍は国内防衛の成功につながる基礎的なインフラを開発している明かな証拠をみることが出来る。
  • 一般的にイラク陸軍と特別部隊は対反乱分子および対テロリスト作戦に熟練しつつあり、その数も強度もましている。イラク軍独自で常により大きな責任を負うようになってきている。イラク特別部隊はイラク軍隊のなかでも最も優れた部署であり、個人としてもチームとしても技術を熟練している
  • イラク軍は十分なやる気と人材をもっており確実に基礎訓練能力を上達させている。また対反乱分子作戦に適切な装備もされている。イラク兵士が一部の種族意識をのぞけばイラク人として外敵と戦う意志が育ちつつある。陸軍は宗派間の影響が各位に及ばないよう努力しおり、これは多少の効果を見せている。陸軍の任務の効果力は増しているが、指揮統制、武器、空爆援助、兵站、諜報、運搬などの点でまだ米軍の援助に頼っている点が多い。非常な上達を遂げたとはいえ、イラク警備群が独り立ちできるまでにはまだ12か月から18か月はかかるであろう。しかしながら、委員会の判断ではその間に価値のある進歩を遂げられるものと信じる。
  • イラク警備軍による「掃蕩、保持、建設」作戦の起用は順調だが、まだ独自でこのような作戦を遂行させることはできていない。
  • イラク軍は2007年初期にはじまった対反乱分子作戦において、同盟軍の援軍として効果的な役割を果たした。イラク軍の信頼度は増しており、隊によっては同盟軍にとってなくてはならない存在となっている。全体的な上達度はばらついており、隊によってより優れているものもあれば、劣っているものもある。しかしながらイラク軍全体で自信度は高まっている。この先12か月から18か月の間にはじょじょにもっと重要な指揮がとれる役割を果たせるようになるだろう。

ジョーンズ将軍はイラク特別部隊の技能を非常に高く買っているようだ。特にアメリカ軍特有の下士官の位にあたる将校らの活躍は目立つとある。全体的にイラク軍に欠けているものは諜報や空爆援助、偵察といったものだが、これはイラク軍に空軍がない以上仕方ないといえる。
全体的にみて、イラク軍は2005年から2006年の合同作戦の頃に比べてものすごい上達を見せているということだ。
さて、陸軍の評価はかなり高いジョーンズ将軍だが、警察になってくるとこれはどうも問題らしい。連合軍暫定当局責任者のポール・ブレマー氏が、2003年当初イラク軍を解散した時は非常な批判を浴びたが、解散して一からはじめたイラク軍はいまや委員会も高く評価するほど質の高い効果的な警備組織となっているが、フセイン時代の人員をそのまま引き継いだ警察はシーア派民兵などがコネをつかって多く入り込み、いまだに問題の多い組織である。

  • 地元民を警察官にリクルートする方針は比較的うまくいっているようだ。対反乱分子作戦には地元とのつながりが非常に大切である。イラク警察の訓練は良くなっている。特にイラク人指導員と外国人の民間警察アドバイザーが協力している場合は良い。
  • 暴力はイラクでは日常的になっているが、スンニ居住区では暴力が減っているのに反してディヤラ、バラード、アマーラ地域の暴力は増えている。新作戦が始まって以来バグダッドにおける宗派間攻撃は減っており、日々の殺人も減っている。シーア民兵がしばらく身を潜めているせいもあるが、バグダッド内における警備の向上も見られる。
  • イラク警備軍の一番の弱点は個々のイラク軍や警備隊が独自に地元の治安を保てないことにある。イラク軍はかなりの上達を見せたとはいえ、まだまだ同盟軍の援助なくしては作戦を遂行できない。しかし同時にジョーンズ将軍の報告ではアメリカ軍の新作戦は確かな効果を見せているとある。このおかげでイラクの政治家たちにはちょっとした息を付く余裕ができた。
  • このまま連合軍が大事な援助や訓練を数年にわたってほどこせば、イラクの警備隊は十分にイラクを内外から守れる勢力になるだろう。しかし反対にその援助をしないままアメリカ軍が撤退すればイラク政府は必要な政治的な解決方法を見いだせなくなるだろう。

こうして見てみると、イラク軍の技術は非常な上達を見せており、警察は問題とはいえ地元レベルの勧誘や訓練は以前よりはずっと良くなっているという結論だ。ただ国レベルの中央警察はかなりひどいらしい。ジョーンズ将軍が解散して最初からやり直すべきだろうといっているのはこっちのほうだ。
つまりこの報告書の結論は、イラク軍隊が凄まじい上達を見せており、中でも特別部隊の活躍はすばらしい。地元警察も勧誘や訓練ではこれまでよりも良くなっている。ただ重要な空爆援助、諜報、兵站などの面で、まだまだ連合軍に頼らなければならない面が多く、あと一年から一年半はその援助を必要とするだろう、というものだ。
朝日新聞の最初の報道のような悲観的な内容では決してない報告書であった。


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人気テレビキャスターも同意。イラク新作戦の成功に焦る左翼

ニューヨーク代表、民主党のチャック・シューマー上院議員は本日、「イラクで暴力行為が減っているのは増派のおかげではなく、増派にも関わらず減っているのだ。」と金切り声をあげ、地元の部族がアルカエダなどのテロリストに立ち向かっているのは米軍が不能で役立たずだからだと断言した。
しかし、イラクを訪問もせずワシントンで自分勝手なことを繰り返しているシューマー議員の意見とは裏腹に、イラクを訪問中の人気女性ニュースキャスターであるCBSのケイティ・クーリックが「イラクは良くなっている」と報道したものだから、反戦派の左翼たちは大慌てである。
CBSといえば、かなり左よりのテレビネットワークで、先のニュースキャスターのダン・ラザーなどはブッシュを陥れたいがためにブッシュの兵役記録に関する偽書類を発表して大恥をかいた過去があるほど反ブッシュのテレビ局である。ラザーの後を継いで大手ネットワークのニュースキャスターとしては初女性キャスターとして抜てきされたケイティ・クーリックも、およそ保守派とはいえない。それで彼女のイラク訪問予定が発表された時も、保守派の間からは視聴率をあげるためのただのパフォーマンスに過ぎないとか、安全なところで兵士と記念撮影した後でイラクは全く良くなっていないと報道するに違いないなどと、行く前からさんざん叩かれていた。それだけに、彼女の「イラクは良くなっている」というリポートの衝撃は大きい。

本当に驚きました。東バグダッドへいった後、私はハイファ近くのアラウィ市場(いちば)へ連れていかれました。ここは今年の一月に血みどろの銃撃戦があった場所です。それなのにこの市場は大にぎわいなのです。たくさんの人出なのです。家族経営のお店や野菜の屋台などがたくさん出ているのです。

ですから私は普通の生活の徴候をみたのです。もちろん私が見たのは米軍がみせたいと思ったところだけなのだということは念頭に入れておく必要があります。しかしそれでもこの地域が良くなっていることは確かだと私は思います。

もともと戦争に賛成している議員や、元兵士の従軍記者などがどれほどイラクの状況は良くなっていると報告してみても、主流メディアが毎日のようにイラクでのテロ事件や泥沼状態やアメリカ兵の悪行などをデカデカと報道しているうちは一般アメリカ市民のイラク観を変えることは難かしい。であるから一般市民がイラク戦争を支持するためには、戦場において主流メディアですらも無視できないほどの成功が必要なのだと以前から言われていた。
そしてその時が遂に来たのだとカカシは確信する。
イラクを訪問した反戦派の民主党議員や調査団体や主流メディアのジャーナリストたちが、口を揃えてイラクは良くなっていると報告していることを、アメリカ軍は見せたいところだけを見せているだけで、これらの人々は米軍のやらせ劇にだまされているのだと左翼ブログのThink Progressは書いている。
確かに米軍が招待して米軍が案内をしている戦場であるから、危険な場所へなど視察団をつれていくはずはない。だが、以前に危険だった悪名高いハイファ通りが視察団を連れて行かれるほど安全になったという事実はいくらThink Progressでも否定できないはずだ。
さて、これに対して、イラクはそれほど良くなっていないという報告書を最近提出したのは議会期間のGAOである。それによるとイラク情勢は18項目のうちたったの3項目した達成していないとある。

ワシントン(CNN) 米議会の調査機関、会計検査院(GAO)は4日、イラク戦費法に盛り込まれた同国の目標達成基準について、独自の評価をまとめた報告書を発表した。18項目の基準のうち、「達成した」と評価されたのは3項目で、「部分的に達成」が4項目だった。

報告書によると、達成された項目は(1)少数派政党の権利保護(2)首都バグダッド近郊に合同治安拠点を設置(3)バグダッド治安計画を支援する委員会を設置——の3件。一方で、地方自治法の施行、復興資金への100億ドル割り当てといった項目は部分的に達成されたものの、宗派間抗争の沈静化、憲法制定、石油収入の分配、選挙実施などへ向けた主要課題では、目標が達成されていないとの厳しい評価が下された。
GAOのウォーカー院長は、上院外交委員会での証言で、「イラクでは全体として、主要な法案は成立せず、激しい暴力も続いている」と指摘。米軍の増派戦略の成果についても、「宗派間抗争の沈静化という目標が果たされているかどうかは不明。敵対勢力からの攻撃回数という観点では、減少の兆しがない」と述べた。ただ、ウォーカー氏は一方で、「多国籍軍による努力や、西部アンバル州などでの治安改善」を指摘し、今後の進展に希望を残している。

はっきりいってGAOには調査委員は存在しない。GAOの代表がイランを視察に出かけたという話は聞いたことがないし、いったい何を根拠にイラク情勢を判断しているのかその調査方法も明らかにされていない。このような報告は書かれている紙切れほどの価値もないと私は考える。
それにGAOが掲げている項目は非現実的な理想であり、GAOも認めている三項目がほかの項目に比べて非常に大切なものであるという認識が全くされていない。イラクでの勝利条件とは、イラクの治安が一応安定して、イラク軍が自分達で外国勢力のテロリストや宗派間争いから一般市民を守ることができる状態だったはず。イラクがテロリストの温床とならず、比較的安定した独立国家となれば、後の細い政府の問題はイラク人が解決していくことだ。アメリカがいちいちどうのこうの口出しすることではない。
アメリカ国内ですら民主対共和で政策はまっぷたつに割れているではないか、それをイラク政府の内部で全員一致の政策がとられるまでイラク状況は成功したことにならないなどという条件をつけたら、イラクは永久に「成功」したことにならない。このように考えれば、GAOの報告がどれほど馬鹿げているかが理解できるだろう。
だが、裏を返せば、そのような重箱の隅をつつくようなことをしなければ、イラクは失敗だといえなくなっている現状があるということだ。


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反戦派のパニック! 増える民主党のイラク米軍駐留支持

この間から始まったイラク戦争支持者による大型広告運動だが、パワーラインによるとどうやら全国ネットのNBC局とそのケーブルの子会社MSNBCは戦争支持広告を報道しない方針を明らかにしたようだ。反戦広告はいくらでも報道しているくせに、いつものことながらダブルスタンダードはひどいものだ。それにしても最近の主流メディアは自分らが中立だという振りすらしなくなってきた。
さて、これとは反対に米民主党と深いつながりのある過激派左翼市民団体ムーブオンは民主党のブライアン・ベアード下院議員に対する攻撃広告を開始した。ベアード議員は最初からイラク戦争には反対しており、最近のイラク戦争の増派作戦にも反対していた議員である。そういう人をどうしてムーブオンが攻撃するのかというと、その理由は先日イラク状況の視察旅行からかえってきた時にベアード議員が発表した声明にある。
先日紹介したミネソタの民主党上院議員のキース・エリソン氏もそうだが、ベアード議員もイラク新作戦はうまくいっており駐留はこのまま継続すべきであるという意見を発表したのである。実は、最近イラク視察旅行から帰ってきた政治家たちは党の共和/民主を問わず、皆口を揃えてイラクからの即撤退は好ましくないと語っている。もともと戦争に賛成な共和党議員にとってはこれは全く問題ない姿勢だが、ずっと戦争反対をいい続けてきた党にとってはこれらの民主党議員の『裏切り』は許せない行為である。
先日ベアード議員は地元の選挙区で市民相手の説明会を行ったが、ベアード議員は説明をするどころか二時間以上にわたって反戦派の市民から吊るしあげを食った。さらに過激派左翼の間からはベアード議員は辞職すべきだなどという意見さえあがっている。説明会に参加した一人の市民は「彼の信念なんかどうでもいい。議員は我々の意見を代表すべきだ」と断言した。ベアード議員自身は、いまでもイラク戦争は歴史的にまれに見る外交の失敗だと考えているが、アメリカ軍がイラクに実際にいるという事実と、新作戦が効果をあげているという事実を考えて、成功する可能性がある戦争を途中で放り出すべきではないとしている。党の方針だけに盲目的に従わず事実をもとにした自分の判断をはっきり発表したベアード議員は立派だと思う。
会場に集まった市民のなかでも目立ったのはイラク帰還兵で今は反戦活動家のジョン・ソルツ。彼は元陸軍大尉で2003年のイラクフリーダム作戦に参加している。彼はベアード議員はブッシュ政権がお膳立てしたやらせ劇にだまされていると主張。そのせいでベアード議員はブッシュ政権の隠れ蓑を提供していると批判。実はこのソルツなる人物は先に紹介した極左翼サイトのデイリーコス主催年次会で戦争支持の軍曹に大尉という位を持ち出して(軍曹よりも位が高い)ことを持ち出して意見を言わせなかった司会者その人である。
しかし、イラク戦争が良い方向に向かえば向かうほど、エリソンやベアードのような民主党議員が増えてくるだろう。そうなれば民主党の反戦の姿勢はまとまりがつかなくなる。イラクからは撤退すべきだと言っているヒラリー・クリントンですら今や軍事的勝利は可能だと認めざる終えなくなっている。戦争はうまくいっているが今すぐ撤退すべきだという理屈は全く説得力がない。
9月のペトラエウスの報告に備えて平和団体を装った共産主義看板団体のアンサーが反戦デモ行進を予定している。それに対抗しようと退役や現役の軍人たちが「鷹の集まり」という名前で対抗デモ行進を呼びかけている。3月に行われた反戦デモでは非常な寒さにも関わらず、戦争支持の鷹達が反対側の人数と対等できるほど多く参加した。今回は前回を上回る参加者を主催者は期待している。
ペトラエウスの報告まで二週間足らず。どういうことになるのだろうか、、、


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ブッシュ大統領が戦前日本とアルカエダを同一視したという誤解

この間のブッシュ大統領のミズーリ州における退役軍人相手の演説について、私はちょうど日本の戦後の発展についてブッシュ大統領が語っている部分を帰宅途中のラジオで聴いていたという話は先日した通り。今日になって坂さんのところでブッシュ大統領は戦前日本をアルカエダと同一視していると朝日新聞が報道したというエントリーを読んでたまげてしまった。生放送で聞いていた私はブッシュ大統領がそんなことをいったようには全く聞こえなかったからだ。
今回の演説の主題は歴史的に過去の戦争や戦後の復興をふりかえって、どれだけ専門家といわれた人々の意見が間違っていたかというものだ。それを太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争を振り返ってブッシュ大統領は証明しようとしているのだ。そして私はそれは成功したと思う。
しかし朝日新聞の批判には反論の余地はあると思うので、ブッシュ大統領が実際なんといったのか原文を読みながら考えてみたいと思う。
先ずは朝日新聞の記事から。

ブッシュ米大統領が22日に中西部ミズーリ州カンザスシティーで行った演説は、自らのイラク政策を正当化するため、日本の戦後民主主義の成功体験を絶賛、フル活用する内容だったが、半面で戦前の日本を国際テロ組織アルカイダになぞらえ、粗雑な歴史観を露呈した。米軍撤退論が勢いを増す中でブッシュ氏の苦境を示すものでもある。

冒頭は9.11テロかと思わせて、実は日本の真珠湾攻撃の話をする、という仕掛けだ。戦前の日本をアルカイダと同列に置き、米国の勝利があって初めて日本が民主化した、という構成をとっている。大正デモクラシーを経て普通選挙が実施されていた史実は完全に無視され、戦前の日本は民主主義ではなかった、という前提。「日本人自身も民主化するとは思っていなかった」とまで語った。…
テロとの戦いにかけるブッシュ氏だが、今回の演説は日本を含めた諸外国の歴史や文化への無理解をさらした。都合の悪い事実を捨象し、米国の「理想」と「善意」を内向きにアピールするものとなっている。

確かにブッシュ大統領は戦前の日本の行為とアルカエダの行為との共通点を指摘してはいるが、戦前日本がアルカエダのようなテロリスト団体であったなどとは一言もいっていない。朝日新聞がそのようにこの演説を受け取ったのであれば、これは完全なる誤解であり、ジャーナリストとしてその英語力と理解力の不足が批判されるべきである。また大正デモクラシーにしろ、日本の議会制度にしろ、当時の日本がどう考えていたにせよ、アメリカ人が考えるような民主主義ではなかったことは確かなのであり、その見解の相違をもってして『粗雑な歴史観を露呈した』などというのは馬鹿げた解釈である。この記事について坂さんはこのように感想を述べておられる。

戦前の日本を批判することが多い朝日だが、さすがにアルカイダと同列視されることには我慢がならなかったということだろう。が、逆に言えば、ブッシュ氏のわが国の歴史に対する認識が、それだけ粗雑で無知であるということだ。

坂さんは朝日新聞の記事をもとに感想を述べておられるのでこのような解釈になっても仕方ないのだが、朝日新聞が『さすがにアルカイダと同列師されることには我慢ならなかった』というのは朝日新聞を買いかぶりすぎだと思う。朝日新聞はブッシュ大統領が歴史について無知であるということを強調したいがために、いつもは批判している日本の軍事主義を擁護するという不思議な立場に立たされただけだ。そして朝日新聞はブッシュ批判が先行してこの演説における肝心な点を見逃しているのだ。
それではここで、原文から問題の部分を抜粋してみよう。問題点を指摘する理由で段落が前後することをご了承いただきたい。

我々を攻撃した敵は自由を忌み嫌っていた。そしてアメリカや西洋諸国が自国民に害を与えていたと信じ恨みを抱いていた。敵は自らの基準を地域全体に設立するために戦った。そして時間と共に自殺攻撃に及び多大なる殺りくによって、アメリカ人が疲れて戦いをあきらめるのをねらった。

もしこの話が聞き覚えのあるものだとしたら、確かにそうです。ただひとつ。私が今説明した敵はアルカエダでもなければ911攻撃でもなく、過激派回教朝を夢見るオサマビンラデンの帝国でもありません。私が説明したのは1940年代の日本帝国の戦争マシンであり、真珠湾での奇襲攻撃であり、その帝国主義を東アジアに広めようとした行為です。
(中略)
我々が戦った極東との戦いと今日我々が戦っているテロとの戦いには多くの違いがあります。しかしひとつ重要な類似点があります。それは核心にあるイデオロジーの葛藤です。日本の軍国主義や朝鮮やベトナムの共産主義は人類のあり方への無慈悲な考えに動かされていました。彼等はそのイデオロジーを他者に強要しようとし、それを防ごうとしたアメリカ人を殺しました。今日名前や場所は変わっても、根本的な葛藤の性質は変わりません。過去の敵がそうであったように、イラクやアフガニスタンや他の場所で戦争を仕掛けているテロリストたちは、自由と寛容と反対意見を破壊する厳しい目的をもって自分らの思想を広めようとしているのです。
…この敵は危険です、この敵は決然としています、しかしこの敵もまた打ち負かされるのです。(拍手)

ブッシュ大統領が比較しているのは日本帝国とアルカエダという組織の比較ではなく、アルカエダの行為と日本軍隊の行為の類似点である。そしてまた戦前に日本が手強い敵であったのと同じようにアルカエダも手強い敵なのだと強調しているのだ。
戦闘体験のある軍人に対して輝かしい勝利を得た戦争を例にとって、アメリカは当時も手強い敵と戦って勝利をえることが出来たのだから今回の戦争にも勝てるのだとするやり方にはそれなりに効果がある。ブッシュ大統領は目の前にいる退役軍人に敬意を示しすことで、アメリカ軍全体に対する尊敬の心を表現しているのである。日本人としては負け戦だった太平洋戦争を引き合いに出されるのは気に入らないかもしれないが、ブッシュ大統領が現在の戦争への比喩として過去の勝ち戦を持ち出したからといってブッシュ大統領が戦前日本とアルカエダを同一視しているという見方は乱暴すぎる。現にブッシュ大統領は極東の戦争と今の対テロ戦争には多くの違いがあることを指摘している。
ブッシュ大統領が強調したいことは戦前の日本がどれほどひどい国だったかということではない。それよりも戦前日本がアメリカにとってどれだけ手強い相手だったか、そしてそれだけ手強い敵を相手にしながらアメリカがどのように勝利を得ることができたのかということにある。つまり、『この敵は危険である。この敵は決然としている。しかしこの敵もまた打ち負かされるのである』という点が大切なのである。

最終的にアメリカ合衆国は第二次世界大戦に勝ちました。そしてアジアではもう二つの戦争で戦いました。この会場においでの多くの退役軍人のみなさんがそれらの作戦の帰還兵です。しかしみなさんのなかで最も楽観的な人たちですら、日本がアメリカにとって最も強く最も誠実な同盟国として生まれ変わるとは思いも寄らなかったことでしょう。また韓国が敵の侵略から立ち上がって世界でも指折りの経済国となることやアジアが貧困と失望から抜け出し自由市場を抱擁するようになるとは予測していなかったでしょう。

アジア発展の教訓は自由への願望は否定できないということです。いちど人々が少しでも自由を味わったなら、(人々は完全に)自由になるまであきらめないということです。 今日のダイナミックで希望に満ちたアジアは…アメリカの存在と辛抱強さなくしては不可能でした。本日この会場にお集りの帰還兵のみなさんなくしてはあり得なかったのです。みなさんのご奉仕に感謝もうしあげます。(拍手)

ブッシュの演説で大事なのはこの先だ。ブッシュ大統領は戦後日本の民主化と復興について、日本の天皇制や、神道や、女性に対する考え方の違いなどを理由にどれだけ多くの人々が日本人をばかにして、その才能や実行力を過小評価していたかを羅列した後、それぞれの考えがどれほど間違っていたかを指摘している。

日本の降伏後、多くの人が日本事態を民主主義に生まれ変わらせようなどという考えは甘いと考えました。今と同じように自由とは相容れない民族がいるのだと批評家は主張しました。

日本は文化的に民主主義とは共存できないと言いました。ハリー・トルーマンの下で勤めた前アメリカ日本大使のジョセフ・グルーは大統領に「日本で民主主義は絶対にうまくいかない」と断言しました。…
また、あるひとたちはアメリカは自分たちの考えを日本に押し付けていると批判しました。例えば日本女性に選挙権を与えることは「日本の政治的発展を遅らせるものだ」と言い切りました。

ここでブッシュ大統領は女性の選挙権を薦めるマッカーサー元帥が、日本女性は伝統的で男性に従順すぎるため夫と独立した政治的な考えなど持つことはないと、多くの専門家から批判された事実をその回顧録から紹介した。

今日、日本の防衛省大臣は女性です。しかも先月行われた参議院選挙では史上最高の女性議員が当支援しました。(拍手)
信じられないことですが、日本の国教のせいで民主主義は成功しないと主張した人がいました。 神道は熱狂すぎて、帝国の深く根付いているというのです。リチャード・ラッセル上慇懃は日本人の宗教を非難し、天皇を裁判にかけなければ「民主主義へのどのような努力も失敗する運命にある」と言いました。…
神道と民主主義が共存できないと主張した人々は間違っていました。幸運なことにアメリカにも日本にもそれが間違っていると分かっていた指導者がいたのです。神道を弾圧するのではなくアメリカ政府は日本人と一緒に日本における宗教の自由を設立したのです。天皇制を廃止するかわりに、アメリカ人と日本人は天皇が民主主義社会で占める適切な立場を考え出したのです。
その結果、すべての日本人が宗教の自由を獲得し、天皇は日本の民主主義の象徴として強く育ち日本文化の貴重な一部として受け入れられています。今日、日本は批評家や猜疑心や懐疑心んをもっていた人々に立ち向かい、宗教と伝統文化を保ちながら世界でも偉大なる自由社会となったのです。(拍手)

こうして読んでみるとブッシュ大統領は戦前の日本を理解していないどころか、専門家といわれた歴史家や政治家たちなどよりも、よっぽども日本を理解していることがわかる。
ブッシュ大統領はこの後、朝鮮戦争やベトナムを引き合いに出し、歴史上からみて世界に民主主義を広める考えは正しいこと、専門家の悲観的な考えは得てして間違っていること、イラク戦争を最後までやりとげ、イラクに民主主義をもたらすことの大切さを強調した。
朝日新聞がいうように、民主党や反戦派の間からはブッシュの歴史観は間違っているとする批評は出ている。しかし、ブッシュ大統領の言ったことを誤解してか故意にわい曲してかしらないが、ブッシュ大統領が戦前日本とアルカエダを同一視したなどというデマを流すのはやめてもらいたいものだ。それにしてもアメリカの主流メディアも記事を装って自分の偏向意見を述べるのことはよくあるが、朝日新聞に比べたらずいぶんと大人しいものだ。
関連エントリー:ブッシュ大統領の演説、イラク撤退はベトナムの二の舞いになると主張


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百聞は一見に如からず、、ん? イラクからのねつ造記事色々

去年のレバノンでの戦争の時、私はレバノンから流れてくる多くの「ニュース」がねつ造記事だったことをここでもいくつか紹介した。だが、ねつ造記事はレバノン戦争で終わったわけではなく、イラク戦争でも敵側によるプロパガンダ作戦は常に続いている。
レバノンの泣き女、イラクでもゲスト出演?
数日前からブラックファイブが紹介している「魔法の銃弾」写真がそのいい例。

BulletLady1    BulletLady2

自宅に打ち込まれたという銃弾を掲げるイラク女性二人、上が数日前にAFPに掲載された写真、下は数週間前のもの。この二人別人のはずなのになんか似てない?


上の写真は8月14日付けのAFPに掲載されたもので、バグダッドにあるサドルシティへの連合軍による攻撃の際に、連合軍から自宅に何発も撃ち込まれたとして、老女が銃弾の二つを拾ってカメラマンに見せている姿だとある。AFPのカメラマンの名前はWissam al-Okaili。ところが数週間前にもこのカメラマン、同じような写真を別の場所で別の出来事として紹介しているのが下の写真だ。
二人の女性が同一人物に見えるのは私だけではあるまい。なんだかこれではレバノンの神出鬼没の泣き女と同じではないか。(笑)しかし、この写真を見てこれが嘘記事であることは一目でわかる。撃った後の銃弾が弾の先と殻がついたままであるはずがないからだ。
これと同じように、やはりAFPに載った写真に下記がある。もう色々なブログで掲載されたからご存じの方もあるかもしれない。

Granade and a puppy

手りゅう弾を加える子犬


この写真のキャプションには「サドルシティの動物シェルターに投げ込まれシェルターにいたかわいい子犬や子猫を大量に殺害してビルを破壊した手りゅう弾をくわえる子犬」となっているが、素人の私の目にもこの写真がおかしいことはすぐにわかった。なんで使用済みの手りゅう弾にピンがはまっているのだ? しかし、それよりもなによりも、使用済みの手りゅう弾なら爆発して粉々になってるはずとミスター苺に指摘され、そりゃそうだと笑ってしまった。これらの写真を見て武器に対する知識などほぼ無いに等しいカカシですらおかしいと気付くのに、プロのジャーナリストがこんな偽写真にころっと騙されるというのはどういうことだ?
プロパガンダビデオ
これとは別に、イラクには反米プロパガンダを製作しているテレビ局があるという話は以前から聞いていたが、彼等はプロパガンダ映像を撮影してはユーテゥーブなどにアップロードして紹介しているようだ。私がスコット・ビーチャムが書いたブラッドリー戦車で犬をひき殺す趣味の兵士の話はでっちあげだったという話をしていたら、どっかのお節介がご丁寧にアメリカ兵がイラク人のペット犬を殺したというビデオを紹介してくれた。
抗議が殺到したのか今は制限付きの視聴となっているので、あえてリンクはつけないが、ビデオは数人の米兵が半壊した建物にはいっていくところから始まる。その動作からパトロールの最中らしいことは察知がつく。背景で犬がうるさく吠える音がするが、音声が悪いためその後のことがよくわからない。カメラが建物のなかにいた米兵から外で横たわっている犬へと移る。犬はまだ生きていて悲痛な声をあげているが、そこへ地元のイラク人らしい若い男が空に手をあおぎながら近寄ってくる。米兵らしい男が「あっちへいけ」と言っている声がする。イラク人はしばらく犬の前でしゃがみ込んでいるが、すこしすると立ち上がって嘆いているように立ち去っていく、、というものだ。
この映像のメッセージが冷酷な米兵にいペット犬を殺されて嘆くイラク人男性というものであることは明白だが、事実は本当にそうなのだろうか? まずこのビデオでは実際に米兵が犬を撃っている映像はない。犬はカメラの視覚外でイラク人によって殺され、それを近くにいたイラク人が確かめにいっただけだったのかもしれない。それでアメリカ兵は危ないからそばへよるなと警告していたのかもしれない。こういう数分のビデオでは前後の状況が分からないので実際に何がおきたのか正しく状況を把握するのは難かしい。
それに、実際にアメリカ兵がこの犬を射殺したことが事実であったとしても、それが単にアメリカ兵が遊びで犬を殺したと言うことにはならない。いやそうでない可能性の方が高いのだ。私は以前にイラク帰還兵から聞いたことがあるのだが、イラク人は犬を忌み嫌っているため、凶暴な野良犬が市街地をうろうろしていることが多いそうだ。自爆テロなどの被害者の遺体にこれらの野良犬が集ったりすることもしばしばあったようで、一口に犬といっても我々が想像するような愛らしいペットの犬とは質が違うのである。また米兵はパトロール中に犬が吠えかけて敵に自分らの位置を知られるのを防ぐため、うるさい犬を射殺することがあるという。だからこのビデオの場合も任務の邪魔になった野良犬を射殺しただけだったのかもしれない。何にしてもこのビデオだけ見ていても、これが明かに冷酷な米兵の蛮行だと結論付けることには無理がある。
プロパガンダフィルムというのはまあ、えてしてこういうものだ。同じ映像でも前後の状況を全く変えて放映すれば、見る側の受ける印象は180度かわってしまうのである。だからユートゥーブのような映像だけ見てイラク状況を正しく判断するのは非常に難かしいということがわかるはずだ。


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