本日(6/29/23)最高裁は大学入試の審査に人種を考慮するアファーマティブアクションは違憲であるという判決を下した。これは2014年に保守派活動家のエドワード・ブラムによって起こされた訴訟の判決だ。ブラムは2014年、Studens for Fair Admissions(公平な入試を支持する学生たちの意)という組織を創設。ハーバード大学とノースカロライナ大学(UNC)を相手取って、入試の際に人種を考慮にいれるのは違憲だとして訴えていた。これに関しては私も過去にエントリーを書いたことがある。(ハーバード大学入試審査に見る組織的な東洋人差別、訴訟で明らかになる – Scarecrow in the Strawberry Field (biglizards.net))ハーバード大学とノースカロライナ大学は、それぞれ全米最古の私立大学と公立大学である。

アファーマティブアクションは人口の割には学力の高い学生が極端に多い東洋人にとって非常に不公平なシステムである。それについて2018年に拙ブログでもこのように説明した。

(入学を)学力のみで審査した場合、東洋系学生の数が現在の18.7%から43.4%にまで増えてしまうという。レガシーと言われる推薦学生やスポーツ奨学生の枠を取っても、東洋系学生の割合は31.4%を占めてしまうことになる。この事実は2013年ハーバード内部のHarvard’s Office of Institutional Research (OIR)による調査結果によって同大学はすでに把握していたにも関わらず無視してきたのだ。

またデューク大学ピーター・アーチディアコーノ教授の調査によると、合格率25%の東洋系受験生が、その他のことが全く同一であった場合、白人なら35%にラテン系なら75%、そして黒人なら95%の確率で合格する計算になるという。同教授のリポートにはハーバードが「人格審査」において東洋系受験生の成績を低く審査することにより、いかにして学生の望ましい人種分布が起きるように操作していたかを如実に提示している。

ではAPの記事から今回の判決内容について読んでみよう。

ワシントン(AP通信) – 最高裁は木曜日、大学入試におけるアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)を否定し、人種を要因にすることはできないと宣言した。(略)

ジョン・ロバーツ最高裁長官は、大学があまりにも長い間、「個人のアイデンティティーの試金石は、挑戦やスキル、学んだことではなく、肌の色であるという誤った結論を下してきた。私たちの憲法の歴史は、そのような選択を容認していない」。(略)

ノースカロライナ州のケースは6対3、ハーバード大学のケースは6対2であった。エレナ・ケーガン判事がもう一人の反対者だった。

クレアランス・トーマス判事は自分がアファーマティブアクションの恩恵を受けたとしながら、ロバーツ判事と同意見を示している。もっともトーマス判事の頃のAAは単に入試の際に黒人を差別してはいけないという判決であり、黒人を特別扱いすべきという現在のAAとは全く別物であることを明記しておく。

アファーマティブアクションの当初の目的は、伝統的に差別されてきた黒人が大学入試で差別されないようにアウトリーチなどを行って黒人の大学進学を促進しようということで始まった。信じがたいことに、クレアランス・トーマス判事が若い頃は、黒人は黒人だというだけで有名大学に入学できないという事実があったのだ!

しかしもうそんな時代はとっくに過ぎてしまい、今や大学に行きたければ学力ある黒人はいくらでも入学が可能となった。にもかかわらずアファーマティブアクションはいつの間にかアウトリーチから一定数の人種枠を設けるクォータ制度へと変わってしまったのだ。

どの人種でも同じように学力があるというのであれば問題はない。志願者の人種配布がその土地の人種配布と同じであるというであれば成績順に取っていったとしても、学生の人種配分は世間のそれと変わらないだろう。しかし問題なのは人種によって学力にばらつきがあるということである。

学生の成績は家庭環境で大きく変わる。子供の勉学に熱心な家庭は必然的に子供の成績もよくなるが、子供のことなど全く無関心の過程では子供の成績は伸びない。黒人の場合、父親のいない母子家庭が70%という酷い数であり、母親自身も無学であるから子供の成績にも興味がない家庭が多い。その点東洋系の過程は伝統的に両親が揃っていて子供の勉学に非常に熱心である。だから大学入試にもその差が歴然と出てしまうのだ。

アファーマティブアクションの不公平さは1990年代から言われていることで、訴訟も何度か起きているが、その度ごとに人種のみが考慮に入れられるわけではない場合は違憲ではないとされてきた。しかし東洋人や白人の場合は人種のみで落とされるというのが普通の状態だった。以前にも書いたが、東洋人学生は入試の際になるべく自分が東洋人であることを隠すようにと、受験ガイドに書かれているくらいだ。

これによって左翼リベラルは発狂状態であるが、人種差別を失くすためという名目の人種差別というおかしな政策が違憲とされたのは喜ばしいことである。

関連エントリー:アメリカに存在する組織的差別とは何か?ヒント、黒人差別ではない! – Scarecrow in the Strawberry Field (biglizards.net)


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