私は何度か組織的差別とは何かという話をしてきたが、これは個人による差別ではなく、組織として一定の属性を持つ人々を差別することを指す。その定義でいえば、アメリカ社会で一番差別されている人種と言えば何と言っても東洋人である。

本日目にとまった記事、Asian-American student with 1590 SAT score rejected by 6 elite colleges, blames affirmative action (msn.com)「SATで1590点取ったアジア系アメリカ人、エリート大学6校の受験に落ちる、アファーマティブアクションが原因か」

SATというのは大学に行くための全国学力テストのこと。日本でいう共通テストだ。昔は1400点満点だったはずだが今は1600点満点になったらしい。この受験生はフロリダ在住のジョン・ウォング君18歳。彼の成績平均は4.65。Aが4点だから4.65ということは全科目オールAの上に更になにか別のことをやって加点されたということになる。もう高校生でこのレベルだったら、日本でいう偏差値72とかのレベルで、東大も楽勝ってところだろう。にもかかわらずジョン君は MIT, CalTech, Princeton, Harvard, Carnegie-Mellon そして U.C. Berkeleyすべてで落ちてしまった。そんなバカな。一体どんな点数取らなきゃ入れないんだ?

しかしジョン君は、もしかしてこういうことになるのではないかという警告はされていた。高校の進学指導の先生から東洋系アメリカ人は受験に不利だと言われていたのだ。調査によれば、ジョン君の成績だとこれらのエリート校に入れる確率は20%。しかしもし彼が黒人だったら95%の合格率だと言う。幸いにしてジョン君はジョージアテック大学に入ることができたので、一応満足しているという。

しかしアジア系の学生がエリート大学に入るのは非常に難しいというのはすでに何十年も前から言われていることだ。それというのもアジア系受験生は成績優秀な子が多いため、成績の良い順に入学させると学生の40~50%がアジア系で埋まってしまう。後は40%ぐらいが白人で残りの10%が黒人やラテン系といった構成になってしまう。大学側は学生の人種分布が人口分布を反映した者でなければならないと考え、それぞれの人種枠を作ってしまった。しかし人種によって文化が違うため人種枠で得をする人種と損をする人種が出来てしまった。そして損をするのは圧倒的に成績優秀な東洋系というわけだ。

現在にアメリカで東洋系の人口は僅か7.1%で、黒人の14.2%の1/2である。ラテン系となるとその差はもっと開く。しかし伝統的に東洋系の進学率は黒人やラテン系に比べて圧倒的に多い。いくらアファーマティブアクションで黒人やラテン系の志願者を募ってもその枠すら埋まらないというのが現状なのだ。だからこの人種枠がいかに東洋系や白人に対して不公平なシステムであるかがわかるというもの。

それで公平な大学入学システムを目指して、Students for Fair Admissionsという組織が出来た。この組織の目的は一つ、人種による入学審査をやめさせることだ。そしていままさに人種別入学審査の違憲性を巡って最高裁で審議が行われている。

この問題に関しては過去にもいくつか訴訟が起きている。そして2003年Grutter v. Bollinger裁判で入学審査に人種を考慮することは違憲ではないという裁断が下っている。

しかし20年後の今日、東洋系アメリカ人が大学に入るのはどんどん難しくなっている。プリンストンレビューという大学受験生に受験に関するアドバイスをしている会社によると、多くの大学は学生に東洋人が「多すぎる」ことに懸念を抱いているのだという。同社の発行した受験の手引きの本において、東洋系アメリカ人は明らかに不利であるため、受験の際に気を付けることとして、受験申し込み書に写真を張らないこと、人種に関する質問に答えないこと、受験に必要な作文のなかで東洋系文化とアメリカ文化などという二つの文化の話をしないといった注意事項を記載している。

以前にサンフランシスコ在住の邦人の方が言っていたが、就職の際にも、名前も苗字も東洋系だと不利になるため、ファーストネームは英語名に変えている人が多いそうだ。確かに東洋系の人は名前が英語の人が非常に多い。

昔は同じようなことがユダヤ系の学生でもあり、ユダヤ人移民は子供の名前をイギリス風の名前や新約聖書の中から選ぶことが多かったそうだ。


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