アップデート:4月24日現在。バドワイザーはアリッサ・ハイナーシャイドに続き、ダニエル・ブレイクも解任された。この人はアナハイザーブッシュのメインストリームマーケティングの担当者で、ハイナーシャイドがバドライトのマーケテイング担当だったことに比べ、親会社のマーケティング責任者であり、ずっと高い地位にある重役である。ここまでの人が解任されるということは、アナハイザーブッシュもこのボイコットにかなりの危機感を持っているという証拠である。

本日(4月23日)、バドライトのマーケティング担当副社長であるアリッサ・ハイナーシャイド(Alissa Heinerscheid)は無給休暇を取ると発表。事実上の解任となった。

詳しいことの経緯は、4月の10日にこのエントリーでも書いたが(顧客を理解できないバドライトビールのお目覚め主義、ボイコット始まる – Scarecrow in the Strawberry Field (biglizards.net)ビール市場アメリカ第一の売り上げを誇っていたおっさんビール、バドライトはティックトックの人気女装男ディラン・モルベイニーと提携したことで消費者の怒りを買い、全国的なボイコットにあっていた。今回のボイコットは人々の想像を絶する莫大な規模で行われ、バトライトの製造会社アナハイザーブッシュ社はここ二週間で60億ドルの損失を出したと言われている。

私はビール飲みではないので知らなかったのだが、バドライトはブルーカラーの中年男性たちに非常に人気があったらしく、これは保守やリベラルといった政治色は一切関係のない幅広い層に愛されていたようだ。その消費者を一瞬にして失ってしまった今回の宣伝は、近年におけるマーケティング上最悪の失態と言ってもいいだろう。

バドライトのボイコットが党を超えていると感じるのは、完全なる民主党統括の輪がカリフォルニアですら、その影響を感じるからだ。先日私は近所の大型スーパーに行ったところ、入り口に入ったところのど真ん中にバドライトの青いケースとバドワイザーの赤いケースが山積みになっており、大セールが行われていた。いつもはビール売り場のど真ん中を占めているのだが、その日だけは別売り。にもかかわらず、ビールを買っている客の姿はなく、私は興味があったのでしばらく眺めていたが、誰も一瞥もくれなかった。

また別の日、レジに並んでいると、中年のおっさんがビールを大量にカートに入れて並んでいた。ビール以外は一ダースの卵だけ。しかしビールは札幌ビールが2ケース、モデロが1ケース。これだけのビール飲みなら値段と質から言って普段はバドライトを飲んでそう。つい「バドはなしですか?」と聞きたくなってしまった。

そして本日、近所の小さなスーパーに行くと、ビールの棚はバドとほぼ同じ価格のモデロとブルームーンが棚一杯を仕切っており、辛うじてすこし輸入ビールがあるだけだった。バドは棚から降ろされたケースが二つあっただけだ。

この状況だけでは何とも言えないかもしれないが、実はアメリカ中のスーパーで同じことが起きている。またバーなどでもバドの売れ行きが全く伸びないため、在庫がなくなり次第、バドの発注は極端に減るだろう。

面白いのは共和党のドナルド・トランプ・ジュニア(トランプの息子)が自分のポッドキャストで、バドワイザーは共和党に多額の献金をしている数少ない保守的な会社だ、ボイコットはやめてくれと言っていた。しかし同じく保守のマット・ウォルシは、アナハイザーブッシュは保守派だからこそ、その裏切りは許してはならないのだという。例えばNIKEのように元々リベラルでほぼ100%の献金お民主党に送っているような会社に対して保守派がボイコットなどしてみてもまるで効き目はない。

だがバドワイザーのように広く保守派からも愛されている商品の場合は保守派にも力があるのだ。もちろんポリコレな企業など他にもいくらでもある。ミラーライトもプライド月間に献金するなどLGBT支持に熱心だ。しかし問題はそこではない。気に入らない企業をすべてボイコットするなどということは不可能だ。しかしどれか一つに焦点を当てて徹底的なボイコットを行えば我々の声は届く。つまりバドライトを見せしめにするのだ。そしてその効果はかなりの物だったと言える。

バドワイザーは慌てて伝統的なオールアメリカンの愛国心をそそるようなコマーシャルを放送し始めたが時すでに遅し。色々なサイトでそのパロディー動画がつくられるなどしておちょくられている。多くの人びとがバドライト社長自ら土下座して謝るまで許さないと言って居る。

まさかバド社が謝るとは思えないが、それでもポリコレを推進していた女副社長の退陣は大きい。これによってボイコットが収まるとは思えないが、先ずは一つ目の勝利である。


Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *