今日見つけたちょっと古い記事、From HER To HIM: The Downfall Of A “Lesbian” Dating App – Reduxx「彼女から彼へ、レズビアンデートアプリの崩壊」がおもしろかったのでご紹介しよう。これは2023年4月30日にREDUXXで掲載されたもの。

会員1.5百万人、55か国で使われているHERというレズビアン専門の出会い系アプリがある。多分世界で一番規模の大きいレズビアンアプリだろう。創設者のロビン・エクストン(Robyn Exton)は単にグラインダー(Grindr)の女性版というだけではないアプリをデザインしたかったと述べる。

しかしながらここ数年、HERはレズビアンの出会える場所というより、ジェンダー概念の研究の場と化してしまっている。

創設されたのは2015年。女性運営のレズビアン空間として始まったHERは2018年に少し趣向を変えて生まれ変わり、流行し始めたクィア性や包括性といった思想を取り入れ、社会正義の立場から女性のみのアプリに多様なカテゴリーを加えた。そしてHERは“woman”(女性)という言葉に傷つく人のために“womxn”という綴りを使うようにすらなった。

当時エクストンはインタビューでクィア界隈は素晴らしいと述べ、クィア概念は人々が「自分の自認に疑問を投げかけ挑戦するように考えさせるもの」と歓迎していた。しかし包括性という名のもとに始まったこの方針が後に山火事のように大きな問題を起こすことになった。

HERにはレズビアンを自認する男たちが殺到した。ところが女性とデートしたいレズビアン女性やバイセクシュアルの女性達が、これら自認女性の男たちをふるいにかける方法が提供されていなかった。すぐにHERは包括性の名のもとに女性だけを好むレズビアン女性達におおっぴらに敵意を見せるサイトと変貌してしまった。

男たちをブロックすることが出来ないため、女性達は自分達は生得的女性にしか興味がないことを自分のプロフィールに書き、写真に同性のみ希望の印を加える人たちが出て来た。ところがなんとこれらの女性達はアプリから追い出されてしまったのである。

ジェンというレズビアン女性は自分のプロフィールに「トランス女性お断り」と書いたことでHERアカウントを凍結されてしまったという。ジェンは2021年に女性パートナーとの出会いを求めてHERに参加した。ところがアプリには髭剃り跡のある男の写真が大量に掲載されており、女性だけとの出会いを求めていたジェンは自分のバイオに「女性として生まれ女性であることに誇りを持っている人だけ連絡してください。トランス女性やノンバイナリーの人は絶対にお断りします」と書いたところ、アカウントが凍結されてしまったという。

ジェンはHERのカスタマーサービスに凍結の理由を尋ねる手紙を書くと、すぐにデヴィンという係員から「ヘイトな言葉使い」をしたと責められた。そして「トランス女性は女性だ」と言われた。

ジェンは激怒した。「HERはレズビアンがレズビアンであること、異性と恋愛関係を結びたくないと思っていることで追い出したのです。」

こういう体験をしたのはジェンだけではない。

女性の人権活動家のDJ Lippyは、自分のHERのプロフィールの写真に辞書における女性の定義である「大人の人間の雌」というサインを持った写真をアップしたところ、アカウントを凍結されてしまった。

DJは、ビーガンレストランだと言うレストランで、すべての皿にサラミがはいっているようなものだと語る。

また別のレズビアン人権活動家のアジャは男性からのメッセージが頻繁に届くため、自分のプロフィールに「生物学的女性だけに興味がある」と書いた。彼女もDJと同じように「大人の人間の雌」と書かれたTシャツを着ている写真をアップしたところ、凍結されてしまったという。

学者でフェミニスト作家でもあるHolly Lawford-Smithも似たような体験をした。彼女もまた女性以外に興味がないとバイオに書いたところ凍結されてしまった。カスタマーサービスに連絡をすると、他のメンバーから彼女のバイオがトランスフォビックだと通報があったという。それでコミュニティーガイドライン、つまり使用規約に反するという理由で追い出されたわけだ。

そしてホリーの手紙に返事をしたサマンサによれば、自分がどんな人に興味があるかとか、レズビアンが男性と付き合いたくないとか、男性っぽい女性とは付き合いたくないとか書くことも規約に反すると説明した。

ホリーは「アプリは常に登録者にジェンダー概念を押し付けるようにデザインされている」と語る。性を選べない、選べるのはジェンダー自認だけ。代名詞を押し付けられ男子を振るい落とせない、常に男子を通りこさないといけない。「悲しいのは、女性が同性愛の女性と一緒になるためのはずのアプリが完全に男たちに侵略され男たちに迎合してしまっていることです。」

ソーシャルメディアでも女性だけを望むと表明したレズビアンたちがサイトから追い出された例がいくつも投稿されている。

レズビアン女性達からアプリは無理やりレズビアンと男性を結び付けようとしていると苦情が殺到しても、HER運営側は自分らの方針は正しいと主張した。

そして去年HERはトランスフォビックな態度は厳しく取り締まると発表。さらにターフ規制強化として男子が同性愛者を求める女子たちを通報しやすくした。.さらに運営側はトランスにアンケート調査をし何が一番のハードルになっているかと尋ねると、プロフィールに「トランス排除条件を付けている人」だという答えがダントツだった。

そしてなんとHERは2023年4月レズビアン可視化の日を祝って、トランス自認の男性と付き合いたくないレズビアン女性達を公式Xアカウントで大非難した。その内容というのが全く狂気的で、HERのソーシャルメディアマネージャーは会社の公式Xアカウントを使って特定の女性達に誹謗中傷を浴びせかけ幼児性虐待者による女性への嫌がらせを奨励したり、身元を晒すことを扇動するなどあまりにもひどい内容が続いたため、Xは一時的にHERアカウントを凍結した。

すぐにHERへの批判が殺到した。しかしHERは使用者がペドファイルが女性を自認して有名なフェミニストの名前を名乗り始めたことを批判したDJ Lippyへの個人攻撃を続けた。

このせいで多くのレズビアン女性たちがDJの味方についてHERを批判した。ところがHERのポストはどんどんとレズビアン差別そして性的な女性差別の侮辱で埋まるようになった。この内容からHERのアカウントは男性が書いていると多くの使用者たちは推測した。あまりにもプロフェッショナリズムにかける内容が続いたので、もしかしたらHERのアカウントはハッカーに乗っ取られたのではないかとさえ憶測されるようになった。

しかし度重なる規約違反の末Xを永久凍結されるとHERはTikTokを使ってXで凍結されたことなど気にしていない、誰も我々を罰することはできないとつづけた。そののち何故かHERのXアカウントは蘇った。

2023年4月26日、レズビアン可視化の日、HERの創設者ロビン・エクストンは自分のブログで彼女のゴールは「生まれた時に女子と割り当てられた女性だけがレズビアンであるといういう考えからレズビアンという言葉を取り戻すこと」だと書いた。そしてなんと最後に「本物のレズビアンなど存在しない」と結論付けた。

Reduxxの記者は、男性の方がマッチングアプリに金を使うので、女性だけのアプリにしておくより金儲けになるのではないだろうかと言う。ともかくHERは男性会員を追い出す気はないようだし、女子だけとの出会いを求めるレズビアンたちは辞めてもらって結構だとさえ言っている。

しかしそれでもまだHERを使っているレズビアンたちは居る。彼女たちは自分らはTERFではないが、女性とだけ付き合いたい場合はどうすればいいのかと質問したところ、なんとHERはアプリをつかいたいなら自分の性指向は公開するなと命令した。レズビアンのためのはずのアプリがレズビアンに向かってクローゼットに戻れと命令しているのだ!なんというさかさまな世界。

明らかにHERはすでにレズビアン専門のマッチングアプリではなくなった。多くのレズビアン女性たちはとっくに脱退してしまっている。残っているのは自称クィアだのノンバイナリーだの言ってる人たちだけで、多分その多くは男なのだろう。

Reduxxの記者は自分でレズビアン専門のマッチングアプリを始めようかなと書く。アプリの名前はHIM(彼の)としておけば男性よけになるかもしれないと。


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