先日もアメリカ各地の大学であからさまなユダヤ人差別が行われているという話をしたが、実は反ユダヤ思想はすでに公立学校では小学校レベルから組織的に生徒たちに教えられているという記事を読んで非常に驚いた。これはイスラエル・ハマス戦争が始まるずっと前から起きており、戦争によってさらにひどくなったようだ。記事の著者はフランチェスカ・ブロック。

ブロックによると小学校前の幼稚園生からイスラエルはアパルトヘイト社会でありユダヤ人は人類の敵だと教えられているという。ブロックは公立学校でどのように反ユダヤ思想が教えられているか色々な例をあげて紹介している。

By Francesca Block

去年、シリアナ・アボード(Siriana Abboud)というニューヨークにある幼稚園の教師は、人間の身体について生徒たちに教えると称して四つの形の違う鼻の絵を生徒達に見せた。二つは小さい鼻、一つは鍵鼻、もう一つはノーズリングのついている絵だった。

「どうして人の鼻は違うのでしょう?」と質問が書かれており、子供たちはそれぞれ自分の意見を描き込んだ。「祖先が理由だと思う」「どこからきかかによると思う」といった答えの横にアボードは「人種によるものです。絵からは鼻の形で人の人種がわかるのです」と書いた。

しかし同じ学校区のベテラン教師でユダヤ教の男性はこのポスターを見てショックを受けたとザ・フリープレスに投稿している。「これは明らかにユダヤ人の鼻が大きいというステレオタイプを示したもので、ナチスの漫画を思い出させる。私は背筋がぞっとした。明らかなユダヤ人差別だ。」

The poster Siriana Abboud put up in her pre-K class last year.

しかし20代の教師アボードは罰せられなかった。それどころか去年の12月、彼女は「幼児の重要な仕事に対する社会の期待を高める解放を鼓舞する教育者」としてその年の「ビッグアップル賞(最優秀教師)」に選ばれたという。

アボードは自らのインスタグラムアカウントのプロフィールにレバノンの旗を掲げ、アラブ中心の教育、パレスチナについて子供とどう語るか、脱植民地教育などと書いている。10月7日のハマスによるイスラエル奇襲攻撃にういて、アボードは9日に、「今でも壁を破壊している人々を支持する。盗まれた土地を取り戻すために戦っている同士と共闘を誓う」と書いていた。その前には脱植民地の教育は幼稚園児から始める必要があるとも書いていた。

フリープレスによれば、このような反ユダヤ教育を行っている公立学校は幼稚園や小学校を含め全国で30以上に及ぶと言う。アメリカの若者は反ユダヤ主義をティックトックだけで得ているのではなく、学校で教えられているのだ。カリフォルニアなど10年生(高校1年)の歴史の授業でイスラエルを「過度に違法なユダヤ人入植者」と表現しイスラエルがパレスチナ民族の浄化を行っているとおしえているとうのだ。

こうした授業は2021年にカリフォルニアで通った「エスニックスタディーズモデルカリキュラム(ESMC)」に基づいており、このカリキュラムでは、被抑圧者である黒人、ラテン系、アメリカ先住民、アジア系アメリカ人らがいかに白人抑圧者によって抑圧されているかが教えらている。ユダヤ教リベラル・バリュー研究所の教育・地域活動ディレクター(the director of education and community engagement for the Jewish Institute of Liberal Values)のブランディ・シュフティンスキ(Brandy Shufutinsky)はESMCは「カリフォルニアの学校で反ユダヤ主義を組織的にするトロイの木馬ですよ」と語る。

一方全国50州で百万人を超す中学生が中東の歴史についてブラウン大学制作のチョイスプログラムから学んでいる。ブラウン大学はハマスの首領たちを匿っているカタールから多額の寄付金を受け取っている大学である。ブラウン大学の教材には「パレスチナのシオニスト企業」「アパルトヘイト国家」「植民地主義」「軍事占領」などといったレッスンが含まれている。

ハーバードハリスの世論調査によれば、18歳から24歳の67%がユダヤ人は抑圧者でありそのように扱われるべきと答えている。これが25歳から34歳では44%、45歳から54歳では15%、55歳以上ではたったの9%だった。反ユダヤ主義思想は若くなるほどひどくなる。

百万人以上の生徒がいるニューヨークの公立学校ではCulturally Responsive-Sustaining Education Framework (CRSE)という名前で2018年からこのカリキュラムは始まった。いわゆる批判的人種理論の一貫だろう。CRSEではユダヤ人差別を特別に扱っているわけではないが、ユダヤ人は白人と同じで抑圧者カテゴリーに属すると教えられているとシュフテインスキは語る。

以前にもDEI(多様性・平等・包括性)の元ディレクターが語っていたが、この抑圧者対被抑圧者という理論によれば、少数民族であるユダヤ人が権威ある立場に多くいるのは、誰かを抑圧したからに違いないという理屈で成り立っている。トークショーホストでユダヤ教学者でもあるデニス・プレーガーもユダヤ人の罪は「成功してしまった少数民族」であることだと言っていた。被抑圧者は成功できないはずであるから、地位や名誉のあるユダヤ人は誰かを犠牲にしてそれらを得たのだということになり、さらにユダヤ人への憎悪を煽る仕組みになっている。

ニューヨークのクィーンズにあるヒルクレスト高校では、先月11月20日、イスラエル支持集会に参加したユダヤ系の教師の教員室前に数百人の生徒が集まり、教師を処刑しろとわめき散らし教師は数時間自分の教員室に閉じ込められてしまった。

同高校に務める別の教員は「こんなことは見たことがない、教員がユダヤ人なので社会は全くきにしない、彼女が黒人だったら暴動がおきてますよ。色々な人が首になってセンシティビティ訓練を受けさせられるでしょう。」と語った。

この教師の言う通り、ニューヨーク教育委員会の会長はこの教師は特にこれといった危険にさらされていなかったとし、これはネットで広まった誤解が原因だったと過小評価した。数日後ヒルクレスト高校は教員攻撃の首謀者を停学処分にした。その後「パレスチナ糞食らえ」という落書きが同高校の食堂に書いた15歳の生徒は悪質な嫌がらせをした罪で逮捕された。徒党を組んで教師の命を脅迫した生徒はただの停学で、ただの落書きした生徒が逮捕される。それが今のアメリカの公立学校だ。

11月9日、ニューヨークでは教師や保護者が一緒になってパレスチナ支持デモに参加させるために生徒たちの授業ボイコットを主催した。

私はこの学生たちのデモの写真や動画を観たが、パレスチナは世の中を綺麗にするといって、ユダヤの星をゴミ箱に捨ててるポスターを持ってる子たちも居た。これらのデモ行進の前に「活動の日キット」と称してデモのためにどんな準備をするかという11ページにもわたる小冊が配られ、「シオニストは要らない!」「川から海へ!」などのスローガンが書かれていた。

随分用意周到だが、一体これにかかったお金は誰が払っているのだ?まさかニューヨーク市民の税金が使われているのではないだろうな?

12月6日、カリフォルニアのオークランドの教員70人が学校のカリキュラムにない「パレスチナ101」という授業をし、そのなかで最初のインティファーダは「概ね非暴力的抵抗運動だった」と教えている。本当は1000人のパレスチナ人と100人以上のイスラエル人が死んだ闘いであるにもかかわらず。

このような状況では、公立学校に通うユダヤ系の生徒たちが悪質ないじめにあうのは当然である。とあるユダヤ人の母親は2年前当時中学生の息子が廊下でナチスの敬礼をされたという。そして13歳のバーミツヴァ儀式の日、クラスメートたちはスナップチャットを作成に息子に反ユダヤミームを大量に送り付けて来たと言う。

これがそのミーム。

こうした虐めは母親が気付くまで一か月以上も続いていた。母親は学校の校長に通報したが、仕返しが怖かったという。学校側にこうした虐めは良くないと教育して欲しいと要請したが学校側はなにもしなかったという。仕方なく母親は息子を別の学校に転校させた。

ドキュメンタリー映画製作者のアンドリュー・ゴールドバーグの11歳の息子もクラスメートから執拗な嫌がらせをうけ、何度も学校に苦情を述べたが納得のいく対応をしてもらえず、仕方なく私立のユダヤ系中学に転校させた。学校側に慰謝料として新しい中学の一年分の授業料を請求すると、学校側は金は払うがその代わり学校で何がおきたか誰にも言わないでほしいと交換条件をだした。しかもその手紙が届いたのはハマスがイスラエルを襲撃した翌日のことだった。なんという無神経さだとゴールドバーグは怒る。ゴールドバーグは無論これを拒否した。金で自分の沈黙は変えないとゴールドバーグは語った。.

記者のブロックは公立学校に通う20人以上のユダヤ人父母たちから10月7日以降、子供の安全が心配でならないという話を聞いたという。

1人の母親は泣き声で娘にユダヤの星ネックレスを隠すように言ったという。このネックレスは娘が夏にバーミツヴァのお祝いにイスラエルでもらったものだった。そして道でユダヤ人かどうか聞かれても答えるなと指導したという。

「私は誰かが1940年代に言ったようなことを2023年のニューヨークで言わなければならないなんて狂ってます。」

他の母親も全国一の公立学校と言われるタウンセンドハリス高校から息子二人を私立高校に転校させることを真剣に考えていると語った。去年長男のクラスメートが体育の授業中に「ホロコーストで死ね」と言ったという。次男はバドミントクラブのウエッブサイトでは記念撮影写真で他のメンバーの顔は写っているのに息子の顔だけはパレスチナの旗で隠されて公開されたという。普通ならコーチとかが注意するべきところだが、ユダヤ人いじめは学校は黙認するようだ。

自分の顔だけパレスチナ旗に隠された次男。

母親は学校に苦情を述べたが「偏見の可能性がある事件」かもしれないと教育委員会に報告するとだけ言われたという。ソーシャルメディアでは何を言っても罰せられないという雰囲気になっているとこの母親は語る。

また別の母親は子供二人が通う別々の公立学校のトイレに鍵十字の落書きが現れ、「パレスチナ解放」や「ハマス万歳」などがトイレの壁に書かれていたと言う。学校側はこの激しいユダヤ人差別にどう対応していいのか分からないようだと語る。

ユダヤ人差別を受けているのは生徒達だけではない。前にも述べた教員室に閉じ込められた教員以外にも色々な教師たちが反ユダヤの暴力を受けている。

公立学校のとある教員は10月7日のずっと以前からユダヤ人差別の扱いを生徒からも同僚の教師たちから受けていたと語る。特に2018年にthe Culturally Responsive-Sustaining Education Frameworkプログラムが始まったころからひどくなったと言う。

この道25年というベテラン教師のカレン・フェルドマンはこの平等プログラムが始まって以来教師たちが「白人」と「非白人」に分けられ職員室も別々になってしまったという。なんだこれは、まるで公民権前のアメリカみたいじゃないか、ただ今度は白人が差別される側になっただけ。

フェルドマンはユダヤ人なのでどちらにも属さない気がしたという。自分がユダヤ人でホロコースト生存者の孫だということは全く考慮に入れられていなかったと語る。この平等プログラムのセッションは以前は一か月に一度だったのが今や一週間に一度のわりで行われているという。

2018年からフェルドマンは幾度も反ユダヤ行為を見て来たという。男子トイレの壁に「Gews(綴り間違え)チンコ吸え」と書かれていたり、ユダヤ人生徒の前で他の生徒が「汚いユダ公をどう処理する?」「オーブンで焼いちまえ」と言っているのを聞いたという。

「ユダ公は嫌いだ、チンコ吸え!」

ある母は非常にショックをうけ子供を転校させてしまったという。

一度などはフェルドマンは10人くらいの生徒らに囲まれ「トランプ支持者」とののしられどつかれたり飴を投げつけられたりした。生徒達はユダヤ人はトランプ支持者だと思ったらしい。(全然違うが)

しかし学校側は特にこれといった対策はとらず、単に学校のカウンセラーが生徒達に事情を聴くと言った程度でおわってしまった。同僚の教師は生徒からスナップチャットで鍵十字の絵を送られた。彼はそれを通報すべきかどうかフェルドマンに聞いたという。「もちろん通報しなきゃだめよ、世界一嫌われているシンボルよ。首縄と同じよ!」と言ったという。

ニューヨーク教育委員会はイスラエル領事からハマス襲撃のビデオを鑑賞会の招待を受けたが拒否した。教育委員会は記者会見では立派なことをいうが、実際に差別されている生徒や教師らには何もしない。

以前にユダヤ人差別だと責められたイーロン・マスクがイスラエルに視察に行った後に「人は何を言うかではなく、何をするかで判断されるべきだ」と言っていたがまさにその通りだ。ニューヨークの教育委員会はその態度から反ユダヤ主義を止めるきがないことは明らかである。

いやそれどころか、2022年、会員300万人という最も大きな教師労働組合で、歴史や地理や現在のパレスチナ人の状況について教えることを支持するという決議案が通された。ガザの学校ではイスラエル憎悪の教育がされているが、アメリカでもすでに2018年くらいから反ユダヤ教育がされていてきたのだ。道理で大学があのようになるわけだ。

Francesca Block is a reporter for The Free Press. Follow her on Twitter (now X) @FrancescaABlock. For more on antisemitism in our schools, read Jackson Greenberg’s piece “The Unconscientious Objectors about how his progressive private education in Philadelphia left his peers morally confused.

参考記事:

My Son Faced Antisemitism. His School Tried to Buy Our Silence (newsweek.com)

How U.S. Public Schools Teach Antisemitism | The Free Press (thefp.com)


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