ハマスによるイスラエルへのテロ襲撃があって以来、欧米諸国でイスラム教移民らによる反ユダヤ人デモが盛んに起きているが、アメリカ国内でも特に大学キャンパスを中心にあからさまな反ユダヤ人活動が繰り広げられている。英語でやユダヤ人差別のことをAntcemetism(アンタイセメティズム)という。

先日この高まる反ユダヤ運動についてバイデン政権は心配しているかという質問がホワイトハウス報道官ケリー・ジェーン・ピエールに向けられた時の彼女の返答があまりにも頓珍漢だったためかなりの批判を浴びている。

「一つ二つ問題があります。(と言って持っていた紙を数枚めくりながら)いいですか、信頼性のある脅威はありません。常にこの信頼性があるかどうかが大事です。ですから危険があるのかどうかきちんと確認する必要があります。でもですね、ムスリムたちはずっと不均衡な憎しみのこもった攻撃に耐えてきています。(略)」

なんでユダヤ人への攻撃の話をしているのに、ムスリムへの攻撃へと話がすり替わるのだ?第一アメリカでムスリム差別など起きていない。これに関してはさすがに民主党内からも批判が上がった。フロリダの民主党下院議員ジェラッド・モスコビッチ(Rep. Jared Moskowitz (D-FL))は自身のTwitter(X)で、

何という軟弱な答えだ。それになんで本を見てるんだ?何か許可された答えがあるのか?単純な答えは「はい、反ユダヤ思想の高まりは心配しております」だ。もちろん我々はムスリムアメリカ人への憎悪は心配している。もっとちゃんとやれ」

これはピエール報道官も不味かったと思ったのか、後で質問を聞き間違えたと言い訳し、自分は何度も反ユダヤ思想を批判しているし、バイデン大統領も一生かけて反ユダヤ主義と闘って来たなどと釈明している。

読者諸氏もご存じと思うが、民主党にはモスコビッチ議員はじめユダヤ系の議員が多い。また民主党支持者の間にも非常に多くのユダヤ系有権者がいる。他の面では非常に左翼リベラルなユダヤ系も、ことイスラエルのこととなると必ずしも意見は一致しない。また歴史上常に差別を受けて来たユダヤ人からすると、このようなバイデン政権の態度には不安な気持ちになることだろう。

これとは対照的にフロリダ州のディサンティス知事はが大学でハマス支持の活動をしている学生グループは解散させるように大学側に圧力をかけている。(DeSantis administration moves to disband Pro-Palestinian student groups at colleges (msn.com

ディサンティス知事の教育省局長は少なくとも二つの学生グループをテロリズムを支持してるとして解散させる動きを見せている。パレスチナ支持の運動は言論の自由では守られていないという理屈だ。

FOXニュースが入手した書簡のコピーによると、フロリダ州教育長のレイ・ロドリゲス氏は大学当局に書簡を送り、パレスチナの正義のためのNational Studentsの2つの支部を「活動停止させなければならない」と述べたという。

ロドリゲス氏の書簡は、National Students for Justice in Palestineの行動は、合衆国憲法の下で保護されている言論の自由には当たらないということを暗に示している。ロドリゲス氏の書簡には、大学の指導者に対する警告が含まれており、州当局は「憲法修正第1条で保護された言論の枠を超え、テロリスト集団への有害な支援にまで踏み込んだキャンパス・デモを取り締まるため、あらゆる手段を駆使している」と述べている。

「これらの手段には、必要な雇用上の不利益処分や学校関係者の停職処分も含まれる」

ディサンティス知事は他でも、親ハマス運動をしている外国人の居住ビザや留学生の学生ビザを取り上げ、本人のお金で国へ送り返すべきであると何度も語っている。ハマスはアメリカにとっても敵であり、これらの人びとがアメリカ国内で大々的に抗議デモをするのは危険だ。本来ならばバイデン政権がこういうことを言わなければならないはずなのに、どうもバイデン政権の態度は煮え切らない。もし民主党がユダヤ系アメリカ人よりも反ユダヤ系移民たちの方に迎合しなければならないと思っているのだとしたら、アメリカは私が思っていたよりもっと危険な状況にあると言える。

よく反イスラエル運動は反ユダヤ主義ではないという人がいる。我々はユダヤ人が嫌いなのではなくシオニズムを批判しているのだと。だがシオニズムとは何かと言えば、それはユダヤ人がユダヤ国家を持つということだ。特定の民族だけが独立国を持ってはいけないというなら、それはまさにその民族への差別でしかない。だから反シオニズム=反ユダヤ民族なのだ。これは言い逃れのしようがない。

実は欧米ではユダヤ人差別は昔から普通にあった。だからこそドイツではナチスがユダヤ人を収容所送りにして奴隷労働として働かせることを一般のドイツ人が支持出来たのだ。しかしここで覚えておかなければならないのは、ナチスがユダヤ人差別を行う前までは、ドイツ国内でユダヤ人へ結構融和していた。持前の商売上手から経済的にも政治的にも成功しているユダヤ系ドイツ市民は結構いたのである。だがユダヤ人が嫌いだったヒットラーがドイツの経済問題の原因はユダヤ人にあるというプロパガンダを流しブラウンシャツ暴力団を使ってユダヤ人に暴力を使った嫌がらせを始めた。もともとユダヤ人に偏見を持っていたドイツ人や金持ちユダヤ人に嫉妬していたドイツ人たちは積極的にこのユダヤ人迫害に参加したのだ。

アメリカ国内でもユダヤ人差別は普通にあった。昔は商工会や紳士クラブやゴルフ場などでユダヤ人が会員になれないところもあった。ホテルでもユダヤ人が泊まれないところはいくらもあった。ヨーロッパから移住してきたユダヤ人たちは、この差別を避けるためにユダヤ系のファーストネームはやめて子供にイギリス風のアイゼックやアービンなどという名前を付け始めたが、そういう人が多くいすぎてかえってこれらの名前はユダヤ人の名前として知られるようになってしまったくらいだ。

ではどうやってユダヤ系のアメリカ人はアメリカ社会で受け入れられるようになったのか。それはユダヤ系は商売がうまく優秀な人が多いため、ユダヤ人の間でビジネスクラブなどを作るようになり、そっちでは誰も差別しなかったため、非ユダヤ人もどんどん参加するようになり、差別的紳士クラブはどんどんつぶれてしまったからだ。ユダヤ人は医者や弁護士といった専門職に就くことも多く、億万長者の実業家も増え、被差別者から権力者へと変わり。だんだんとアメリカ社会で尊敬される立場へと変わっていったのだ。MGMスタジオなどハリウッドなどほとんどユダヤ系で支配されるようになった。

しかしだからといってユダヤ系への差別意識が全く失くなったのかと言えばそんなことはない。アメリカのエリート層の間では未だにユダヤ人への差別意識が残っている。ヒラリー・クリントンがユダヤ人嫌いなのは有名。また、黒人層の間でもユダヤ人嫌いは割と普通にある。オバマ大統領の側近で今は日本のアメリカ大使であるラーマ・エマニュエルがユダヤ系であることから、結構オバマ支持の黒人たちは腹を立てていたものである。

黒人層がユダヤ系を嫌うのはお金の問題。昔ユダヤ系移民は貧困層でビジネスをやっていた。移民一世が最初から金持ち層と商売をできるはずはないので、最初は貧困層でアパート経営をしたり酒屋経営をしたりしていた。だがそのうちに商売上手のユダヤ人がアパートの管理人になったり、金貸しになったりして、貧困層の黒人らの反感を買うに至ったのだ。これと全く同じ構図が今は東洋人と黒人で再現されている。

そして近年最も問題になっているのは、イスラム圏からの移民が激増したことにある。イスラム教徒は創設者のモハメッドからしてユダヤ教徒を憎んでいるので、アメリカに来たからといってそれがなくなるわけではない。移民を受け入れる際には民族間のごたごたも輸入する羽目になるのだということを欧米諸国はもっと真剣に考えるべきだったのだが、時すでに遅しである。

しばらく前まではアメリカで「ナチ」と呼ばれるのは最高の侮辱だった。だからTRA/ANTIFAどもが反対派に対して「ファシスト!」「ナチ」と罵倒していたのである。ところが二週間前からナチスは称賛へと変わってしまった。あっという間に反ユダヤ主義は良いことになってしまったのだ。

昨日もニューヨークの大学で数名のユダヤ人学生がハマス支持の学生集団に追いかけられ、大学構内の図書館に逃げ込みバリケードをし、そのドアを反ユダヤ学生たちが叩いてユダヤ人学生たちを威嚇するという事件が起きたばかり。そのほかにもコーネル大学ではユダヤ人は死ねなどと言う落書きが沢山書かれたりしている。以前に誰かが鍵十字の落書きをした時は「黒人差別だ」と言って大騒ぎしたくせに、ユダヤ人差別は学校側もお咎めなしだ。

誰かの代名詞を間違えたというだけでヘイトスピーチだのなんだのと言っていた学校側も、ユダヤ人差別は「言論の自由」で片付けようとする。彼等のいう反差別なんて蓋を開ければこんなもんだ。ところでTwitter(X)で「すべての差別は許さない」と言っていたトランスジェンダー活動家の口から「ユダヤ人差別は許さない」と言う声が聞こえてこないのも、やはり彼等のいう反差別とは意見の違う人を黙らせる手段でしかなかったということの証明だ。


2 responses to アメリカ国内で高まるユダヤ人差別を批判しないバイデン政権、積極的に取り締まるディサンティス・フロリダ州知事

よもぎねこ6 months ago

 なんだか奇妙ですね。 だってハマスなど対イスラエルのテロ活動をしているテロ組織は元々イスラム原理主義組織で、911事件を起こしたアル・カイダやISと同じ理念で活動しており、アメリカもテロの標的です。
 アメリカだってテロの被害は随分被ったのに、イスラエルへのテロなら他人ごとと言うわけじゃないでしょう?
 911の時はテロリストの引き渡しを要求してアフガニスタンと言う国を攻撃したのに、それはもう綺麗に忘れちゃったんですかね?
 ここ暫く欧米ではイスラム原理主義者のテロが起きていないので、イスラエルへのテロが完全に他人事になってしまったんですかね?

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    苺畑カカシ6 months ago

    911テロの後、アメリカはアフガニスタンに圧倒的な武力で侵攻し、あっという間にアフガニスタンを制圧しました。その時にでたアフガニスタン民間人の犠牲なんか誰も何にも言ってませんでしたよね。そりゃそうでしょ3000人以上のアメリカ人が殺されたのだから。でもそれだったらイスラエルのような小さな国で1400人も虐殺されたらイスラエルが応戦するのは当然の話であり、それをアメリカに批判する権利なんか全くありません。

    バイデン政権がバカなのは、よもさんもおっしゃる通りイスラムテロリストにとってイスラエルもアメリカも同じだということを理解していないことです。アメリカ各地でこれだけハマス親派がいるのに、彼等がハマスのイスラエル攻撃に感化されてアメリカ国内でテロを起こす可能性は非常に大きいのに、それが全く解ってない。1月6日の議事堂乱入事件で何の危険性もない一般市民を何百人も捜査してるお金と時間があるなら、国内にいるイスラムテロリストの調査をちゃんとやって欲しいものです。

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