先日入院した友達のLが、やっと重病人扱いではなく軽病人というか、緊急事態は済み、後はリハビリで体力を回復するという段階になりトランジッション施設というものに移された。日本の病院はどうなっているのか分からないが、アメリカの場合、ICU(集中治療室)→アイソレーション(隔離病棟)→トランジッション(軽症状)となり、その後は退院か介護施設となる。もし治る見込みが全くなく余命短しという人はホスピスというところへいく。

Lは持病があり、ここを退院しても一人暮らしは不可能なので、多分介護施設かアシステドケアという介護士付きアパート入りとなる予定だ。

さて、昨日ミスター苺と私はLのお見舞いに行って来た。先々週あった時に比べてだいぶ顔色がよくなっており、話し方も力強くなったように思う。まだ自分で起き上がることは出来ないが、少しづつ元気を取り戻しているようだ。

そんな彼と彼のマンションの状態についてちょっと話をした。「どうしてあんなに洋服があるの」と聞くと、彼は実際には10着ぐらいの服を着まわしており、他の服は着ていないという。ただ、古くなった服を捨てずに貯めこんでしまったため、自然と服が増えてしまったのだという。「僕は捨てるということが苦手でね。」

服の多さは私も他人を批判できない。とはいっても私の服は自分で買ったものはほとんどなく、ほぼすべて実母が日本から送ってくれたものだ。今はもう母も年老いて昔のように買い物には出なくなったが、昔は母の買い物癖は凄いものだった。それで母は実家に入りきらなくなった古着はすべて私に送ってきたのである。母と私が同じサイズだったこともあり、私は何十年も母のおさがりを着て来たのだ。しかし母は毎年物凄い量の服を送ってきたので、私は年末に要らない服をまとめて大き目のゴミ袋に詰めて三袋くらい近所の寺院に寄付してきた。そうやって毎年処分していなかったら、今頃うちも母のお古で一杯になっていたことだろう。

Lは自分のコレクター癖は子供の頃からあったと語る。最初は野球のカードとかミニチュアの車とかだったが、そのうちに本やレコードやCDと興味が移り、映画も好きなのでVHSやDVDの数もどんどん増えて行ってしまったという。「一生かかっても観きれないほどの数になっても、止められなかったんだ。駄目なのはわかってたんだけど、集めたいという衝動を止められなかったんだ」という。

Lは未だ自分があのマンションに帰れる可能性があるように思っているが、私が「あの状態では危険だ。戻るなら、全部処分してからじゃないと」と言うとLは突然声を荒げて「駄目だ!全部は処分できない!」と言った。私は少し驚いたが、ここに至ってもLの貯め込み癖は直ってないんだなと悟った。

私はもっと早い時期にLを説得して部屋を片付けさせるべきだったのではないかと色々考えていたのだが、それは多分不可能だっただろうと改めて思う。貯め込み癖とは一種の精神病だ。だから他人がどれだけ理屈を言って説得しようと、本人が心の底から納得しなければ無理に片づけることなど出来ないのである。

彼は一人暮らしをすべきではないと私も彼の後見人となった女性も前々から言っていた。だが助けが必要だと思っていない人を他人が助けることは出来ないのである。

ともかくLのことはもう心配は要らないので、私とミスター苺はまだまだ終わっていない本の処分を再開した。私は捨てるのは忍びないので近所のGoodWillに寄付しているが、この間本を段ボール箱二箱分もっていったところ、段ボールを逆さにして大きな籠にどさっと投げ捨てるように入れるのを見て絶望した。私はカテゴリーごとに区分けして大事に箱に詰めて来たのに、なにもかも一緒くたに籠に投げ入れるなんて、第一あんなことをしたら本が傷むじゃないか。とても本好きの人のやることとは思えない。もうあそこには本を寄付すまいと思った。

とはいえ、そうなったらどこへ寄付していいものか。近所の図書館を当たってみようと思っている。


1 response to 本人も気づいていた異常な貯め込み癖

苺畑カカシ7 months ago

昨日ユーチューブで認知症の初期症状の話を観ていてハッとした。それは認知症患者は初期の段階で記憶力の衰えよりも判断力が鈍ると言う話である。しかしそれがちょっとしたことなので家族や周りの人は「最近お父さん頑固になって」とか「元々プライド高い人だったし」とかその人の性格のせいにしてしまい、認知症であることに気付かないことがあるという話だった。

それで友人のLについて思い当たることがあったのだ。Lは糖尿病とパーキンソンの両方を患っているため、突然血糖値が下がって貧血のようになったり、足腰がふらついていてしっかり歩けなかったりする。それで私も今は後見人になった女性も何度もLに介護士を雇うか、看護師を常備しているアパートに引っ越すかするべきだと薦めていた。しかしその度にLは「まあ、そのうちにな」と私たちを無視してきた。

数か月前に、Lは医者に行く予約の話をした時、私は「いつでも送ってあげるから一人で行っちゃだめよ」と言って置いた。「どうしても私が都合がつかない時は必ずタクシーでいくのよ。」とも言った。ところが彼は私に何も言わず一人でバス停まで歩いていこうとし、途中で転んで起き上がれなくなり、通りがかりの人が救急車を呼ぶという事態になってしまった。それを聞いた時、「なんで私に電話しなかったの?なんでタクシーを頼まなかったの?」と責めた。すると「僕の保険は交通費まで払ってくれないから」とか馬鹿なことを言っていた。お金がないわけじゃないのに、タクシー代をけちってどうする。その分救急病院に運ばれてちゃ世話がない。

こうした出来事について後見人と話していた時、彼女が「私も何度も言ったんだけど、なにせLさんは知っての通りの頑固者だから、、」と言ったのだ。

Lの部屋のぐちゃぐちゃぶり、変なところで意地を張っていた頑固ぶり、もしかしてLは認知症の初期で判断力が鈍っているのでは?彼はまだ60代半ばだが、若年性認知症なら50代で発病する人もいる。それにパーキンソン病は脳の病気だから、脳のダメージが認知にも影響を及ぼすことは十分に考えられる。

もしそうだとするなら、彼は今一番安全なところに居る。きちんと後見人を立て財産管理もしてもらってるし、遺書もきちんと書いたそうだ。これからはゆっくりと介護施設にはいって余生を送ってもらえれば私たちも安心だ。

ReplyEdit

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *