実は昨日から今日にかけてカリフォルニア南部は非常に珍しい気候に見舞われた。乾季の8月にメキシコからハリケーンがやってきたのだ。こんなことは100年来の出来事だそうで40年以上もカリフォルニアに住んでいる私も体験したことが無かった。幸運なことにカリフォルニアに届いたころには、ハリケーンヒラリーはトロピカルストームに格下げされており、私の住む地域では大雨は降ったが風もなくこれといった被害はなかった。他の砂漠地域や海岸沿いではかなりの浸水があったようだが、恐れていたよりもひどい嵐ではなかった。今はもう雨は止みお日様が照っている。そんな中、なんとマグネチュード5.1と言う地震まで起きたのだが、震源地が遠かったようでこれも私のところは大した揺れではなかった。今のところ地震による被害は報告されていない。

さて、カリフォルニアの話はこのくらいで、大火事で大打撃を受けたマウイの話をしよう。今日はマット・ワラス(MattWallace)さんというツイッタラーさんが自分のツイッタースレッドにあげていたマウイ現地の人からの手紙からご紹介しよう。これについては及川さんがユーチューブでも説明してくれているのでご参照のこと。

手紙の主はラハイナ市に9代も住んでいるという人で色々詳しく説明してくれている。先ずラハイナと言う場所はハワイといっても砂漠気候で乾いた土地だという。植民地時代に水源が他の州に回されてしまい今でも乾いたままだ。毎年のように強い風で電線が切れて山火事が起きるので、もうだいぶ前から電線を地下に埋めてほしいと地元の人びとは政府に訴えてきたが、常に予算がないと言われてそのままになっていた。案の定今回もハリケーンによる時速70マイルの風のせいで気が倒れ、火災が発生した。しかしいつも山だけで燃えている火災が今回は何故か住宅地にまで及んでしまった。これについて数々の問題点を著者は指摘している。

電気会社による停電が遅れた

すでに雨を伴わない強風が向かっていることは分かっていたのに、電機会社による停電が遅れたせいで電線が切れて火災が生じた。ハワイの電気会社HECO (the electric company) のシーリー・キモラ局長によれば、医療施設への電気が止ると困るからだということだったが、火事で病院が燃えてしまったら元も子もない。これはおかしな言い訳だと著者は言う。

警報が鳴らなかった

救急対策局のハーマン・アンダヤ局長によれば、警報を鳴らさなかったのは人々が津波と間違えて燃えている山の方は避難してしまうのを恐れたからだなどと言っていたが、責任をとってカジノ翌日に健康上の理由で辞任した。携帯サービスもダウンしており島民への連絡が取れないにもかかわらず、メガホン使ったパトカーによる警告すらもなかった。其れで多くの人は火事がすぐ傍まで迫っていることを知らずに家にいたのだ。初期に始まったボヤは消防署が100%鎮火したと発表していた。

避難道路が塞がれていた

これは幾人かの証言ですでにわかっていることだが、なぜかマウイ警察はラハイナへ入ってくる道路は許可していたにもかかわらず、町から出る道路を閉鎖してしまった。これは倒木や電柱が倒れているからという説明がされていた。しかしこのせいで町から出ようとする人々の車まで一本しかない道路が完全に渋滞で塞がってしまった。

市の水源が遮断されていた

水道局のカレオ・マニュエル(Kaleo Manuel)局長は消防隊による水使用を遅くまで許可しなかった。おかげで不必要に消防隊が危険にさらされた。住宅街でも水がなく、人々は自分の家を守ることが出来なかった。

外出禁止命令が出ていた

単に燃えている付近の交通を止めるだけでよかったのに、ラハイナ市全体を遮断して外出禁止令をだし軍隊が戒厳令を敷いていた。これが午後10時から朝6時まで続いたという。そしてこの間メディアからの報道は全くなかった。

当局は死者数について嘘をついている

さっきラハイナ市のMayor Bissen市長の記者会見を観たが、未だにどれだけの市民が亡くなったのか正確な数が発表されていない。特に学校が早く終わって親の居ない家で缶詰になって逃げ遅れた子供たちの数に関しては市長は全く分からないと肩をすくめている。ラハイナ市はそんなに大きな市ではない。地元の学校名簿でも調べれば、誰が生存しているか誰が行方不明かは簡単に解るはずだ。いまだに発表された死亡者数は111人とかだが、地元の人たちは火事当日に数百人の遺体を目撃しているという。噂では遺体は冷房のないコンテナに詰め込まれてどこかに隠されているのではないか、それでほとぼりが冷めたら発表するつもりなのではないかとのことだ。

FEMAが救援物資の配給を遅らせている

この話もレベルニュースの報道で少しは聴いていたが、連邦政府の救援物資供給をするFEMAがオアフなど他の島から送られてきた物資を公式なものではないとして没収してしまったという。埠頭が閉められ道が塞がれているため地元のボランティアが物資配給をすることを阻まれているのである。それでボランティアの人たちはラハイナから離れた浜辺に行って物資を下ろして陸路を使って配給するなどしているというのだ。

海軍は何をしている?

マウイといえばアメリカ最大の海軍基地があるパールハーバーと目と鼻の先だ。PHから海軍兵を調達するなど朝飯前のはずである。火の粉を逃れて海へ飛び込んだ人たちが何時間も海で浮かんでいた間にも、海軍からの援助は全くなく、6時間くらいしてからやっと湾岸警備隊のボートが来たと生存者は証言している。あの強風のなかいくら浅瀬でもいつまでも海に浮かんではいられなかったはず。体力のないお年寄りや子供たちはどうなったのだろうか?当初の報道では湾岸警備隊が全員救ったと言っていたが、そんなことわかるものか。どれだけの人が海に逃げたかわからないのに全員救えたかどうかなど確認のしようがないはずだ。

火災が起きたと言うだけでもひどいのに、なんという有様だろう。ハワイ住民がハワイ政府は腐敗していると言っていたが、だったらどうしてそういう人たちを選挙事に選んできたのだ?彼等に投票してきたハワイ州民にもかなりの責任はある。

追記:マウイ付近にあるのは海軍基地だけではなく、アメリカ最大の海兵隊基地、陸軍基地もある。下記、Military.comより

現在、ハワイはアメリカ太平洋軍司令部(USPACOM)の本部となっている。USPACOMは陸軍、海軍、海兵隊、空軍の各部隊で構成され、すべてハワイに本部を置いている。

沿岸警備隊もハワイ諸島に独自のサービスを提供しており、大きな存在感を示している。


3 responses to マウイ大火事、地元民の声

苺畑カカシ8 months ago

2005年のハリケーンカトリーナの時の連邦政府の対応について書いた過去エントリーを見つけたのでリンクを張っておく。
https://biglizards.net/strawberryblog/wp/2007/10/25/post_580/

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よもぎねこ8 months ago

 行政側に意図的悪意があったとは言えませんが、完全な混乱状態で、誰も事態の全容を把握しておらず混乱状態だったしか言いようがないですね。

 電力会社の停電が遅れた言い訳も奇妙です。 病院の電源が落ちると困るとのことですが、病院って皆自家発電設備を持っているのでは?
 2018年北海道は全道40時間のブラックアウトをして、信号も止まり、殆どの事業所が休業したのですが、病院は通常業務を続けました。
 病院など絶対停電になっては困る機関は、自家発電設備を持っているのでは?
 
 勿論、真夏の停電は、多くの人に大変な苦痛なので、簡単に決断できないのはわかりますが、奇妙な言い訳を見ていると、そもそも最初から山火事防止のために送電を止める事を考えていなかったのでは?

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    苺畑カカシ8 months ago

    マウイの状況は前々から山火事防止のために電線を地下に埋めるべきだという話があったのに、予算が足りないとか言って何もしてなかったと言う話です。

    ラハイナからの道があちこち塞がれていたのも、電柱が倒れていて危なかったからだと警察入ってますが、だからと言って逃げ道を全部塞いでしまったら元も子もありません。そういう横の連絡を取り合っていなかったというのも酷い話です。

    マウイ島は何かあった時にどうやって避難するのかという対策が全くされていなかったことが今回のことで顕著になりました。電力会社も水道会社も警察も市長も緊急事態への計画を全くしていなかったのです!

    これで津波でも来てたらどうなっていたことやら。

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