本日のウォールストリートジャーナルで「The Rise and Fall of the Chief Diversity Officer, Diversity executives hit the exits as company priorities shift; ‘everything is a battle’ by Te-Ping Chen & Lauren Weber」(チーフ・ダイバーシティ・オフィサーの栄枯盛衰, 企業の優先順位が変わるにつれ、ダイバーシティ担当役員は退社を余儀なくされる。)という記事が無料で読めたので紹介しよう。翻訳は基本DeepLで意味が通じるように直してるが、ツイッターで@tarunynorzoさんが一部訳してくれているのでそちらからも引用する。

下記の写真、左から 人事・多様性担当重役のメリンダ・スターバード(Melinda Starbird,)、マサチューセッツ州ジェネラル・ブリガムでCDOを務めたダニ・モンロー(Dani Monroe)、YelPでCDOを務めるミリアム・ウォーレン(Miriam Warren)。

この話は以前にもちょっとしたが、2年くらい前は大企業では多様性が重視され、次々と多様性に従事する重役が雇われたのだが、最近「多様性、公平性、包括性」(俗にいうDEI)関係の役員が次々に解雇されている。目立つところではネットフリックスやディズニーやワーナーブラザースやディスカバリーといったエンターテイメント大企業だ。こうした役員と同時に何千というDEI関係の職員も一緒に解雇されている。

ジョージ・フロイド事件後BLM暴動の真っ最中、なんとか企業は自分らが多様性に富んだ企業であるかをアピールするためにDEI専門家をこぞって雇ったのだが、雇った人員はほぼビジネス経験などない机上の論理しか勉強してない高学歴の女性達ばかり。エリート校でジェンダースタディーズだ批判的人種理論だなどをいくら勉強しても実践には役に立たない。

こうした役員は当初人事の管轄が主だったが、彼等のいう多様性とは人種や性別や性志向の多様性であり、才能や技術の多様性ではない。特に映画やテレビ番組の内容に関してDEIが関わるようになってからというもの作品の質はがた落ち。ディズニー映画など、ここ1~2年不入りに次ぐ不入りでその損害は何億ドル単位だと言われている。また、DEIによるマーケティングも散々たるもので、バドライトやターゲットがマーケティングの作戦を大幅に読み間違えて大変なことになっているのは読者諸氏もご存じの通り。

多くの企業がDEIはビジネスには良くないと判断したのか、最近はDEI関係の仕事がどんどん減っており、解雇される率も高くなり新採用も激減している。それでDEIの仕事は諦める人々も増えている。

「就職応募者が300人になったところで、数えるのをやめました」と語るステファニー・ルビンは、オンライン・アルコール・マーケットプレイスのDrizlyの多様性責任者としての職務を、Uberによる買収後の5月に解雇された。ルビンは、16回もの面接を受けたが採用されず、現在はDEIの仕事から離れようと考えているという。

フォーチュン100社の人事部門やDEI部門のエグゼクティブの採用などを手がけるハノルド・アソシエイツ・エグゼクティブ・サーチのジェイソン・ハノルド最高経営責任者(CEO)は、多様性責任者の採用数は過去1年間で75%減少していると言う。彼の30年にわたるリクルート活動の中で、最も需要が低い。同時に、より多くのエグゼクティブが多様性のある職務に就くことに臆病になっているという。

まあ、さもあらんだ。DEIという肩書だけでは何時解雇されるかわからない。もしDEI関係の仕事をするなら他の仕事も併用してできるような立場でなければ就職したくないと考える人も増えているようだ。コロナ禍で人種の多様性ばかりを気にして適材でない人材を多く昇進させた企業などは、結局仕事は旨く行かず企業も人員も失望するという状況が起きている。だからアファーマティブアクションは駄目なのだと何故わからんのだ?

DEIがうまくいかないのは職場内で妨害があるからだと語るのはメリンダ・スターバード。彼女はAT&T(通信会社)スターバックスやオンライン市場のオファーアップなどでDEI人事を担当した経験がある。

(職場の)リーダーは時として、多様性への取り組みと、連邦政府の請負業者に適用される雇用均等規則などの義務とを結びつけて考えることがある。このようなコンプライアンス要件は、経営陣の抵抗を生み、それが他の文化や方針の転換、例えば6月1日を会社の祝日として追加するようなことにまで波及する可能性がある、と彼女は言う。

「CEOの直属であっても、それは戦いであり、予算は少ない」と、11月に大規模なリストラでオファーアップを解雇されたスターバードは言う。

つまり企業内部でもこのDEI方針は重荷になってきているということだろう。企業全体が傾いているときに、全く生産性がないのに時間とお金ばかりかかる部署をいつまでも続けていけるほどビジネスは甘くないのだ。この記事内では結論付けていないが、DEI方針はビジネスにとって邪魔な存在であるだけでなく、弊害になるのだということに早く気付く必要がある。

エンターテイメントを例にとるならば、作品の内容が人種や性別や性志向の多様性ばかりを気にして、肝心の筋がハチャメチャになってる作品が多くなっている。

私が何度も書いているスタートレックシリーズなどがそのいい例で、乗組員の半分以上が黒人女性やLGBTQ+とか、もうそういう人達を出演させることだけが目的で筋はどうでもいいと言った感じのエピソードばかりだ。しかもこれだけ多くの女性が登場するにもかかわらず、全員ブス。もう見てらんない。

DEIの問題は市場を無視してDEIにばかりこだわることだ。本来企業の方針とは企業の生産性を高めるために起用されるべきなのであり、DEIの成績を上げることだけを目的にするのでは本末転倒である。


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