以前に私はリアクション(反応)系ユーチューバーが嫌いだと言う話をした。(反応ビデオに違和感があったのは私だけではなかった! – Scarecrow in the Strawberry Field (biglizards.net))リアクション系とは要するに、他人が作ったビデオの画面を映しながら「あ~、ふ~ん、なるほど~」とか言いながら自分の反応を見せるチャンネルを指す。これは他人の動画を全編編集も加えずにそのまま出す人と、一部だけ見せてコメントを付ける人と色々居るが、基本的に自分では何も作らずに人のふんどしで相撲を取るやり方が私は好きではないのだ。

それに他人の作ったものを無断借用するのは著作権侵害にあたるのではないかという議論もある。そうすると大抵これらのユーチューバーたちは「いいや、これはフェアユースだ!」と言い訳する。このフェアユースという言葉はユーチューブ界ではよく聞く言葉だが、いったいフェアユースって何だろうと読者諸氏も疑問に思われるだろう。ではここでフェアユース(fair use)とは何か。こちらのサイトを参考にしてご説明しよう。お断りしておくが、これはあくまでもアメリカの法律。著作権に関しては国によって法律が大幅に違うので日本であてはまるかどうかはまた別の話。強調はカカシ。

フェアユースでは、他の著作者が許可を得ることなく、原著作者の著作物を限定的に利用することができます。1986年著作権法第107条(合衆国法典第17編第107条)は、「批評、コメント、報道、教育(教室で使用するための複数コピーを含む)、学術、研究などの目的での著作物の公正利用は、著作権の侵害ではない」と述べています。(略)

批評と解説。例えば、図解やコメントの目的で批評の中で作品を引用したり抜粋したりすることは、通常フェアユースとなります。書評家が新聞のコラムで、本の批評の一環として限られた箇所を引用することは、通常許されるでしょう。

ここで大事なのは、フェアユースと見なされるためには引用した元の著作物を使って、全く新しい著作物を作るのでなければならない。つまり元の著作物にコメントを加えたり、そこから別な理論を展開したりして、元の作品では得られない何かを作り出す必要がある。だから他人の著作物をただそのまま放映したり紹介したりして、あたかも自分で作ったように公開する行為はフェアユースではない。それは単なる盗作である。この間ハーバード大学のクローディーン・ゲイ元学長が自分の論文に他人の書いた論文の一部をあたかも自分が書いたかのようにして提出した行為など、その典型である。(その後彼女は辞任に追い込まれた)

ここで人々がよくやる他人のXポストをエンベッドしたり一部添付したりするのは引用なのか転載なのかということについてちょっと考えてみたい。下記は日本の憲法における引用の定義。虎ノ門法律特許事務所のサイトから引用。

(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

引用の要件としてもう少し詳しく説明すると、

引用の要件

  1. 引用する著作物が公表された著作物であること
  2. 引用して利用すること
  3. 公正な慣行に合致するもの
  4. 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものであること

1番は公共の場のXで本人が公開しているのでいいとして、この2番の「引用して利用する」とはどういう意味なのかというと、「引用する側の著作物と引用される著作物が、混然一体となっているのではなく、両者が明瞭に区別されていること(①明瞭区別性)、引用する側の著作物が主、引用される著作物が従となる関係があること(②主従関係性)が認められれば、『引用して利用すること』の要件を充足する」となっている。

例えば他人がNoteやブログに書いた記事全文をそのまま添付して、最後の方で一言二言コメントするだけといった場合は明らかに他人の書いた記事が「主」となっており単なる引用とはいえない。しかし他人の数行の短いXポストを提示しそれに反論し、その何倍もの紙面を使って持論を展開させたものなら、明瞭区別性も主従関係性も満たしていると考えられる。

3番の「公正な慣行」とは抽象的な表現ではあるが、出所明示義務を果たしていないといった明らかな違反行為が無ければ大丈夫。リンクなどをつけ出所を明示していればこれは満たされる。

4番は「批評」という正当な範囲内としてあてはまる。

さてでは次に転載とはなにかについて調べてみた。虎ノ門特許法律事務所のサイトでは転載に関する記述があまりなかったので、こちらプライムタイムマガジンのサイトより引用する。

転載とは「自身の著作物の従たる範囲を超えて、他人の著作物を複製、掲載すること」を指す。この「従たる範囲を超え」るというは具体的にどういうことなのかというと、単純に言えば他人の著作物と自分の書いたことの割合でどちらが多いのかということだ。しかしその割合がどのくらいであれば引用であり、どのくらいを越せば転載になるのかという確たる線はない。それで量だけでなく内容も問題視される。

大切になってくるのはコンテンツの内容における「主従関係」です。自身の著作物が「主」で他人の著作物が「従」であれば「引用」となります。逆に、他者の著作物が主であって、その従にあたる要素として自分の著作物を用いているのであれば「転載」となりやすいでしょう。

要するに引用と転載の線は微妙。もし自分のやっていることが転載と見なされるかもしれないと思った場合は相手の承諾が必要であり、また出所の明示も必須である。出所については引用の場合も同じ。

他人のXポストをそのまま引用する場合は、引用の範囲に入るだろうと思われる場合でも一応承諾を得たほうが無難だろう。ただ、それが可能でない場合(例えばJKRみたいな著名人のXポストとか)はフェアユースとして使わせてもらうしかない。


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