伊藤詩織さんが元TBSワシントン支局長である山口敬之氏に強姦されたとして訴えた事件について、日本の秘められた恥と題して、イギリスの国営局BBCが一時間に渡るドキュメンタリーを放映した。全編は添付先で観ることが出来るが、ほぼ全面的に英語なのであしからず。後で字幕のあるものがあったら紹介する。

正直な話、このドキュメンタリーを観るにあたり、私にはかなりの偏見があった。そして番組をきちんと観た後もその偏見をぬぐうことはできない。もし詩織さんが彼女の言う通りに強姦の被害者であるのなら、私は彼女に全面的に同情するし、彼女の受けた仕打ちは本当にひどいと思う。だが、密室で起きた出来事ではどちらの言い分が正しいのか部外者の我々に判断することは出来ない。詩織さんが強姦対策が進んでいるとするアメリカにおいて、多くの大学では合意の上での性交渉が後に女生徒からの根拠のない訴えで学校を退学させられる男子生徒が多く出ている。こうして無実の罪で学校を追われた男子生徒が就職にも支障を来し、大変な被害をこおむったとして大学側を訴えるケースも後を絶たない。

私も一人の性犯罪サバイバーとして自然に詩織さんにはものすごく同情したくなる。だが、同時に保守派として、彼女が自分の被害を安部政権バッシングに利用している、もしくは政治的な下心のある人たちに利用されていることで、彼女の証言が100%真実であるのかどうか懸念せざる負えないのだ。そして特に腹が立つのは、BBCが自国の恥である何千人という被害者を出し、今も出している、イスラム移民白人少女強姦組織について何十年も長年沈黙を守って来たにも関わらず、日本だけが性犯罪を隠ぺいする社会かのように報道することに激しい憤りを感じるのだ。

この番組は完全に詩織さん側に立ってのドキュメンタリーになっており、反論を述べているのは国会議員の杉田水脈女史のみで、「酔っぱらって男の部屋についていくなど、すべては詩織さんに責任がある」と言っているかのような写し方になっていた。杉田女史によると、日本におけるセクハラ問題についてインタビューしたいというBBCの二時間にわたるインタビューには応じたが、それが詩織さんドキュメンタリーの中でほんの数分文脈を無視した切り貼りでつかわれるとは思っていなかったという。

この事件の真相はわからないのでなんとも言えないが、番組の中で言われていることでちょっと合点がいかない点を二つ挙げてみると、

  1. ホテルの監視カメラにひとりで立てない詩織さんを山口氏が壁に立てかけるようにしているビデオがあるというナレーションが入っているにも関わらず、そのビデオが番組中で使われていない。
  2. 番組では山口氏は事件直後に詩織さんからメールでビサに関する質問を受けたと証言していることに関して、詩織さんはそれが強姦のなかった証拠にはならないと言っているにも関わらず、そのやり取りがどういう内容だったかを紹介していない。(後に詩織さんが山口さんに送った、強姦を責めるメールのやりとりは番組の冒頭で詳細に紹介されているにも関わらずである。)

この二つの点は実際に性交渉に同意があったかないかを判断するうえで非常に大切なことだと思う。彼女がすすんで山口氏のホテルに行ったのであれば、性交渉は同意の上だったとする山口氏の言い分を裏付ける有力なてがかりとなるし、よしんばホテルには行ったが性交渉を同意したわけではないとしても、もし事件後に詩織さんが送ったメールが友好的なものであれば、やはり交渉は同意のうえだったと判断することも出来る。アメリカでも強姦で冤罪を受け有罪になった男性が、後日女性からもらったラブレターメールを提出することで冤罪が晴れた例もある。

それとこの番組の「日本は性犯罪を隠したがる」「日本のメディアは性犯罪について報道しない」ので詩織さんの件もメディアに無視されたという主張にもちょっと疑問を覚えるのだ。番組のなかで日本のテレビ映像がいくつか紹介されているが、詩織さんの記者会見の模様や、それに関するいくつかのニュースはすべて主流メディアのテレビニュースのものだった。この番組ではなかったが、この他にも私は普通のラジオ番組で詩織さんをゲストに招いた詩織さん側に同情的な番組を一部聴いたこともある。日本の主流メディアは詩織さんの件を無視したどころか圧倒的に詩織さんに同情的な立場で報道していたことが、この番組を観るだけでも明らかだ。これに対して、詩織さんに対して批判的な報道をしたとして紹介されたのは、ユーチューブで個人的な配信をしている聞いたこともない保守系ユーチューバーや、ネット放映の右翼保守番組のみ。山口氏は保守派のネット番組でしかインタビューに受けていないというが、それはいかに主流メディアが山口氏に非同情的であるかを示すものだ。同情的なインタビューなら彼も承諾していただろうから。

この番組は日本で性産業が盛んなことや、どこもかしこも萌えといわれる顔は子供で体は大人の嫌らしいアニメ風映像があふれかえっており、女性は常に性の対象になっているが、女性は性被害について声をあげることが出来ない社会でもあるというイメージを全面的に押し出している。番組後半で詩織さんが大学生相手に電車で痴漢にあっても女子高生は声も上げられないとか痴漢を目前で目撃した男子生徒も声をあげられなかったなどという話を聞いて、これが本当なら確かにひどいと思ったが、女性専用電車が設置されたり、痴漢冤罪で逮捕される男性が多いことなどから考えて、日本の女性たちがそこまでか弱いとはどうも信じられない。私の頃でも勇敢に声をあげる人は結構いたからねえ。(私も含めて)

町中に卑猥な映像があふれているという点では日本だけでなく欧州でも普通にある。昔フィンランドに留学していた友達から聞いたが、家族連れが歩くショッピングモールのビルの外壁いっぱいに全裸女性が描かれていたなど普通だったと言っていた。またフランスでも街中の売店で大股開きのエロ本が普通に売られているといって写真をアップした人もいた(ツイッターでは局部は隠してあった)。つまり、卑猥な映像が町にあふれかえっているのは何も日本だけではないということだ。それに卑猥な映像があふれていることと女性への性犯罪が多いこととは直接関係はない。そういう映像を厳しく規制しているイスラム圏では女性への強姦など日常茶飯事であることからもうかがわれる。

詩織さんが事件後に受けた警察での事情聴取の無神経さや、日本の性犯罪法が110年も全く改正されなかったことや、強姦被害相談施設が全国に数えるほどしかないことや、警察に届けなければレイプキットのある病院を紹介してもらえないとか、日本には性犯罪被害者への対策が不十分であるということは事実である。もし、詩織さんが日本のそうした体制を改善したいと思って勇気をもって自分の体験を語ろうというのであれば、それは賞賛されるべき行動である。だがもし、自分の体験を相手の男性に復讐するとか、左翼政治のために利用しよというのであれば、これはとても感心できる行為ではない。

そのことについてはもっと書きたいことがあるので回を改めて書こう。

 


4 responses to BBCドキュメンタリー「日本の秘められた恥」の疑問点

よもぎねこ2 years ago

 ワタシはこのビデオみていないのですが、山口氏が検察審査会で不起訴相当と判断されている事には触れていないのでしょうか?

 日本では警察や検察で不起訴となった事件でも、被害者側や一般市民
に不服があれば検察審査会に審査を申請できます。

 この検察審査会は弁護士などからなる審査員20人余で証拠の再審査をするので、権力側から圧力等を掛けるのは不可能です。 だから日本の左翼もこの件について山口氏を強姦魔扱いするのは諦めたのです。 検察でも検察審査会でも不起訴となった人を強姦魔扱いしてしまうと、山口氏から名誉棄損で告訴された場合に、敗訴確定ですから。

 因みに検察審査会で不起訴となった理由は、性交渉をした日の翌朝、伊藤詩織氏から山口氏へ「夕べはお疲れ様。」で始まる極めて好意的なメールをしている事、ホテルの防犯カメラには山口氏が無理やり伊藤氏を連れ込む様子は写っていない事、伊藤氏が言うデイトドラッグは検出されなかった。
 などです。

 山口氏は彼女からのメールを雑誌に発表しています。 ワタシも読んで笑いました。
 これが強姦犯に出すメールだろうか?

 どう見ても彼女が山口と性交渉をすることと引き換えに、就職の斡旋を依頼しとしか思えないのです。 この就職がダメになった事が、彼女が山口氏を強姦魔扱いした原因のようですが。

  いずれにせよ司法で完全に無罪の判断が出ている人を、自称被害者の証言だけで強姦魔扱いって、人権蹂躙その物でしょう?

 欧米メディアの人権感覚を疑います。

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苺畑カカシ2 years ago

よもぎねこさん、コメントありがとうございます。

番組中でも山口氏が不起訴になったこと、詩織さんの異議申し立てが却下されたことなどは説明されています。今、詩織さんは今度は民事で山口氏を訴えているということも紹介されています。一応BBCは山口氏が罪を全面的に否定していると認めていますが、そういう人の顔写真と実名で彼を強姦魔扱いしています。

詩織さんは自分の体験について、かなり細かく説明していて時々泣き崩れたりしており、これだけ観ていたら確かにそういうことがあったのかなと思ってしまいますね。それに対する水田議員のにこにこ顔は、かえって冷酷な女性像を映し出してます。無論意図的でしょうけど。

彼女が警察に訴え出たのは事件があったとされる四日後だと番組では言っています。強姦被害者がすぐに警察に行かないことはよくあることなので、四日ぐらいなら比較的早い方だと思います。ただ、薬物を服毒してしまったとすると、24時間以上たってしまうと証拠が失くなってしまうので残念ながら証明のしようがありません。

エントリーでも指摘した通り、よもぎねこさんがおっしゃってるホテルの監視カメラに映った映像が詩織さん側からも山口さん応援側からも公表されていないということ。山口さんが詩織さんから受け取った好意的なメールのスクリーンショットは公表されたのでしょうか?番組中では、その紹介はありませんでした。

この二つの証拠は無実・有罪を決める決定的なものとなったはずなので、もう警察の捜査は終わったことでもあり、警察もビデオを公表してもいいとおもうのですが。よもぎねこさんはこのビデオをご覧になりましたか?

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よもぎねこ2 years ago

  ビデオは見ていません。 メールもスクリーンショットでは見ていません。
 
 メールは山口氏が自身で雑誌に発表した物を見ました。

 山口氏と詩織氏はお互いこの「強姦事件」で告訴中ですから、山口氏が虚偽のメールを発表する事は不可能でしょう。 そしてこのメールの現物は検察審査会や警察にも提出した物だと思います。

 そもそも山口氏は検察審査会で不起訴になっているのです。 我々一般人やマスコミなど部外者が推理をするのは自由なのですが、しかし現実に検察や検察審査会以上の事をできるわけもないのです。

 そして検察審査会には安倍政権に極めて敵対的な日弁連の弁護士も多数加わっているし、指揮権も発動できません。

 こうした事実を考えれば、客観的に見て山口氏不起訴は当然だったと思わざるを得ないのです。

 だからこの検察審査会での不起訴が決まった時点で、日本のマスコミはこの事件を取り上げる事を諦めました。 今後これを取り上げると山口氏から名誉棄損で告訴されて敗訴するでしょうから。 

 それ以前に、民主主義国家では被疑者の人権を守る立場から、疑わしきは罰せず。 司法で有罪にならなかった人を犯罪者扱いしてはいけないというのが原則です。

 ところがこのBBCの番組は完全にこれを逸脱してるのです。 こういうのを見ると、イギリス人の人権感覚を疑います。 個人レベルで詩織氏に同情するのは勝手だけれど、公共放送と言う立場で、このような形で山口氏の人権侵害してよい物か?

 但し彼等の考えていて、実は国内はともかく海外でのこうした報道について告訴するのは非常に難しいのだそうです。 だから告訴されない事を前提でこういう報道をしているのかもしれません。 しかしそれだとホントに悪質な人権侵害です。
 
 こういうの見ると結局、イギリス人の自称リベラリスト陰湿な人種差別ではないかと思ってしまうのです。

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    苺畑カカシ2 years ago

    警察は何故ビデオやメールのスクリーンショットを公開しないのでしょうね。不起訴処分にしたのだからなにを根拠にそうしたのか公表してもよさそうなものですが。よもぎねこさんがおっしゃるように反安倍政権の弁護士たちによる陰謀という気もしなくないですね。

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