一月の終わりに私がサドルの計算違いで、サドルの無抵抗作戦、いわゆるイラク・アメリカ連合の警備作戦に抵抗せずほとぼりが冷めるまで潜伏するという作戦は、サドルが考えるほどうまくいくとは思えないと書いた。その時この作戦の問題点をいくつか挙げたが、そのひとつにこれがある:

いくらこれがサドル派の生き延びる作戦とはいえ、それを教養のないシーア派民兵連中に理解することができるだろうか?これまで「占領軍」と言っていたアメリカ軍に、媚びを売り警備に全面協力しろなどという呼びかけは、単にサドルが自分の皮だけを救おうとしている臆病な手段なのではないだろうか、逮捕されたシーア派民兵が後で釈放されるという保証はあるのだろうか、サドルはおれたちを犠牲にして自分だけ助かろうとしているのではないだろうか、などという疑いがサドル派の民兵連中の間で生まれる可能性は大きい。民兵たちは正規軍ではない、ただのギャングである。何か月もサドルのいうことをきいて大人しくしているとは思えない。

今日のAPの記事によると、サドルシティの警備について米軍およびイラク政府と交渉にあたっていたサドル派の高官が攻撃され重傷を負うという事件があった。どうやら私の予想は現実になってきているようだ。

BAGHDAD -(AP, Mar.16) サドルシティの高官への攻撃はシーア民兵の各位の間で緊張感を生んでいる。人によってはこれはアメリカ軍との協力に不満を持つ者たちの仕業ではないか疑っている、と地方の司令官は金曜日語った。
木曜日、東バグダッドにおいて銃を持った男たちがRahim al-Darrajiをつれた車の行列のなかに発砲し、氏に重傷を負わせ、ボディガード二人を殺したと、現地の警察と政府高官は語った。
Al-Darraji氏はアメリカ軍との交渉で主役となった人であり、交渉の結果サドルシティにおいて(マフディ軍)戦士を街頭から撤退させることに合意した。サドルシティはマフディ軍の本拠地であり、襲撃はこの合意に不満を持った一部の民兵の仕業という疑いがかかっていると地元マフディ軍司令官は語る。
「このグループはこの辺では多少勢力のあるグループですから」とマフディ司令官…
司令官はこの攻撃が民兵各位の間でサドルシティにおけるアメリカの掃蕩作戦中、全く抵抗せずにいることが果たして賢いことなのかどうか議論が再燃しているという。アメリカ軍の掃討作戦の目的はサマラのシーア聖廟の爆破があった2006年2月22日から続いている宗派間争いを終わらせることにある。

だが、一旦アメリカ軍をサドルシティに入れてしまった以上、いまさら「はてな、これははたしていい考えだったのだろうか?」などとやっても時既に遅しである。これも私が上記のエントリーで予測した通り。

意図的にしろ無理矢理にしろ一旦敵に占拠された領土を取り戻すとなると、もともとの領土を守るようなわけにはいかない。…サドル派民兵が留守の間に地元民による平和な自治が設立しイラク軍による警備が行われるようになっていたら、ただの愚連隊の民兵どもがそう易々とは戻って来れまい。

ブッシュのイラク警備新作戦はことのほか順調に進んでおり、反イラク戦争偏見丸出しのアメリカ主流メディアでされも、その良い経過発表をせざる終えなくなっている。おかげでアルカエダやその他の反米分子にとって唯一頼りの民主党はアメリカ軍撤退を実現させるどころか、ブッシュの増派を抗議する拘束力のない議案すら通すことが出来ないでいる。それにも増してブッシュは二万兵ではなく三万兵ちかくの増兵を提案しており、民主党の反対もなんのその、これも実現しそうである。
そこで私の三つ目の予測。

最後にここが一番の問題だが、アルカエダの勢力は昔に比べたら大幅に衰えている。シーア派民兵が抵抗しなければバグダッドの治安はあっという間に安定する。つまり、サドルの思惑はどうでも傍目にはブッシュの新作戦が大成功をしたように見えるのである。アメリカ議会が新作戦に反対しているのはこの作戦が失敗すると思っているからで、失敗した作戦に加担したと投票者に思われるのを恐れた臆病者議員たちが騒いでいるに過ぎない。だが、新作戦が大成功となったなら、奴らは手のひらを返したようにブッシュにこびへつらうだろう。そして勝ってる戦争なら予算を削ったりなど出来なくなる。そんなことをすればそれこそアメリカ市民の怒りを買うからだ。

結果アメリカ軍は早期撤退どころか、イラクが完全に自治ができるまで長々と居座ることになるだろう。

さて、この予測も当たるかな?


2 responses to マフディ軍無抵抗作戦に亀裂

In the Strawberry Field17 years ago

サドルの大誤算、ナジャフデモ行進の意味するもの

アップデートあり: ナジャフ行進参加者の数に訂正あり、下記参照。 昨日サドルはマフディ軍にアメリカ軍に抵抗するようバグダッド落日4年目の記念日にナジャフに集まって反米大行進を呼びかけた。それに応えて何千というマフディ軍およびその支持者がナジャフに集まってデモ行進を行っている。 これだけ見ていると、サドルの人気はまだまだ高くイラクにおけるシーア派による反米感情は高まる一方だと考えがちだが、実はそうともいえない。 サドルはアメリカ軍が増派を含む新作戦をはじめた当初マフディ軍にたいしてはおとなしくしていろ…

ReplyEdit
In the Strawberry Field16 years ago

イラク戦争新作戦が花を見た2007年を振り返る。裏目に出たサドル派の潜伏作戦

2006年の暮れにアメリカ軍の新作戦が発表されて以来、シーア派抵抗軍のリーダーであるモクタダ・アル・サドルはシーア民兵らにアメリカ軍に抵抗せずにしばらくおとなしくしているようにと命令した。サドルはアメリカ軍の新作戦はうまくいかないと踏んでいた。いや、例え多少の成果があったとしても、不人気なイラク戦争をアメリカ軍が継続することは不可能であるから、しばらく大人しくしておいて、ほとぼりが冷めたらまたぞろ活躍すればいいと考えたのである。カカシは1月26日のエントリー、サドルの計算違いで彼の作戦には三つの問題…

ReplyEdit

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *