April 9, 2007

サドルの大誤算、ナジャフデモ行進の意味するもの

アップデートあり: ナジャフ行進参加者の数に訂正あり、下記参照。

昨日サドルはマフディ軍にアメリカ軍に抵抗するようバグダッド落日4年目の記念日にナジャフに集まって反米大行進を呼びかけた。それに応えて何千というマフディ軍およびその支持者がナジャフに集まってデモ行進を行っている

これだけ見ていると、サドルの人気はまだまだ高くイラクにおけるシーア派による反米感情は高まる一方だと考えがちだが、実はそうともいえない。

サドルはアメリカ軍が増派を含む新作戦をはじめた当初マフディ軍にたいしてはおとなしくしていろと命令した。逮捕されても抵抗するなとまで言っていた。サドルの狙いは三つあった。

  1. アメリカ軍の新作戦は長続きしない。ほとぼりが冷めるまで大人しくしていてアメリカ軍が撤退したらまた活動をはじめればいい。
  2. マリキ政権はブッシュ大統領からの圧力で形ばかりの民兵取り締まりはするだろうが、真剣な取り締まりなどするわけがない。マフディ兵が逮捕されても後でコネを使って釈放させればいい。
  3. この際だからマフディ軍内部にいるサドル犯行分子をアメリカ軍に引き渡し、アメリカやイラク政府に協力しているふりをしてライバルを取り除いてしまおう。

産經新聞もサドルのこの作戦について、イラク政府はシーア民兵を温存する形となったなどと報道していた。(イラク掃蕩作戦に悲観的な産経新聞参照のこと)

汎アラブ紙アルハヤートなどによると、サドル師は、マリキ首相の密使として派遣されたジャアファリ元首相(シーア派)との会談で「マフディー軍潜伏」を決断したという。「掃討作戦の対象はシーア派、スンニ派を問わない」との公式な立場を取るマリキ首相も、マフディー軍の「一時的潜伏」により大規模掃討作戦の目標の半分が、実質的に空振りに終わることを、暗黙のうちに認めていることになる。

...しかし、米軍の段階的撤退が視野に入ってきた現状で、その後も“シーア派覇権”を維持するために独自の軍事力の温存は宗派全体としての中・長期的な“戦略的利益”にかなう。

では何故サドルは今になってその潜伏作戦を覆し、アメリカ軍にたいして表立った抵抗を呼びかけはじめたのだろうか?

ここで私が一月の時点でサドルの計算違いでサドルの計画は産經新聞がいうような具合には運ばないだろうと予測していたことを思い出していただきたい。

  • 意図的にしろ無理矢理にしろ一旦敵に占拠された領土を取り戻すとなると、もともとの領土を守るようなわけにはいかない。
  • 民兵たちは正規軍ではない、ただのギャングである。何か月もサドルのいうことをきいて大人しくしているとは思えない。自分勝手に暴れた民兵たちが大量にアメリカ軍やイラク軍に殺されるのは目に見えている。
  • アルカエダの勢力は昔に比べたら大幅に衰えているため、シーア派民兵が抵抗しなければバグダッドの治安は安定しサドルの思惑はどうあれ傍目にはブッシュの新作戦が大成功をしたように見える。そうなればアメリカ軍の新作戦は長続きしないどころかずっと継続する可能性がある。

サドルの狙いに反してマリキ政権はシーア派取り締まりに真剣に取り組んだ。マフディ軍はバグダッド中心部から即座に追い出され南部へと追い込まれている。しかもバグダッドを退散した民兵たちはイラン国境近くのディワニヤ地域でアメリカ軍空軍による激しい攻撃を受けている。

また、マフディ軍無抵抗作戦に亀裂でも述べたように、マフディ軍のなかにもイラク政府に本気で協力しようという勢力と断固協力できないという勢力との間で亀裂が生じてきている。ビル・ロジオのリポートによればイラク政府に協力する勢力はどんどん増えているという。

となってくるとサドルの潜伏作戦ではアメリカの新作戦が時間切れになる前にマフディ軍の勢力が大幅に弱体化し、アメリカ軍が去った後に戻ってくる場所がなくなってしまう危険性が大きくなったのだ。そこでサドルは今必死になって作戦変更。イラク軍にたいしてもマフディと戦わないでくれと嘆願書まで送り出す始末。(無論そこはアラビア、嘆願書でも勇ましい書き方をしてはいるが、切羽詰まった感情は隠しきれない。)

アメリカ軍の概算ではナジャフに集まった群衆の数は5千から7千、サドルが期待していた何万という数にはおよそほど遠い数となった。しかもサドルがデモ行進を率先して対アメリカ抵抗を呼びかけたというのならばともかく、自分は安全なイランに隠れたままで書面だけの呼びかけなどその弱体さを暴露したようなものである。

このデモ行進の規模の小ささとサドルの臆病な態度がイラクの民兵らの士気に響かないはずがない。しかもイラク・アメリカ連合軍はマフディ軍退治の大規模な最終攻撃に備えてちゃくちゃくと準備を進めている。

サドルよ、お前の最後も近い。

アップデート: ロイターの記事によると アメリカ軍の空からの偵察写真によると参加者の数は約15000人とある。地上にいた記者の概算では数万とあるが、地上では正確な数字はつかみにくい。唯一つ正確な測定ができるのは航空写真のみなので、私はアメリカ軍の測定を信用する。

April 9, 2007, 現時間 12:37 PM

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