カカシは2003年のナタリーメインズの非国民発言以来、ずっとデキシーチックスのアンチファンなので、今回のグラミー賞についてもひとこといわねばならないだろう。チックスのアルバムテイキング・ザ・ロングウェイ(「遠回りをして」の意)は年間最優秀カントリーアルバム賞などグラミー賞の5部門で受賞。一組の歌手がグラミーで五つの部門をすべての受賞というのは13年ぶりだったという。
これに関してニューヨークタイムスはブッシュ政権に関する不信感がつのったことで、ブッシュ批判をしたデキシー・チックスが正しかったことをレコード業界が認めた証拠だと評価している。
さらにタイムスは今回のことでアカデミー協会とナッシュビルの音楽業界との政治的な見解の亀裂がはっきりしたと書いている。

日曜日のグラミー賞におけるデキシー・チックスの大きな勝利はナッシュビルの音楽業界体制ともっと広く多様なメンバーの投票によって勝者を決めるアカデミーレコード業界との政治見解の差を暴露した…

アカデミーのメンバーが多様だなどというのは真っ赤な嘘である。ニューヨークやハリウッドのリベラルが中心となっているアカデミー協会と中南部の保守派が中心となっているナッシュビルの音楽業界が全く違う文化をもっていることは確かだが、ナッシュビルが片方に偏っているのと同じようにアカデミーもある一方に傾いているのである。
アカデミーのメンバーでベテランのレコード会社重役のジェフ・アエロフ(Jeff Ayeroff)は全国のラジオ局がチックスを閉め出したのはアメリカ的ではないと批判した。
しかし全国のカントリー専門ラジオ局がデキシー・チックスを閉め出したのは、彼女たちの政治的な見解に反対したからではない。確かにDJの間ではそのような意見があったかもしれないが局がどの歌手の曲をかけるかは一重にリスナーからのリクエストで決まるのである。
2003年のデキシーチックスの失言があった時、全国各地のラジオ局がリスナーから種々の反響を受けた。当時はまだ存在していたロサンゼルスのカントリー専門ラジオ局のKZLAはチックスの曲をかけるべきかどうかというアンケート調査を行った。比較的リベラルの多いロサンゼルス地方では「かけるべき」という意見のほうが多かったためKZLAはそのままチックスの曲をかけ続けていた。ロサンゼルスの北側にあるベントゥラ地方のKHEYもチックスの曲をかけ続けた。しかしカリフォルニア南部で海軍基地のあるサンディエゴ地方の局では苦情が殺到しチックスはかけられなくなったそうだ。
全国のラジオ局でこのようなアンケートが行われたことは想像に固くない。そして私もやったように苦情の手紙や電話やメールを送ったカントリーファンも多くいたことだろう。もし局がイラク戦争に参加している軍人やその家族が多くすんでいるような場所にあれば、チックスの曲をかけるな、というリスナーが圧倒的多数を占めたとしても不思議でもなんでもない。ラジオ局も商売である。リスナーの苦情を無視する余裕はない。
しかしチックスの曲を閉め出す方針はないといっていたKZLAやKHEYなどの局でも2003年以来チックスを掛ける頻度は極端に減った。メインズの失言があるまで私は3時間の通勤往復で少なくとも4回は彼女たちの曲を聴いたが、失言の後は何日もチックスを聴かない日が続いた。2006年発売の新アルバムに関してはKZLAが失くなる直前に一回聴いたきりである。なんだかんだ言いながらチックスの人気がカントリーファンの間で落ちていたことの証拠だろう。
ニューヨークタイムスはナッシュビルとアカデミーの政治的見解の差を顕著にした例として去年の11月に行われたカントリー音楽賞においてチックスがノミネートもされなかったことをあげている。しかしカントリー音楽界がチックスを無視した理由はナッシュビルはすでにチックスをカントリー歌手として認めていないからだと私は思う。そうだとしたらその責任はチックス自身にあるのである。
これは私が彼女たちの新アルバムが出たばかりの頃書いたものだ。
カントリーの雌鳥たち、蘇る????

でもまあ3年もたっていることだし、そろそろほとぼりもさめた頃。神妙にしてカントリーファンにお詫びをいれれば、ファンたちも許してくれたことだろう。
ところが、バカは死ななきゃなおらないというかなんというか、彼女たちの新曲は神妙にするつもりはない、といった意味の題名で、しかもその歌詞が自分らを批判して「黙って歌え」と言った保守派ラジオDJにあてつけて、『黙って歌わなきゃ命はないぞ、なんていうほど切れちゃう人がいるなんて悲しい世の中ね』といった内容だ。
それだけじゃなく新曲の宣伝のためのインタビューなどで、カントリーファンは無知だ、ばかだ、田舎者だ、自分らはカントリー歌手の意識はない、などとさんざんカントリーファンをこけにした発言の連続。
カントリーファンもここまでコケにされては許せるものも許せなくなる。また曲をかけてあげおうとおもっていたラジオ局は再びチックスをボイコットすることにし、新曲をかけたラジオ局には苦情が殺到。

またチックスは「黙って歌え」という記録映画をつくり、自分達がカントリーファンから見放されてどれだけ傷付いたかという当てつけまでやっている。
ところで、カントリーファンが見放してもチックスのCDの売り上げが高かったのだから賞をもらって何が悪いという意見もあるだろう。確かに彼女たちのアルバムはずっとレコードチャートで何週間も一位だったからアルバム賞を取るのは文句はない。だが明かに彼女たちはカントリーではないのだからカントリー部門を受賞するのはおかしい。それに彼女たちのコンサートは一時期に比べると半分以下の観客しか動員できず、全国各地で狭い会場に変更したりキャンセルされたりしていた。およそグラミー賞をとる歌手の興行成績とはいいがたい。
今回のグラミー賞でいえることは、音楽ファンのイラク戦争に関する意見の反映だの、チックスが正しかったことを証明したとかいうことではなく、グラミーがどれだけ政治的に左巻きかということが顕著になったということだけである。


2 responses to デキシー・チックス、グラミー賞受賞の裏

que15 years ago

×想像に固くない
○想像に難くない

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In the Strawberry Field6 years ago

イラク戦争前夜の暴言で落ちぶれたデキシー・チックスのカムバックツアーはどうなるか?

フェイスブック(FB)の友達Nがデキシー・チックスがカムバックを狙って全国ツアーをやるって話だよと書いているのを読んで、え~デキシー・チックスなんてまだ生きてたの、というのがカカシの反応である。カカシは2003年当時からチックスのアンチファン。彼女たちに関する記事をここやここで書いている。背景をご存じない読者の方々は後部に説明を付け加えておいたのでご参照されたし。 わがFB友のNは、デキシー・チックスのイラク戦争反対の姿勢が馬鹿なカントリーファンの怒りに触れチックスはカントリー音楽界から締め出されて…

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