さて前回に続いてWPATHファイルを読んでいこう。本日は10ページから15ページまでの”WPATH HAS MISLED THE PUBLIC”「WPATHは人々を欺いた」という章で、主にWPATHが如何に子供たちのことを考えていないかが語られている。

WPATHは性違和を持った子供達に思春期ブロッカーや異性ホルモン投与による性肯定治療をすることを促進している。しかしWPATH自身、こどもたちが治療に関する情報をきちんと理解したうえで同意する(Informed Consent インフォームドコンセント)をすることが不可能であることを十分に知っている。(カカシ注:この先Informed Consentは「理解ある同意」と省略させてもらう。)

WPATHは医療機関に、DSM-5の「性同一性疾患」よりも、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)が使う「性違和 gender incongruence」という用語を使うように薦めた。何故かというとICD-11の診断は「性的健康状態」を示すものであり、性同一性疾患の精神疾患よりスティグマがないからという理由だが、実は性違和の診断は性同一性疾患よりも容易に取得することが出来るというのが本当の理由。これなら患者が精神的苦痛を持っている必要はなく、単に異性になりたいと言う欲求さえあれば診断が降りるからである。

いくらWPATHが表向きは未成年やその保護者の同意が必要だと言ってみても、実際には子供からも保護者からも理解の上での同意などえられないことは、うちうちでは周知の事実だった。WPATHは子供の治療をするにあたっては理解ある同意を得なければ治療はしないと嘘をついてきたのである。

WPATHの医療基準(SOC8)では、性違和を持った子供には思春期ブロッカー及び異性ホルモン投与、そして患者から理解ある同意を得られた場合には整形手術を施すことを勧めているが、2022年㋄6日に行われたオンライン会議において、カナダの内分泌病専門医ダニエル・メツガー医師は思春期の患者から理解ある同意を得ることの難しさを語った。同医師は若い患者はホルモン治療で得られる気に入った部分だけに注目し、他の部分を無視する傾向があると語った。「好き勝手に結果を選べないということを子供たちは理解できないのです。なにしろ高校の生物学すら学んでない訳ですから。でも思うに大人でもXを得るためにはYも得なければ不可能なのだということが理解できてない。」

これはメツガー医師だけでなく参加した専門家たちの間でも子供たちが人生を変えてしまうホルモンの影響について理解する能力がないということで意見が一致している。WPATHメンバーで小児精神科医のダイアン・バーグ医師は思春期の若者が治療の効果を十分理解出来ないのは、彼等が十分に成熟していないからだと語る。患者の未熟さを表わす例として「彼等は解ったと言うのですが、髭のことなどちゃんと解っていないのです」と話す。

治療の内容や悪影響について理解できていないのは子供だけではない。保護者である大人たちも理解していないことが多いと言う。バーグ医師は親たちが自分らの子供への措置を全く理解できないまま同意の署名をしてしまっていると語る。そしてきちんとした理解のないうえでの同意を得ることは倫理的ではないとバーグ医師は認めている。

もうひとつ理解ある同意のプロセスのおいて生殖機能の喪失に関するものがある。SOC8では早期のホルモン治療が引き起こす生殖機能の喪失について説明すべきとしているが、このようなことは未成年の理解力では将来について決断することなどできない。WPATHのメンバー達もそのことを認めている。

精神科医でSOC8の子供に関する章を共著したレン・マセイ医師はSOC8のなかで「生殖機能保存の選択肢について語ることは倫理的であり奨励される」としている。しかしメツガー医師は患者と生殖機能について話しても子供たちは理解できないという。患者たちは「子供?赤ん坊?キモイ」と言った態度で、もし子供が欲しくなったら養子をもらえばいいというのもよく聞く答えだという。

このような内部での話はWPATHの公式発表とは全く逆だ。WPATHは、医師団は協力しあって、将来後悔のないように若い患者が自分の性自認やホルモン治療による影響についてきちんと理解しているかを確かめてから処方していると述べている。

しかしWPATHメンバー達は、オランダの調査団が早期のホルモン治療で生殖機能を喪失した人たちの多くが後悔しているという調査結果について良く知っている。メツガーは会議でその話をしているのだ。そしてその結果は驚きではないとさえ言っている。それというのも、彼が治療した若い患者が20代になって、パートナーを見つけたので子供が欲しくなったと言ってるのをよく聞くからだと言う。

このオランダの調査結果は数か月後モントリオールで行われた2022年9月のWPATH国際シンポジウムでも紹介されている。これは初の長期にわたる思春期ブロッカー接種者の若者を追った調査である。そしてその結果はお世辞にも良いとは言えない。

この調査では若い頃に思春期ブロッカー及び異性ホルモン投与に進み、整形手術で睾丸や子宮を摘出した、平均年齢32歳を対象にしたもの。回答者の27%が生殖機能を喪失したことを後悔していると答え、11%は解らないと答えた。そして精子や卵子を冷凍して保存しておくという選択肢を選ぶべきだったと答えたのは、生得的女子で44%、生得的男子では35%だった。

しかしこの27%という数字も少なすぎると思われる。それというのも、こういう調査ではよくあることなのだが、連絡を受けた50.7%のトランスが調査に参加しなかったのだ。

メツガー医師やバーグ医師のように9歳の子供に生殖機能について理解できると考える方がおかしいという意見に対して、子供達がその時により幸せならいいのだと言うメンバーもいた。しかしメツガー医師は性的な自己確立の出来ていない9歳の子供に思春期ブロッカーを与えることが良いはずはないと語る。

WPATH内部の掲示板に寄せられた相談には、エール大学病院の医師助手が知能の遅れている13歳の子供がもうすでにブロッカーを摂取しているが、理解度がSOC8の基準に達しない可能性がある、この場合どの段階で異性ホルモンを与えることが倫理的にゆるされるのかというものがあった。ノバスコ―シャの医師はブロッカーを永久に続けることは出来ないので、ホルモン治療をするのとしないのとどちらがより危険であるかを考えるべきと答えている。医師ではないとある活動家は性違和のある子は発達障害があっても自分のアイデンティティーを持っているのでそれを尊重すべきであり、トランスではない保護者の意見は問題ではないと答えていた。

WPATHの掲示板ではこういう医師でもなんでもない活動家がよく口を出す。しかしこの活動家の答えはWPATHの公式な発達障害があるからといって思春期ブロッカーや異性ホルモン治療を遅らせるのは不公平で差別的で間違っているという姿勢と一致する。

WPATHの元会長のジャミソン・グリーン氏は患者の中には癌専門医ではなく普通の内科でホルモン処方を受ける人がおり、大人でもその弊害に関して全く読まずに同意書に署名してしまう人が結構いると語る。これはWPATHが公式に言っている精神科と専門医との充分な診断の元にという姿勢とは真っ向から矛盾するものだ。グリーン氏はまた多くの人が手術は怖いのできちんとした説明を読まず、他の人から聞いた中途半端な情報を信じてしまい大事な部分を見失っている場合があるという。

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こうして読んでいるとWPATHのいう「Informed Consent/理解ある同意」がどれほどいい加減なものかがわかる。

ところで生殖機能を喪失する前に精子や卵子を保管しておくという選択肢も思春期前の子供は精子も卵子も生産できないわけだから、そんな選択肢は意味がない。


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