昨日ニューヨークタイムスが脱トランスについてのオピニオン記事を掲載したという話をちょっとしたが、今回はその内容について少し詳しく掘り下げて読んでみようと思う。

記事の著者はパメラ・ポール(Pamela Paul)。Opinion, by Pamela Paul, As Kids, They Thought They Were Trans. They No Longer Do. (nytimes.com) by Pamela Paul

グレース・パウエル(現在23歳)が自分が男の子かもしれないと思い始めたのは12歳か13歳くらいのこと。ミシガン州のグランドラピッズという比較的保守的な土地にで育ち、多くのティーンエージャーがそうであるように自分の身体に居心地がよくなかった。まったく人気はなかったし良くいじめられた。思春期になると鬱に悩まされセラピーを受けたり受けなかったりしていた。

「自分が身体から離れているような気がしてました。身体が育っていくことが自分に敵意を持っているような気がして」とパウエルは言う。自分の身体の成長に違和感を持つのは典型的性違和の症状だとポール記者は書いている。

パウエルはトランスジェンダーに関する情報をオンラインで読むにつれ、自分の違和感は自分が間違った身体に生まれたからだと思い始める。性転換は明確な解決方法に思えた。彼女が繰り返し聞いたのは性転換をしなければ自殺してしまうというものだった。

それで彼女は17歳で両親に自分がトランスだと告白した。両親はジェンダー診療所に彼女を連れて行き、そのままホルモン治療、そして乳房除去へと進んでしまった。この間医療関係者は一度も彼女の性違和の原因や過去のトラウマに関しての診察は無かった。それで医者やカウンセラーは彼女が子どもの頃に性的虐待を受けていたことを知ることもなかった。

その後、身長160センチで非常に女性っぽいゲイ男性に見える彼女は大学へ進むと男子寮で生活をするようになった。

「もっとちゃんとオープンな話し合いがあればよかったのに」と脱トランスした彼女は言う。「でも私は治療法は一つしかないと言われました。これがあなたの問題ならこれしかない、これがあなたを救うと言われたのです」

これは私(カカシ)も何度も聞いている話だが、ジェンダー診療所は妊娠中絶専門のプランドペアレントフッドと同じで、診療所の門をくぐったら性転換への道しか示されない。普通の病院なら「私、心臓がどきどきするんです。心臓病だと思うんです」という患者が来ても、医者が「はい、じゃあすぐ手術しましょう」なんてことにはならない。「じゃあ検査してみましょう」というのが普通の医療だ。ところがジェンダー医療(医療といえるのかどうか、、)となると患者がそういうからそうなのだという肯定そして治療へとまっしぐらに進んでしまう。なぜ患者が性違和を持っているのか、他の精神病が原因なのではないかといった診察が全くなされないのだ。

ポール記者はジェンダー概念に関しては右翼も左翼も同じように極端な議論を交わしているというが、それは正しくないと私は思う。彼女はドナルド・トランプ大統領がトランスジェンダリズムを「左翼のジェンダー狂気」と呼んだことを批判しているが、自分が異性だと思い込むのは明らかに狂気だ。それに今の右翼保守は昔と違って、同性愛を病気と決めつけて野蛮な治療をして同性愛を治そうなどとはしない。それどころか未成年に不可逆的なホルモン治療や手術を施すなと言っているのだ。そして性違和は心の病気なのだから先ず精神の治療を行うべきだと主張しているのだ。少しでも他人の性違和を疑う人を「トランスフォーブ」といって黙らせようとする左翼連中よりもよっぽどまともだと思う。

増える新しいタイプの患者たち

ポール記者は大人のトランスジェンダーの多くは性転換に満足しており救命治療でもあったが、問題なのは最近急激に増えている子供の性違和患者であると指摘する。

アメリカ最初の小児ジェンダー診療所の創設者ローラ・エドワーズ・リーパー精神科医は、2007年に診療所をオープンした頃は長期にわたる性違和に悩み性転換によって他の精神的な問題がなくなる患者がほとんどだったが、最近それが変わってきていると語る。

エドワーズリーパー医師は自分がカウンセリングした患者たちの性転換は後悔しておらず、政府による禁止法にも賛成ではないとしながらも、医療組織によるきちんとした規制がないことに懸念を抱いている。最近の彼女の患者たちのほとんどが幼い頃に全く性違和を示した歴史のない子たちである。それが10代になって突然性違和を言い出すのである。これは俗にRapid Onset Gender Dysphoria(急性性同一性障害)と言われるものだが、この病気の有無については専門家の間でも色々意見が割れている。

幼児や思春期の患者に関してはもっと慎重な治療を行うべきだとWPATH(the World Professional Association for Transgender Health)の幼児思春期部門の委員長だったエドワーズリーパー医師は語る。

とはいえ専門家や科学者や医者たちは、患者の性違和に自動的に同意すべきではないという考えを公言するのには消極的である。今は閉鎖されたイギリスのタビストックジェンダークリニックの職員たちは患者の性違和を肯定するように強く圧力をかけられていたと証言している。

エドワーズリーパー医師が訓練した医師の多くがジェンダー治療から離れてしまったという。それというのも慎重なカウンセリングをしようとするとトランスフォビアだと責められることが多いからだ。

オレゴンの結婚カウセリングセラピストのステファニー・ウィンは、ジェンダー肯定治療の訓練を受け何人ものトランスジェンダー患者を診て来た。しかし2020年、脱トランス者のビデオをみてからジェンダー肯定治療に疑問を抱くようになった。2021年、彼女は性違和治療はもっと色々考慮する必要があり、脱トランス者の意見にも耳を傾けるべきだと発言して以来、トランス活動家から攻撃を受けており、2022年には彼女のセラピストライセンスをの見直しが審議されていると告げられた。彼女の捜査は打ち切られたが、今は未成年の患者は取り扱わず、居場所を確定されるのを恐れて、カウンセリングもオンラインのみでおこなっている。

性違和患者の診察は慎重に行うべきというカウンセラーが命の危険を感じるというのは、いったいトランスジェンダリズムとはどういう概念なのだ?

脱トランス者の話を取り上げてくれるのは保守派メディアだけであり、そのせいもあって彼等は右翼保守のトランス攻撃の道具となってしまう可能性があるとポール記者は語る。しかしトランスジェンダーを名乗り出た時はちやほやしていた左翼連中が、一旦脱トランスした人を助けようともせずに一斉に見捨てておいて、彼等を右翼の道具扱いする方がおかしいのではないか?

右翼保守は脱トランスの人たちに対して「それみたことか、だからトランスなんかすべきじゃないのだ、自業自得だ」と言って責めたりしていない。それどころか親身になって話を聞き、話をとりあげてくれているのだ。ポール記者はそのことにもっと注目すべきではないのか?

ポール記者はさらに、トランス自認の子供を持つ親たちのインタビューについても語る。これは日本で発刊中止に追い込まれたアビゲイル・シュライヤー著書の「あの子もトランスジェンダーになった」でも書かれていた通り、親たちは子供の性違和は子供が自分の同性愛嗜好に悩んでいるのではないかと疑いながらもジェンダー医療関係者からの圧力に負けてしまう。子供の性違和に少しでも疑問を示すと自動相談所から子供を取り上げられてしまう可能性もある。少なからぬ親たちが子どもが性違和を言い出した時に「娘(息子)を失ったような気がした」と語っている。

ある母親は性違和を持つ子供の両親たちのサポートグループに参加した際、ほとんどの子どもたちに自閉症や他の精神病があることを知った。にもかかわらずグループの主催者は「ともかく転換させなさい」と促したという。「強迫性障害やうつ病がどうしたらホルモン治療でなおるというのでしょうか」とその母親は言う。

こうした親たちの一部は最近オンラインでのサポートグループに参加し、子供たちの精神状態などについて色々話をしているが、子供たちに共通していることはユーチューブやTikTokのインフルエンサーたちに文字通りインフルエンス(影響を受ける)されているということだ。そしてコロナでの隔離生活中にこの問題に拍車がかかったことも事実である。

15歳の息子が突然自分は女だと言い出したキャサリンという女性。息子がADHDかどうかの診察をしてもらいたかったのに、なぜかジェンダークリニックを紹介され、医師は息子の精神病の診断をせず突然「死んだ息子と生きてる娘のどちらが欲しいのか」と質問してきたという。

これは今初めて聞いた質問ではない。子供が突然性違和を言い出した時、子供の性違和に疑問を抱く親たちが必ずされる質問だ。医師たちは子供を性転換させないと子供が自殺してしまうと親たちを脅すのである。

しかし性違和患者が性転換しないと自殺するという説の根拠は乏しい。三年前に発表されたThe Journal of the Endocrine Societyの調査では、性転換治療と自殺予防との関連性は証明されなかったとある。さらに他の自殺願望は他の精神病が影響している場合もあり、性違和のみが原因ではない場合、性転換治療は自殺願望緩和には全く意味がないどころか、ホルモンのバランスが崩れて悪化する可能性も考えられる。

政治の道具にされる未成年トランスジェンダー達

ポール記者の記事はまあまあ良い点をついているのだが、彼女の左翼バイアスが記事のあちこちからうかがわれる。彼女は未成年のトランスジェンダー問題は医療問題であるはずなのに、えてして政治問題として扱われることが多いと語る。

保守派の議員たちは、未成年のジェンダーケアへのアクセスを禁止しようとしている。しかしもう一方で、多くの医療従事者や精神科医が、活動家の圧力や組織の取り込みによって手を縛られていると感じている。彼らは、こうした若者たちに対して責任あるメンタルヘルスケアや医療を実践することが難しくなっていると言う。

いや左翼のトランスジェンダリズムが完全に政治活動になってしまった以上、それに異を唱えるためには政治力を使う以外にない。ちゃんとした診療をおこなおうとする医師たちに手かせを嵌めているのはバイデン政権をはじめとする左翼政治家達なのだ。これはどっちもどっちというものではない。

前述のパウエルも左翼から「トランスジェンダーの人々の信用を失墜させるために偽の物語を作っている右翼だと何度も非難された」と語っている。

LGBT当事者の中からも現在のトランス治療に疑問を呈する人たちが増えている。33歳で女性から男性に性転換した50歳のFtMアーロン・キンバリーは性転換によって自分の性違和は消えたという。キンバリーは看護師としてブリティッシュコロンビアの病院で働いていたが、ホルモン治療が必要とされた患者が深刻に精神を病んでいると判断しホルモン治療よりも精神カウンセリングを薦めたところ、性転換の門番をしていると責められ転職を余儀なくされたという。「なにか完全に脱線していると気が付きました」とキンバリーはいう。キンバリーはその後the Gender Dysphoria Alliance (性違和同盟)と L.G.B.T. Courage Coalition (LGBT勇気協定)を設立した。

一般的性別傾向から逸脱している女性っぽいゲイ男性やお転婆なレズビアン女性らもトランスジェンダーだと診断されてしまうことが多いという。これこそ昔のコンバージョンセラピーと何が違うのだろうか?また宗教心が強く保守的な家庭に育った同性愛者は同性愛は不浄だと思い込みトランスすることも多い。

子供の頃に性犯罪の被害に遭った子が性違和をもつことはよくあると言う話も昔聞いた。自分がこんな目にあうのは女(男)だからだと思い込み、異性になりたいとおもってしまうのだ。

ケイシー・エメリックも幼児性虐待の被害者でレズビアン。しかし自分は男だと思い込み性転換し男性として5年間も生きたが、精神状態は良くならず2022年に脱トランスした。彼女がTwitterでそれを発表したところ、すぐに酷い攻撃を受けた。私も当時の彼女のビデオを観たが、彼女のことを禿げだの醜いだのという中傷誹謗が酷かったのはよく覚えている。

「私の人生は終わったと思いました。私は五年間も偽りの生活をしていたのです」

A woman dressed in black with tattoos on one arm looks off to the right.
Kasey Emerick Credit…Tanyth Berkeley for The New York Times

彼女の声は男性っぽく低く、見た目も男性に見えるため、脱トランスだと言うと、何時テスタストロンをやめるのかと聞かれるそうだ。それでもうやめて一年も経っているというと驚かれるという。いちどなどセラピストに脱トランスだと話したところ「トランスジョセーだったなんて信じられないわ」と言われ「え?私をどっちの性だとおもってます?」と聞き返したそう。

何故かは解らないが、トランスした年齢にもよるが、男性から女性へMtFが女性ホルモンをやめると割合普通の男性に戻れるのに対して、女性から男性の場合は声変わりも髭や体毛や脱毛などは永遠で不可逆的である。男性ホルモンは顔立ちまで男性っぽくかえてしまうので、FtMの脱トランスは非常に難しい。

子供、特に思春期は反抗期でもある。昔なら髪の毛を青く染めたり、変な化粧したり、コスプレする程度で済んでいたことが、最近は身体を不可逆的にかえてしまうトランスが流行っているのだ。こどもたちにはこの行為が自分の将来にどんな悪影響を及ぼすのか全く理解できていない。ポールは80%以上の子供が思春期を過ぎれば自然と性違和がなくなると指摘。またホルモン治療を始めた30%が四年以内にやめてしまうという。

最近のThe Archives of Sexual Behaviorという調査(recent study)78人の若い脱トランス者の40%までもがROGDに病んでいたという。トランスジェンダー活動家はそんなものはないと主張しているが、実際に証拠があるのだ。

ポールはここでオランダ、イギリス、スエーデン、ノルウエーなどアメリカに先駆けて子供のトランス治療を始めた国々が次々に方向転換をしていることを指摘する。しかしなぜかカナダやアメリカでは未だに子供の性転換治療が盛んである。

しかし昨日も指摘したように、ニューヨークタイムスでこのような記事が掲載出来たということだけでも、アメリカのトランスジェンダリズムに関する姿勢は変わってきている証拠だと思う。すでに20以上のアメリカの州で子供のトランス治療を規制する法律が色々通っている。男子の女子スポーツ参加に関しても規制法律が通っていることを考えると、アメリカでも明らかに風向きが変わったと私は確信する。

日本も変な方向へ進まないうちに方向転換をしてもらいたい。

関連記事:

Yes, Europe Is Restricting “Gender-Affirming Care” | City Journal (city-journal.org)

studies (fundacionjuntoscontigo.org)

questioned (segm.org)

criticized (tandfonline.com)

riddled (tandfonline.com)

British effort to replicate the study (nih.gov)

When Kids Say They’re Trans: A Guide for Thoughtful Parents (whenkidssaytheyretrans.com)



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