ハリウッド映画界は人種差別や女性差別に敏感で白人男性キャラをやたらに黒人女性キャラに書き換えたり、ミーツ―運動の頃は女性が被害者だと訴えさえすれば証拠もないのに男性俳優たちのキャリアを潰して悦に入っていたり、BLMへの支持をためらいなく行っていた。トランス差別は駄目だといって代名詞を間違えただけの人びとをソーシャルメディアで叩いたり、トランス女性は男性だと言ったJKローリングのような有名人を散々非難してきた。アメリカにとって一番の危機は白人至上主義だとまで言っていた人たちもいた。では今起きているあからさまなユダヤ人差別については俳優たちは皆立ち上がってビデオでも作って「ユダヤ人差別をやめよう!」と訴えるのかと思えばそんなことはない。英語的表現をするなら「この沈黙は耳を擘く(つんざく)ほどだ」。

これについてユダヤ系の芸能人やプロジューサーたちがハリウッドの偽善主義に声を上げている

人気スィットコムの俳優・コメディアンであるジェリー・サインフェルド、ジュリアナ・マーゴリス(Julianna Margulies)を筆頭にハリウッドのプロジューサーやNBCニュースの前社長ノア・オッペンハイマーなどが昨今の反ユダヤ傾向のついてハリウッドの沈黙を批判する声明文を公開した。

芸能人のジェリー・サインフェルド、サシャ・バロン・コーエン、ジョシュ・ギャッド、イーライ・ロスを含む数百人の全米脚本家組合(WGA)組合員が10月15日、ハリウッドで最も強力な組合のひとつである自分たちの組合が、当時イスラエルに対するハマスの攻撃について声明を出さなかった「唯一の主要ハリウッド組合」であることを非難する公開書簡に署名した。

この書簡には、オッペンハイマーと『ミセス・ダウトファイア』の脚本家ランディ・メイエム・シンガーの署名も含まれており、この問題に関するWGAの偽善を指摘している。

毅然とした態度で臨むことに関しては、全米脚本家組合は常に模範を示してきた。雇用主が私たちの作品を搾取しようとしたとき、ギルドは勇敢に声を上げた。BLM運動が起こったとき、ギルドは当然のように声を上げた。MeTooの清算が行われ、ハリウッドが変わらなければならなくなったとき、ギルドは再び声を上げた。

「しかし、テロリストがイスラエルに侵入し、ユダヤ人を殺害し、レイプし、誘拐したとき、ギルドは沈黙を守った。」

署名者たちはまた、10月7日にイスラエルで起こったことについて明確な声明を打ち出し、WGAや自分たちの考え方に従わない他の組合は “筋書きを失っている “と示唆した。

太字で強調された彼らの手紙は、「私たちは、ハマスが無実の市民に対して犯した凶悪な犯罪を明確かつ強力に非難したい脚本家グループです」と宣言している。

イスラエルとパレスチナの人々の対立は複雑で微妙なニュアンスに満ちているが、10月7日に行われた犯罪は単純で残酷だ。もし私たちがそれを、蛮行というとんでもない行為と呼ぶために立ち上がることができないのであれば、私たちは筋道を失っているのです」。

大ヒットTVドラマ『ジ・アメリカンズ』のショーランナーであるジョエル・フィールズは、先月開催されたVarietyの “Hollywood & Antisemitism Summit “において、自身の発言でWGAを非難した。パネルでフィールズは、「脚本家組合はわれわれを深く失望させた」と宣言した。

彼はさらに、「歴史の正しい側にいることを確認するために常に声明を出している組織なのに、悲しいことに沈黙を通して声明を出している 」と付け加えた。

芸能人やプロジューサーや脚本家などにはユダヤ系が非常に多い。ハリウッドはWWII戦前からユダヤ系によって成り立ってきたといっても過言ではない。にもかかわらず何故今回に限ってハリウッドは沈黙を守っているのか。

女性コメディアンのエイミー・シューマー(ユダヤ系)も10月7日後にイスラエルの犠牲者に同情的なコメントをソーシャルメディアで繰り返し、メディアが反イスラエルのプロパガンダを広めていると批判すると、彼女のインスタグラムには沢山の批判が集まった。その凄まじい勢いに彼女は自分のコメント欄を規制した。シューマーは極左翼リベラルで私が彼女の言うことに同意したことは一度もない。彼女自身もこれまで自分と意見の合わない人たちのキャンセルをほくそえんでいたクチであるから、今回彼女がどれほど批判されようと同情の余地はない。とはいうものの、彼女がユダヤ系だからというだけでなく、無実の民間人が虐殺されたことを悲しむことも、メディアが反イスラエルの報道をしていると指摘することも正当な行為だ。ずっと左翼リベラルでキャンセルカルチャーの恐ろしさに気付かなかったシューマーも、今度のことで左翼の邪悪さを少しは学んだだろうか?

最後に人気ユーチューバーの話をしよう。イーサン・クレイン(Ehan Klein)はイスラエル出身のアメリカ人で妻はIDFで兵役を務めたこともある。私は彼のことは良く知らないのだが、彼はもともとそれほど政治的な動画は作ってこなかったらしい。

クレインは昔はジョーダン・B・ピーターソン教授をインタビューするなどして、割とまともな動画を作っていた。ところが最近トルコ系で極左翼のハサーン・パイカースというユーチューバーと組んでポッドキャストを始めた。その頃からクレインはかなり左翼に感化されてしまったようだ。そして以前には教授のことを尊敬していたにもかかわらず、いつの間にか教授を批判しおちょくるようになっていた。これについてピーターソン教授は左翼に迎合して常に彼等に合わせようとしていると、いつかほんのちょっとの間違いで奴らは牙をむくよと忠告していた。

10月7日直後、イスラム教徒であるハサーンとユダヤ人であるイーサンがハマスとイスラエルの戦争について話していた時、寄せられたコメントを読んでイーサンはショックを受けた。何故なら今まで自分のファンだと思っていた人たちがほぼ全面的にハマスの行為を正当化し、イスラエルが全面的に悪く虐殺された人たちは自業自得だと述べ、しかもイーサンがユダヤ人であることから、彼をシオニストの豚などと罵ったからである。これを語っているときのイーサンは怒りと悲しみで涙を抑えるのがやっとだった。

イーサンはもともとイスラエル政府には批判的であったしネタニヤフは弾劾されるべきだと語ってきたが、そんなことでは怒るファンたちは気が収まらない。すこしでもイスラエルに同情的なことを言うイーサンを心から憎んでいる様子だった。いや、イーサンがどれほどイスラエル政府を批判しようとも、イーサンがイスラエル出身のユダヤ人であることがそもそも気に入らないのだろうから何を言っても無駄だとは思うが。イーサンは本当に自分が迎合していた極左翼のファン達がどういう人間の集まりだったのか知らなかったようだ。

イーサンはハサーンとのポッドキャストを辞めソーシャルメディアからも距離を置いている。もし彼が戻ってくるとしたら、多分もう政治的な話はしないのではないだろうか?


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