先日(3/4/23)のBlahさんのスペースで黒人と白人の間にある人種差別による亀裂についての話題がとりあげられ、人気漫画ディルバートの作家スコット・アダムスが黒人差別的な発言をしたとしてほんの数日の間に徹底的なキャンセル(文字通り)されてしまったという話がでた。これについては私もちょっと書こうかなと思っていたところなので、掘り下げて考えてみたい。(参考:Cancelling Dilbert: BLM-style reverse racism to fuel White identity politics (msn.com)

先日ラスマスンという世論調査の会社が”It’s OK to be white”という概念に同意するかしないかという世論調査を行った。この文章は、最近やたらと白人至上主義だなんだと言われて白人であることが恥であるかのように言う世の中の傾向があるため、一部の白人たちの間で「別に白人だっていいじゃないか、白人で悪いか」といった意味で使われるようになった。

ラスマスンがシークレットと共同でおこなった最新の調査で、回答者の72%が “It’s OK to be white “という文に同意し、黒人の間だけでは過半数の53%が同意すると答えた。裏を返せば黒人の半数近くが白人であることは良いことではないと思っていることになる。それについてアダムスは自分のポッドキャストでこんな感想を述べた。

「もし本当に黒人の半数近くが白人であることが良いことではないと思っているのだとしたら、これは私ではなくこの世論調査によるものだが、それはヘイトグループだ」と、アダムスは最近、自身のYouTube番組「Real Coffee with Scott Adams」で述べた。「彼らとは何も関わりたくない。そして、現在の状況を踏まえて、私が白人にする最高のアドバイスは、黒人に近づかないこと、とにかく離れることだ。これを解決することはできないのだから。」

ディルバートは会社員のディルバートを主人公にした四コマ漫画で大手新聞のあちこちで40年近く掲載されていた人気漫画である。ところがアダムスのこの発言の数日後にディルバートは彼が掲載していたすべての新聞から降ろされ、長年契約していた出版社からも手をきられてしまった。まさしく迅速かつ猛烈なキャンセルである。

しかしアダムスが言ったことはそんなに人種差別的な発言だったのだろうか?

当のアダムスは、自身の主張を強調するためにわざと大袈裟な言い方をしたのであり、そのすぐ後にどういう意味かをきちんと説明していたにもかかわらず、前の部分だけが切り取られて報道されたと語っている。また、もう少し別な言い方をすべきだったかもしれないとも語っている。

それにしても、アメリカの昨今の白人バッシングは異常だ。アダムスは自分のことを民主党支持で共産主義者のバーニー・サンダースよりも左翼だと語る。ちょっと考えれば、そんな人があからさまに人種差別的なことを公言するわけがないことはすぐわかるはずだ。大急ぎで彼を完全にキャンセルする前に、もうすこし人々は彼が実際に何を言ったのか、何を言わんとしていたのか本人に問いただすくらいのことをしてもよかったのではないか?

Blahさんもご自分のスペースで言っていたが、もしこれが黒人が「白人とは関わらないほうがいい、白人はなるべく避けるべきだ」と言ったとしても、その黒人が批判されるなどということは先ず考えられない。多分その場にいた人々が笑っておしまいだっただろう。どうして黒人なら言えることを白人が言ってはいけないのだ?

メディアはやたらにアメリカは白人至上主義の国だとか、アメリカの歴史は黒人奴隷の背中にたよって作られたなどというが、それは全く真実ではない。人種間暴力にしても、黒人が白人に襲われる率は8%、それに比べて白人が黒人に殺される率は17%だ。黒人の人口がせいぜい全体の13%程度であることを考えると黒人による白人への暴力率は凄まじく高い。

これは強盗などの犯罪に加えて、BLM運動の激化とともに黒人による白人へのヘイトクライムも急増している。

例えば、2022年6月9日、3人の黒人少女たちが57歳の白人女性をニューヨークはクィーンズ市のバスの中で殴るけるの恐ろしい暴行を加えた。少女の一人は「白人は嫌いだ!白人のしゃべり方が嫌いだ!」とわめきながら女性を殴っていたという。いったい黒人によるここまでの白人憎悪はどこからくるのであろうか?

私はアメリカ在住40年余年になるが、ほんの10年くらい前まではアメリカで人種差別に遭ったことなど片手の指で数えられるほどしかなかったし、国内において人種間の亀裂があるという印象も全く持っていなかった。よく左翼リベラルがやたらに人種問題を持ち出す度に私はバカバカしいと思っていたほどだ。

また一般の人びとも、人種関係は良くなっていると考えていた白人たちが70%以上もいたという世論調査もある。それが変わったのがBLMが創立された2013年だ。下記はBlahさんが紹介してくれた世論調査のグラフ。https://twitter.com/yousayblah/status/1632201348035821569/photo/1

白人と黒人の人種関係は良くなっていると答えた人たちの傾向。緑が白人で青が黒人。2013年ころまでは白人の72%、黒人も66%が良くなっていると答えていた。

Image

Image

上記のグラフは各新聞が「人種差別者」「人種差別」という言葉を使う頻度を示したもの。2013年あたりから大幅に増えていることがわかる。

もしBLMが人種間の関係をよくするために生まれた運動だったとしたら、これは大失敗だったと言わざる負えない。だがもし反対にBLMが人種間の関係を悪化させ社会を分断することが目的の運動だったとしたら、これは大成功だった。

2013年頃から、アメリカではアイデンティティーポリティクスと言う名前の人種差別が横行するようになっていった。1970年代くらいまであった白人による黒人への差別が、黒人による白人への差別へと逆転したのだ。そしてそれは非常に暴力的なものとなった。ソーシャルメディアでは黒人が意味もなく通りすがりの白人を殴ったり、罪の意識なく強盗を働いたり、大型スーパーで悪びれもせず万引き(というより強奪)するビデオが頻繁にあがるようになってきた。

そして2020年夏、全国各地で起きた黒人による大暴動。

加えて教育の場でもやたらと白人蔑視の歴史が教えられ、白人は生まれつき人種差別者であり、黒人への負債を抱えて生まれて来たかのように教えられるようになった。批判的人種理論がそれだ。

特にここ数年で、芸能界における黒人起用率はものすごいものがある。テレビコマーシャルの主役はほぼ全員黒人。ところどころに東洋系やラテン系が現れるが、白人の姿は先ずみられない。また、男女カップルの場合で男女双方が白人というのを見るのも珍しくなった。

拙ブログでも何度か書いているが、最近は時代劇など、黒人の登場人物は不自然な場合でも黒人俳優が起用される。私は東洋人ではあるが、アメリカの映画やテレビドラマで特に東洋人を観たいとは思わない。現代ドラマなど無理のない設定で東洋人が出てくるのは別に構わないが、意味もなく人種が色とりどりというのは観ていて興ざめである。白雪姫や人魚姫を有色人種にするのは本当に辞めてもらいたい。

しかし、白人は悪者だという運動はいったい何時まで続けられるのだろうか?

圧倒的多数であり政治権力を握っていた白人による黒人差別でさえ抵抗が大きくなり永久に続けることは出来なかった。それが、ことあるごとに白人だからと暴力沙汰の犠牲になり、学校教育で虐げられ、黒人の悪口をちょっとでも言おうものならすぐキャンセルされるなどという状況に、いったいいつまで白人たちは耐えられるだろうか?

今の状態が可能なのは多数の自虐的白人や、それを政治利用できると思っている白人権力者がその動きに迎合しているからであり、彼らがBLM運動が自分らの立場を脅かすと気が付き手のひらを翻したら、人口のたった13%程度の少数派である黒人などひとたまりもないのである。

最近は白人のなかでも白人であることに政治的な意味を見出す人々が増えているという。デューク大学の政治学者アシュレイ・ジョーダン教授によれば、30から40%の白人が今や白人であることを政治的なアイデンティティーであると考えているという。白人が白人であるというだけで団結するということは、少数派の非白人達にとって決して良いことではない。

先日私は保守系とリベラル系の東洋人若者を集めた座談会を観た。その時の話題で最近目立つ東洋人への暴力沙汰が取り上げられた。左翼系の若者たちは口を揃えてそれは白人至上主義による東洋人差別が原因だと言った。特にドナルド・トランプが武漢ウイルスを「チャイナウイルス」といったことがきっかけだと。しかし、一人背広姿の18歳の青年が「僕は白人による東洋人差別などみたことがない」と言った。「街中ですれ違う東洋人を殴っているのは誰だ?明らかに白人ではないよ。」すると明らかな左翼フェミニストタイプの女性が「誰のせいだっていうの?誤魔化さないで言いなさいよ!」背広の青年は「言うまでもないだろ。みんな知ってることじゃないか」と返した。

黒人と東洋人の対立は今始まったことではない。もう20年以上前から東洋人を襲う一番の人種は黒人である。これはドナルド・トランプが大統領になった、ましてや武漢ウイルスよりも、ずっとずっと前からの傾向だ。ここで東洋人が白人至上主義と戦うなどと言って、東洋人を蔑んでいるBLMの連中と連帯などして白人を敵に回すなど愚の骨頂である。そんなことをしたらモデルマイノリティーとしてアメリカ社会で築いてきた東洋人の立場を一気に崩すことになってしまう。何故そんなことをする必要があるのだ?

左翼連中が他人に向かって好んで使う「ヘイト(憎悪)」という言葉だが、憎悪が生み出すものは憎悪でしかない。多人種の平和共存を求めるなら、白人を敵に回して何の利益があるのだ。人種差別は逆差別では解決できない。

いまのアメリカで問題なのは白人が「白人であることは良いことなのだ」ということではなく、彼らをしてそれを言わしめる風潮にこそあるのだ。


Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *