フロリダの高級リゾート地で休暇中のオバマ王は、最低賃金を引き上げれば2800万人の給料が上がると演説をぶった。オバマケアの大失態でも示されるように、オバマが勝手に引き出す数字は全く当てにならないだけでなく、最低賃金引き上げは非常に悪い方針である。
大学で経済学の初級クラスのエコノミクス101を取得しただけでも政府による価格規制がいかに自由経済の掟に反するかは理解出来る。今オバマ王が提案している連邦政府による最低賃金引き上げ($7.25から$10.10)はまさにこの価格規制にあてはまる。
自由市場におけるものの価格というのは、需要と供給によって決まるというのは常識。例えばソーダ1リットル瓶の価格だが、生産者がこのらいの値段なら経費も含めて利益が得られると考えた値段と消費者がこのくらいなら買ってもいいと思う値段が一致して決まる。今なら100円から300円くらいが相場だろう。だがそれを生産者がソーダ1瓶を1000円で売りたいと思ったとしても、消費者がそんな高い金額出すくらいなら麦茶ですましておけと思って買ってくれなかったらその値段は成り立たない。労働者の賃金にしても全く同じ。
ファーストフードの売り子の自給が現在700円から800円くらいで収まっているのは、雇う方も雇われる方もこのくらいならいいと合意しているからだが、自給700円の従業員を5人雇っている小企業の場合を考えてみよう。
単純計算で週40時間で700円かける5人だから一週間で14万円の人件費。これが、自給1100円になった場合22万円に上がる。その差の8万円は自給700円を保った場合の2.9人の人件費。人件費をそのままにして自給を引き上げた場合は3.2人分の賃金にしかならない。
となると雇用主はどうしたらいいのか。商売がうまく行ってるから従業員を2〜3人増やそうと考えていた人は、あ、駄目だコリャ、と諦めるだろうし、なんとかぎりぎりで5人雇っていた雇用主は2〜3人リストラしなければならなくなる。
雇用主が誰もリストラせずに人件費の値上がりを商品値上げで補った場合、せっかく自給が上がって喜んだ従業員たちは、商品の値段も上がるためその購買能力はそれほど上がらない。ファーストフード店やスーパーで売られる商品の値上がりで一番悪影響を被るのは、こういう場所で働いて最低賃金を貰っている低所得者なのである。
政府が人工的に値段だけ上げてみても、それを誰が払うかということを考えないと大変なことになる。政府規定の最低賃金が市場とほぼ一致している場合は問題はないが、そのずれがありすぎると市場はどこかで調整をとらなければならない。現にCBO, Congressional Budget Officeという議会の予算を計算する組織の予測によれば、オバマ提案の賃金引き上げは50万という失職につながるという。
アメリカ経済はオバマ王が大統領になってから非常な低迷を続けている。(全く偶然ではない)今年2月の調査によると、この2月はここ5年間で平均給料が一番低い状態にあるというのだ。自由市場の賃金が低迷状態にある時に最低賃金だけ政府が人工的に引き上げればどういうことになるか一目瞭然である。
もっともオバマ王も民主党もこの賃金引き上げ提案が議会を通るはずがないことは百も承知。共和党の下院が承認するはずがないからだ。オバマ王の狙いはそこにある。感情論が得意なリベラルは共和党がどれだけ冷酷非道な党かということを強調したいのである。
低賃金で苦しむ低所得者たちを相手に、毎日一生懸命働いているあなたがたは昇給されるべきである、とか、共和党はあなたがたの昇給を望んでいない、共和党は金持ちの味方で貧乏人のことなんか興味ない、といったようなことを言い続け、最初から実現できないことを提案しておいて共和党が常識的な反対をすることによって共和党を悪者扱い出来るというわけ。よく出来たお芝居である。
ところで、週ごとの賃金が下がっている理由は就業時間の短縮が大きな原因となっているという。としたら、ここで自給を引き上げれば従業員は就業時間を減らされ、事実上の減給ということもあり得る。いや、そうなると考える方が自然だ。現在最低賃金を貰っている労働者は、オバマの甘い言葉にやすやすと騙されてはいけない。賃金引き上げで結局一番馬鹿をみるのは彼らなのだから。


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