Act of Valorという久しぶりにスカっとする映画をみた。ミスター苺がオンラインで見つけた試写会。シールチームを描いた映画だとは聞いていたが、どうせまたイスラムテロリストと闘うという設定で出動した米兵が、現地で金を盗むとか、地元婦女子に暴行を加えるとか、無実の市民を無差別に虐殺するとかいう話なんじゃないのか、とあまり乗り気になれずに観に行ったのだが、中身はまさにその逆、アメリカ兵が完全に善い側にまわった、勧善懲悪の映画だった。

試写会だったからなのかもしれないが、映画の冒頭で製作者のマイク・マッコイ(Mike McCoy)とスコット・ワーフ(Scott Waugh)による挨拶が入っていた。そこで二人は、主役のシールチームは役者ではなく現役のシールチームメンバーなのだと説明している。
かなり細かくシールチームの活動を描写しているので、素人の俳優にシール的な動きを教えるより、本物のシールに演技を教えた方が効果があるということだろう。 話は実際の話を元にしたとはいっても、登場人物や状況は架空のもの。しかし本物のチームを使っているので、チームメンバーの名前とランクはそのまま。本名が使われているせいなのか、IMDbのキャストには名前が乗っていない。
演技は度素人のはずなのに、シールチームメンバーたちの演技は説得力がある。もっともミスター苺いわく、軍人はどのような状況でも感情的にならずに冷静に状況判断をするように訓練されているし、そういう人でなければエリート中のエリートであるシールになどなれないわけだから、感情的な演技は要求されない。任務を与えられた時に「何か質問は?」と聞かれて、「任務にかけられる時間はどのくらいなのか、」「脱出が巧く行かない場合、どこでランデブーしたらいいか」とかいった任務上の質問は、常に自分らの仕事のうえで交わされている会話だからそれほど難しいこともないだろう。
あらすじは非常に簡単。誘拐されたCIA工作員モラレス(ロザリン・サンチェズ)を救うべくシールチームは救出の任務を課される。モラレスはボランティアの医者として現地に潜入し、密輸麻薬組織を調べていたが、相棒の工作員と連絡中に相棒を殺され自分は誘拐されてしまったのだ。最初は単なる麻薬密輸組織に捉えられた工作員の救出という任務に見えたが、探って行くうちに、フィリピンやアフリカのイスラム聖戦テロリスト(ジェイソン・コテル)や、ロシアマフィア(Alex Veadov)などの関係も明らかになり、シールチームの任務はどんどん拡大していく。
私はシールチームの訓練のドキュメンタリーや、アフガニスタンで一人生き残ったシールの体験談なども読んでいるから、ある程度シールの行動は理解しているように思っていたが、この映画を観ていて、シール達と彼らを上部から後方から援助する部隊の技術やテクノロジーなど、まざまざと見せつけられて完全に圧倒された。
監督たちの話だと、戦闘場面では実弾を使ったり、シール達が潜水艦に乗り込むシーンなどは、本物の潜水艦と経度緯度の位地と時間を待ち合わせて、たった4時間のウィンドーで撮影し、撮影が終わると潜水艦はどこへともなく消えてしまった。監督達は、観客がその場でシールの立場になって映画を体験してもらいたいと語っていたが、その目的は完全に果たせていると思う。
最初の方でシール達が飛行機からパラシュートで飛び降りて行くシーンは、ハイラインのスターシップトゥルーパーのドロッブのシーンを思わせる。ここで実際にパラシュートで降りたチームはリープフロッグというシールのスカイダイビングチーム。夜の空にまるで忍者みたいに音もなく降りて行くシール達の姿はすごく不気味だ。
シール達の任務は悪者が厳重に武装している要塞のようなアジトへ潜り込んで行くことが多い。ここでもシール達は忍者よろしく緑のカモフラージュやシダなどで身体を覆い、沼のなかからにょきっと顔をだす。プレデターでもこんなシーンがあったが、本物と俳優ではこうも違うのかと改めて監督達が本物シールを使った理由が理解できた。
メキシコのドラッグカーテルのアジトでの撃ち合いでは、狭い建物のあちこちに悪い奴らが隠れて待ち構えている。建物のなかにはギャング達の家族も一緒に住んでいる。扉を蹴破って入って行くと寝巻き姿の中年の女が悲鳴をあげていたりする。だが、寝巻き姿のオバンだから安心なのかといえばそんなことはない。オバンだって自動小銃を撃つ事は出来るのだ。とっさの判断でこの女を見逃すのか殺すのか決めなければならない、間違えればこちらが命を落とすことになるのだ。
イラクやアフガニスタンの戦闘で、「一般市民」が殺される度に、米兵は無差別に無実の市民を虐殺していると大騒ぎしていたメディアや批評家たちにこの映画を是非見てもらいたい。一瞬の判断で死ぬか生きるかという戦いをしているシール達が、どれほど超人的な判断力で無用な殺傷をしないように気をつけているか、よくよく考えてもらいたい。自分たちがそんな立場に置かれて、全く間違いを犯さないと誰が言える? これだけ危険な場所で命がけの仕事をしている兵士らに対し、戦闘中の起きた悲劇をとりあげて、まるで彼らを犯罪者のように扱った連中は戦場の厳しさなど全く理解できていないのだ。
こういう映画がイラク・アフガニスタン戦争中にもっと多く作られていたなら、二つの戦争はもっと多くの国民の支持を得ることが出来ていただろう。
だが、大手映画スタジオはこういう映画には興味がない。CGIだらけの意味のないアクション映画ばかり作っていて、戦争映画といえば必ずアメリカ軍が悪い方に回り、イスラムテロリストが良いほうか犠牲者という設定ばかりだ。それで何故イラク・アフガン戦争をテーマにした映画の業績が上がらないのか首をひねってる馬鹿さ加減。
この映画がボックスオフィスでも大成功を収めることを祈る。


Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *