歴史的にみて、戦争を国民が支持するかしないかは、戦争に大義名分が成り立っているとか、自国の犠牲者が多いとかということで決まるのではない。国民が戦争を支持するかしないかは、自国が戦争に勝っているという印象を国民が持っているかどうかに左右される。
イラク戦争には、中東からアメリカに脅威をもたらすサダムフセイン独裁政権を倒し、イラクに民主主義をもたらすという大義名分があるにはあるが、当初80%からのアメリカ市民がこの戦争を支持した理由は、アメリカの圧倒的な武力をもってすればイラク政府など簡単に倒すことが出来る。湾岸戦争のときのようにすばやく害の少ない圧倒的勝利を得てアメリカ軍は名誉の帰還をするこが出来ると信じたからである。
確かにフセイン政権打倒は計算以上にうまくいった。フセインのイラク軍など張子の虎で、アメリカ軍にかかってはみるもひとたまりもなかった。だから2003年5月当時のブッシュ大統領の支持率は90%近かったのではないだろうか?
しかし、イラク復興がおもったよりはかばらないことや、当初の戦闘での戦死者はわずか500人程度だったのに、その後あっちでひとり、こっちでひとり、と路肩爆弾や自動車爆弾による犠牲者が増え始めるとアメリカ国民の戦争への支持は激減した。大義名分も変わっていないし、犠牲者の数もそれほど増えているわけではない。問題はアメリカ国民がアメリカは負けているという印象をもちはじめたことにある。
先日もアメリカの主流メディアは悪いニュースばかりに注目していいニュースを軽視する傾向があると書いた。地味なアメリカ兵及び諸外国の連合軍によるイラク復興活動などはほぼ完全無視され、自爆テロや路肩爆弾攻撃ばかりが報道された。これではアメリカ市民が気分がいいはずがない。
無論私は2003年後半から始まった反乱分子によるアメリカ軍及び連合軍への攻撃によって我々が打撃を得たことや、イラク内の治安が荒れたことを否定しているわけではない。イラク情勢は我々が当初考えていたほど安易なものではなかったことは事実である。だからアメリカ国民の支持が下がった理由を主流メディアのせいばかりにはしていられない。いくら主流メディアが悲観的だといっても、大本営放送がメディアを独占しているわけではないから、他からも情報は入ってくる。それが同じように良くないニュースなら、本当に戦況は思わしくないと判断せざる終えない。
だが逆に、戦況が本当によくなっていれば、いくら主流メディアが良いニュースを無視しようと過小評価しようと、戦争から帰還した兵士らや、現地にいる兵士や民間人や従軍記者らからの情報で、実際に戦況はよくなりつつあるという情報はすこしづつでも巷に広がるものなのである。そうなってくれば、主流メディアもいつまでも良いニュースを無視しつづけることはできなくなるのだ。
さて、前置きが長くなってしまったが、今日のこのAPのニュースも戦況が良くなっていることの証拠だと思う。内容を読まなくてもこの見出しUS, Iraqi Forces Detain Militia Fighters(米・イラク連合軍、民兵戦闘員を拘束)だけで主流メディアのイラクに対する姿勢が変わってきたことがわかる。

BAGHDAD (AP) – アメリカ・イラク軍は土曜日、ポーランド陸軍のヘリコプターに援助され、シーア民兵が勢力のあるバグダッド南部を襲撃、何十人という民兵を逮捕した。二人の民兵は殺された。イラク首相は地元の知事と会見をしたが、知事はこの攻撃を「犯罪者」を根絶やしにするものだと語った。

イラク警察によると夜明け前の手入れでイランの飼イ豚モクタダ・アルサドルのマフディ軍民兵30人が逮捕されたそうだ。このあたりはイギリス軍撤退後、ライバルのシーア民兵たちが石油の利権をめぐって縄張り争いを始めており、地元市民をずいぶんと苦しめているようだ。今回の手入れがうまくいったのも、そんな無法者と戦う決心をした地元シーア市民の協力があったからである。

住民はアンバー地域ではじまった、スンニ部族がアルカエダに立ち向かってアメリカ軍と一緒に地道にアルカエダを追い詰め始めた傾向をみならっている。

以前ならばアメリカ軍とテロリストの戦闘の末、テロリストが50人から殺され、アメリカ人に2人の戦死者が出るなどという場合でも、「アメリカ兵二人戦死!バグダッドで激戦」というような見出しで、あたかもアメリカ軍が激戦の末大敗したとでもいいたげな始まり方をしていたものだ。それが、イラク各地で地元市民がアルカエダにしろシーア民兵にしろ反乱分子にアメリカ軍と協力して立ち向かっているという話が報道されるようになったというのはすばらしい変化と言える。
このメディアの姿勢の変化が国民の世論を変えるまでにはまだまだ時間はかかる。だが、その兆候はもう少しながら見え始めている。ハリスポールという世論調査ではイラク戦争支持率はわずかではあるが増えているとある。以下ワシントンタイムス参照

イラク戦況はアメリカ軍にとって良くなっていると答えた人の数は3月の13%から8月の20%そして現在の25%と確実に上昇している。

アメリカ軍にとって悪くなっていると答えたひとも数も一月の55%から三月の51%そして現在の32%とかなり減少した。

この傾向が続けば、来年の選挙の時までにはアメリカ市民の意見は再びイラク戦争支持になっているかもしれない。そしてイラク戦争を成功させたとしてブッシュ大統領及び共和党への支持率も上がるかもしれない。なんにしてもアメリカ市民が真実を見極められるようになってきたというのは良いことである。


3 responses to 少しづつ盛り返しつつあるアメリカ市民のイラク戦争支持

hatch14 years ago

戦争を始めるものは、つまり国の指導者は大義で戦争してはいけません。戦争は損得でするものです。
イラク戦争は、結果として米国の得にはなっていません。
それは結果論だという人もいるでしょうが、指導者の評価は結果論でなされるものです。
米国人の悪い癖です。第二次世界大戦に日本が参戦した大義名分「八紘一宇(人類皆兄弟)」と米国の「自由と民主主義」がだぶって見えて仕方がありません。
他国の「自由と民主主義」にを実現するのに米国の若者の何千人の生命がつりあうでしょうか。
大義で戦争を始めるのは、思想家と大衆に任せましょう。

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scarecrowstrawberryfield14 years ago

hatchさん、
戦争は結果論というのは全くその通りですね。勝てば官軍というやつですよ。しかし結果的にイラク戦争がアメリカの得になっていないという判断には同意しかねます。
こういう結果論を出すのはまだ次期早尚じゃないでしょうか?
イラクにテロリストの温床があることが、アメリカにとっていいことだとは思えません。もしイラクが親米な比較的民主的な国家として生まれ変わってくれれば、これは結果的にアメリカの得になると私はおもいます。
カカシ

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soltycafe14 years ago

hatchさんへ
損得勘定が無かった訳じゃ無いと思います。
しかし
損得勘定の読み違いがあったことは、同意します。
アメリカの開戦理由として、もちろん自由と民主主義も一つの柱だと思いますが、
アルカイダメンバーがフセイン政権にも関与している疑いがあり、さらに当初は大量破壊兵器の存在も懸念されていました。
テロは言わずもがな、大量破壊兵器も直接的間接的問わず、自国と周辺産油国の安全を保証するには、脅威となります。
これらを取り除くことは、大儀というよりも、損得勘定の得の部分だと思われます。
(大量破壊兵器については、情報ミスで大ぽかでしたが)
また損の部分である損害についても、
当初は治安維持は難なく行えると見られていたようです。
この事実と異なった見通しが、今にみる混乱の原因の一つです。
もちろん、損得勘定の読み違いというのも、指導者としてはマイナスの評価になると思います。
ブッシュ大統領の評価が、今現在では良くないというのも、確かでしょう。
しかし、イラクの情勢については、アメリカにとって好転しつつあるという事例もあるので、
結果を語るには、まだ結果が出きっていないようにも思えます。

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