20年くらい前までは高校や大学のキャンパスで軍隊が志願者を募集するのは普通に行われていた。キャンパス内に軍隊斡旋事務所が設置されているところも少なくなかった。しかし教育界の左翼化が進むにつれて、学校側が軍隊に志願者募集活動をするのを拒否したり、斡旋事務所を閉鎖したりするところが増えてきた。私立の学校であればこれは学校の自由なのだが、学校法人として国から多少なりとも資金援助を得ている学校は、自分らの一存で軍の活動を拒否する権限はない。
であるから、政府側が強気に出て、軍隊の活動を邪魔するのであれば、今後一切学校への国費援助はしないと言ってしまうこともできる。しかしクリントン時代にはクリントン自信が軍隊を毛嫌いしていたこともあり、学校側のこの違法な行為は全くお咎めなしの状態となっていた。ブッシュ政権になってからは、学校内における募集活動はいやいやながらも認める学校が増えてきた。とはいえ、左翼の学生が募集活動に来た軍人に暴力を振るっても見てみぬふりをしたり、学生が起こした暴力沙汰から軍人を守るという理由で軍人を追い出したりする事件がいくつも起きている。
バークレー大学のあるバークレー市には、大学の目の前に海兵隊斡旋事務所がある。この斡旋事務所は今まで特に誰からも注目されずひっそりと海兵隊員募集をおこなっていたのだが、最近になって左翼のバークレー市議会はバークレーからこの斡旋事務所を追い出しにかかった。その理由は軍事施設はバークレーの文化にそぐわないからというものだ。バークレーというのはカリフォルニアでもかなりリベラルな市ではあるが、だからといって市民全体が軍隊を敵視しているというわけではない。
そのことが原因で、今週の水曜日、軍隊を支持するグループとコードピンクという過激派左翼市民団体が斡旋事務所の前でぶつかった。(SFGate参照
特にけが人が出たわけでも逮捕者が出たわけでもないが、一時はお互い怒鳴りが講じて押し合いへしあいになり、警察がコードピンクを通りの向こう側に追い返すという光景も見られた。上記のリンクでその模様の写真が何枚も見られるので参照されたし。
ところで、この記事のなかで元海軍兵というパブロ・バレデスという人のインタビューが載っている。この人はコードピンク側の人で、軍隊支持側から「お前はそれでも兵隊か、軍隊はそんな格好じゃ入れてくれないだろうな」と怒鳴られたという。その後パレデスさんは自分は海軍で5年も勤めたとし、軍隊では有色人種がより危険な目にあっていると語る。

「僕は僕が前線に行くのが皮膚の色で決められるべきではないと思います。」パレデスはそう語り、彼はイラク戦争に反対して命令に逆らったため、海軍を辞めたと付け加えた。

パレデスという名前からして中南米系の人種だろうが、軍隊は一般社会よりも有色人種が圧倒的に多いというわけではないし、有色人種だから前線に送られるなどということは絶対にない。私はイラク最前線からの映像をいくらもみたことがあるが、白人の軍人はいくらでも勤務している。
現役海軍兵Neptunas Lex
が、この元海軍兵についてこんなことを書いている。

だめだぜパブロ、自分で志願しといて、ここで人種カードをひけらかそうったってそうはいかねえよ。道徳上優位にたったようないいかたも通じないね。平和時に日本で勤務して、わざと船に乗り遅れて義務を怠り、危険などほとんどないアラビア海への出航をさけたお前にそんな資格はねえよ。船仲間に自分の勤務をおしつけ、自分が列からはずれて他人にその穴埋めをさせといて、最前線に行ったような口を利くな。お前にはその使い古された嘘を使うことはできねんだよ。お前は英雄なんかじゃねえ。お前は英雄になる機会を自分から放棄したんだからな。

それから、お前は海軍を辞めたんじゃねえ。俺達がてめえの太ったケツを追い出したんだよ。
臆病者!誓約破りの裏切り者!

どうしてレックスがこんなに怒っているのかというと、パブロ・パレデスなる男はウィキペディアによると、2004年、湾岸へ出航予定になっていた自分の船に乗らずに、その翌日記者会見を開いて自分はイラク戦争に抗議して出動命令を拒否すると発表した。命令を拒んだことと脱走の罪で彼は軍法会議にかけられ数ヶ月の強制労働の罰を受けたあと位をE-4から最低のE-1に落とされた上で、2005年の9月に不名誉の除隊となっている。
パレデスは出動命令を拒否する前から、戦場へ行かなくて済みそうな部署への配置換えを何度も試みていたがすべて失敗した。名誉の除隊も申し出たがそれも拒絶されていた。
海軍については私は多少知識があるのだが、イラクには海軍はないので、まず海戦の危険はゼロだ。湾岸で警備にあたっていても、フセイン政権が崩壊した今となってはスカッドミサイルを米艦に撃ってこられる危険もない。シールのような特別部隊でもない限り、一般の水兵が戦場へ足を運びこむということは先ず考えられない。
ベトナム戦争時代に空母間に乗っていたミスター苺の友人は、一応ベトナムへは出動したことはしたが、戦場とは遠く離れた沖合いで座っていただけだと語っている。1991年の湾岸戦争のときにゴルフ湾で護衛艦に乗っていた別の友人も、一度か二度イラク軍に撃たれたが、弾はあたらなかったと語っていた。レックスが「危険のほとんどないアラビア海への出航」といってるのはこのことなのだ。
平和時には給料や特別手当などを目当てに志願しておいて、戦争が始まったら出動を拒否するような人間が、有色人種だから前線に送られるなどと文句をいったり、自分は元海軍兵だったなどといばるような資格はない。こんな奴に水兵顔されたら海軍の名が廃る。だからレックスは腹を立てているのだろう。
それにしても、リベラルなはずのバークレーでこんなに軍隊支持の愛国者が集まったというのは非常に喜ばしいことだ。いままで反戦派の声の方が大きかったので、アメリカ市民は反戦ムードが高まっているような錯覚を覚えるが、実はそうではないということだ。それに現在のアメリカではイラク戦争を反対するのは勝手だが、アメリカ軍をコケにしたら承知しないぞという空気が圧倒的にある。だから反戦派たちは本音はともかく、ことあるごとに「我々は軍人を応援する」と口を揃えて言うのである。(本心は全く別のところにあるのは間違いない。)だが、軍人を応援してるはずの人間が軍隊の斡旋事務所を閉鎖させようとデモをやってるんじゃ、全く説得力がない。


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