アメリカはニュージャージー州でピザレストランや屋根修理などの仕事をしていた違法合法を含むイスラム系移民6人が米軍基地攻撃の陰謀を企んでいたとして昨日逮捕された。(ニューヨークタイムスよりCNNの日本語記事はこちら

容疑者は違法にアメリカに入国したアルベニア系の三人兄弟を含み、家族はニュージャージー州のチェリーヒルに長年在住している。三人はそこで公立学校へ通ったこともあり屋根修理やピザレストランの経営などをしていた。後から加わったのは、米国市民権を持つヨルダン生まれの義理の兄弟と、フィラデルフィア在住のユーゴスラビアとトルコ出身の二人の合法移民である。

ニュージャージーはイタリア系の移民が多く、昔はマフィアなどが活躍した場所でもあるが、最近は韓国系やイスラム系の移民が増えているようだ。私も何回か出張でいったことがあり、チェリーヒルのホテルに何週間も泊まったことがある。日本語にすれば桜ヶ丘という名のとおり春先の桜は見事な場所だ。
そんなところで一見普通に暮らしていたアルベニア人の家族がアメリカ国内でテロをやろうだなどと企んでいたとは恐ろしい。ニュージャージーには軍の基地がいくつかあるが、彼等の当初の標的は空軍基地だったらしい。しかし警備が厳しすぎるという理由で陸軍予備軍の訓練場所となっているフォートブリグ基地に標的を変更したという。
この6人の逮捕は15か月による捜査の結果だというが、そのきっかけというのが非常に興味深い。

当局が最初に男たちに気が付いたのは2006年の一月、ビデオ店の店員が容疑者たちがポコノ山でアサルト銃を撃ちながら聖戦について叫んでいる姿を撮ったビデオをDVDに移してくれるよう頼んだのを当局に通告したのがきっかけだった。

ビデオ店員の機転によって国内テログループの陰謀が暴かれることとなったわけだ。これが911以前のアメリカなら、飛行訓練所の指導員がFBIに通告したのも空しくそれ以上の捜査に結びつかなかったように、きっと指の隙間から流れておしまいになっていたことだろう。しかしありがたいことに911以後のアメリカには怪しげな行動をする人々に警戒の目を向け通告する市民からの情報を生かせる機構が存在する。また、国内イスラム系市民団体の圧力に負けず、その危険性を指摘することを恐れない市民が存在することも頼もしい。
しかし問題なのはアメリカ国内にこのようなテログループが存在しているということだ。捕まった6人のうち2人は合法移民1人はアメリカ市民だ。しかも最初からアメリカでテロをしようという考えでやってきたわけではないらしい。違法移民の3人ですら幼い頃からアメリカの学校に通うなどして普通のアメリカ人として暮らしていた。自分達が経営する商売もしており、決して貧困に困る下層階級に属するような移民ではない。祖国アルベニアやユーゴなどにいたときよりも、よっぽども豊な暮らしをしていたに違いない。
特に頭にくるのは、アメリカはボスニア・コソボ戦争ではイスラム教徒であるアルベニアの味方をしキリスト教のサルビアを敵にまわして戦った。イスラム系の難民も多くアメリカに受け入れてきたのに、恩を仇で返すとはまさにこのこと。
私は当時アメリカがイスラム教のアルベニアの方を持つことに全く納得がいかなかった。別にキリスト教のサルビアを応援すべきだと思ったわけではない。ただサルビアが凶悪でアルベニアを圧倒していたからといってアルベニアが善というわけではないし、この戦争にはアメリカがどちらかの方を持つ理由が全くないと思ったからだ。それに白状すると私にはイスラム教徒への偏見もあった。だから彼等に恩など売っても無駄だというシニカルな気持ちもかなりあった。
しかしここで真剣に考え直さなければならないのは、イラクでテロリストと戦っているとはいえ、アメリカ国内でもまだまだ油断大敵ということである。特に外国から入ってくる敵だけでなく国内で生まれる国産テロリストについてもきちんとした対策をとる必要がある。
このグループはきちんとした組織の一部というわけではなく、自分達でイスラム過激派グループのウェッブサイトなどを読んで過激な思想に感化されたようだ。しかし単なるアルカエダファンというわけではなく、軍事基地を偵察してみたりメンバーのひとりはコソボで狙撃兵だったこともあり、AK-47などの軍事用ライフルを購入しようとしていたというかなり真剣なグループだったようだ。

「今日はなんとか弾(たま)を避けました。」FBIフラデルフィア支部のJ.P.ウェイス特別捜査官は記者会見で語った。「事実このグループが購入しようとしていた武器の種類を考えると非常に多くの銃弾を避け他といえます。」

ウェイス氏はさらに「陸軍の一小隊を攻撃しようなどというグループが構成されていたのです。標的を決め偵察までしていたのです。彼等は地図も持っていました。そして武器購入の段階にまでいっていたのです。幸運なことに我々はそれを阻止しました。」

しかもそのきっかけが一般市民の通報だったということも忘れてはならない。対テロ戦争は軍人やFBIだけに任せておいてはいけない。市民一人一人が常に警戒の目を光らせていることが大切だ。この事件はそのことを象徴する出来事だった。


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