史上最高の売り上げを記録したスパイダーマン3の封切り。オープニングの週末に観にいってきた。前評判どおり非常に面白かった。
これまでのスパイダーマンでもそうだったが、スパイダーマンは彼の超能力による悪者退治も去ることながら、ピーター/スパイダーマン(Tobey Maguire)と恋人のマリージェイン(Kirsten Dunst)、そして親友のハリー/二代目ゴブリン(James Franco)との関係が主軸となっている。
私が特に気に入ったのはキャラクターの明暗を見せるトビー・マグワイアーとジェームス・フランコの演技だ。
映画はピーターがブロードウェイミュージカルに出演しているマリージェインの舞台を見にいくところからはじまるが、マグワイヤーの演技はまるでキートンの結婚狂であこがれの舞台女優を最前列で観ているバスター・キートンが演じた純粋で無垢な若者を思い起こさせる。しかしスパイダーマンとしての人気で図に乗ったピーターは、キャリアの伸び悩みに落ち込んでいるマリージェインの気持ちを酌むことができない。そんななかピーターは隕石にくっついて地球にやってきた異様な生物に取り憑かれる。

spiderman3

陰陽に揺れるスパイダーマン


予告編でスパイダーマンの赤い衣装がグレーのパワースーツにかわっていく映像をみなさんも御覧になったと思うが、この生物はホストの体に住み着いてホストの運動神経を増強させ、ホストにすばらしく力強い快感を与えるが、それと同時にホストの心の奥深いところに眠っている暗い本能も増強する力がある。
普段は大人しいが優しいピーターも、自分勝手な行動でぎくしゃくし出したマリージェインへの反感が異性物によって増幅され、同情心や思いやりの全くない不良っぽい女たらしへと変身する。ピーターが髪形から服装にいたるまで極端に変わっていく過程を監督のサム・レミーはミュージックビデオ風にコミカルに描いているが、ピーターの一番の変化は外面ではなく内面だ。大人しいが明るく好感の持てる若者が、やたら自信満々でごう慢なちんぴらへと変わっていくのをマグワイヤーは非常にうまくあらわしている。
ピーターの親友ハリーも同じように陰陽の葛藤に悩まされる。一方でハリーは初代ゴブリンだった父を殺したスパイダーマンを父の仇と復習に燃える暗い面を持ちながら、もう片方でピーターの親友としての友情も持っている。ハリーが親友とての友情を垣間見せる時のフランコの笑顔は非常に魅力的だ。これが復讐に燃えたゴブリンへと一瞬にして変貌するのが信じられない。しかもその変化が眉毛の釣り上げ方ひとつで起きてしまうのだからすごい。
この三人のなかで一貫してかわらないのがメリージェイン。彼女のピーターへの愛とハリーへの友情は二人の男たちには大切な希望となる。二人を暗い世界から救えるのはマリージェインのしっかりした存在だ。私は未だにダンストがインタビューウィズバンパイヤで少女吸血鬼を演じたあの子役と同一人物だとは信じがたいのだが、当たり前のことながらうまい役者は見る度に違うものだ。
さて、正義の味方には無論悪役が必要。今回の悪者はサンドマン(Thomas Haden Church)とベニム(Topher Grace)という強力な二人。サンドマンは病気の娘の手術費を稼ぐために強盗を働いた凶悪犯罪者。刑務所から脱走し逃亡の途中で、とあることから体が砂と化す怪物に変身。なぜか新しく手に入れた力を利用して堅気の商売をやろうなんて気にはならずに性懲りもなく現金輸送者を襲ったりしてる。ピーターの叔父を殺害した強盗と関係もありそうな因縁のある男である。
もうひとりの悪者ベニム登場のいきさつを語るのは控えておこう。ベニムの正体とピーターの明暗との葛藤とは密接な関わりがあるからだ。ベニムを演じるグレースはどっかで見たことある俳優だなと思っていたら、人気テレビコメディのThat 70s showでずっこけ主役を演じて一躍人気を得た俳優だった。これまでに出演した映画などから喜劇役者という印象が強かったので悪役をやるなど意外だが、これが非常な適役なのには驚いた。
スーパーヒーローものは何かとアクションに重点が行き主人公の人格形成や人間関係が希薄になることが多いが、この映画は強いストーリーラインがあるのが魅力だろう。しかしこのようなことを書くと人間関係ばかりで肝心のアクションがないかのように誤解されてもいけないので、ここで一言書いておこう。CGを存分に駆使した手に汗握るアクションシーンは盛りだくさん!ロマンスのかけらもない彼氏と恋愛映画専門の彼女が一緒に楽しめる映画である。またヒーローのかっこいい姿がみたいだけの少年少女にもサービス精神たっぷりの映画でもある。
スパイダーマン3は史上最高の封切りを記録しただけのことはある価値ある映画としてお勧め!


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