クリントン元大統領や民主党議員たちがABCテレビ局製作のPath to 911(911への道)放映を阻止しようと躍起になったにも関わらず、ABCは多少の編集をしただけでほぼそのまま放映した。

全編は四編に別れた5時間ものなので録画して三日に分けて観た。私はここ数年911について非常に興味があったことでもあり、ドキュメンタリーを見たり、関係書類を色々よんだりしているので、このドキュドラマで描かれた歴史的事実についてはほとんど全て知っていたが、それでも改めて驚かされる場面もあった。全体的に事実に基づいた正直な作品になっていると思う。

ただ、ドラマであるから主人公のFBI役員のジョン·オニールや若いCIA工作員のカーク(仮名)らが英雄的にかなり美化されている点はある。特にクリントンのテロ対策委員だったリチャード·クラーク氏はちょっとかっこ良すぎる。(笑)しかしクリントン大統領をはじめ、オーブライト官房長官や警備アドバイザーだったサンディー·バーガーなど、自分の政治生命を守ることに必死で国の防衛など後回し、彼等の優柔不断で無責任な態度をよくまあABCがあそこまで描けたものだと驚くとともに感心してしまった。

特にビンラデンの家を北同盟の戦士と一緒に囲んでいたCIA工作員たちが、ホワイトハウスからの最終許可を得られずみすみすビンラデンを取り逃がしたシーンなどはみていて歯がゆいったらない。北同盟のリーダーは「アメリカには最新の武器はあるが、誰も戦争をする度胸がない」とCIA工作員に食って掛かるシーンは印象的だ。
また別のシーンで、ビンラデンの隠れ家を無人飛行機に備えられたカメラでとった航空写真を北同盟のリーダーに見せるシーンでは、「我々が欲しいのはビデオでもミサイルでもない、ジープやヘリコプターだ。」アフガニスタンがソ連と戦っていた時はアメリカは何でも用意してくれたと彼は言う。「レーガンは解っていた」ABCのドラマが、当時メディアに目の敵にされていたレーガン大統領についてここまで言うとは驚きだ。(注:レーガン大統領、共和党、1980年〜1988年)

前半の終わりで1993年の第一貿易センターテロの首謀者で911テロ計画の首謀者だったラムジーユーセフが逮捕されるまでの過程はまるでスパイ大作戦でもみているようで興奮する。ユーセフを裏切った男が合図をしてCIAエージェントたちが一斉に建物に押し入る図などは見ていてすかっとする。もしこれがフィクションの映画なら、ここで悪者が退治され「めでたし、めでたし」で終わるところなのだが、実際にはユーセフの計画はすでに後戻りできないところまで進んでいた。現実の悲劇である。

前評判では後半はブッシュ大統領への批判がかなりひどくなるという話だったが、クリントンの8年と比べてブッシュはたった8か月。最初の頃はブッシュ政権のテロ政策はクリントンの政策をそのまま継続していただけなので、FBIがCIAから情報をもらえずに苛立つ場面などは、ブッシュへの批判というより融通の利かない組織への不満であるように受け取れた。

911が近付いてくるに従って、アルカエダ工作員たちの活動は盛んになった。彼等が動けば動くほどアメリカ各諜報組織はそれぞれ色々な情報を手に入れる。だがCIAは情報過多で盗聴した膨大な量のアラビア語の交信が英語に訳せなかったっり、とった写真の意味を分析する人間がいなかったり、なにかが起きると分かっていても予算不足で動きがとれない。FBIはFBIで、テロをおっていたジョン·オニールが組織内部の勢力争いに破れて辞任。移民局は違法滞在をしていた911テロリストの一人を一旦逮捕はするものの持っていたコンピューターの捜索許可が降りずみすみす証拠を手放す。民間の飛行訓練所の講師らがテロリストたちの態度がおかしいとFBIに連絡をとるが、それが上まで伝わらない。飛行場で関税の役員が怪しげなサウジ人の入国を拒否して送り返すが、このリポートはどこへもいかない。

とにかくあらゆる場所で点が無数に集められていたにもかかわらずこれらの点が結びあって線とならないまま、911が迎えられる。

あれだけ貿易センターのテロリスト追求に躍起になっていたオニール氏は、FBI引退後貿易センターの警備責任者としてあの日もビル内部で働いていて果てる。アメリカ国内でひどいテロが起きるのを防ぐために過去10年近くも働いていた彼にはさぞかし無念だったことだろう。

このドラマのメッセージは明白だ。我々は1993年以来、いやもっと以前からイスラム過激派のジハーディストらと戦争状態にあった。ただ我々は2001年の9月11日まで一部の諜報部員たちを除いて大統領から一般庶民にいたるまで全く気が付いていなかったのである。911は我々の無知と無策と油断のたまものだ。

911は我々には苦い薬だった。だがこの薬が911以後生かされたのかどうかは、保守派とリベラルでは完全んい見解が異なる。だがひとつだけ確かなことは、我々は常にジハーディストたちと戦争状態にあるということを忘れてはならないということだ。敵の目的はただひとつ、我々の世界を破壊しジハーディストの理想の世界を作ることにある。そのためなら彼等は手段を選ばない。そのような敵と戦っているということを我々は常に念頭において行動すべきである。

なぜなら我々が一時でもそれを忘れれば、そのときこそ911事件が繰り返されるからだ。
無策無能だったクリントン大統領が放映阻止をしたがったのも納得がいく。


8 responses to 911ドラマ、『911への道』を観て、、

endunham16 years ago

はじめまして。
このドラマって、そんなに奥深いものだったなんてこの記事を読むまで知りませんでした。どうも、911をテーマにしたドラマや映画は、悲劇を利用した金儲けといった印象にしか映らないので見る気が全くありませんでした。
なりほど、そういった内容なのであれば観てみたいな、そう思い始めてます。

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MikeRossTky16 years ago

番組の紹介ありがとうございます。日本では見ることは難しいかも。
”Docudrama” - 事実に基づいたドラマ。なぜ前の政権がこの番組の取り消しを行おうとしたのか?なぜ民主党の議員がFCCのライセンスを無効にするとまで言ったのか。そこまで怖がる番組ではないのでは?
また、よらせていただきます。
MikeRossTky

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asean16 years ago

こんにちは、カカシさん
自由・民主主義で法治国家であるならば、多民族国家である米英が最もテロを阻止することが難しい。
(保安当局がアラブ、ペルシャ系ムスリム”ばかり”をその捜査対象にすることはほぼ不可能ですからね・・・
人種差別と受け取られかねないし、ロシア系、アジア系、そして次に中東ムスリム系・・みたいな捜査対象のローテーションを組まないとならない)
9.11の国家陰謀説にしても「自国に戦争を仕掛けた」ことになりますから、国家反逆罪になってしまうし
幾らネオコンであろうともそこ迄のモラルは持ち合わせてはいない訳で・・・
ただですね、現在の米国の一般的な国民が「テロ行為を防ぐ手段は実は存在しないのだ」ということを理解しているとはちょっと思えない。
この事実を最もよく理解しているのは軍だと思いますけどね。
装備や士気、錬度とは全く関係が無いですから・・はい。
対処療法という手段しか対テロ行動というのは存在しない訳でして・・・
対テロ行動が武力的な分野だけになることが最も危険なんですけどね・・・
なぜなら、価値観が違うことを理解しないと一般的な人間の何気無い(無知で悪意の無い)行動が
相手のテロを誘発する可能性を持っていることを欧米の人間は把握しないとならない。
国民レベルでのイスラム(価値観の違いに対する)理解が進まないまま、武力部門や諜報部門だけを強化しても結果が出ない。
国内に様々な移民を受け入れている、というのも彼らには通じない話なのは前にも書いてますが
自由=国家が分裂しているという捕らえ方をする人達がこの情報化社会の中でも数多く居るが故に
政権を批判する側が簡単にイスラム原理主義のプロパガンダの標的にされてしまう・・・
政権の対応も確かにあるとは思いますが、一般的な国民の理解度もかなり問題になるんだ、ということをそろそろ理解しないと駄目なんじゃないかなぁ?

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Sachi16 years ago

endunhamさん、ようこそいらっしゃいました。911に関する映画や番組が出てくるにはまだ早すぎるという人たちがいますが、記憶が薄れないうちにやっておいたほうがいいと思いますね。日本でもこの番組が放映されたら是非御覧下さい。勉強になりますよ。
マイクさん、この番組を見ればクリントン大統領が放映を阻止したかった理由がわかります。でもアメリカではブッシュ大統領暗殺というあの汚らわしい映画を公開するそうですよ。民主党議員たちがこれを抗議するとは思えませんがね。(笑)
カカシ

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Sachi16 years ago

アセアンさん
テロ防止は軍事行動もですが、諜報が一番大切だと思いますね。その手段を民主党は後から後から奪い取ろうとしている。そこに問題があるのです。911事件での失態から全く学んでいない。民主党はブッシュ政権打倒のほうが先決で国の安全が二の次なんですからしょうがないです。
カカシ

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MikeRossTky16 years ago

カカシさん、
OpinionJournalで9・11のスクリーンプレイを書いた方からの記事が投稿されました:http://www.opinionjournal.com/extra/?id=110008958
リベラルの方々の腹黒い行動が…
MikeRossTky

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映画感想13 years ago

9.11への道

映画じゃなくて海外ドラマですが、
おもしろかったんで紹介します。
前後編とあり5時間くらいと長いのですが、気になりませんでした。
「…

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In the Strawberry Field11 years ago

え〜、ビンラデンが死んだって? もうどうでもいいんだけどね、、

オサマ・ビンラデンがCIAの襲撃で頭を打ち抜かれて殺されたとオバマ王が発表した。遺体は米側が収容したとのことなので、ま、間違いはないんだろう。 はっきり言って今更ビンラデンが死んだからってどうってことはない。アルカイダはイラク戦争でアメリカ軍にこてんぱんにやられてしまって今や見る影もない。ビンラデンなんてただの象徴で特に指導権があったというわけでもない。 それでもオサマ・ビンラデンが死んだというのは祝福すべきことであり、ブッシュ前大統領が色々頑張ってくれたおかげである、ありがとうジョージ・W・ブッシ…

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